レビュー

テレワーク用イヤホンの最適解!? 可動式マイクを搭載したAfterShokzの骨伝導イヤホン「OpenComm」

耳をふさがず外の音が自然に聴こえることから、骨伝導タイプのイヤホンが高い注目を集めている。現在、いくつかのメーカーから製品が発売されているが、その中でもリーディングカンパニーといえる存在なのがアメリカのAfterShokz(アフターショックス)だ。

2011年、アメリカのニューヨークで誕生したAfterShokzは、骨伝導に関する多数の技術を待ち、それを活用することで当時は難しいといわれていた骨伝導イヤホンの高音質化を実現。音楽リスニングを楽しめる、新世代の骨伝導イヤホンを作り上げたメーカーだ。

実際、アウトドア環境で骨伝導イヤホンはとても重宝する。ランニングなどのスポーツはもちろんのこと、道を歩きながら音楽を聴くということも危なげなくできるからだ。“音楽を楽しみながらアクティブに活動できる”ライフスタイルを提供してくれる点で、AfterShokzの骨伝導イヤホンはとても画期的な存在といえる。

そんなAfterShokzから、さらなるライフスタイル提案型の製品が登場した。それが「OpenComm」だ。

AfterShokz「OpenComm」

AfterShokz「OpenComm」

こちら、簡単に表現すると最新モデルの骨伝導イヤホン「Aeropex」にブームマイクを付属した“骨伝導ヘッドセット”と呼べるスタイルの製品となっている。ゲーミング用の骨伝導イヤホンが欲しい、という人にとっては待ちに待った製品といえるだろう。

しかしながら、この「OpenComm」はそういったニュアンスとは異なるコンセプトによって生まれた製品だったりする。というのも、「OpenComm」は当初は業務用を想定して開発されていたからだ。そう、工場内や工事現場で働く人や長距離トラックの運転手など、騒音レベルの高い(それでいて周囲の環境音はしっかり聴こえなければならない)場所や、長時間にわたって使用する人に向けた製品として最適化されたという経緯がある。

もちろん、実際にそういったシチュエーションでも活用されているが、メーカーとして意外だったのがオフィスワークやテレワークでの要望が高かったことだという。そういったニーズを受けたことから、現在、「OpenComm」の製品紹介Webサイトではオフィスでの活用イメージ写真がメインになっていたりする。メーカーの予想を超える使われ方をしているのがこの「OpenComm」なのだ。画期的なスタイルを持つ製品ならではの、興味深いエピソードといえるだろう。

ということで、本国でもかなり評判となっていた「OpenComm」だが、今回実機を試用できたので、さまざまな角度からチェックしてみようと思う。

ノイキャン付きブームマイクが現代のライフスタイルにマッチ

まずは基本的なスペックから。メイン部分について、ブームマイクが付属している以外は、先ほどいった通り「Aeropex」にかなり似ている。しっかりとした装着感が必要となる骨伝導イヤホンならではのバッグヘッドバンドを採用し、耳の後ろに位置する場所にバッテリーやワイヤレス機構を含む本体部分、耳の前側となる部分にドライブユニットがレイアウトされている。チタンフレームを採用する外観はとてもシェイプされていて、必要最低限の凹凸に抑えられているため、装着時は(目立たないというまでではないが)いたってスマートに見える。

スリムなボディが特徴的な「OpenComm」。ブームマイクは左側に搭載されている。ちなみに、ブームマイクとバッテリー容量がアップしたことで、重量は約33gと「Aeropex」より若干重くなっているが、装着してしまえば重量はさほど気にならない

スリムなボディが特徴的な「OpenComm」。ブームマイクは左側に搭載されている。ちなみに、ブームマイクとバッテリー容量がアップしたことで、重量は約33gと「Aeropex」より若干重くなっているが、装着してしまえば重量はさほど気にならない

振動ドライバーユニットは最新モデルを搭載。第7世代の骨伝導テクノロジーによる音響調整が行われ、人間の声を明瞭に聴きとれるサウンドとなっている。これに加えて、クアルコム社製のBluetoothチップ「QCC3024」を採用することで、さらなる良質なサウンドを追求しているという。

装着するとこめかみ部分に当たる丸いユニットの中に振動ドライバーユニットが搭載されている。左側の振動ドライバーユニット部分には、楽曲再生や通話などのコントロールに使うマルチボタンを搭載

装着するとこめかみ部分に当たる丸いユニットの中に振動ドライバーユニットが搭載されている。左側の振動ドライバーユニット部分には、楽曲再生や通話などのコントロールに使うマルチボタンを搭載

いっぽうのブームマイクは、イヤホンのユーザビリティに合わせて長さ6mmと、(ゲーミングヘッドセットに比べると)やや短めのタイプをチョイスしている。このため、重すぎず長すぎず、(短いテスト時間ながら)実際の使い勝手はなかなか絶妙な長に感じられた。

とはいえ、肝心なのはマイクの音質だろう。「OpenComm」のマイクは、DSPによるノイズキャンセリング機能が搭載され、周囲の騒音を最小限に抑えるとともに、人間の音声に特化した特性を持ち合わせ、相手に聴こえやすい音声を伝えてくれるのだという。

ブームマイクにはDSPによるノイズキャンセリング機能を搭載し、快適な通話を実現したという

ブームマイクにはDSPによるノイズキャンセリング機能を搭載し、快適な通話を実現したという

ブームマイクの可動域はこんな感じ。口元からの声をしっかりと拾える絶妙な角度に仕上がっていることがおわかりいただけるだろう。マイクを使用しない時は、じゃまにならないように後方に回転して収納できるのもポイントだ

ブームマイクの可動域はこんな感じ。口元からの声をしっかりと拾える絶妙な角度に仕上がっていることがおわかりいただけるだろう。マイクを使用しない時は、じゃまにならないように後方に回転して収納できるのもポイントだ

実際にマイク品質を試してみたところ(WindowsパソコンとAndroidスマートフォンを利用)、確かに良質な通話音声を実現している。声のトーンが明瞭なだけでなく、言葉のニュアンスもしっかりと伝わってくる。完全ワイヤレスイヤホンとは段違いのレベルで、さすがにFPS想定の独自ワイヤレス・ゲーミングヘッドセットには敵わないものの、Bluetooth接続(のゲーミングヘッドセット)であれば十分拮抗する、かなりの実力派だった。

このほかにも、バッテリー持続時間は音楽再生時で最大8時間、マイクのみ利用した通話時で最大16時間と、十分な内容を持つ。特にビジネスユースに関しては、終日の会議やライブストリーミングのホスティングなど、一日中働いてもバッテリーが持つというスタミナは魅力的だ。このあたりの作り込みは、さすがにスポーツシーンを想定した「Aeropex」とは異なる。5分の充電で最大2時間の使用が可能な急速充電にも対応しており、いざというときも安心だ。

左耳の後ろ側にくるボックス部分にバッテリーを搭載。NFCもこちらに用意されており、簡単にBluetoothペアリングできる

左耳の後ろ側にくるボックス部分にバッテリーを搭載。NFCもこちらに用意されており、簡単にBluetoothペアリングできる

右耳の後ろ側にくるボックス部分には、ボリューム調整ボタンや充電端子を用意。「Aeropex」に比べるとボタンが大型化して操作性が向上している。このあたりも「Aeropex」とは異なる設計思想からなのだろう

右耳の後ろ側にくるボックス部分には、ボリューム調整ボタンや充電端子を用意。「Aeropex」に比べるとボタンが大型化して操作性が向上している。このあたりも「Aeropex」とは異なる設計思想からなのだろう

また、イヤホン本体はIP55の防塵防水性能を確保。加えて、専用のケーブルを近づけるだけで自然に接続されるマグネティック充電ポートを採用。こちら、汗や雨などの水分を検出してくれる機能性を持っていて、濡れた状態のまま接続すると警告音を鳴らしてくれる。なかなか安心安全な機能だ。

IP55の防塵防水性能を確保するために充電端子が専用設計となっており、充電ケーブルもそれに合わせた特殊な形状となっている。マグネット式でカチっと簡単にはまって充電できるのは便利だ

IP55の防塵防水性能を確保するために充電端子が専用設計となっており、充電ケーブルもそれに合わせた特殊な形状となっている。マグネット式でカチっと簡単にはまって充電できるのは便利だ

「OpenComm」には専用のキャリングケースも付属。充電ケーブルと一緒に持ち運びするのに重宝する

「OpenComm」には専用のキャリングケースも付属。充電ケーブルと一緒に持ち運びするのに重宝する

質のよい中高域でボーカルものとの相性がよさそう

さて、実際のサウンドはいかがなものだろうか。さっそく実機を使って、いろいろな楽曲を試聴してみた。

AfterShokz「OpenComm」を試聴

AfterShokz「OpenComm」を試聴

クオリティに関しては、さすがAfterShokzというべきか、ある程度の解像度がそつなく確保されており、広がり感も良好、質のよい中高域を聴かせてくれる。一般的なカナル型イヤホンに比べると確かにレンジはナローだが、高域の減衰が自然な山なり特性を持っているためか、とても自然な音に感じる。そのため、ボーカルはややウォーミーながら、普段とそう印象の変わらない歌声を楽しむことができる。特に女性ボーカルは、やや鼻にかかった声色になり、少しエコーがかったような印象にはなるものの、聴き心地のよい歌声なので、これはこれで楽しい。

どうしても不足しているのが低域だ。決して量感がないわけではないのだが、骨伝導の特性ゆえか最低域までの伸びがなく、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDやYOASOBIを聴くと、演奏が迫力とバランスを欠いたように感じてしまう。とはいえ、ボーカルは比較的“普通”なので、聴き続けているうちに慣れていきそうな気もする。

もうひとつ、骨伝導ゆえ、振動ユニットゆえにどうしてもある程度の音漏れが生じてしまうことにも注意したい。漏れる音の大きさとしては、インナーイヤー型イヤホンと同レベルくらいだろうか。オフィスや在宅ワークなどの利用では問題のないレベルだが、ラッシュ時の電車では少々気がとがめるかもしれない。

いずれにしろ、周りの環境の音が普段どおりに聴こえつつ、音楽が楽しめる骨伝導イヤホンは、ライフスタイルの面で大きなアドバンテージを持つ。さらに、良質なマイクも併せ持つ「OpenComm」は、現代の生活にマッチした画期的な製品といえるだろう。仕事や屋外でのBGMリスニング用として、ぜひ手元に置きたい製品だ。

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野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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