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「LDAC」と「aptX Adaptive」ってどう違う? 最新Bluetoothオーディオコーデックの音質や接続性を比べてみた

Bluetoothワイヤレスの音質や遅延、接続安定性などに関係するオーディオコーデックにはさまざまな方式が規格されていて、製品ごとに採用されるオーディオコーデックが異なっているのは皆さんもご承知のことと思う。これは、(音声再生に)必須コーデックであるSBCが音質、遅延ともにあまり良好でないことから始まったアップグレードの一環だが、同じような目的を持つコーデックが複数存在していることや、そのコーデックを利用するためにはスマートフォンなどのプレーヤー側とイヤホンなどの再生機器側が両方ともに対応していなければならないことなどから、高音質や低遅延の接続を実現するために製品選びの際に注意が必要となっている。

そういった状況の中、注目を集めているコーデックがある。それが「LDAC」「aptX Adaptive」だ。どちらも高音質を特徴とする比較的新しい方式だが、どちらも数年前から実用が始まっており、特に目新しいわけではない。それなのに最近(再び?)注目を集めているのには、ちゃんとした理由がある。それは、両コーデックが実際の製品で採用が増えているためだ。

ワイヤレスイヤホン・ヘッドホンで採用が増え始めているLDACとaptX Adaptive

ワイヤレスイヤホン・ヘッドホンで採用が増え始めているLDACとaptX Adaptive

LDACは、先日完全ワイヤレスイヤホンとしては初めてソニー「WF-1000XM4」に搭載され、今後はさまざまな製品に普及していくだろうとの予想から(実際に2〜3社の製品に搭載予定とのウワサがある)注目を高めているし、aptX Adaptiveについては、スマートフォン側の対応が進みつつあるため、実用性が高まってきた、ということだろう。

そこで今回は、

1.LDACはほかのコーデックに比べてどういった音質傾向があるのか。また不安視されている接続安定性について、実際のところはどうなのか。

2.aptX Adaptiveは既存コーデックに対して音質、遅延でどういったメリットがあるか。

という2つのテーマに絞って、LDACとaptX Adaptiveの特徴を検証していきたいと思う。

LDACの音質や接続安定性は?

まずは1.の『LDACはほかのコーデックに比べてどういった音質傾向があるのか。また不安視されている接続安定性について、実際のところはどうなのか。』という疑問から。

LDACは、ソニーが規格化したBluetoothコーデック。最大990kbpsの伝送レートを確保することで、96kHz/24bitまでの音質伝送を実現している。また、LDACのエンコーダーをソニーがフリー化したことからAndroid 8.0以降標準システム内に用意されるなど、搭載スマートフォンが一気に増えたことで普及が広まった経緯がある。いまやワイヤレスイヤホンの主流となった完全ワイヤレスイヤホンへの採用がスタートしたことから、今後は大いに活用されるコーデックとなっていくことだろう。

LDACコーデックでは、最大96kHz/24bitまでの音質伝送が可能となっている

LDACコーデックでは、最大96kHz/24bitまでの音質伝送が可能となっている

これに対して、音質面でのライバルと言われ続けてきたのが、クアルコムが提供する高品位コーデックのひとつ、aptX HDだ。こちらも数年前から実用がスタートしているコーデックで、48kHz/24bitまでの高音質伝送を実現している。(48kHz/24bit再生時に)使用しているビットレートが576kbpsとLDACに比べて低いことから、音質面では多少差が付いているともいわれているが、実際のところはどうなのだろうか。ちょうど、Shure製ヘッドホン「AONIC50」が両コーデックに対応しているため、切り替えつつ比較試聴してみた。なお、音楽再生プレーヤーには、LDACとaptX HDの両方に対応していることに加えてコーデックの切り替えが容易なAstell&Kern製のポータブルDAP(デジタルオーディオプレーヤー)「SE180」を利用した。

プレーヤーには、コーデックの切り替えが容易なAstell&Kern「SE180」を組み合わせた

プレーヤーには、コーデックの切り替えが容易なAstell&Kern「SE180」を組み合わせた

比較試聴してわかったのが、音質はもとより、サウンドキャラクターという側面でも音が異なっているということだ。LDACはとても素直な表現の音色傾向を保ち、音楽ジャンルを選ばず、どんな楽曲でもそつなくこなす懐の深さがある。解像感が高く、歪み感もほとんど感じない。Bluetoothコーデックとしては、とても優秀だといえる。

対してaptX HDは、メリハリを強調したサウンドに感じられる。空間表現は巧みで、音像のフォーカスも高いが、声や楽器のディテールがややラフな表現に思える。イコライザーを積極的に利用したかのような迫力のよいサウンドなので、Jポップなど現代音楽との相性は良好だが、アコースティック楽器の演奏では好みがわかれそうだ。また、伝送レートの差が顕著に現れるのか、解像感はLDACに対して多少劣るのも確認できた。

もうひとつ、HiFiMANのBluetoothヘッドホン「DEVA」でも試聴してみた。こちらでも基本的な傾向は似ているが、LDACのメリハリの確かさや歪み感のなさ、解像感の高さが生かされ、有線接続時とそれほど印象の変わらないサウンドを楽しむことができた。いっぽうのaptX HDも「AONIC50」に比べると荒さが抑えられ(やや高域が目立つが)文句のないサウンドとなってくれたが、解像感は相変わらず。

HiFiMAN「DEVA」を組み合わせて試聴

HiFiMAN「DEVA」を組み合わせて試聴

こういった差を自身で把握しているからこそ、クアルコムはaptX Adaptiveへの移行を押し進めているのかもしれない。LDACとaptX Adaptive、両方に対応した製品が今のところ見当たらず、直接比較ができないのは残念だ。また、LDACには「音質優先モード」と「接続優先モード」が用意されていることからわかる通り、屋外などで「音質優先モード」を利用すると音切れが頻発するなど、接続安定性に難があったりもする。どちらにも優位性があり、どちらにも難点があるので、すべての人にLDACがオススメ、とは言い難いのも確かだ。

aptX Adaptiveは既存コーデックと何が違う?

続いて、2.の『aptX Adaptiveは既存コーデックに対して音質、遅延でどういったメリットがあるか。』について検証していこう。

aptX Adaptiveは高音質のaptX HDや低遅延のaptX LLなどを統一化し、環境に応じて転送時のビットレートを自動可変しながら伝送するようにしたコーデックで、「aptX Voice」というマイク側の規格も内包されている。また、規格のスタート時はaptX HDと同じ48kHz/24bitまでの対応だったが、クアルコム社製SoC「Snapdragon 865」以降の製品では伝送レートを620kbpsまで高め、最高96kHz/24bitの音質に対応している。

近い勝手の面で大変便利になり、最新SoCでは音質面での向上も押し進められたaptX Adaptive。今年に入ってからは、さらなる進化を果たした「Qualcomm Snapdragon Sound」も発表されており、最新SoC「Snapdragon 888」「Snapdragon 865G」「Snapdragon 780G」などがそれに対応しているが、イヤホン側の対応製品の登場がもう少し先になりそうなこともあり、現在は96kHz/24bit対応のaptX Adaptiveのほうが普及期、といったところだろう。特にミドルクラスのスマートフォンなどに採用される「Snapdragon 780G」が「Qualcomm Snapdragon Sound」および96kHz/24bit対応のaptX Adaptiveをサポートしていることは、普及という点で大きな意味を持つ。

「Qualcomm Snapdragon Sound」という最新技術も発表されているが、普及するまではまだ時間がかかりそうだ

「Qualcomm Snapdragon Sound」という最新技術も発表されているが、普及するまではまだ時間がかかりそうだ

ということで、今回は特に音質面からaptX Adaptiveの優位性をチェックしてみた。検証には、完全ワイヤレスイヤホンのBang&Olufsen「Beoplay EQ」やAVIOT「TE-D01gv」と、「Snapdragon 780G」搭載スマートフォンXiaomi「Mi 11 Lite 5G」を組み合わせてみた。

ンXiaomi「Mi 11 Lite 5G」と対応イヤホンを組み合わせて検証を行った

ンXiaomi「Mi 11 Lite 5G」と対応イヤホンを組み合わせて検証を行った

スマートフォン側でコーデックを確認。aptX Adaptiveの設定は適応ビットレートを選択した

スマートフォン側でコーデックを確認。aptX Adaptiveの設定は適応ビットレートを選択した

一聴しただけで音質的には明らかな良質さを持つことが確認できた。aptX HDをさらにグレードアップにしたイメージで、解像感が高まっている。おかげで、ボーカルはリアルになり、楽器のディテールも見えるようになってきた。とはいえ、サウンドキャラクターがaptX HDに近い、ポップス向きの派手な表現であることは変わららない。ところが、イヤホンを「TE-D01gv」に替えると派手さが多少控えめになっていて、音の上質さがより伝わってくるようになった。基本的なキャラクターはあるものの、イヤホン側のチューニングによって音色傾向は変化する印象だ。

続いて、ほかのコーデックを試してみようと、開発者モードでコーデックをAACやSBCに指定してみたが、「Mi 11 Lite 5G」だと、なぜかaptX Adaptiveに戻ってしまう。仕方なく、標準で音質が選択できるOPPO「Reno A」を利用してSBCで試聴してみる。当然、解像感で明らかに差があって、音質的にaptX Adaptiveのほうが圧倒的に有利であることが確認できた。

サウンドキャラクターに多少特徴があるものの、音質面でのアドバンテージは揺るぎない。また、室内だけでなく電車内や屋外など、いくつかのシチュエーションで試聴してみたが、接続安定性が高いのか、接続有線モードへの切り替えはほとんどなく、それにともなう音質低下もそれほど不満は感じなかった。

まとめ

今回取り上げたLDACとaptX Adaptive以外にも、HUAWEIのHWAなど高音質なBluetoothオーディオコーデックはいくつか存在しているが、普及の状況と実際の使い勝手から、LDACとaptX Adaptiveの2つが中心となっていくのは間違いないだろう。そして、特に音質面では既存コーデックに戻りたくないと思わせる質のよさがある。音質重視だとLDAC、音質と接続性のバランスを考慮するとaptX Adaptiveという見方もあるが、少なくとも現在本命の2つとして並び立っているのは確かだ。これからワイヤレスイヤホンやワイヤレスヘッドホンの購入を検討している人は、製品選びの際にこの2つのどちらかのBluetoothオーディオコーデックに対応している製品をチョイスしたほうがよさそうだ。

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野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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