レビュー
1万円前後イヤホン界にインパクトを与える逸品

独自路線でダイナミック型イヤホンを突き詰めるAcoustuneからイヤーモニター「RS ONE」登場!

パッと見でそれとわかる、メカニカルな雰囲気の筐体も特徴的なイヤホンブランド「Acoustune」(アコースチューン)。……しかし、本日2021年12月10日に登場した新モデル「RS ONE」は、パッと見では同社製品とは気付きにくい、超スタンダードなスタイルのイヤーモニターです。

急にどうした!? と疑問符を浮かべながら実物をチェックしてみると……こちら、「ダイナミック型イヤーモニター(1万円前後)」クラスに激動を起こしそうな逸品でした! というわけで、「RS ONE」の速攻レビューをお届けします。

独自路線ブランドからスタンダードなイヤーモニターが登場!

2013年創設のAcoustuneは、その歴史はまだ10年にも満たない新鋭イヤホンブランドです。しかし当初から明快な個性があり、そしてその完成度を着実に高めてきたことで、現時点ですでにイヤホンファンからの評価を確立しています。

その個性とは、ひとつは「自社開発ダイナミック型ドライバーによるフルレンジ構成へのこだわり」であり、もうひとつは「ドライバーを収納する音響チャンバー部と、端子などを搭載する機構ハウジング部を完全に分離した、モジュラー構造の金属筐体」です。

特に後者「モジュラーメタルボディ」は、音響的な優位を生み出すことに加えて、巨大人型兵器のバックパックに装備されていそうなメカニカルな外観も、ブランドの認知度向上にも大きな役割を果たしたように思えます。

既存モデルの中ではエントリークラスとなる「HS1300SS」

既存モデルの中ではエントリークラスとなる「HS1300SS」

ですが、今回登場したこちらRS ONEを見てみると……

これまでとは別物!

これまでとは別物!

同社製品で象徴的なモジュラーメタルボディではありませんし、その代わりに別の個性的な筐体が採用されたのかというとそういうわけでもなく、普通にイヤーモニターな外観です。

というのもこのRS ONEは、同社のまったく新しいラインとなるステージモニターイヤホン「Monitor」シリーズの第1弾。「ユニバーサルイヤーモニターとしての使いやすさや信頼性を高めるため、イヤーモニターとしてスタンダードなフォーマットに、Acoustuneの技術やノウハウを注ぎ込んだ」といった印象のモデルになっています。

既存の定番イヤモニから乗り換えても違和感がない装着感や使い勝手は維持しつつ、音質や細部を現代的にアップデート。そんな新世代のダイナミック型イヤーモニターがRS ONEというわけです。

ということは、これまでのすぐれたイヤーモニターもそうであったように、このRS ONEもオーディオファンのリスニングイヤホンとしてもイケるはず! 今回は主にそちら、オーディオ的な視点からRS ONEの魅力をお伝えしていきます。

スタンダード→アップデート

RS ONEの特徴を、ユニバーサルイヤーモニターとしての<スタンダード>要素と、そこに施された<アップデート>要素に分けてリストアップしてみましょう。

<スタンダード>
●ユニバーサルイヤーモニターらしい素直なフィット感を備えた、ポリカーボネート樹脂製の高堅牢性ハウジング
●断線時の対応を容易にするリケーブル機構
●筐体とイヤーピースで十分に確保された遮音性
●整理され聴き取りやすい音質

<アップデート>
★カスタムシェルのノウハウの導入やハウジング構造の工夫で、フィット感も堅牢性もさらに向上
★Pentaconn Ear Long-Type端子でリケーブル端子周りの信頼性と音質を向上
★一般的な取り付けサイズの採用でイヤーピースの選択肢を豊富に
★積み上げてきたダイナミック型ドライバーのノウハウの投入で、モニタリングでもリスニングでも大満足の音質に到達

最後にあげた音質面はもちろん、全体として、オーディオ視点からもうれしい強化ばかりなのがわかります。耳にフィットして壊れにくくて騒音にジャマされにくくて音がよいんですから。

Acoustuneのノウハウが投入された筐体

それらのスタンダード→アップデート要素を、もう少し細かく確認していきましょう。まずハウジング周り。

●ユニバーサルイヤーモニターらしい素直なフィット感を備えた、ポリカーボネート樹脂製の高堅牢性ハウジング
★カスタムシェルのノウハウの導入やハウジング構造の工夫で、フィット感も堅牢性もさらに向上

やや特徴的な形状のフェイスプレートは筐体強度向上の役割も果たしているとのこと

やや特徴的な形状のフェイスプレートは筐体強度向上の役割も果たしているとのこと

パッと見た瞬間に「いかにもユニバーサルイヤーモニター」と納得のハウジング形状ですよね。材質も一般的なポリカーボネート樹脂です。この形状はイヤーモニターの歴史で磨き抜かれてこの形に落ち着いたものですし、ポリカーボネート樹脂の採用も耐衝撃、耐候、耐熱とあらゆる面での頑丈さと軽量さからの必然。大きく変える必要はありません。

そのうえでのアップデートとしてはまず、Acoustuneが「カスタムフィットシェル」で培ったノウハウを生かした、フィット感のさらなる向上があります。「カスタムフィットシェル」とは、モジュラーメタルボディ構造を利用して、ユニバーサルイヤホンの耳に装着する部分だけを、個人個人の耳型に合わせてカスタムフィット化するサービス&製品。

こちらはHS1300SS+カスタムフィットシェルST300

こちらはHS1300SS+カスタムフィットシェルST300

その実施によって得た、耳へのフィットについてのより実践的な知見が、RS ONEのハウジングの設計に生かされているとのことです。またそもそもAcoustuneには、モジュラー構造の形と金属素材の重さという難しい条件下で、装着感を地道に高めてきた積み重ねがあります。その過程で得てきたノウハウは、自然とRS ONEにも反映されているのではないでしょうか。何にせよ実際、RS ONEのフィット感は快適です。

なおカラバリは、どちらもセミトランスペアレントで、グラファイトとティールの2色が用意されています。

ブラック感強めのグラファイト

ブラック感強めのグラファイト

クリアに近い爽やかさも感じさせるティール

クリアに近い爽やかさも感じさせるティール

CRTモニター時代のiMacのグラファイトとボンダイブルーをちょっと思い出しますが、同じ半透明でも、iMac的なそれは主張し目立つための半透明。こちらはステージで主張せず、目立たないための半透明といったところでしょうか。

ベターではなくベスト! な、リケーブル端子を採用

続いてはリケーブル端子周り。

●断線時の対応を容易にするリケーブル機構
★Pentaconn Ear Long-Type端子でリケーブル端子周りの信頼性と音質を向上

ハウジング側のジャック周囲は凹形状

ハウジング側のジャック周囲は凹形状

プラグ側は凸形状。耳周りはいわゆる「針金」ではなく、樹脂カバーです

プラグ側は凸形状。耳周りはいわゆる「針金」ではなく、樹脂カバーです

ユニバーサルイヤーモニターでのリケーブル端子の主流「MMCX」は、元々はほかの用途向けに作られた既存端子の流用です。イヤホンのサイズに搭載できる端子として「既存の中ではこれがベター」ということで選ばれたものと思われます。

対して本機が採用する「Pentaconn Ear」は、リケーブル用として近年開発され策定された専用端子。「リケーブル用としてベストな端子を新規に作った」わけです。MMCXとの比較で「より密接に接触し、伝導性能にすぐれ、脱着の容易性と堅牢性の両立も実現」と明確にうたわれています。

加えてRS ONEが採用する「Long-Type」別名「異形」端子は、埋め込み型的な形状も採用。汗などの侵入による接触不良リスクも低減しています。リケーブル専用設計の端子だから音質面での優位があるし、長期使用での耐久性も期待できる! ということですね。

ちなみにモジュラーメタルボディの現行モデルは、Pentaconn Earの標準型であるShort-Typeを採用。

写真上がShort-Type。プラグ周囲にLong-Typeのような凸形状はありません

写真上がShort-Type。プラグ周囲にLong-Typeのような凸形状はありません

Short-TypeとLong-Typeの互換性は、
●ケーブル側Longプラグ/イヤホン側Shortジャック→接続できるがLongプラグ側の埋め込み部分が露出してしまう
●ケーブル側Shortプラグ/イヤホン側Longジャック→接続できない
……といった感じになります。

イヤーピースでのフィット&音質調整の幅が広い

イヤーピース周りの仕様は、オーディオファン目線からは特にうれしい部分と言えます。

●筐体とイヤーピースで十分に確保された遮音性
★一般的な取り付けサイズの採用でイヤーピースの選択肢を豊富に

ユニバーサルイヤーモニターを代表するShureとWestoneの製品はいずれも、イヤーピースの取り付け軸となるステム部分の径が細いタイプ、いわゆる「細軸」です。細軸には「耳の穴が極端にせまい人にもフィットさせやすい」「フォーム素材イヤーピースを使う場合、軸の細さの分だけフォームを厚くできるので遮音性の面で優位」などのメリットがあります。ですが、趣味のオーディオ的には「細軸用イヤーピースはサードパーティー製品の選択肢が少ない」というのが弱点。

Shure SE215は細軸

Shure SE215は細軸

対してRS ONEは、カナル型イヤホンでの「よくあるサイズと形のステム」を採用。付属の標準イヤーピースも、同社のシリコン材「AET07」とフォーム材「AET02」を採用。モジュラーメタルボディシリーズとも共通する、一般的な取り付けサイズのものです。

RS ONEは普通の太さ

RS ONEは普通の太さ

ですから同社のイヤーピース諸々との互換性は当然、無数の他社製イヤーピースも交換の選択肢に入ります。イヤーピースによるフィット感と音質の調整の選択肢が広い!というのは、大きなメリットです。

ダイナミック型の扱いの巧さは、さすがAcoustune!

最後により直接的に音質に関わる部分。

●整理され聴き取りやすい音質
★積み上げてきたダイナミック型ドライバーのノウハウの投入で、モニタリングでもリスニングでも大満足の音質に到達

ドライバーは、同社がこだわり開発し続けてきた独自ダイナミック型ドライバーの新タイプ、9.2mm口径「ミリンクスELドライバー」です。

「ミリンクス」は人工皮膚などに使われる医療用樹脂。軽量! 高剛性! 内部損失大!と、音響特性にもすぐれることから、Acoustuneは振動板素材としてこれを活用してきました。その振動板素材は継承しつつ、ステージモニター用として設計されたのが「ミリンクスELドライバー」というわけです。たとえば振動板の背面に大きな空気容量を確保し、ステージユースでの突発的な大入力にも耐える高耐入力性を実現! といったところがステージユースを想定した設計となります。

……とか言われても、「それオーディオリスナーには関係なくない?」って感じでしょうか? でも実は、耐久性重視で振動板のストローク幅を大きめに確保したことで、いわく「ラウドスピーカーさながらのライブ感がありながらも、イヤモニの正確さが共存したサウンド」も実現されていたりするんです。普通にうれしい! ダイナミック型ドライバー開発に注力し続けてきたAcoustuneですから、そこも「結果的に一石二鳥」ではなく「ねらい撃ちでの一石二鳥」なのでしょう。

ドライバー周りでは、振動板口径9.2mmを確保しつつ遮音性や装着感もバランスよくハイレベル! というのも、注目に値するポイントかもしれません。ダイナミック型イヤーモニターの設計では、振動板の口径を大きくすると振動板の頑強さが不足して、ハウジング内の空気圧に負けがちだから、空気圧を抜くために通気口を開ける……と、遮音性が下がりがちだから、通気口を開ける代わりにハウジングを大柄にして空気容量を増やす……と、今度は装着感が……というせめぎ合いが起きます。

そのせめぎ合いの中でRS ONEは、振動板口径、遮音性、装着感をバランスよく兼ね備えている印象です。

良質なアタックによる明確なリズムとナチュラルな音色

では、いよいよそのサウンドについて。

帯域バランスのクセは皆無です。ハイエンドオーディオ的な超ワイドレンジにまではいたりませんが、そのほんの手前にまで迫る十分なワイドレンジを確保。そのうえで、その広い帯域幅の中のどこにも目立った凹凸はなく、どんな曲を聴いても、ベースがふくらむだとかシンバルが尖るだとか、特定の帯域や楽器にアクセントが付いてしまうことがありません。

強いて言えば、完璧にフィットして密閉度の高いイヤーピースで聴くと、エレクトリックベースの太さあたりの帯域が少し強まるかもしれません。ですが逆に言えば、そのあたりはイヤーピース選択で調整できるということです。

音像のクリアさ、明確さもポイント。たとえばドラムに耳を向けると、低音側でのバスドラムのドンッ!や、高音側でのハイハットシンバルのチッ!の、アタックの瞬間の「ド」「チ」がくっきり! それでいてそのアタックに不自然な鋭さや硬さはなく、楽器として自然な音色のまま。見事なアタック描写です。

このように上質なアタックは、イヤーモニターとしてはリズムや音色の把握をより確かなものとしてくれますし、リスニングでもグルーヴをより豊かに届けてくれます。生楽器によるリズムセクションはもちろん、エレクトリックビートのキレも映えますよ。

エレクトリックなサウンドといえば、低音側の再現性も現代の重低音に十分に対応してくれるものを確保。クラブサウンドのベースやバスドラムを聴いても、アタックの瞬間の音圧に負けて音が崩れたり、超低域成分が不自然にローカットされてしまったりといった様子はありません。このイヤホンは十分な振動板口径とストローク幅のドライバーと、そのドライバーがポテンシャルを発揮できる環境を備えている。それを実感できます。

イヤーモニターとしての密閉度を確保しつつ、エレクトリックにせよアコースティックにせよ、音を広く配置した空間表現にもまったく不足を感じないのもうれしいところです。

そして最後に、当然ですが、ボーカルの感触や表現力も万全! たとえば前述の明瞭で上質なアタックのおかげで、ボーカルの子音の感触も同じく明瞭で上質。サ行やタ行などの子音が妙に目立ちすぎることはありませんし、だからこそ歌い手があえて子音を鋭く出した場面ではその音がしっかり目立ちます。

イヤーピース交換の効果も素直に発揮

先ほど少し触れましたが、元のバランスや音調が整っていてクセが少ないことで、イヤーピース交換による調整効果も素直に出てくれる印象です。付属品含めて手近にあった主にシリコン系素材のイヤーピースをいくつか試してみた印象としては……

下段が付属品&同社製品のAET07、AET08、AET02、中段上段は他社製品

下段が付属品&同社製品のAET07、AET08、AET02、中段上段は他社製品

<付属純正品>
●AET07:内径中程度/音導部硬め。これを装着した際の音を基準として以下のイヤーピースをチェック。

<同社製単品製品>
●AET08:内径小さめ/音導部硬め。中域から低域の厚みを増すとの説明だが、筆者の耳にはサイズと形状的にフィットせず、全体にAET07のほうが良好。

<他社製品>
●SednaEarfit:ハイもローも伸びてやや大柄な音像でパワフル!
●SednaEarfit Light:Sedna無印のゴツゴツ骨太のパワフルさに対して、こちらはしなやかなパワフルさ。
●SednaEarfit XELASTEC:音のエネルギーを大柄に広げる感じの無印に対して、エネルギーを拡散させずよりストレートに送り出してくる。
●final TYPE E:低音楽器の重心が少し上がってきて、ベースなどにもっちりと太い感触が生まれる。
●JVCスパイラルドット:音像の明確さやダイレクト感は少し甘くなるが、少しウェットな感触や広がりのよさは好印象。

個人的には標準 of 標準のAET07がいちばんしっくり。ですが、どれと組み合わせてもバランスや音調が大きく崩れることはありませんので、実際に購入した際には幅広くお試しを。

ダイナミック型イヤーモニターの定番となり得るか?

さて、これだけの力を備えるとなれば、Acoustune「RS ONE」はダイナミック型イヤーモニターの超定番Shure「SE215」と並ぶ定番になり得るのでしょうか?

業務用途においては、SE215には「実績」という圧倒的な優位があります。業務製品に求められるのは「現時点で最高の性能」だけではありません。「現時点までに実証された性能」や「将来的にも安心して使い続けられる継続性」も重要視されます。「実際に数年使い込んでるけど本当に音が聴き取りやすいし故障もしなかった」とか「昔からずっと販売され続けているから、いつか壊れてしまっても同じものを買い直せるだろうし、数が足りなくなれば買い足せるだろう」みたいなことですね。

SE215は今年2021年に発売10周年を迎えました。上記の諸々について10年積み上げてきた実績があります。ですので、業務用途でのその優位はそう簡単には揺らがないことでしょう。

ですがRS ONEの優秀さに触れれば、「まずはお試し」と考えるユーザーは少なからず出てくるはず。そこを起点に地道に実績を積み続けていけば、業務市場での成功、定番化も十分ありうるのではないでしょうか? RS ONEからはそのポテンシャルが感じられます。

プロユースとかさておきイヤホンファンとしては……最高!

さて業務用途云々はさておき、我々オーディオファンの視点からはどうでしょう? 趣味的な観点からだと、「現時点までに実証された性能」みたいな話よりも「現時点での最高!」のほうが魅力的だったりしませんか?

そしてRS ONEはまさに「1万円前後のダイナミック型イヤーモニター」というジャンルにおいての「現時点での最高!」を叩き出してくれています。

というかこのRS ONE、「イヤーモニター」「ダイナミック型」のくくりを外した「1万円前後のイヤホン」全体にも大きなインパクトをもたらすであろう仕上がり! ぜひチェックしてみてほしいアイテムです。

高橋敦

高橋敦

オーディオ界隈ライター。現在はポータブルやデスクトップなどのパーソナルオーディオ分野を中心に、下からグイッとパンしていくためにてさぐりで活動中。

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