レビュー

どっちを選ぶ? final完全ワイヤレスイヤホン「ZE2000」「ZE3000」をじっくり聴き比べ

finalから7月22日に発売された完全ワイヤレスイヤホン「ZE2000」は、昨年発売された「ZE3000」のバリエーションモデルという位置づけの製品だ。塗装やカラーリングが変更になっただけで、イヤホン本体や専用ケースのデザインといった外観はほぼ同じ、搭載されているドライバーユニットにも変更はないが、サウンドチューニングが変わっている。そのため、どちらの製品を選ぶのがベストなのか、ユーザーにはわかりづらい部分もある。そこで今回は、「ZE2000」「ZE3000」に共通する特徴を紹介しつつ、それぞれの違いや個性にフォーカスして、“自分にとってどちらを選ぶのがベストか”、見分け方(聞き分け方)の指針を提案させていただこうと思う。

final「ZE3000」(写真左)と「ZE2000」。市場想定価格は、「ZE3000」が15,800円前後、「ZE2000」が14,800円前後だ

final「ZE3000」(写真左)と「ZE2000」。市場想定価格は、「ZE3000」が15,800円前後、「ZE2000」が14,800円前後だ

ハードウェア的な差はほとんどないが、チューニングによる“音色”の差はしっかり感じられる

まずは共通部分か解説していこう。「ZE2000」「ZE3000」は、音質に強いこだわりを持つオーディオメーカーとして有名なfinalが、最新の音響工学や音響心理学の研究成果を踏まえて音質設計を行った完全ワイヤレスイヤホンだ。音質を最優先するため、専用のドライバーユニットをゼロから開発し、あえてアクティブノイズキャンセリング機能や外音取り込み機能を省くなど、ある意味とてもストイックなコンセプトをもつ製品に仕立てられている。

実際、搭載されているケース一体型の新設計ドライバーユニット「f-Core for Wireless」はかなり特徴的だ。口径6mmのダイナミック型というスペックは完全ワイヤレスイヤホンとしては一般的だが、振動板に軽さと硬度をあわせ持つ特殊樹脂を採用し、さらにエッジ部分にはきわめて柔軟な特殊シリコンをチョイス。6mm口径でありながら、9mm口径に相当する振動板面積を確保しているという。さらに、特殊シリコンエッジと振動板の結合には接着剤を使わず、熱圧着を行うことによって製品のばらつき低減や重量軽減を実現。音の歪みの低減にも大きく貢献しているという。

「ZE2000」「ZE3000」に搭載されているケース一体型の新設計ドライバーユニット「f-Core for Wireless」

「ZE2000」「ZE3000」に搭載されているケース一体型の新設計ドライバーユニット「f-Core for Wireless」

加えて、筐体内部には音響空間の圧力を最適化し、筐体外部へのベントなしで有線イヤホンと同等の音響設計を可能にする「f-LINKダンピング」機構を搭載。これによって、完全では実現が難しかった低域のコントロールを適切に行うことができるようになり、近い距離感のボーカルや質感のよい低域表現を実現しているという。実際、このシステムは完全ワイヤレスイヤホンだけでなくイヤホン全般にとっても理にかなった構造といえる。簡単に説明すると、内部の圧力を最適化するベントと呼ばれる部分がドライバー型、ノズルにつながっている部分に設けられているため、機能面では(装着時に)音漏れも水の侵入も防げるようになっている。「ZE2000」「ZE3000」の防水性能はIPX4と数値的には控えめ、最新の完全ワイヤレスイヤホンの中ではごく一般的な(それでも突然の雨やちょっとした汗などに心配する必要のない)レベルだが、“音質をまったく犠牲にせず”音漏れなく防滴性能もしっかり確保されているのは、使い勝手の面でも大いに貢献してくれるうれしいポイントだ。

もうひとつ、「ZE2000」「ZE3000」共通の特徴でありユーザーに好評を得ているのが、装着感のよいイヤホン本体のデザインだ。こちら、「A8000」や「Bシリーズ」など、同社の有線イヤホンでも採用されている形状で、イヤーチップと耳のポケット部分、耳珠の3か所で支えることで、高いホールド性と装着時の快適性を巧みに両立したもの。一般的な完全ワイヤレスイヤホンはイヤーチップの部分のみでホールドさせているものが多く、長時間使用していると耳穴あたりが痛くなってしまうことがあるが、「ZE2000」「ZE3000」は、3角形に結ばれた接地ポイントによって圧力を分散することで、しっかりとしたホールドを保ちつつ、それぞれにかかる圧力を低減している。実際、今回の取材で長時間(のべ半日ほど)試聴してみたが、耳への負担がほとんどなく、疲労を感じることはまったくなかった。これだけでも、大きなメリットといえるだろう。

「ZE2000」のイヤホン本体。イヤホン本体の特徴的な形状が、高いホールド性と装着時の快適性に大きく寄与している。付属のイヤーピースは、「TYPE E 完全ワイヤレス専用仕様」で、パッケージには5サイズが付属する

「ZE2000」のイヤホン本体。イヤホン本体の特徴的な形状が、高いホールド性と装着時の快適性に大きく寄与している。付属のイヤーピースは、「TYPE E 完全ワイヤレス専用仕様」で、パッケージには5サイズが付属する

コンパクトなイヤホン体は耳にすっと収まり、パッシブなノイズアイソレーションも良好

コンパクトなイヤホン体は耳にすっと収まり、パッシブなノイズアイソレーションも良好

デザインに関しては、タッチ操作の確かさも好印象だ。これはシンプルな話で、タッチ操作を行うフェースプレート部分に角度があり、そのうちの狭い部分のみ操作を行えるようになっていることにより、装着や着脱時に誤って触れてしまい、意図せぬ操作をしてしまう可能性が大きく低減されている。ちょっとした工夫だが、ユーザーとしてはなかなかうれしい配慮の仕組みだ。

写真のピンク色の部分のみタッチセンサーになっており、誤タッチが起こりにくくなっている

写真のピンク色の部分のみタッチセンサーになっており、誤タッチが起こりにくくなっている

このほかにも、片耳モードやオートペアリング、イヤホン本体で最大7時間(専用ケースを含めて最大35時間)の再生時間など、「ZE2000」「ZE3000」は必要十分な機能性を持ち合わせている。環境的にアクティブノイズキャンセリングが絶対必要、という人以外には満足できる機能性だといえる。

さて、ここからは「ZE2000」「ZE3000」両者の違いをチェックしていこう。まず外観についてだが、デザインはまったく同じものになっている。装着感のよいイヤホン本体も、比較的薄型で手に持った時の収まりがよい専用ケースともに外観に違いはない。ただし、塗装のフィニッシュは少々異なっていて、「ZE3000」は一眼レフカメラのようなシボ塗装を採用、いっぽうの「ZE2000」はマッド塗装仕上げとなっている。「ZE3000」のほうがやや上質に感じられるが、あくまでも好みの範疇だろう。また、カラーバリエーションも「ZE2000」はマットブラックとアッシュグレイ、「ZE3000」はブラックとホワイトと微妙に異なっている。特に「ZE2000」のアッシュグレイは、落ち着きのある、ほかに類のない絶妙な色合いに好印象を持った。

「ZE3000」は高級感のあるシボ塗装が、「ZE2000」はシンプルで落ち着きのあるマッド塗装を採用

「ZE3000」は高級感のあるシボ塗装が、「ZE2000」はシンプルで落ち着きのあるマッド塗装を採用

専用ケースはサイズはまったく一緒だが、イヤホン同様に塗装が異なる

専用ケースはサイズはまったく一緒だが、イヤホン同様に塗装が異なる

とはいえ、両者の違いで最も肝心なのはサウンドキャラクターの違いだろう。ともにaptX Adaptive(48kHz/24bit)に対応しているため、今回はXiaomi「Mi 11 Lite 5G」を使って音色傾向の違いを確認してみた。

まずは「ZE2000」から。一聴したとたん、基礎体力の高いサウンドに驚かされる。ハイレゾ級の音質を確保しているaptX Adaptiveとはいえ、解像感の高さ、ディテール表現の細やかさ、音場的な広がり感など、完全ワイヤレスイヤホンとしては別次元のクオリティを持ち合わせている。また、メーカーのアピールどおり、フロントラインの距離が近い。おかげで、女性ボーカルは伸びやかな、男性ボーカルも朗々とした実体感のあるディテール豊かな歌声を楽しませてくれる。どのアーティストもほんの少し鼻にかかったような歌声にも感じられるが、総じて聴き心地のよい歌声だ。

いっぽう、楽器の伴奏は、左右はもちろん前後にも十分に広がっていて、お互いのディテールを潰し合うこともないため、音数が多い、それでいてまとまりのある演奏を聴かせてくれる。サウンドキャラクターというか、帯域バランスについては両者でわずかに異なる特徴を持っていて、この「ZE2000」は基本中域重視でありつつ、低域がやや強めの印象。おかげで、落ち着きのある、同時に迫力のあるサウンドだ。

それに対して「ZE3000」はというと、ニュートラルという表現がぴったりなバランス。低域は必要十分な量感があり、ローエンドに関しては「ZE3000」のほうが量感あるんじゃないかという印象さえあるが、全体的にはバランスのよいサウンドに感じられる。いっぽうで、女性ボーカルはヌケのよさも艶やかな表現についてもこちらのほうが一枚上手で、魅力にあふれる歌声が存分に楽しめる。男性ボーカルも、オーイシマサヨシなどハイトーンな声の人はこちらがピタリと合う。さらに、高域チューニングの恩恵か、音色のクリアさが向上していて解像度感が一段と高まり、音場の広がりもさらに広がっている。比較してよくよく聴いてみると、実際の解像度、ディテール表現は両者でほとんど変わらないため、あくまでもチューニング違いによる印象の差なのだろう。まさに、音響心理学恐るべし。finalのチューニング能力の高さを感じさせられる一面だ。

実はこういった“音色違い”のイヤホンはfinalと得意とする手法であり、過去にもさまざまな製品で姉妹モデルが作られている。今回の「ZE2000」「ZE3000」は、その中でも「E2000」「E3000」の関係に近い。結果としては、純粋に音の好み次第でどちらを選ぶか、決めるのがよさそうだ。具体的には、以下のようなイメージだ。

・ZE2000
特にJポップやハードロックとの相性がよい。迫力がほしい、または高域の落ち着いた音色のサウンドを楽しみたい人に。

・ZE3000
オールラウンダー。クセのない帯域バランスが好み、または女性ボーカル系をよく聴く人に。

「ZE2000」と「ZE3000」を比較試聴していみたが、改めて両モデルの完成度の高さに驚いた。ぜひ両者を比較試聴し、自分の試聴する楽曲に合わせて好みの製品を選んでみてほしい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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