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一度は聞いていただきたい! 密閉型スピーカーの名門、クリプトンの中核モデル「KX-3SX」

クリプトンが2ウェイ密閉型スピーカー「KX-3SX」を2022年10月上旬に発売する。希望小売価格はペアで437,800円(税込)。「KX-3」シリーズとして第6世代に当たり、従来モデル「KX-3Spirit」からの主立った変更点は内部配線材を変更したこと。“「コアテクノロジー」と「ニューテクノロジー」の融合”を果たしたのが「KX-3SX」であるという。

「KX-3SX」はシリーズの6世代目モデル。クリプトンは日本のスピーカーメーカーであり、組み立てなどの製造を「メイド・イン・ジャパン」とすることにこだわりを持っている

「KX-3SX」はシリーズの6世代目モデル。クリプトンは日本のスピーカーメーカーであり、組み立てなどの製造を「メイド・イン・ジャパン」とすることにこだわりを持っている

「KX-3SX」の主要スペックは以下のとおり。

●2ウェイ2スピーカー密閉型
●使用ユニット:35mmリング型ツイーター、170mmコーン型ウーハー
●クロスオーバー周波数:3.5kHz
●出力音圧レベル:87dB/W/m
●インピーダンス:6Ω
●再生周波数帯域:40Hz〜50kHz
●寸法:幅224×高さ380×奥行319mm
●質量:10.8kg

従来製品からの変更点、つまり「ニューテクノロジー」の部分は既発売モデル「KX-5PX」と基本的に同じ内容だ。本体背面のスピーカー端子からウーハー/ツイーター各ユニットまでの配線材として同社のスピーカーケーブル「SC-HR1500」/「SC-HR1300」を使い、音質向上を図った。そのほか、エンクロージャーに「ワンダーローズつき板」を使い、つき板の厚みを従来よりも増している。

「KX-3SX」では内部配線材を改め、最終的にエンクロージャー内の吸音材「ミスティックホワイト」(ポリエチレン系のフェルト素材)とウールの配置も再調整。トータルで音質のバランスをとったという

「KX-3SX」では内部配線材を改め、最終的にエンクロージャー内の吸音材「ミスティックホワイト」(ポリエチレン系のフェルト素材)とウールの配置も再調整。トータルで音質のバランスをとったという

人の声を大事に伝える、“過不足ない”スピーカー

このようにお伝えするとマイナーアップデートのように見えるが、クリプトンのスピーカーは確固たるコンセプト「コアテクノロジー」を持ち、熟成を重ねることで品質を磨き上げてきた経緯がある。今回もそれを着実に積み重ねたアップデートであり、「KX-3SX」を試聴すると、ダイナミックレンジの広いクラシックからヴォーカルの入ったポップスまで、過不足なく再生してくれるスピーカーだと強く感じられた。

クリプトンのスピーカーで特に感心するのは、ヴォーカルの入った楽曲を再生するとき。クリプトンラボでかかる定番曲、ダイアナ・クラールの「California Dreamin’」では、よい声の人の歌を、よい音で聞けているなぁ、と毎回思わされるのだ。

厚みを感じさせる声、空間に漂うリバーブ成分の細かさ、タイトな低域再現、これはデスクトップ用の小型アクティブスピーカー「KS」シリーズでも共通しているクリプトンの美点だ。これらはクリプトンスピーカーの設計者、渡邉勝氏が「人の声の帯域を大事にしている」と話すとおりの結果であり、「コアテクノロジー」が結実したものでもある。

クリプトンのオーディオ事業部事業部長、渡邉勝氏。コーラル、ビクターを経てクリプトンに参加した「KX-3SX」などの設計者だ

クリプトンのオーディオ事業部事業部長、渡邉勝氏。コーラル、ビクターを経てクリプトンに参加した「KX-3SX」などの設計者だ

クリプトンの「KX」シリーズは現在5製品。「コアテクノロジー」とコンセプトが貫徹されているのは「KX-3SX」以上の製品。その意味でも「KX-3SX」はブランドの中核と言える。「KX-1.5」「KX-0.5II」といった弟モデルたちも、コンセプト自体はもちろん共通。ただし、ウーハー素材などに違いがある

クリプトンの「KX」シリーズは現在5製品。「コアテクノロジー」とコンセプトが貫徹されているのは「KX-3SX」以上の製品。その意味でも「KX-3SX」はブランドの中核と言える。「KX-1.5」「KX-0.5II」といった弟モデルたちも、コンセプト自体はもちろん共通。ただし、ウーハー素材などに違いがある

「KX-3SX」のスピーカー端子はバイワイヤリング対応。クリプトンは、ウーハーからの逆起電流がツイーターに回り込むことを嫌い、バイワイヤリングを推奨している。そこで、「KX-3SX」と同時に発表されたのは1本のケーブルでバイワイヤリングが可能な4芯ケーブル「SC-HR2020」

「KX-3SX」のスピーカー端子はバイワイヤリング対応。クリプトンは、ウーハーからの逆起電流がツイーターに回り込むことを嫌い、バイワイヤリングを推奨している。そこで、「KX-3SX」と同時に発表されたのは1本のケーブルでバイワイヤリングが可能な4芯ケーブル「SC-HR2020」

「アルニコ」「密閉型」「クルトミューラー」がクリプトンの「三種の神器」

ここで、改めてクリプトンの「コアテクノロジー」を紹介したい。クリプトンのスピーカーが「コア」として重視するのは「アルニコマグネット磁気回路」「密閉型エンクロージャー」「170mm径クルトミューラー製コーン型ウーハー」。これらを「三種の神器」になぞらえて、主要スピーカーを展開している。

「アルニコマグネット磁気回路」とは、ウーハー、ツイーターの磁気回路にアルニコマグネットを採用すること。一般的に使われるフェライトマグネットと比べてとても高価だが、理想の実現のためにはどうしても必要になるそうだ。アルニコの特徴としては漏洩磁束が少ないことなどがあげられるが、最終的にアルニコのよさは「トランジェント」つまり音の立ち上がり/下がりのよさに表れると渡邉氏は言う。

次に、「密閉型エンクロージャー」とは、文字通りエンクロージャーが密閉されていること。現在のスピーカーシステムの主流は低域再生能力を伸ばした「バスレフ型」だと言えるが、クリプトンが「KX」シリーズで採用されるのは一貫して密閉型だ。これはバスレフ型のスピーカーの最低域に「無制動領域」ができることを嫌うから。意図せず勝手に動いたユニットが発する低音は本来音楽に含まれているものではないと考え、ピュアな音楽再生のためには密閉型であるべし、としているのだ。密閉型で難しいエンクロージャー内でのユニット背圧の対応は、吸音材で処理する。

左が「KX-3SX」。背面まで含めてつき板が貼られているうえ、平らに仕上げられている。一般的なスピーカーでは右のように背面に板の断面(木口)が見えたり、段差になっていたりすることがある。このあたりもクリプトンのこだわりのひとつ

左が「KX-3SX」。背面まで含めてつき板が貼られているうえ、平らに仕上げられている。一般的なスピーカーでは右のように背面に板の断面(木口)が見えたり、段差になっていたりすることがある。このあたりもクリプトンのこだわりのひとつ

最後に、「170mm径クルトミューラー製コーン型ウーハー」とは、ドイツのクルトミューラー社製ウーハーユニットを搭載すること。口径は基本的に170mm。このユニットは渡邉氏がビクターに在籍していたころに設計した「SX-3」にも使用していたもので、まったく設計が変わっていないという。「SX-3」は250mm径だったが、現在はそれをクリプトンでトリミングし、170mmユニットとして使っている。ビクターには「SX-500」という200mmウーハーモデルも存在した。ビクターでの250mm→200mmを経て、クリプトンでの170mmという三段階で、余計な補強をせずに強度を得られる理想的な状態にたどり着いたそうだ。

また、170mmというサイズは“ロクハン”(6インチ半=約165mm)に近いことも重要だという。これが冒頭の「人の声」の重要性につながる。人の声の帯域でクロスオーバーポイントをつくらず、ウーハーがしっかりと音楽再生に必要な基本的な帯域をすべて受け持てるように設計する。それが自然な、ウェルバランスな音につながると考えているのだそうだ。「KX-3SX」のクロスオーバー周波数は3.5kHz(3.5kHz以上の音をツイーターが担当する)。人の出す声の最高域が2kHz程度以下だとすれば、渡邉氏が考える重要帯域はすべてウーハーが担当していることになる。

紫色のユニットが「170mm径クルトミューラー製コーン型ウーハー」。170mmよりも口径が大きくなれば低域の再生限界は広がるが、高域は再生しづらくなる。口径が小さくなればその逆。170mmならば、「人の声」の帯域をユニットひとつでカバーできるという。素材はパルプであり、プレスしていない繊維が三次元的に絡み合うことで強度が生まれる

紫色のユニットが「170mm径クルトミューラー製コーン型ウーハー」。170mmよりも口径が大きくなれば低域の再生限界は広がるが、高域は再生しづらくなる。口径が小さくなればその逆。170mmならば、「人の声」の帯域をユニットひとつでカバーできるという。素材はパルプであり、プレスしていない繊維が三次元的に絡み合うことで強度が生まれる

ウーハーの上に設置されているのは35mm口径のシルク素材リング型ツイーター。一般的なドーム型では、形状効果によって高域再生時に頂点部と周辺部が逆位相で駆動してしまい、フラットな特性が得られなくなってしまうという。そこでおよそ15kHz以上で中央だけが動く“メカニカル2ウェイ”構造としたのがこの形。中央には砲弾型のイコライザーを付けて、50kHzまでのフラットな特性が得られたとする

ウーハーの上に設置されているのは35mm口径のシルク素材リング型ツイーター。一般的なドーム型では、形状効果によって高域再生時に頂点部と周辺部が逆位相で駆動してしまい、フラットな特性が得られなくなってしまうという。そこでおよそ15kHz以上で中央だけが動く“メカニカル2ウェイ”構造としたのがこの形。中央には砲弾型のイコライザーを付けて、50kHzまでのフラットな特性が得られたとする

クリプトンのスピーカーの魅力は、扱いやすさにもある

自然な音を目指し、「低域再生限界が35Hzの“ロクハン”ユニットを使って、エンクロージャーに入れた時に50Hzまでの低音をしっかり再生できるスピーカーをつくる」ことは渡邉氏がオーディオ業界に入ったころからの目標だったそうだ。それがクリプトンのスピーカーコンセプトに通じている。

さて、真剣にクリプトンのスピーカー購入を考えるにあたって、気になる点があるとすれば、「どれくらい低音がでるのか?」ではないか。この点、渡邉氏もはじめから「重低音」は目指していないと割り切っている。それを求めるマニアはほかのメーカーの製品を選んでください、ということだろう。ただし、ここで言う「重低音」とは一般感覚で言う「低音」とは異なることに気をつけるべきだ。

はじめに「タイトな低域再現」と書いたが、まさに家庭で求められる分には過不足がないという意味。40Hz以下の重低音がさらりと出てしまうスピーカーを購入するとなれば、その低音の処理(主に部屋での吸音)に苦労するだろう。スピーカー選びでは、環境との折り合いもとても重要なポイントだ。

日本の住宅事情を考えれば、あまり大きな音を出せない場合も多いはず。その意味では、クリプトンのスピーカーはどれも扱いやすい。クリプトンは製造工程について「メイド・イン・ジャパン」にこだわるブランドとして知られる。そのこだわりは、“図らずも”なのかもしれないが、日本の住環境になじみやすい製品を生み出しているのだ。また、バスレフ型スピーカーの「バスレフポート」がスピーカー背面にある場合、壁際に置くと壁の影響を受けやすいことにも留意したい。密閉型ではそもそもその心配はいらない。

以下にはクリプトンのスピーカーたちを紹介する。どれも安価ではないが、価値ある製品であることは間違いない。聞いてみれば多くのバスレフ型スピーカーとの音の違いはすぐにわかるはず。あとはそれが気に入るか、自宅にフィットするか、ぜひ一度検討していただきたい。

「KX-0.5II」は140mm径の小型ウーハーユニットを搭載するシリーズ最小モデル。口径だけでなく設計も異なり、コーン素材は「カーボンポリプロピレン」(CPP)。CPPとは、ポリプロピレンに存在する孔(あな)部分にカーボンを入れて剛性を稼いだ素材。紙に近い内部損失を得られるという。マグネットについては磁気回路のギャップを広げた「アルニコライク」フェライト磁気回路を採用する

「KX-0.5II」は140mm径の小型ウーハーユニットを搭載するシリーズ最小モデル。口径だけでなく設計も異なり、コーン素材は「カーボンポリプロピレン」(CPP)。CPPとは、ポリプロピレンに存在する孔(あな)部分にカーボンを入れて剛性を稼いだ素材。紙に近い内部損失を得られるという。マグネットについては磁気回路のギャップを広げた「アルニコライク」フェライト磁気回路を採用する

「KX-1.5」以上のモデルではウーハー口径が170mm。CPPのコーン素材やアルニコライクフェライト磁気回路の採用は「KX0.5II」と同じ

「KX-1.5」以上のモデルではウーハー口径が170mm。CPPのコーン素材やアルニコライクフェライト磁気回路の採用は「KX0.5II」と同じ

2ウェイブックシェルフ型の最上位モデルが「KX-5PX」。「KX-3SX」の要素技術はこの製品から受け継がれている。もちろん、クリプトンの「三種の神器」がすべて揃う

2ウェイブックシェルフ型の最上位モデルが「KX-5PX」。「KX-3SX」の要素技術はこの製品から受け継がれている。もちろん、クリプトンの「三種の神器」がすべて揃う

「KX-1000P」は、クリプトンとしては異例のフロアスタンディング型モデル。上2つと下2つのユニットのエンクロージャーは内部的に独立しており、2ウェイスピーカー+サブウーファーという構成だと言える。低域再生能力を伸ばしたスピーカーだが、サブウーファー部もやはり密閉型。クリプトンのコンセプトは堅持される

「KX-1000P」は、クリプトンとしては異例のフロアスタンディング型モデル。上2つと下2つのユニットのエンクロージャーは内部的に独立しており、2ウェイスピーカー+サブウーファーという構成だと言える。低域再生能力を伸ばしたスピーカーだが、サブウーファー部もやはり密閉型。クリプトンのコンセプトは堅持される

柿沼良輔(編集部)

柿沼良輔(編集部)

AVの専門誌を編集して10年超。「(デカさ以外は)映画館を上回る」を目標にスピーカー総数13本のホームシアターシステムを構築中です。映像と音の出る機械、人が一生懸命つくったモノに反応します。

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