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1500万円のスピーカーは何が違うのか? DALIのハイエンドモデル「KORE」を聞く

デンマークのスピーカーメーカーDALI(ダリ)が同社初の超高級モデルとして「KORE(コア)」を発売する。希望小売価格はペアで1650万円(税込)。製品は受注生産で、2022年10月26日から受付が開始される。

DALIの新フラッグシップモデル「KORE(コア)」

DALIの新フラッグシップモデル「KORE(コア)」

「KORE」の主な仕様は以下のとおり。

●4ウェイ5スピーカーバスレフ型
●使用ユニット:11.5インチコーン型ウーハー×2、7インチコーン型ミッドレンジ、35mmドーム型ツイーター、10×55mmリボン型ツイーター
●クロスオーバー周波数:390Hz、2.1kHz、12kHz
●インピーダンス:4Ω
●出力音圧レベル:88dB/2.83V/m
●周波数特性:26Hz〜34kHz(±3dB)
●寸法:448(幅)×593(奥行)×1,675(高さ)mm
●質量:160kg

DALIとしてはこれまでにない高級品「KORE」の登場

DALIは日本でもポピュラーなスピーカーメーカーであり、「OBERON(オベロン)」など、比較的小型で価格的にも求めやすい製品がその中心となっている。そのDALIが発売する新製品はなんと1000万円オーバーという価格なのだ。去る2022年5月に開催されたドイツミュンヘンでの展示会「HIGH END Munich 2022」にて発表済みの製品であり、この発表に驚いたオーディオファンは多いことだろう。

DALIのこれまでの製品ラインアップは最高級品でも1本あたり100万円前後だったのだから。近年は高級路線のサウンドバー「KATCH(キャッチ) ONE」やアンプを内蔵したアクティブスピーカーシリーズ「ZENSOR(センソール)AX」などを積極的に展開し、よい音を手軽に、というコンセプトを重視しているように見えた。

スタンダードな2ウェイブックシェルフ型スピーカー「OBERON1」。130oウーハー搭載の小型モデルで、テレビ脇にも設置しやすい。カラーバリエーションも豊富だ

スタンダードな2ウェイブックシェルフ型スピーカー「OBERON1」。130oウーハー搭載の小型モデルで、テレビ脇にも設置しやすい。カラーバリエーションも豊富だ

DALIの創業は1983年。40周年イヤーを控えての記念モデルかと思えば、まったくそういうことではないそうだ。これまでの最上位シリーズ「EPICON(エピコン)」(2012年発売)では、デンマークの自社工場でスピーカーユニットの内製を開始。それから10年の間、そこでできることを突き詰めていたということなのかもしれない。

これまでの最上位モデルが「EPICON8」。デンマーク国内工場でスピーカーユニットが内製されるほか、手作業で組み上げられる高級品だ

これまでの最上位モデルが「EPICON8」。デンマーク国内工場でスピーカーユニットが内製されるほか、手作業で組み上げられる高級品だ

スピーカーユニットを内製するオーディオメーカーは実はそう多くない。DALIはデンマークのほか中国にも工場を持ち、エントリークラスのモデル製造などを行う

スピーカーユニットを内製するオーディオメーカーは実はそう多くない。DALIはデンマークのほか中国にも工場を持ち、エントリークラスのモデル製造などを行う

妥協なしの開発とパーツ起こし。販売価格はあくまでその結果

輸入元のD&Mホールディングスによれば、DALIの歴史を振り返ると、実は折に触れてエポックメイキングなモデルを開発、発売してきたのだという。1988年の平面スピーカー「DaCapo」、90年代の「MegaLine」などがそれにあたり、2008年には「EMINENT ME9」という巨躯(きょく)のスピーカーを発表したこともあった。2011年にはそのプロトタイプが完成していたものの、社会情勢のあおりを受けて製品化にはいたらなかった。しかし、その研究開発が「KORE」に生かされたことは間違いないという。

上記「OBERON」シリーズなど、手の届きやすい製品だけでなく、常にブランドの顔となる高級シリーズも展開してきた

上記「OBERON」シリーズなど、手の届きやすい製品だけでなく、常にブランドの顔となる高級シリーズも展開してきた

2011年には世界各地のオーディオショーでプロトタイプを展示したこともあった「EMINENT ME9」。ウーハーでツイーターとミッドレンジを挟む、仮想同軸構造は「KORE」と共通と言える

2011年には世界各地のオーディオショーでプロトタイプを展示したこともあった「EMINENT ME9」。ウーハーでツイーターとミッドレンジを挟む、仮想同軸構造は「KORE」と共通と言える

そうは言っても、である。なぜこの価格なのか。その理由は、予算のことを考えずに最善を目指し、40年間のノウハウを結集したことに尽きるようだ。鉄粉の表面を絶縁体でコーティングした「SMC(Soft Magnetic Compound)」を少しでも効果がありそうな部分に惜しまず投入するなど、材料費をかけている側面もあるそうだが、それで従来製品との価格差がここまでになるとは考えづらい。これには、研究開発費が反映されていると考えるのが自然だろう。

予算を考えなかった結果、
●搭載された5つのドライバーすべてが「KORE」のための新設計
●新開発部品は1200以上
となったそうで、多くの工程がデンマーク工場で手作業されていることも聞くと、それはもはやオーダーメイド品に近いのではないかという気がしてくる。

工業製品の開発は「型」をつくる以前から始まっているわけで、すべていちから研究し、「型」を起こすとなると、それだけでもコストは膨大になることだろう。しかも1000万円オーバーの製品の販売数はたかが知れているので、スケールメリットは生まれない。「HIGH END Munich 2022」で好評を得た「KORE」はすでにグローバルで70ペア以上の注文を受けているそうだが、それでもこの製品で儲けが出ているとはとても思えない。もちろん、そもそも単体で利益を上げるための製品ではないのだろうが。

以下に写真と合わせて各ユニットを紹介する。冒頭のスペック欄には4ウェイと記したが、これまでのD&Mホールディングス表記に従えば、「3+1/2+1/2」ウェイというのがその実情。大きく分ければツイーター、ミッドレンジ、ウーハーの3ウェイであり、ツイーター、ウーハーはそれぞれふたつ搭載され、どれも受け持ち帯域が異なるからだ。

新開発ドライバーのうち、ウーハー、ミッドレンジは完全な内製品。「SMC」とは右下の粉体のことで、圧縮と熱処理で成形してさまざまな部分に使う。「EPICON」では磁気回路のポールピースなどに採用されており、ボイスコイルに電流が流れる際の変調歪みを抑える効果があるという

新開発ドライバーのうち、ウーハー、ミッドレンジは完全な内製品。「SMC」とは右下の粉体のことで、圧縮と熱処理で成形してさまざまな部分に使う。「EPICON」では磁気回路のポールピースなどに採用されており、ボイスコイルに電流が流れる際の変調歪みを抑える効果があるという

ツイーターはドーム型とリボン型が併存する「ハイブリッド・ツイーター」方式。帯域としてはドームの上にリボンが“乗る”形で、ドームツイーターの上の周波数はカットしていない。帯域の補完というよりは、高帯域における指向性の補完のために広い指向性を持つリボンツイーターを“乗せて”いる

ツイーターはドーム型とリボン型が併存する「ハイブリッド・ツイーター」方式。帯域としてはドームの上にリボンが“乗る”形で、ドームツイーターの上の周波数はカットしていない。帯域の補完というよりは、高帯域における指向性の補完のために広い指向性を持つリボンツイーターを“乗せて”いる

背面に大きな空間をとること、バックキャビティが円錐状にくびれていることが「KORE」のドームツイーターの特徴。これは振動板の背圧をスムーズ減衰させ、反射などの影響を抑える工夫だ。製品説明担当のD&Mホールディングス「シニアサウンドマスター」澤田龍一氏は「形を変えた“ノーチラス・チューブ”のようですね」とB&W製品との共通点を指摘する。また、ボイスコイルの冷却に磁性流体を使わないこともこのユニットの特徴のひとつ。スペースを設けた“空冷”とすることでキレのよさを志向しているという

背面に大きな空間をとること、バックキャビティが円錐状にくびれていることが「KORE」のドームツイーターの特徴。これは振動板の背圧をスムーズ減衰させ、反射などの影響を抑える工夫だ。製品説明担当のD&Mホールディングス「シニアサウンドマスター」澤田龍一氏は「形を変えた“ノーチラス・チューブ”のようですね」とB&W製品との共通点を指摘する。また、ボイスコイルの冷却に磁性流体を使わないこともこのユニットの特徴のひとつ。スペースを設けた“空冷”とすることでキレのよさを志向しているという

「おそらく単体で10s以上」(澤田氏談)というウーハーユニット。ダブルボイスコイル仕様の大規模磁気回路で、10o×2=20oまでのストロークはまったく平坦に動くそうだ。本体上下のユニットはいわゆるスタガー接続。上のユニットは200Hz以上でゆるやかにロールオフしていくいっぽう、下のユニットは390Hzまで伸び、ミッドレンジと帯域がつながる。これは音のフォーカスを本体中央付近に集めるための工夫だという

「おそらく単体で10s以上」(澤田氏談)というウーハーユニット。ダブルボイスコイル仕様の大規模磁気回路で、10o×2=20oまでのストロークはまったく平坦に動くそうだ。本体上下のユニットはいわゆるスタガー接続。上のユニットは200Hz以上でゆるやかにロールオフしていくいっぽう、下のユニットは390Hzまで伸び、ミッドレンジと帯域がつながる。これは音のフォーカスを本体中央付近に集めるための工夫だという

ウーハー振動板素材はDALIでおなじみの「ウッドファイバーコーン」。パルプに木繊維(ウッドファイバー)を混合したもので、軽量・高剛性が特徴だ。写真はウッドファイバーの表面素材そのまま。実際にはここに制動材が塗布される

ウーハー振動板素材はDALIでおなじみの「ウッドファイバーコーン」。パルプに木繊維(ウッドファイバー)を混合したもので、軽量・高剛性が特徴だ。写真はウッドファイバーの表面素材そのまま。実際にはここに制動材が塗布される

表面上は従来技術の流用に見えるが、間に2.2oのアラミド繊維ハニカム層を挟み、さらに剛性を高めた新設計。これはウーハーユニットのみの構造で、ミッドレンジは柔軟性のあるウッドファイバー素材。ミッドレンジも制動材の塗りで仕上げられるが、この厚みの差で制動・共振をコントロールする手作業ならではの技術もあるという

表面上は従来技術の流用に見えるが、間に2.2oのアラミド繊維ハニカム層を挟み、さらに剛性を高めた新設計。これはウーハーユニットのみの構造で、ミッドレンジは柔軟性のあるウッドファイバー素材。ミッドレンジも制動材の塗りで仕上げられるが、この厚みの差で制動・共振をコントロールする手作業ならではの技術もあるという

「KORE」の断面イメージ。ミッドレンジの裏側はツイーターの背面と同じような円錐形状。これで背圧をコントロールする。ウーハーの裏側ももちろん独立したチャンバーが設けられ、それぞれにバスレフポートが設けられる

「KORE」の断面イメージ。ミッドレンジの裏側はツイーターの背面と同じような円錐形状。これで背圧をコントロールする。ウーハーの裏側ももちろん独立したチャンバーが設けられ、それぞれにバスレフポートが設けられる

キャビネットは曲げ仕様の合板。曲木が得意な家具メーカーHudevad Furniture(フデバール・ファニチャー)社がキャビネット制作を担当。接合部品が見えないよう仕上げられるのも高級品ならでは。「EPICON」など、これまでの製品ではMDFを使っていたが、今後のDALI製品にはこのキャビネット成型の技術が生かされていくことになるという

キャビネットは曲げ仕様の合板。曲木が得意な家具メーカーHudevad Furniture(フデバール・ファニチャー)社がキャビネット制作を担当。接合部品が見えないよう仕上げられるのも高級品ならでは。「EPICON」など、これまでの製品ではMDFを使っていたが、今後のDALI製品にはこのキャビネット成型の技術が生かされていくことになるという

細かい部分だが、スパイクフットやスピーカー端子などももちろん「KORE」のための専用パーツ。どこをとっても重厚感がある

細かい部分だが、スパイクフットやスピーカー端子などももちろん「KORE」のための専用パーツ。どこをとっても重厚感がある

職人技の境地を思わせる、段違いの「自然な音」!

この日製品説明を担当したD&Mホールディングス澤田龍一氏は、「KORE」の音を「ひと言で表せばエフォートレス」だと言ったが、なんとも腑に落ちる表現だった。「エフォートレス」とは「楽な」という意味のほか、「苦労のあとが見えない」というニュアンスもあるそうだ。どんな再現の難しい音楽も、いとも簡単に再生してみせる能力の高さはまさに「エフォートレス」。素人ではとてもできない難しいことを簡単そうにこなしてみせる、職人技を見せつけられているようだ。

スピーカーやアンプの取材で何度となく聞いてきた反田恭平のSACD「リスト」。弱音の響きとその収まりようといったら、「こんな聞こえ方をしたことがどれだけあったか?」と自問してしまうほどの美しさ。言ってみればにじみがない高解像度的表現なのだが、デジタル的な境界線はまったく感じられない、とても自然な音なのだ。

自然とは、凄さをひけらかさないと言ってもよい。これは特にサラウンド音声の再生時にいつも思うことだが、自然さを突き詰めていくと、だんだんとスピーカーの存在を感じさせないようになっていく。すると、スピーカーの存在のありがたみも薄くなっていきがち。しかし、それこそが究極のはず。サラウンド再生時に「後ろのサラウンドスピーカーから、いい感じに音がでているなぁ」とか思っているようではいけないのだ。

「KORE」にはそういう理想的な自然さがあり、「低音がよく伸びてるね」という類の感想を抱かせない段違いのリアリティがある。スピーカーの価格と音のよさが1000万円オーバーまで比例するとは思わないが、これぞ妥協なしの研究開発の成果だと思わざるを得ない。

「KORE」が設置されたD&Mホールディングス内の試聴室。高さ1,675mm、質量160kgというサイズだけを考えても、“普通の部屋”に導入するのは難しいだろう。「KORE」の実力を発揮させるには、この試聴室並みとはいかないまでも相当なハードウェア的手当てと覚悟が必要になると考えるべきだ

「KORE」が設置されたD&Mホールディングス内の試聴室。高さ1,675mm、質量160kgというサイズだけを考えても、“普通の部屋”に導入するのは難しいだろう。「KORE」の実力を発揮させるには、この試聴室並みとはいかないまでも相当なハードウェア的手当てと覚悟が必要になると考えるべきだ

最後に、ここで重要なのは、DALIは最高だけを求めて製品を展開しているわけではなく、数万円から製品をラインアップするメーカーであるということ。「KORE」で培われた技術やノウハウが今後の製品企画に生かされることは間違いない。超弩級モデルの登場は、次の飛躍のための布石になるはずだ。

「KORE」は2022年10月28日から30日まで開催される「2022東京インターナショナルオーディオショウ」で展示、再生される。その後は11月の「大阪ハイエンドオーディオショウ2022」でも展示される予定だ。DALIが考えるよい音とはどのようなものか、気になった方はぜひ参加していただきたい。

柿沼良輔(編集部)

柿沼良輔(編集部)

AVの専門誌を編集して10年超。「(デカさ以外は)映画館を上回る」を目標にスピーカー総数13本のホームシアターシステムを構築中です。映像と音の出る機械、人が一生懸命つくったモノに反応します。

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