アップル製品のユーザーがイヤホン、ヘッドホンを検討するとき、まず候補にあがるのが「AirPods(エアポッズ)」シリーズでしょう。しかし、同シリーズは、完全ワイヤレスイヤホンだけでも数世代のモデルやバリエーションがラインアップされており、ユーザーにとってはどのモデルを選ぶべきか迷いがちでもあります。
本記事では、改めて「AirPods」シリーズのラインアップをおさらいしつつ、各製品の特徴や、選ぶ際に確認したいポイントについておさらいしていきましょう。
なお、記事内の価格は、2025年7月時点におけるApple Store(オンライン)のもので、税込価格になります。
昨今は、サードパーティー製品の完全ワイヤレスイヤホンやヘッドホンも市場が成熟しており、iPhoneと連携させた際の機能や、使い勝手についても、かなりよくなってきています。そういう意味で、“AirPodsシリーズならでは”と言える体験は、シリーズが発売された当初と比べると少なくなってきてはいます。
いっぽう、アップル製品との相性のよさについては、純正品である「AirPods」シリーズが一線を画す存在であることは今も変わりません。たとえば、iPhoneとのペアリングがスムーズに行えたり、複数のアップル製品への切り替えが簡単だったり、「探す」ネットワークでの捜索ができたりするなど、OSレベルでの機能連携ができることは、アップル製品ユーザーにとっての大きなメリットです。
2025年7月のラインアップを確認
2025年7月時点では、Apple Store(オンライン)にて、「AirPods」シリーズは以下の4モデルが展開されています。
・AirPods 4:2024年9月発売、インイヤー型、H2チップ搭載
・AirPods 4(ANC搭載モデル):2024年9月発売、インイヤー型、H2チップ搭載
・AirPods Pro 2:2022年9月発売、カナル型、H2チップ搭載
・AirPods Max(USB-C):2024年9月発売、オーバーイヤーヘッドホン、H1チップ搭載
完全ワイヤレスイヤホンとしては、インイヤー型の軽やかな付け心地が特徴の「AirPods(エアポッズ)」と、上位モデルに相当するシリコン製のイヤーチップを備えたカナル型の「AirPods Pro(エアポッズプロ)」の2種類がラインアップされています。
なお、前者については、2024年9月に発売された第4世代モデル「AirPods 4」が、アクティブノイズキャンセリング(以下、ANC)の搭載有無が異なる2モデルが選択可能。後者については、2022年秋に発売された「AirPods Pro 2」のみが販売されています。
ヘッドホンタイプの製品としては、最上位の「AirPods Max(エアポッズマックス)」。現行の製品は、2020年12月に発売された製品がベースになっているので、搭載するチップセットがやや古い「H1」ですが、2024年9月に追加された新色製品ではUSB Type-Cポートが採用されるなど、マイナーチェンジを遂げています。
以下、それぞれのモデルの特徴をチェックしていきましょう。
「AirPods」をとにかく安く入手したい場合には、シリーズ最安の「AirPods 4」が有力候補です。2024年9月に発売された最新モデルで、価格は21,800円。
シリコン製のイヤーピースを備えていないインイヤータイプの製品で、外耳道を密閉しない軽やかな付け心地が特徴です。ただし、下位モデルはANCをサポートしていないので、電車の乗車時や皿洗いをしながらの音楽再生など、ノイズが大きい環境でのリスニングには適していません。
イヤホン本体で楽曲のコントロールは、軸の部分をギュッとつまむ感圧センサー式にアップデートされました。ただし、後述する「AirPods Pro」シリーズとは異なり、スワイプ操作での音量調整などには対応していません。
サウンドに関しては、最安モデルでありながらも新たに「空間オーディオ」と「ダイナミックヘッドトラッキング」をサポート。耐汗・耐水性能もIP54準拠にアップデートされており、コストパフォーマンスは高いです。なお、充電ケースはUSB Type-Cポートを備えます。充電ケースを併用した場合の再生時間は最大30時間。
ただし、上位のANC搭載モデルと比べると、実はANC以外にも対応していない機能が複数あるので、その点を理解してから検討するのが大切です。
いっぽう、インイヤー型の軽やかな装着感を維持しつつ、ANC機能を搭載したのが「AirPods 4(ANC搭載モデル)」。価格は29,800円で、上述したANCなしモデルと比べると+8000円高くなっていますが、多くのメリットを備えます。
まず、製品名のとおり、ANC機能が使えるので、電車やバスなどの乗車時や、皿洗い、掃除機などの騒音をともなう家事をしているとき、ドライヤーで髪を乾かしているタイミングなどで、楽曲再生などを楽しみやすいです。
また、屋外や、人に話しかけられたときになどには、「外部音取り込みモード」に切り替えることで、環境音をカットせずに聞ける機能も搭載。その切り替えを自動で行う「適応型オーディオ」や「会話感知」機能もサポートしています。
充電ケースに関しては、下位モデルと同じくUSB Type-Cポートを搭載したうえで、Qi規格のワイヤレス充電をサポート。Apple Watchの充電器を使った充電も可能です。
加えて、「探す」機能の中でも「AirPodsのケースからサウンドを再生する」「近くにあるAirPodsを探す」に対応しているため、紛失時などに捜索しやすいことも大きなメリットと言えるでしょう。こうした機能はANCなしモデルには備わっていないので、基本的には8000円の差額を惜しまずに、「AirPods 4(ANC搭載モデル)」を選択したほうが、満足度は高くなると言えます。
充電ケースを併用した場合の再生時間は、最大30時間でANCなしモデルと共通。なお、ANCを有効にした場合には最大20時間になります。
こちらの製品名は、従来「AirPods Pro(第2世代)」と表記されていましたが、2024年9月の発表時から「AirPods Pro 2」が公式表記に変更されました。
先述したインイヤー型の「AirPods 4」シリーズのデメリットは以下の2つ。
(1)イヤーピースの調整ができないので耳の形によってどうしても装着しづらい場合がある
(2)イヤーピースで密閉されていないのでANCの精度に限界がある
この2点が気になる場合には、上位の「AirPods Pro 2」を検討するとよいでしょう。価格は39,800円です。
「AirPods Pro 2」では、シリコン製のイヤーピースが採用されており、耳のサイズに合わせてイヤーピースを交換することで、フィット感のよい状態で無理なく使用しやすいのがポイントです。
音質に関する仕様としては、「高偏位Appleドライバー」と「ハイダイナミックレンジアンプ」を搭載しており、聞こえ方は多少異なるかもしれませんが、「AirPods 4」シリーズと仕様上の大きな差はありません。
また、ANCについては、「最大2倍のアクティブノイズキャンセリング」に対応しており、先述の「AirPods 4(ANC搭載モデル)」よりもANCの精度が高くなっています。
たとえば、楽曲再生だけでなく、騒音の大きな地下鉄に乗って通学・通勤時に外国語のリスニングやPodcastで耳を澄ませるような聴き方をするならば、「AirPods Pro 2」は最適です。なお、「外部音取り込みモード」や「適応型オーディオ」、「会話感知」などにもしっかり対応しています。
充電ケースを併用した場合の再生時間は、ANCを有効にして最大30時間。「AirPods 4」シリーズよりも長めです。
イヤホン本体のハードウェアとしては、操作方法にタッチセンサーが採用されているのがポイント。具体的には、スワイプ操作で音量調整などが行えるようになっていることがユニークです。
充電ケースに関しては、ストラップを装着可能なことが見逃せません。サードパーティー製の保護ケースなどを併用せずとも、落下や紛失を予防しやすくなっていますし、キャラクターの人形など、自分の好みに応じたワンポイントのアクセントも付けやすいでししょう。
加えて、「探す」機能のなかでも、デバイスの方向やおおよその距離がわかる「正確な場所を見つける」に唯一対応しているのも特徴です。また、先述した「AirPods 4(ANC搭載モデル)」と同様、Qi規格のワイヤレス充電をサポートしたうえで、さらにMagSafeに対応していることも「AirPod Pro 2」のみの強みです。
ちなみに、「大きな音の低減」「会話を強調」「バックグラウンドサウンド」など聴覚サポート系の機能に対応していることも見逃せません。
ヘッドホン型の「AirPods」が欲しいのであれば「AirPods Max」の一択です。ただし、ラインアップの中では、最上位モデルとなり、価格は84,800円。一般的なワイヤレスヘッドホンの中でも高級機に位置づけられるため、iPhoneやiPadなどアップル製品を複数所有し、オーバーイヤー型のデザインや装着感にこだわりがある人向けと言えるでしょう。
現行の「AirPods Max」は、2020年12月に発売された機種がベースとなっていますが、2024年9月にUSB Type-Cポートを搭載した新カラーにマイナーチェンジを遂げています。
ただし、搭載するチップセットはH1のまま。そのため最大2倍のANCや「外部音取り込みモード」には対応するものの、「適応型オーディオ」や「会話感知」などの自動調整機能には非対応です。用途によっては、AirPods 4やAirPods Pro 2の体験に劣る部分もあるので、この差をあらかじめ理解してから検討しましょう。
操作性としては、Digital Crown(デジタルクラウン)やノイズコントロールボタンによる操作がポイント。特にDigital Clownによる細やかな音量調節は、ほかの製品にはない体験です。
また、楽曲再生時のバッテリー持ちは、ANCを有効にした状態で、最大20時間に対応。非使用時には、付属する専用キャリングケース「Smart Case」に入れておくと、電力消費を抑えるモードに切り替わることも知っておきましょう。
ちなみに、「AirPods」シリーズとしては、唯一カラーが選択できることもユニークです。具体的には、「ミッドナイト」「スターライト」「ブルー」「パープル」「オレンジ」の5色を選択できます。ファッションやカラーにこだわりたい人ならば、検討候補に入れてもよいかもしれません。ただし、防水防じんや耐汗性能を備えていないので、屋外での持ち運びの際には、急な雨に注意が必要です。
以上のように「AirPods」シリーズは、名称こそ似ているものの、選択する製品によって体験が大きく異なってきます。形状がインイヤー型かカナル型か、あるいはヘッドホン型(オーバーイヤー型)か。電車の乗車時や家事をしながら音楽を聴くのに便利なANCへの対応状況など、主要なポイントを見極めつつ、自身の想定する利用スタイルにあった製品を検討してみてください。