新明解スピーカーブランド辞典

高コスパ&充実の製品群は初めてのスピーカーにぴったり! 英国の名門モニターオーディオ

ある日の午後、僕は机の上に並べていたスピーカーのカタログを眺めていた。音楽をよい音で聴きたいと思ったら、自然とオーディオ製品の購入を考えるものだが、なかでもスピーカーはモデルごとに音の個性が大きく違うしデザインもさまざま。特に初めてスピーカーを購入するような場合なら、迷いも大きいだろう。

僕は手にしたカタログの先頭にある、魅力的に撮影されたスピーカーの写真から、実際に部屋に置いたときの景色を想像した。そしてメーカーのフィロソフィーや技術について書かれた文章を読み、その音に思いを馳せた。初めて購入するスピーカーとして、このブランドの製品はぴったりではないか。

モニターオーディオはオーディオファンにとっての定番ブランド

日本には世界中からすばらしいスピーカーが集まっている、そのブランドの歴史や本質的な魅力を紹介するのが本連載だ。今回はイギリスのモニターオーディオ(MONITOR AUDIO)を取り上げたい。イギリス東海岸にあるRayleigh(レイリー)に拠点を置く人気のスピーカーブランドである。

今回レビューするモニターオーディオの5モデル。左から、「Bronze 500-6G」「Bronze 50-6G」「Silver 50-7G」「Gold 100-5G」「Silver 200-7G」

今回レビューするモニターオーディオの5モデル。左から、「Bronze 500-6G」「Bronze 50-6G」「Silver 50-7G」「Gold 100-5G」「Silver 200-7G」

設立は1972年。導入しやすいスタンダードな価格帯のモデルから超高級モデルまで、幅広い価格帯でスピーカーをラインアップする。オーディオファンにとって定番ブランドのひとつであり、音楽性とオーディオ的な再生能力のバランスのよさも特徴だと言える。

スピーカーメーカー各社も製品開発時のベンチマークとしてモニターオーディオのスピーカーを意識していると聞く。ちなみに僕も寄稿しているAV(オーディオビジュアル)専門誌「HiVi(ハイヴィ)」でも、製品試聴/テストのリファレンス(基準)スピーカーとしてモニターオーディオ製品を使用している。

僕は東京駅から新幹線に乗り、岐阜県岐阜市に本拠地を構える株式会社ナスペックに向かった。モニターオーディオを日本に輸入する代理店で、ほかにも数々の海外ブランドのオーディオ製品を取り扱っている。立派な本社ビルの中には2020年秋に完成した大きく新しい視聴室がある。今回はそこで、モニターオーディオ各製品の音を聴かせてもらうのだ。

取材を行ったのは、モニターオーディオの輸入代理店株式会社ナスペックの視聴室。Dolby Atmos再生などのために、天井にもスピーカーが設置された贅沢な空間だ

取材を行ったのは、モニターオーディオの輸入代理店株式会社ナスペックの視聴室。Dolby Atmos再生などのために、天井にもスピーカーが設置された贅沢な空間だ

基本シリーズ4つに加えて小型スピーカー3つものシリーズを擁する

同社スピーカーの基本シリーズは4つ。安価で導入のしやすい「Bronze 6G」、ミドルクラスの「Silver 7G」、「Gold 5G」、最上位が「Platinum Series 3G」というラインアップだ。

さらに設置性の高い「Apex」「Radius」「MASS 2G」といった小型スピーカー、壁に埋め込むタイプのインウォールスピーカー「Custom Install」シリーズを揃えており、2023年秋には現在の最上モデル「Platinum Series 3G」のさらに上位に位置づけられるフラッグシップスピーカー「HYPHN(ハイフン)」の発売も控えている。

また、基本シリーズには、AV用途のセンタースピーカーやサブウーハー(「Platinum Series 3G」を除く)がラインアップされるほか、「Bronze 6G」「Silver 7G」、には天井に音を反射させてDolby AtmosやDTS:Xなどの再生に対応するイネーブルドスピーカーもラインアップされるなど、AVにも力を入れているメーカーだ。

ちなみに製品の各シリーズ名末尾に付いている「G」という文字は、そのシリーズの世代(Generation)を表している。たとえば「2G」であれば第2世代、「5G」は第5世代ということ。モニターオーディオは幅広いラインアップ間のすみ分けを明快にしつつ、それぞれに最先端の技術をしっかりと投入し続けてきたのである。

日本でも導入が予定されている新フラッグシップスピーカー「HYPHN(ハイフン)」

日本でも導入が予定されている新フラッグシップスピーカー「HYPHN(ハイフン)」

高コスパが売りのエントリーモデル「Bronze 6G」

モニターオーディオの基本シリーズのエントリーモデルにあたるのが「Bronze 6G」シリーズ。ドライバー、キャビネット構造などに上位モデルで培った技術がしっかりと投入されており、高いコストパフォーマンスであることを訴求している

モニターオーディオの基本シリーズのエントリーモデルにあたるのが「Bronze 6G」シリーズ。ドライバー、キャビネット構造などに上位モデルで培った技術がしっかりと投入されており、高いコストパフォーマンスであることを訴求している

「Bronze 6G」シリーズの主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Bronze 50-6G」:80,300円(ペア/税込)、「Bronze 100-6G」:99,000円(ペア/税込)、「Bronze 200-6G」:176,000円(ペア/税込)、「Bronze 500-6G」:25 3,000円(ペア/税込)

「Bronze 6G」シリーズの主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Bronze 50-6G」:80,300円(ペア/税込)、「Bronze 100-6G」:99,000円(ペア/税込)、「Bronze 200-6G」:176,000円(ペア/税込)、「Bronze 500-6G」:253,000円(ペア/税込)

「Bronze AMS-6G」は天井に向けて音を放射し、反射音でDolby Atmosのサラウンド効果を得るイネーブルドスピーカー。「Bronze 50-6G」、「Bronze 200-6G」の上に載せるとぴったりと収まる寸法だ。「Bronze FX-6G」は壁掛けを前提として設計されたサラウンドスピーカー

「Bronze AMS-6G」は天井に向けて音を放射し、反射音でDolby Atmosのサラウンド効果を得るイネーブルドスピーカー。「Bronze 50-6G」、「Bronze 200-6G」の上に載せるとぴったりと収まる寸法だ。「Bronze FX-6G」は壁掛けを前提として設計されたサラウンドスピーカー

「Bronze 6G」シリーズのAV向け製品主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Bronze C150-6G」:63,800円(1本/税込)、「Bronze AMS-6G」:93,500円(ペア/税込)、「Bronze FX-6G」:93,500円(ペア/税込)、「Bronze W10-6G」:165,000円(1本/税込)

「Bronze 6G」シリーズのAV向け製品主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Bronze C150-6G」:63,800円(1本/税込)、「Bronze AMS-6G」:93,500円(ペア/税込)、「Bronze FX-6G」:93,500円(ペア/税込)、「Bronze W10-6G」:165,000円(1本/税込)

モニターオーディオの“看板”と言える「Silver 7G」シリーズ

モニターオーディオの中で最も販売台数が多いのがこの「Silver 7G」だという。製品ラインアップも、「Bronze 6G」よりも多い5モデルを揃えている。型番のとおり最も世代を重ねた看板シリーズであり、上位グレードの「Gold 5G」からの技術やそれまでの最新シリーズ「Bronze 6G」で得た知見が取り入れられている

モニターオーディオの中で最も販売台数が多いのがこの「Silver 7G」だという。製品ラインアップも、「Bronze 6G」よりも多い5モデルを揃えている。型番のとおり最も世代を重ねた看板シリーズであり、上位グレードの「Gold 5G」からの技術やそれまでの最新シリーズ「Bronze 6G」で得た知見が取り入れられている

「Silver 7G」シリーズの主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Silver 50-7G」:159,500円(ペア/税込)、「Silver 100-7G」:220,000円(ペア/税込)、「Silver 200-7G」:341,000円(ペア/税込)、「Silver 300-7G」:429,000円(ペア/税込)「Silver 500-7G」:506,000円(ペア/税込)

「Silver 7G」シリーズの主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Silver 50-7G」:159,500円(ペア/税込)、「Silver 100-7G」:220,000円(ペア/税込)、「Silver 200-7G」:341,000円(ペア/税込)、「Silver 300-7G」:429,000円(ペア/税込)「Silver 500-7G」:506,000円(ペア/税込)

「Bronze 6G」同様に、イネーブルドスピーカーとサラウンドスピーカーをラインアップ。イネーブルドスピーカーの「Silver AMS-7G」は、「Silver 300-7G」の上に載せるとぴったりと収まる。なお、サブウーハー「Silver W12」のみ第6世代品が継続販売されている

「Bronze 6G」同様に、イネーブルドスピーカーとサラウンドスピーカーをラインアップ。イネーブルドスピーカーの「Silver AMS-7G」は、「Silver 300-7G」の上に載せるとぴったりと収まる。なお、サブウーハー「Silver W12」のみ第6世代品が継続販売されている

「Silver 7G」シリーズのAV向け製品主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Silver C250-7G」:165,000円(1本/税込)、「Silver AMS-7G」:170,500円(ペア/税込)、「Silver FX-7G」:165,000円(ペア/税込)、「Silver W12」:264,000円(サテンホワイト/1本/税込)/291,500円(ハイグロスブラック/1本/税込)

「Silver 7G」シリーズのAV向け製品主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Silver C250-7G」:165,000円(1本/税込)、「Silver AMS-7G」:170,500円(ペア/税込)、「Silver FX-7G」:165,000円(ペア/税込)、「Silver W12」:264,000円(サテンホワイト/1本/税込)/291,500円(ハイグロスブラック/1本/税込)

「プラチナム」の技術を直接継承した「Gold 5G」

かつてはモニターオーディオの最上位モデルとして展開されていたのが「ゴールド」シリーズ。「Gold 5G」は、2016年に発表された「Platinum Series II」の技術を盛り込みつつ、手の届きやすい価格にまとめた製品だと言える。象徴的なのは、高域ユニットをMPDと呼ばれるハイルドライバーとしたこと。これにより、透明感の向上、解像度の改善を実現しているという

かつてはモニターオーディオの最上位モデルとして展開されていたのが「ゴールド」シリーズ。「Gold 5G」は、2016年に発表された「Platinum Series II」の技術を盛り込みつつ、手の届きやすい価格にまとめた製品だと言える。象徴的なのは、高域ユニットをMPDと呼ばれるハイルドライバーとしたこと。これにより、透明感の向上、解像度の改善を実現しているという

「Gold 5G」シリーズの主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Gold 100-5G」:374,000円(ペア/税込)、「Gold 200-5G」:792,000円(ペア/税込)、「Gold 300-5G」:1,067,000円(ペア/税込)

「Gold 5G」シリーズの主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Gold 100-5G」:374,000円(ペア/税込)、「Gold 200-5G」:792,000円(ペア/税込)、「Gold 300-5G」:1,067,000円(ペア/税込)

「Gold 5G」シリーズからはイネーブルドスピーカーが用意されないことに注意。サラウンドスピーカーの「Gold FX-5G」は、ウーハーが2基のより充実した構成だ

「Gold 5G」シリーズからはイネーブルドスピーカーが用意されないことに注意。サラウンドスピーカーの「Gold FX-5G」は、ウーハーが2基のより充実した構成だ

「Gold 5G」シリーズのAV向け製品主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Gold C250-5G」:297,000円(1本/税込)、「Gold FX-5G」:418,000円(ペア/税込)、「Gold W12-5G」:561,000円(1本/税込)

「Gold 5G」シリーズのAV向け製品主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Gold C250-5G」:297,000円(1本/税込)、「Gold FX-5G」:418,000円(ペア/税込)、「Gold W12-5G」:561,000円(1本/税込)

設立50周年のタイミングで生まれ変わった「Platinum Series 3G」

モニターオーディオの基本シリーズ最上位モデルとなるのが「Platinum Series 3G」。2022年、創業50周年を機に「3G」へとモデルチェンジを果たした。上述のとおり、フラッグシップモデル「HYPHN(ハイフン)」の登場などもあってか、ラインアップはセンタースピーカーを含む4機種のみ。ただし、「HYPHN」のイギリス国内価格が約70,000ポンド(約1273万円、2023年7月28日現在)。「Platinum Series 3G」の基本シリーズ最上位としての価値はゆるがないだろう

モニターオーディオの基本シリーズ最上位モデルとなるのが「Platinum Series 3G」。2022年、創業50周年を機に「3G」へとモデルチェンジを果たした。上述のとおり、フラッグシップモデル「HYPHN(ハイフン)」の登場などもあってか、ラインアップはセンタースピーカーを含む4機種のみ。ただし、「HYPHN」のイギリス国内価格が約70,000ポンド(約1273万円、2023年7月28日現在)。「Platinum Series 3G」の基本シリーズ最上位としての価値はゆるがないだろう

「Platinum Series 3G」の主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Platinum 100 3G」:990,000円(ペア/税込)、「Platinum 200 3G」:1,980,000円(ペア/税込)、「Platinum 300 3G」:2,640,000円(ペア/税込)、「Platinum C250 3G」:935,000円(1本/税込)

「Platinum Series 3G」の主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Platinum 100 3G」:990,000円(ペア/税込)、「Platinum 200 3G」:1,980,000円(ペア/税込)、「Platinum 300 3G」:2,640,000円(ペア/税込)、「Platinum C250 3G」:935,000円(1本/税込)

アルミダイキャストのキャビネットを採用した小型プレミアムモデル「Apex」

設置のしやすさ、使いやすさを訴求する小型モデルが「Apex(エイペックス)」シリーズ。キャビネットにはアルミダイキャストを採用して堅牢性を確保したほか、従来の「ゴールド」「シルバー」シリーズの技術を投入するなど、音質へのこだわりが詰め込まれている。

ツイーター、ウーハーともにC-CAMドライバーを搭載。2ウェイモデルの「Apex 10」にはテーブルトップスタンドが付属しているため、とても扱いやすいはず。この付属スタンドは天吊りや壁掛けのブラケットにもなる仕組みだ。

「Apex」シリーズの主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Apex 10」:88,000円(1本/税込)、「Apex 40」:143,000円(1本/税込)

「Apex」シリーズの主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Apex 10」:88,000円(1本/税込)、「Apex 40」:143,000円(1本/税込)

幅広いラインアップの小型シリーズ「Radius」

10cm四方のキューブ型や細身のフロアスタンディング型モデルなど、豊富なラインアップが特徴の「Radius」シリーズ。モニターオーディオの小型シリーズにおける中核と言える存在だ。

「Radius Series 45」は10cm四方のキューブ型(突起部を含む場合の奥行きのみ124mm)にも関わらず、しっかり2ウェイ構成。ツイーターはC-CAM仕様だ。どこにでも置きやすいだけでなく、別売ブラケットで天吊りや壁掛けにも対応する。

「Radius」シリーズの主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Radius Series 45」:61,600円ペア/税込)、「Radius Series 90」:104,500円(ペア/税込)、「Radius Series 270」:236,500円(ペア/税込)

「Radius」シリーズの主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Radius Series 45」:61,600円ペア/税込)、「Radius Series 90」:104,500円(ペア/税込)、「Radius Series 270」:236,500円(ペア/税込)

小型スピーカーの低域再生には限界があるため、2ch再生であってもアクティブサブウーハー「Radius Series 380」「Radius Series 390」との組み合わせも検討したいところ。もちろん、このサブウーハーを「Apex」シリーズと組み合わせてもよいだろう

小型スピーカーの低域再生には限界があるため、2ch再生であってもアクティブサブウーハー「Radius Series 380」「Radius Series 390」との組み合わせも検討したいところ。もちろん、このサブウーハーを「Apex」シリーズと組み合わせてもよいだろう

「Radius」シリーズのAV向け製品主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Radius Series 200」:61,600円(1本/税込)、「Radius Series 225」:85,800円(1本/税込)、「Radius Series 380」:154,000円(1本/税込)、「Radius Series 390」:192,500円(1本/税込)、

「Radius」シリーズのAV向け製品主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「Radius Series 200」:61,600円(1本/税込)、「Radius Series 225」:85,800円(1本/税込)、「Radius Series 380」:154,000円(1本/税込)、「Radius Series 390」:192,500円(1本/税込)、

5.1chセット販売もされる小型のエントリーモデル「MASS 2G」

手軽にサラウンドシステムを構築できるように企画されたのが「MASS 2G」シリーズ。小型モデルのため、低域をサブウーハーに再生させることを前提として設計された「サテライトスピーカー」だ。インテリアとの調和も考えられた、ファブリックの外装も特徴的。

ラインアップは、122(幅)×107(奥行)×147(高さ)mmという小型キャビネットの2ウェイスピーカー「MASS-2G Satellite」と、5.1chセットモデル「MASS-2G 5.1ch Set」のみ。「MASS-2G 5.1ch Set」の内容は、「MASS-2G Satellite」5本とアクティブサブウーハー「MASS-2G Subwoofer」1本。これとAVアンプがあれば、すぐに5.1chシステムが構築できる。

また、「MASS-2G Satellite」は1本ずつ購入可能。Dolby Atmos再生のためのオーバーヘッド(トップ/ハイト)スピーカーを足していくことも考えられる。

「MASS 2G」シリーズの主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「MASS-2G Satellite」:23,100円(1本/税込)、「MASS-2G 5.1ch Set」:187,000円(5.1chセット/税込)

「MASS 2G」シリーズの主要スペック。2023年7月21日時点での希望小売価格は以下のとおり。「MASS-2G Satellite」:23,100円(1本/税込)、「MASS-2G 5.1ch Set」:187,000円(5.1chセット/税込)

コスパの高さが光る「ブロンズ」、「シルバー」「ゴールド」ではさらに情報量が増していく

ここからはスタンダードシリーズ属するスピーカー5モデルをピックアップ、技術的な特徴と音質を紹介しよう。

約22畳の大きな視聴室。一般公開はされていないが、今回のような取材や販売店などの関係者に向けたデモ、そして同社のスタッフが取り扱うモデルの音質を確認する場所でもある。

当然ルームチューニングや電源周りにも気を使っており、配電盤から視聴室への配線、および視聴室のメインブレーカーは音質に配慮した専用設計。部屋の調音は多くのルームチューニングアイテムをラインアップする音響パネルなどのメーカー、エスカートが手掛けている。

この視聴室には、120インチのスクリーンとプロジェクターによるAV環境が構築されている。壁の色がダークグレーなのはスクリーンに当たった光が周辺に反射してしまう「迷光」現象を抑えるためだ。さまざまな輸入製品を取り扱うナスペックらしい視聴室と言えよう。

テストはナスペックが取り扱うPRIMARE(プライマー)のアンプを使って行った

テストはナスペックが取り扱うPRIMARE(プライマー)のアンプを使って行った

「Bronze 6G」には20年来の改良が蓄積されている

まずは基本シリーズ中で最も低価格帯の「Bronze 6G」から、2ウェイブックシェルフ型の「Bronze 50-6G」とフロアスタンディング型の「Bronze 200-6G」を試聴した。「ブロンズ」シリーズには、第1世代モデル以来20年以上をかけて上位モデルの技術がスライド投入されてきた。多くのオーディオファンに「コストパフォーマンスのモニターオーディオ」というイメージを印象付けた重要シリーズだ。

6世代目となる「Bronze 6G」シリーズは、「5G」シリーズからキャビネットの質感が大きく向上している。インテリアにこだわる人が増えている昨今では重要なアップグレードだ。もちろん、アップグレードされたのは外観だけではない。

キャビネットは15mmのMDF材で構成され、スピーカーユニットが直接取り付けられるフロントバッフルは21mmと厚く、キャビネット内部に最適に配置されたブレース(柱)と組み合わされている。これらの対策により、音を濁す原因のひとつとなるキャビネットの不要振動を減少させた。

ユニット周りについては、25mmゴールドドームC-CAM(Ceramic-Coated Aluminium/Magnesium、アルミニウム・マグネシウム合金の表面をセラミック処理したもの)ツイーターを搭載。放射特性をコントロールするUD(Uniform Dispersion)ウェーブガイドと組み合わせることで、ツイーターの軸上(ツイーター正面)と軸外(ツイーターから外れた角度)においてもトーンバランスの変化を最小限に抑えた。これにより幅広いスイートスポットを実現していて、つまるところ、スピーカー設置の難易度を下げている。

ツイーターの前面に見えるのがUDウェーブガイド。ユニット保護だけではなく、放射特性の最適化の役割を担う。右は「Bronze 6G」シリーズのカットイメージ。ウーハーを本体後方から通ったテンションロッドで固定する方法をとり、ドライバーを均等にクランプ。正確なピストン動作をサポートする設計だ

ツイーターの前面に見えるのがUDウェーブガイド。ユニット保護だけではなく、放射特性の最適化の役割を担う。右は「Bronze 6G」シリーズのカットイメージ。ウーハーを本体後方から通ったテンションロッドで固定する方法をとり、ドライバーを均等にクランプ。正確なピストン動作をサポートする設計だ

ミッドレンジ/ウーハーには、コーン形状が刷新されたDCM(Damped Concentric Mode)技術を採用した新C-CAMドライバーを採用した。さらにピストルの砲身内を銃弾が通る際の動きと同じ効果を狙ったオリジナルバスレフ構造HiVe II ポートを搭載しているほか、カスタム・フィルムコンデンサーとラミネート処理された空芯コイルが使用されたネットワーク回路や、内部配線にはPureflow Silver-Plated OFC(銀メッキの無酸素銅)を採用するなど、採算を度外視するような良質なパーツが搭載されている。

エントリークラスのモデルにも、モニターオーディオでおなじみのC-CAMドライバーを搭載。軽量と高い剛性の両立を目指した。また、共振ポイントをコントロールするためにコーン形状も最適化。歪みの減少に努めている。右が独自のバスレフポートHiVe II。ノイズの原因となる乱気流の発生を抑えて、高音質に寄与するという

エントリークラスのモデルにも、モニターオーディオでおなじみのC-CAMドライバーを搭載。軽量と高い剛性の両立を目指した。また、共振ポイントをコントロールするためにコーン形状も最適化。歪みの減少に努めている。右が独自のバスレフポートHiVe II。ノイズの原因となる乱気流の発生を抑えて、高音質に寄与するという

低価格とは思えないバランスのよさ「Bronze 50-6G」

「Bronze 6Gシリーズ」は2つのブックシェルフ型スピーカーを擁する。より小型で設置性の高い「Bronze 50-6G」、充実した低域再現性を求めた「Bronze 100-6G」という関係性だと言える。どちらも独自のバスレフポートにより、背面に壁を近づけても影響を受けづらいとしている

「Bronze 6Gシリーズ」は2つのブックシェルフ型スピーカーを擁する。より小型で設置性の高い「Bronze 50-6G」、充実した低域再現性を求めた「Bronze 100-6G」という関係性だと言える。どちらも独自のバスレフポートにより、背面に壁を近づけても影響を受けづらいとしている

最初は2ウェイ・バスレフ型モデル「Bronze 50-6G」から試聴する。166(幅)×268(奥行)×281(高さ)mmのキャビネットは、ブックシェルフ型スピーカーの中でもコンパクトな部類。デスクトップ上からリビング、オーディオルームまで場所を選ばない設置性の高さが魅力だ。

ここでは女性ボーカルのハイレゾファイルから、アデルのアルバム「30」より「To Be Loved」「Easy on me」(44.1kHz/24bit)を聴いた。一聴して透明感のある音で、音色が明るい。そして情報量の多さは「最も低価格」なシリーズであることを感じさせない。ひと言で言えばバランスがよく、楽しい音がする

ピアノタッチの質感のよさ、ボーカルの生々しさなど、チープなBluetoothスピーカーとは別世界の音。空間表現力もすぐれており、2本のスピーカー中央に身を置くと、眼前には立体的なサウンドステージがしっかりと表現できている。

これはUDウェーブガイド搭載の効果だと推測できるが、スピーカー正面以外の位置でも音が良質だ。さらによいなと思ったのは、手ごろなサイズのブックシェルフ型スピーカーの割にしっかりとキレのよい低域が出ることだ。このスピーカーはEDMやヒップホップなど現代的な音源にもしっかりと対応できる。

トールボーイ型「Bronze 200-6G」では低域の迫力も分解能も向上する

左が「Bronze 200-6G」、右が後述する「Silver 200-7G」。外観はよく似ているが、「Silver 7G」シリーズではツイーター前面のUDウェーブガイドがリニューアルされている。グレードに関わらず、有用な最新技術は次の最新製品に順次投入されるのだ

左が「Bronze 200-6G」、右が後述する「Silver 200-7G」。外観はよく似ているが、「Silver 7G」シリーズではツイーター前面のUDウェーブガイドがリニューアルされている。グレードに関わらず、有用な最新技術は次の最新製品に順次投入されるのだ

低域と言えば、「Bronze 200-6G」はさらに強力で良質な低域が魅力だった。229(幅)×304(奥行)×909(高さ)mm(脚部含む)と、高さ方向に余裕の出たキャビネットに、25mmゴールドドームC-CAMツイーター1基と140mm C-CAMウーハー2基の合計3ドライバー構成。

ここではアメリカのビルボードチャートで人気のチャーリー・プースの新アルバム「チャーリー」を再生した。こちらも「Bronze 50-6G」同様に音楽的に楽しい音だが、キャビネット容積が大きくなり、ユニットが増え、中低域が2基のユニットで駆動された結果、迫力、分解能ともに向上する。存在感の増したベース表現が心地よい。価格を考えるとかなり良質な再生音だ。

余談だが、スピーカー背面に回ると良質なスピーカー端子が付いていることに気が付いてうれしくなった。「Bronze 6G」シリーズはエントリーモデルとしてとてもバランスがよい。カラーバリエーションも4色(ブラック、アーバングレー、ホワイト、ウォルナット、「Bronze AMS-6G」「Bronze FX-6G」はブラックとホワイトのみ)用意されており、シーンを選ばずに活躍してくれそうだ。

相応のコスト投下で緻密な設計が施される「Silver 7G」

続いてひとつ上の「Silver 7G」シリーズを試してみよう。実はモニターオーディオのラインアップの中で最も販売台数が多い中核となるのがこの「シルバー」。売れ行きがよい理由として、上位となる「ゴールド」シリーズの技術が多数投入されていること、世代を重ねて音楽性や音質を向上させてきたことなどがあげられる。型番からわかるとおり、すでに第7世代なのだ。

「Silver 7G」シリーズでは設計にさらにコストが投下されている。キャビネットはイギリス国立物理研究所の技術協力を得て、スキャニングレーザー振動測定を行いキャビネット内の共振点を特定、ミリ単位で振動対策を実施するという。

搭載されるツイーターには、やはりオリジナルのC-CAM振動板を採用。組み合わせられるのは、「Bronze-6G」シリーズに搭載されて大きな成果をあげたUDウェーブガイドの第2世代モデル。ウーハー/ミッドレンジには、ディンプル形状のリニューアルと強度を上げたアルミニウム合金によるRST(Rigid Surface Technology)ドライバーを備える。

同じ「C-CAM」振動板を名乗っていても、内容は「Bronze 6G」とは異なる。「Silver 7G」で見られるウーハー振動板のディンプル形状は剛性の確保、表面積の増大に寄与しているそうだ。右のカットモデルは「Bronze 6G」と似ているが、より緻密にブレーシングなどが計算されているという

同じ「C-CAM」振動板を名乗っていても、内容は「Bronze 6G」とは異なる。「Silver 7G」で見られるウーハー振動板のディンプル形状は剛性の確保、表面積の増大に寄与しているそうだ。右のカットモデルは「Bronze 6G」と似ているが、より緻密にブレーシングなどが計算されているという

ブックシェルフ型でもしっかり重心が低い「Silver 50-7G」

まずは、2ウェイブックシェルフ型の「Silver 50-7G」を聴いた。25mmC-CAMゴールドドームツイーターと、130mmC-CAM RSTIIウーハーが搭載されている。

まず見入ったのは、「Bronze 100-6G」よりもさらに洗練されたキャビネット。スピーカーの場合、コスト投入しやすい上位機種では、外観の質感もよくなってくる(とは言っても、モニターオーディオの場合は安価なモデルでも質感は良質だが)。

「Bronze 50-6G」でも感じたことだが、「Silver 50-7G」もやはり小さめのブックシェルフ型モデルとしては低域表現が強力だ。「チャーリー」はベースとドラムの迫力があり、重心がしっかりとしている。シンセサイザーなどの高域表現は端正かつ透明感があり、音の広がりも秀逸。

「Silver 200-7G」にも共通するのは雑味の少なさ

次にフロアスタンディング型の「Silver 200-7G」を試聴した。サイズは254(幅)×329(奥行)×930(高さ)mm(脚部含む)で、25mmC-CAMゴールドドームツイーター1基、130mmC-CAM RST II Bassウーハー2基の3スピーカー構成。

ここでの「チャーリー」の再生でまず感心したのは、情報量の多さ。

ボーカルやベースなど高〜低音域のすべてで「Silver 50-7G」よりもディテールが増しており、より自然で躍動感のある音が印象的だ。やはり、ユニット数が増えたことでひとつのユニットに対する負荷が軽くなったことも奏功しているだろう。

クラシックの交響曲も聞いてみた。グスターボ・ドゥダメル指揮ロサンゼルス・フィルハーモニックの「ドヴォルザーク交響曲第9番 第4楽章」を再生。情報量の多さはこのような壮大な音源をかけたときに真価を発揮する。音源が持つ空間情報に対する再現性が高いのだ。音色には適度な色艶があり、バイオリンなどの弦楽器を良質な質感で表現してくれる。

スペック上の周波数特性は31〜35,000Hzとなっており、実際に低音域から高音域まで、レンジは広く感じられる。キャビネットの不要振動が抑えられているせいだろう、「Silver 50-7G」「Silver 200-7G」は、「Bronze 6G」シリーズよりも音の雑味がさらに少なくディテールがクリアだ。

下位グレード品を圧倒する再生能力「Gold 100-5G」

「Gold 5G」のブックシェルフ型モデルは「Gold 100-5G」のみ。サイズもウーハー口径も、「Bronze 50-6G」「Silver 50-7G」より一回り大きい

「Gold 5G」のブックシェルフ型モデルは「Gold 100-5G」のみ。サイズもウーハー口径も、「Bronze 50-6G」「Silver 50-7G」より一回り大きい

最後に紹介するのは、本試聴での最上位モデル「Gold 5G」シリーズに属する「Gold 100-5G」。「ゴールド」シリーズはモニターオーディオのハイエンドモデルの位置を確立したシリーズで、2000年に登場した初代モデル「Gold60」は日本で大ヒットを記録したという。なお、現在のハイエンドシリーズである「プラチナム」の初代モデルが発売されたのは2007年のこと。「ゴールド」はその足がかりとなったわけだ。

現行の「Gold 5G」シリーズは「4G」シリーズから3年もの開発期間を経て発売されており、「プラチナム」の技術を投入しつつ、ツイーター、ウーハー、キャビネット、脚部にいたるまで使用されるすべてのパーツが見直されている。

ツイーターには一般的なドーム型振動板とはまったく違う構造を持つ、ハイルドライバーの発展系である独自の「MPD」トランスデューサーを搭載。

ツイーターはハイルドライバー方式の一種「MPD」。もちろん、この仕様は「Platinum Series 3G」譲りだ。プリーツ状に折りたたまれたフィルム状の振動板を開閉させ、その間の空気を圧縮・放射することで発音する仕組みだ

ツイーターはハイルドライバー方式の一種「MPD」。もちろん、この仕様は「Platinum Series 3G」譲りだ。プリーツ状に折りたたまれたフィルム状の振動板を開閉させ、その間の空気を圧縮・放射することで発音する仕組みだ

ミッドレンジ/ウーハーには、強度の高いノーメックス(アラミド繊維の一種)複合素材で作られたハニカム構造の素材をC-CAMとカーボンファイバーで挟み込んだ「RDT II (Rigid Diaphragm Technology 2nd Generation)」ドライバーを搭載する。また、「Gold 5G」シリーズ同様にイギリス国立物理研究所の協力によるスキャニングレーザー振動測定により作られたキャビネットを採用している。

「Bronze 6G」とも「Silver 7G」とも異なる、さらに凝った作りのウーハー、ミッドレンジを採用。挟まれたハニカム構造素材は、表側から透けて見える

「Bronze 6G」とも「Silver 7G」との異なる、さらに凝った作りのウーハー、ミッドレンジを採用。挟まれたハニカム構造素材は、表側から透けて見える

「Gold 100-5G」が奏でる再生音は、筆者の期待を大きく上回るものだった。まず「チャーリー」は圧倒的で、広い周波数レンジ、ダイナミックレンジに加えて高いSN比などを感じる現代的な描写力。

色彩が豊かで明るい音調は、「Bronze 6G」や「Silver 7G」と同様。シームレスで密度感のある中低域によるベース(低域)表現やキックドラムとベースの力強さ、ダイナミックで押しがあるボーカル表現などに本機ならではのよさを感じた

ドゥダメルのドヴォルザークでは聴感上のダイナミクスが大きくなり、情報量がさらに増える。スケール感が大きく、ニュアンス表現が巧みで超低域から超高域までのバランスも良質。ソースの中に入っている情報をもれなく出してくる印象だ。

まとめ:特に感動したのは「Bronze 6G」のコスパの高さ!

今回の記事ではモニターオーディオのスタンダードシリーズを安価な順から試聴していったが、感じ入ったのは、安価なモデル(特に「Bronze 6G」)のコストパフォーマンスがかなり高いという点。

視聴室で「Bronze 50-6G」から音が出た瞬間の驚きは、本稿を書いている今でも鮮明に覚えている。安価ながら、オーディオファンが納得できる表現力があった。すべてのモニターオーディオのスピーカーは、グルーヴを感じさせる音楽性、オーディオ的な再生能力をしっかりと持っているのだ。平たく言えば、各価格帯に用意されたシリーズそれぞれの完成度が高い。

初めて買うならどのモデルがよいか? という問いがあれば、コストの許せる範囲で上位シリーズを、と言いたいところだが、まずはバランスがよくコストパフォーマンスにすぐれる「Bronze 6G」シリーズを手にとってみてはどうだろう

また、音質についてはここでお伝えしたとおりだが、外観のデザインについても注目していただきたい。フロントバッフルにボルトが露出してないことに触れたが、そういった細かな部分の積み重ねが高級感を醸し出すのだ。

オーディオ専用ルームだけではなく、リビングルームなどの生活空間にスピーカーを設置することは多いだろう。せっかくスピーカーを買うなら、インテリアとしても一役買ってほしい。シリーズによって仕上げに差はあるが、デザイン性の高さはモニターオーディオ製品に共通したアドバンテージのひとつだ。

最後に付け加えると、モニターオーディオのスピーカーはトップエンドからエントリークラスまで先進技術の搭載に積極的だが、ユニットからネットワーク回路までの多くを自社内で一貫生産しており、素材類の大量購入によるコストダウン/スケールメリットもあるという。今回はそれらの総合的なアドバンテージをまじまじと感じさせてくれた取材となった。

音質という意味でも、外観のデザインという意味でもコストパフォーマンスが高い。モニターオーディオの製品は、初めて購入するスピーカーとしてぴったりと言える選択肢のひとつなのだ。

土方久明

土方久明

ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
プレゼント
価格.comマガジン プレゼントマンデー
SPECIAL
ページトップへ戻る