レビュー

おしゃれサウンドバー的に使える!? JBLの全部入りスピーカー「L42ms」

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これひとつで音楽再生できる一体型スピーカー「L42ms」。ARC対応のHDMI端子も持っている

これひとつで音楽再生できる一体型スピーカー「L42ms」。ARC対応のHDMI端子も持っている

今回紹介するJBLの「L42ms」「L75ms」はちょっと異色の一体型ミュージックシステムだ。BluetoothやWi-Fiでの音楽再生に対応するアンプ内蔵スピーカーなのだが、内容はかなり本格的。どちらもしっかりした2ウェイスピーカーによるステレオシステムが基本となっているうえ、ARC対応のHDMI端子まで備えるので、テレビとも組み合わせられるのだ。

横長の形状からもサウンドバー的な製品と思えるが、サイズはなかなか巨大で、「L75ms」が790(幅)×287(奥行)×216(高さ)mm、「L42ms」が617(幅)×234(奥行)×162(高さ)mm。背や奥行きが大きいため薄型テレビの手前に置くのではなく、基本的にはスピーカー自体を背の低いラックに置いて使うようなスタイルが想定されるだろう。
ここでは、少し小さめの新製品「L42ms」をレビューするとともに、先行していた「L75ms」も用意。音楽だけでなく、映像付きソースとの相性も検証してみたい

写真は「壁寄せ」テレビスタンドとして人気の「WALL」シリーズの利用イメージ。右のように「WALL」を使ってテレビを設置し、その前にローボード(ラック)を置いてしまう。この方法ならば「L42ms」「L75ms」ともにうまくテレビとも組み合わせられそう

写真は「壁寄せ」テレビスタンドとして人気の「WALL」シリーズの利用イメージ。右のように「WALL」を使ってテレビを設置し、その前にローボード(ラック)を置いてしまう。この方法ならば「L42ms」「L75ms」ともにうまくテレビとも組み合わせられそう

主要機能は「L42ms」と「L75ms」でほぼ共通だがサイズは結構違う

「L42ms」(上)と「L75ms」(下)。数値で見る以上にサイズ感が違うことがわかるだろう

「L42ms」(上)と「L75ms」(下)。数値で見る以上にサイズ感が違うことがわかるだろう

JBLのモダンクラシックデザインを採用した一連の製品は、JBLの往年の名機をモチーフとしながら、現代的な機能を持っていることが特徴。「L42ms」と「L75ms」はサイズを別にすれば外観がとてもよく似ていて、機能的にもほぼ共通だ。

Chromecast built-inとAirPlay 2に対応し、スマホなどを使ってワイヤレスでストリーミングサービスが楽しめるほか、Bluetoothにも対応。入出力端子はARC対応HDMI、アナログ音声入力(3.5mmステレオミニ)、フォノ入力(MM)、サブウーハー出力を備える。テレビやアナログレコードプレーヤー、CDプレーヤーなどともスムーズに接続でき、現代的な一体型ミュージックシステムとして十分すぎるほどの機能を備えている。

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2024/06/21 09:00
「L42ms」の背面。LAN、サブウーハー出力(RCA)、アナログ音声入力(3.5mmステレオミニ)、フォノ(MM)入力、ARC用HDMI端子などが並ぶ。音楽ストリーミング関連では、Spotify Connect対応のほか、Roon Readyにアップデート対応予定。日本でもスタートするはずのQobuz(コバズ)にもRoon経由で対応できる

「L42ms」の背面。LAN、サブウーハー出力(RCA)、アナログ音声入力(3.5mmステレオミニ)、フォノ(MM)入力、ARC用HDMI端子などが並ぶ。音楽ストリーミング関連では、Spotify Connect対応のほか、Roon Readyにアップデート対応予定。日本でもスタートするはずのQobuz(コバズ)にもRoon経由で対応できる

「L75ms」の背面。放熱のためのヒートシンクの下に「L42ms」と同様の端子が並ぶ。こちらのバスレフポートはフロント面に備わる。やはり、Roon Readyにアップデート対応予定だ

「L75ms」の背面。放熱のためのヒートシンクの下に「L42ms」と同様の端子が並ぶ。こちらのバスレフポートはフロント面に備わる。やはり、Roon Readyにアップデート対応予定だ

共通デザインの特徴として、多数の立方体が並んだ形状のQuadraxフォームグリルを採用。ボディはウォールナットの突き板仕上げとなっていて、パッシブスピーカー「クラシックL」シリーズに通じるデザインとなる。

スピーカー全体としては湾曲したフロント面を持つ扇形に近い形状だ。サイズの大きさで驚いてしまうかもしれないが、突き板仕上げはシンプルで質感は高い。本体天面には音量調整と入力切り替え用の操作ボタンと、音量と入力ソースを表示するインジケーターがある。これらはどちらも共通。

「L42ms」天面の操作ボタン。音量/入力切り替えのボタンのほか、選択した入力などを示すインジケーターがある

「L42ms」天面の操作ボタン。音量/入力切り替えのボタンのほか、選択した入力などを示すインジケーターがある

両機はサイズだけでなくもちろん搭載するスピーカーユニット構成にも違いがあり、小さめの「L42ms」は100mm径ピュアパルプコーンウーハー×2、ウェーブガイド付き20mmアルミドームツイーター×2の計4ユニット構成。シンプルな2ウェイスピーカーがひとつのボディにステレオで収まっている。これらは個別のD級アンプで駆動され、出力は75W×2(ウーハー用)、25W×2(ツイーター用)の総合200Wだ。扇形の形状を生かしてスピーカーを配置するバッフル面に角度が付けられており、より音が左右に広がるようにユニットが配置されている。

  「L42ms」の前面。Quadraxフォームグリルはマグネットで簡単に取り外しできる。こうして見ると、「L75ms」とほぼ区別できないほどよく似ている

「L42ms」の前面。Quadraxフォームグリルはマグネットで簡単に取り外しできる。こうして見ると、「L75ms」とほぼ区別できないほどよく似ている

「L42ms」のグリルを外すと、左右対称にウーハーとツイーターが配置されている。ちょうどスピーカーを横に倒して並べたような形だと言える。本体サイズが大きいことはデメリットになりうるいっぽう、「普通のスピーカー」並みのユニットを搭載して音質を強化できるのが強みだろう

「L42ms」のグリルを外すと、左右対称にウーハーとツイーターが配置されている。ちょうどスピーカーを横に倒して並べたような形だと言える。本体サイズが大きいことはデメリットになりうるいっぽう、「普通のスピーカー」並みのユニットを搭載して音質を強化できるのが強みだろう

いっぽう、大きめの「L75ms」は133mm径ピュアパルプコーンウーハー×2、ウェーブガイド付き25mmアルミドームツイーター×2、これに加えて中央に100mm径ピュアパルプコーンのミッドレンジが配置された計5ユニット構成。駆動するD級アンプは125W×2(ウーハー用)、25W(ミッドレンジ用)、25W×2(ツイーター用)の総合350W。両機ともウーハーはホワイトのパルプコーンで、補強のためのリブも設けられているなど、往年のJBLスピーカーを踏襲したものになっている。

「L75ms」の前面。湾曲したフロント面はJBLスタジオモニターのコンプレッションドライバーに組み合わせられるホーンのようにも見える

「L75ms」の前面。湾曲したフロント面はJBLスタジオモニターのコンプレッションドライバーに組み合わせられるホーンのようにも見える

「L75ms」のグリルを外した状態。中央にミッドレンジユニットが追加された3ウェイ構成。ウーハー、ツイーターが左右対称で配置されていることは「L42ms」と同様だ

「L75ms」のグリルを外した状態。中央にミッドレンジユニットが追加された3ウェイ構成。ウーハー、ツイーターが左右対称で配置されていることは「L42ms」と同様だ

サイズとスピーカー構成が両者の大きな違いとなるが、どちらも高さと奥行きがあるため、サイズ感としてはかなり大きいと感じる。並べてみると「L42ms」が可愛らしく感じるほどだが、「L42ms」でも薄型テレビと一般的なテレビ台に置くのは難しいだろう。

付属のリモコンは共通。円形の十字ボタンで、音量(上下)、曲送り/曲戻し(左右)の操作が可能。入力切り替えボタンのほか、音の広がりを強める「SFX」ボタンもある

付属のリモコンは共通。円形の十字ボタンで、音量(上下)、曲送り/曲戻し(左右)の操作が可能。入力切り替えボタンのほか、音の広がりを強める「SFX」ボタンもある

雄大で堂々とした「L75ms」とキビキビとスピード感のある「L42ms」

それでは音を聴いてみよう。どちらもネットワーク接続を行ったうえで、iPhoneの「8player」を使ってNASに保存した音楽ファイルを再生し、AirPlay 2経由で鳴らしている。

まず、「L75ms」はさすがスケールの大きなサウンドで、クラシックのオーケストラ演奏などを聴いても大編成のスケール感をしっかりと再現できる。低音も力強いし厚みのある音で聴き応えがある。全体的な傾向としては歯切れよく生き生きとした鳴り方で、往年のJBLらしい力強さと勢いのよさが存分に楽しめる。 「FINAL FANTASY VII REBIRTH」のサントラ盤から、主題歌の「No Promises to Keep」を聴くと、ボーカルが前にでてハツラツとした声で歌ってくれる。音像定位に実体感がありニュアンスもていねいに再現されるなど、昔のJBLに感じた粗っぽさもない。JBLらしい鳴りっぷりのよさと上質な再現性がうまく融合されていて、現代的に洗練されたものを感じる。バトルシーンなどの雄壮な曲を聴くと、持ち前の勢いのよさや力強さが生きて、雄大でしかも迫力満点のサウンドを楽しめた。

また、音の広がり感を高める「サウンドフィールドエキスパンダー(SFX)」機能も試してみた。元々音場は十分に広いが、「SFX」をオンにするとさらに広がりと包囲感が出てくる。ただし、特に音楽だとセンターの定位がやや甘くなり、どちらかと言うと部屋全体に音楽が広がる感じになるので好みは分かれるだろう。映画など映像付きのコンテンツならば気持ちよい包囲感が出てサラウンド的な音場になる。これはリモコンのボタンで切り替えできるので、積極的に使い分けよう。

「L42ms」は「L75ms」の劣化版ではない!

続けて「L42ms」で同じ楽曲を再生すると、さすがにスケール感は一回り小さくなるし、低音の伸びにも少し差を感じる。だが、そのぶんキレ味と言うかスピード感のある鳴り方になって、キビキビと元気よく鳴る。クラシックのオーケストラでは中低域の厚みがしっかりとしているので、コントラバスや大太鼓のような低音楽器も十分な迫力や量感が得られる。

ボーカル曲の「No Promises to Keep」を聴いても、ボーカルの定位のよさや声の鮮明さなどはむしろ「L75ms」よりもすぐれているかと思うくらいで、ディテールの再現性が高い。単に小型化して音まで小さくなってしまうのではなく、小型ならではのよさをしっかり出しているのは面白い。音の傾向としては明瞭で生き生きとした音である点は変わらないのに、それぞれしっかりと魅力的な音に仕上げているのはさすがだと感じた。

どちらも並みのサウンドバー以上の実力で映像ソースを鳴らす

最後は「Apple TV 4K」を使用して、映像出力はプロジェクターに接続、音声はAirPlay 2で「L75ms」と「L42ms」に出力して映像コンテンツを再生してみた。

本来ならば、ARC対応のHDMI端子をテレビとつなぐべきであることはわかっているのだが、自宅でうまくテレビと一緒に置くことができず、また120インチの映像に合わせても負けない音場の広がりがあったため、今回の形でプロジェクターと組み合わせている。コンパクトなプロジェクターの場合、HDMI端子がARCに対応していることも多い。その場合は「L75ms」や「L42ms」との組み合わせはよりスムーズだ。

「Apple TV 4K」で映像コンテンツを再生。テレビとの組み合わせならば、「Apple TV 4K」→テレビ→「L75ms」もしくは「L42ms」とそれぞれをHDMIで接続できる。今回の方法はイレギュラーではあるが、活用方法のひとつとして参考にしてほしい

「Apple TV 4K」で映像コンテンツを再生。テレビとの組み合わせならば、「Apple TV 4K」→テレビ→「L75ms」もしくは「L42ms」とそれぞれをHDMIで接続できる。今回の方法はイレギュラーではあるが、活用方法のひとつとして参考にしてほしい

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2022/04/24 09:00

「ザ・クリエイター/創造者」のバトルシーンを中心に見てみたが、「L75ms」では銃撃や爆発などの音の迫力があり、「SFX」をオンにすればサラウンド音場的な広がりも十分に得られる。

「L42ms」では、重低音の迫力でやや差が付くが、セリフの情感や細かな音まで鮮明でこちらも臨場感としては十分。銃撃などの迫力も不足はない。どちらも勢いのよさやスピード感のある音なので、音のキレ味が求められるような作品も満足度はかなり高い。どちらも基本的な音の実力が高いので、並みのサウンドバーでの再生とは別格の音が楽しめる。 音の点で両者を比べるならば、やはり低音の伸びが選択の際の決め手になりそうだ。「L75ms」のほうが音楽でも映画でもスケール感が大きいし、迫力もある。とはいえ「L42ms」も低音感は十分だし、キレ味のよさや細かな再現性のよさがあるので、こちらも捨てがたい。

広めのリビングで音量も大きめに鳴らせるならば「L75ms」だが、一般的なリビングで音量もあまり大きくできないと場合だと「L42ms」のほうが満足度は高いだろう。設置のしやすさだけでなく、音の点でも「L42ms」のほうが日本の一般的な住環境にマッチしていると感じた。

まとめ:置き方に悩むモデルだがおしゃれリビングに検討する価値はある

ローボードに設置された「L42ms」のイメージ

ローボードに設置された「L42ms」のイメージ

「L42ms」と「L75ms」はHDMI端子で手軽にテレビとも連携できるので、サウンドバー的な使い方もできる。ただし、設置にはひと工夫する必要があるだろう。見た目も含めてきれいに設置するならば、スピーカーだけを背の低いラックに置いて薄型テレビは壁掛けもしくは壁寄せとするのがよさそうに感じる。置き方や音場の広がりを考えれば、ARCに対応したプロジェクターと組み合わせるのもよさそうだ。

先行して発売された「L75ms」の価格がこなれてきていることもあり、価格.comでの最安価格は現在(2024年6月13日時点)あまり変わらない。音質で「L75ms」がすぐれているのはすでに述べたとおりだが、現実的な選択のポイントはリビングなどに置けるかどうか、ということになるだろう。

スペース的にも音量(音漏れ)的にも、日本の一般的な住環境を考えるとちょっと置き場所に悩んでしまうモデルではあるが、一体型システムとしての実力はかなり優秀だ。その意味でも少し小さめの「L42ms」が登場したことはありがたい。このデザインやスタイルが気に入った人には満足度は高いはず。「L42ms」か「L75ms」がひとつあれば、家庭内の音楽再生を一手に任せられるのだから。映画の音響再生やアナログレコードの再生も含めて、インテリア性を重視したおしゃれなリビング用スピーカーを考えている人にはぴったりの選択ではないだろうか。

鳥居一豊
Writer
鳥居一豊
オーディオ専門誌の編集スタッフを経て独立。マンガ、アニメ、ゲームをこよなく愛し、視聴取材などでも数多くの名作を取り上げる。ホームシアターのために家を新築して早10年。現在は8.2.4ch構成のDolby Atmos対応サラウンドシステムと120インチスクリーン+プロジェクターによる視聴設備を整えている。ホームシアターは現在でもまだ進化する予定。
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柿沼良輔(編集部)
Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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