大口径。カメラマニアもガンマニアもワクワクさせるこの響き。それはオーディオマニアも同じです。スピーカーでもヘッドホンでもそしてイヤホンでも「大口径ドライバー搭載」には特別なワクワクがあります。
ですがイヤホンへ大口径ドライバーを搭載するにはさまざまな難しさがあり、カナル型完全ワイヤレスイヤホンへの超大口径ドライバー搭載は特に困難です。
……それってつまり有線イヤホンだったら超大口径ドライバーを搭載できるってこと?
そうです! 今回はその「超大口径ドライバー搭載有線イヤホン」に注目。このジャンルの最新製品、FIIO「FD15」とiBasso Audio「3T-154」を紹介していきます。
いまあえて有線イヤホンを使う理由は人それぞれです。無線伝送での音質ロスを嫌って。ケーブルレスの身軽さよりバッテリーレスの身軽さを好んで。ワイヤードな感じが逆にファッショナブル。
そんななかで今回は「超大口径ダイナミック型ドライバー」という要素に注目してみましょう。
最新の超大口径ダイナミック型イヤホン代表、FIIO 「FD15」(写真左)とiBasso Audio「3T-154」(写真右)
"超"大口径に明確な定義はありませんが、仮に13mm超を目安とします。そこまで口径が大きくなれば当然、ドライバーの全体サイズも大きくなりがち。となれば当然、それを搭載するイヤホンの筐体も大柄に。しかもダイナミック型の場合はそれを素直に動作させるため筐体側に空気容積の多さや何らかの音響機構の搭載も必要とされ、筐体の大型化はなおさら避け難いことになるのです。
加えてアンテナやチップや回路やバッテリーやマイクも筐体に搭載しなければならない、完全ワイヤレスイヤホンへの大口径ダイナミック型ドライバー搭載はさらに難しい話になります。それで筐体が巨大化してしまえば装着安定性の悪化にケースも巨大化と、よろしくないことばかりにつながってしまうのです。
ただし人気のオープンイヤー型イヤホンや“Pro”でない「AirPods」のようなイントラコンカ型は例外。イヤーピースを耳に入れて装着するカナル型と比べて、装着位置や装着方法の違い、ドライバー周りを密閉する必要性の薄さなどから、大口径ダイナミック型搭載のハードルは低めです。というかカナル型と比べて低音が弱くなりがちという弱点を大口径ドライバー搭載で補う狙いから、その採用例はむしろ多かったりします。
オープンイヤー型完全ワイヤレス、Cleer「ARC 3」のダイナミック型ドライバーは何と16.2mm!
ですがカナル型の完全ワイヤレスとなれば大口径ダイナミック型の搭載例は少数。有名どころではJVCの重低音シリーズ「XX HA-XC91T」が12mm、最近の製品だとSOUNDPEATS 「Air4 Pro」が13mmの搭載に成功しているくらいでしょうか。
SOUNDPEATS「Air4 Pro」が採用の13mm径がカナル型完全ワイヤレスで大口径と装着感を両立できる限界付近?
ではワイヤレスに由来する制限がない有線イヤホンでは、どれほどまで超大口径なダイナミック型ドライバーを搭載でき、それによってどのようなサウンドを実現できるのでしょうか?
その答えを示す製品のひとつ、いやふたつが、今回紹介する2モデル、FIIO「FD15」とiBasso Audio「3T-154」です。
iBasso Audio「3T-154」(写真左)とFIIO「FD15」(写真右)
「FD15」は13.8mm、「3T-154」はまさかの15.4mmのドライバーを搭載する、ダイナミック型一発のシングルフルレンジ構成。どちらも超大口径有線イヤホンを代表するにふさわしいモデルで、それでいてお値段も完全ワイヤレスのハイエンドと同程度に収まっています。
この両モデルで超大口径ダイナミック型ドライバーでこそ実現できるサウンドを、そしてそれは「いまあえて有線」の理由になり得るほどの魅力なのかを確かめていきましょう。
まずは前提として、イヤホンにおける大口径の意味と強みを復習しておきましょう。
ここでいう口径とは主に円形である振動板の直径のこと。ではその振動板とは?
イヤホンに入力された電気的な音声信号は磁気回路によって物理的な動きに変換、振動板が前後に動くことで空気が動かされ、音に変換されます。これが振動板の役割です。
その役割において振動板の口径の大小=面積の大小は、振動板が空気を動かす仕事量の大小に直結します。「振動板の面積を倍にして振動板の前後動のストローク距離は維持したなら動かせる空気の量は倍」「振動板の面積を倍にしたらストローク距離を半分にしても動かせる空気の量は維持」みたいな計算になるのです。
そして動かせる空気の量の多さは低音再生において特に必要とされます。しっかりとした低域再生を実現するにはたくさんの空気を動かしやすい大きな振動板が有利というわけです。
といっても大口径の魅力は低音だけではありません。「低域再生能力に根本的な余裕があれば低音を無理して稼ぎ出す設計は不要になり、すると中高域まで含めた全体をきれいに鳴らしやすくなる」のような波及効果なのか、大口径振動板ドライバー搭載機は、イヤホンでもヘッドホンでもスピーカーでも、力みのない素直な鳴り方をしてくれるものが多い印象です。
さてしかし世の中は大口径ダイナミック型搭載イヤホンばかりになっていたりはしません。ということは大口径には何らかの弱みもあるということです。
まずひとつは、序盤でも触れたドライバー自体のサイズと必要とする音響スペースの問題。これらは有線でも無視はできません。超が付くような大口径を採用するとなれば、「大型化しても装着感を確保するための形状の工夫」「大型化を最小限に止めるための音響的な工夫」などが必要です。その難しさが超大口径を採用するにあたってのハードルとなります。
そして超大口径には、それを搭載するための全体設計の難しさだけではなく、ドライバー自体の設計の難しさもあります。大口径=大面積となれば重量も増えがちなその振動板を力強く確実に駆動するためには強力な磁気回路も必要。加えて特に大口径ならではの課題となるのは、振動板の頑強さを確保する難しさです。
イヤホンの振動板は再生する音の周波数に合わせて超高速で前後動をさせられます。板状のものがそんな超高速で動かされたら、たわんだり歪んだりしやすいことは想像できるでしょう。ですが振動板が変形すれば振動板によって動かされる空気の動きも乱れ、ひいては再生音も乱れます。特定の周波数の音にだけ癖が出る、音に歪みを生じさせてしまうなどです。
ですから振動板には変形しない頑強さが求められます。しかも同じ厚さの紙でも名刺サイズと写真サイズ(L判)では後者のほうがペラッとした感じになるように、振動板も厚みが同じであれば小口径より大口径のほうが変形しやすくなるのです。頑強さの確保は大口径においてはより難しい課題となります。
じゃあ厚くしよう! というわけにはいきません。すると大口径の大面積×厚みで振動板の重さがドンと増してしまうのです。その重さに対応させるために磁気回路をさらに強化となればイヤホン全体もさらに大柄になり……
だからこそ「厚みに頼らずに頑強な振動板」の実現手法が各社大口径ドライバーの特色になります。加えて「装着感の確保」「大口径ドライバーのポテンシャルを引き出す音響構造」などにも工夫や技術が求められ、各社各製品の個性が生まれているのです。
では今回ピックアップの両製品について、その工夫や技術、そこから生まれている個性や魅力を見ていきましょう。
FIIO「FD15」。ステンレス材の魅力を生かし、ブラックとシルバーのシンプルな2色のカラバリ展開となっています(写真はブラック)
FIIOにおいてダイナミック型ドライバーによるシングルフルレンジ構成のカナル型イヤーモニタータイプを示す"FD"型番の最新モデルが「FD15」です。振動板口径は13.8mm。先代「FD5」とフラッグシップ機「FD7」の口径12mmを超え、シリーズの現行最大口径モデルとなります。
その超大口径を成立させている大きな要素が振動板材として採用するマグナリウム(アルミにマグネシウムを添加した合金)です。純アルミとの比較で強度は向上、重量は軽減。素材自体が高強度だから厚みに頼らず振動板を頑強にでき、素材自体が軽量だから軽くもできる。超大口径振動板にもってこいと言えます。
加えてガスケットと呼ばれる部位にはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を使用し、その効果で振動の有効領域を大幅に拡大。超大口径13.8mmの面積を余すところなく活用します。振動板の有効振動面積は「FD5」から約40%もの増加とのことです。
マグナリウム振動板&DLCガスケットで有効振動面積を増やし、超大口径の強みを引き出しています
それを駆動する磁気回路周りも当然充実。磁束密度1.5テスラの強力マグネットを先代「FD5」から引き継いだうえで、ボイスコイル直径は6.2mmから8.6mmに拡大。超大口径化された振動板に対しての力強く正確な駆動力を確保してあります。
その大口径ドライバーのポテンシャルを正しく引き出すための、筐体側の音響構造にも抜かりはありません。ドライバー背面側に新たな音響構造「F.T.B.S」を搭載。これにより深みのある低音と繊細な表現を可能としているとのことです。
「F.T.B.S」と名付けられている、この独特すぎな形状の正体は?
外観的にもこの3つ並びの空気孔が特徴的
何かテスラバルブ見たいな形だなあと思いつつメーカーの英語サイトに行ってみると、「"Tesla Valve" bass enhancement acoustic technology」との記述が。
テスラバルブとは、流体を一方向にだけスムースに通し、逆方向への流れには抵抗を生じさせる逆止弁の機能を機械的な動作なしでバルブ内の形状だけで実現した発明です。発明したのは先ほどの磁束密度の単位「テスラ」の由来にもなっている発明家のニコラ・テスラ氏。
その応用で筐体の内から外、外から内への空気の流れを制御し、ドライバー背面の空気圧などの最適化を行う音響技術。それがFIIOの「F.T.B.S」ということでしょう。「FD15」、磁力だけでなく気流制御においてもテスラ力が強い!
いっぽうでドライバー前面、音を音導管に放出する側には、同社定番の「アコースティック・プリズム・システム」技術を搭載。計算された形状の拡散器による調整で、高域定在波の排除、全体的な音の拡散性の改善といった効果を得ています。
ここまで紹介してきた超大口径ドライバーや音響機構を搭載する「FD15」ですが、筐体は不思議なほどコンパクト。測ってみたところ筐体主部の直径は、13.8mmドライバー搭載なのに15.5mmほどしかありませんでした。超大口径を搭載しながら全体として普通のサイズ感に収められているのが驚きです。ノズルの角度、リケーブル端子周りのカットなど形状の工夫もあり、総合的な装着感も、超大口径にしてはという前置きもなしで、普通に問題ないレベルに収められています。
ほかの注目ポイントとしては、
●筐体材はサージカルステンレス316L
●付属の2種の音導管の交換によるサウンド調整
●単結晶銅線と銀メッキ単結晶銅線の混合480芯ケーブル
●3.5mmシングルエンド/4.4mmバランス交換式プラグ
●MMCXリケーブル
●超豊富な付属イヤーピースによる装着感と音の調整
といったあたり。欠けている要素など何もない!という充実っぷりです。
音導管は音質の異なる黒リングと赤リングの2種が付属
3kHzより下にはほぼ影響を出さずに3kHz超の高域のみ調整
イヤーピースこんなに付属!音も装着感も違います
そしてそのサウンドは……iBasso Audio「3T-154」との対比も興味深かったので後ほどまとめてお伝えします。
iBasso Audio「3T-154」。いかにも超大口径っぽいゴツゴツ感を打ち出したフォルム!こちらもシルバーとブラックの2色展開です(写真はブラック)
iBasso Audio「3T-154」、ぱっと見だと味気ない名前に思えたかもですが、実は超ストレートに名で体を表している名前だったりします。「磁束密度3テスラ+振動板径15.4mm」がこのモデルの特徴!ということです。
まずは面積もインパクトも大きすぎる15.4mm超大口径振動板。これはもう〇〇と比較して何%アップとかではなく、「シンプルに圧倒的にデカい!」という理解で十分です。その圧倒的超大口径を成立させている技術要素を確認していきましょう。
デカァァァァァいッ説明不要!! ですが説明します
振動板素材については「ベリリウムメッキ振動板」との記載。いわゆるベリリウムコーティングですね。コーティングされている側については記載が特にないので、一般的な高機能樹脂の類いかと思われます。
ベリリウムという金属は、高剛性、軽量、ほかにも諸々の音響に関わる特性にもすぐれ、スピーカーの振動板素材として古くから重用されてきたものです。近年は加工技術が進展し、イヤホンの振動板においても、特にコーティング材という形で採用例が増えています。単体でも十分に優秀な特性を持つ振動板素材を、ベリリウムでコーティングすることでさらにすぐれたものへとグレードアップさせるのです。
加えて「3T-154」の振動板はエンボス加工も採用。振動板に立体的な凹凸を刻むことで強度を上げています。材質と形状の両面攻略で頑強かつ軽量な超大口径振動板を成立させているわけです。その超大口径振動板を磁束密度3テスラのマグネットを採用の強力磁気回路で駆動! というのが「3T-154」の超大口径ドライバーの構成となります。……って3テスラ!? 強すぎ!
これを聞いて「じゃあ『FD15』の1.5テスラってしょぼくね?」と思った方もいらっしゃるかもですが、3テスラが異常なだけです。一般的には1.5テスラも十分に強力。「FD15」も撮影時には左右のイヤホンが引き合ったり反発したりして置き方に苦労しました。
さてその超大口径ドライバーを搭載する「3T-154」の筐体のサイズ感はというと、再び「シンプルにデカい!」と表現させてもらいましょう。カナル型イヤホンとして最大クラスのひとつかと思います。
製品ページを眺めても筐体内の音響構造について特段の説明は見当たらないので、このモデルは基本的には正攻法で音響を整えていると推測できます。つまり「大口径振動板がストレスなく動ける十分な空気容積を筐体内に確保」です。筐体内の空気容積を確保しようとすれば必然、筐体は大きくなります。超大口径ドライバーの搭載スペースとそれが求める空気容積を合わせた結果がこの大型イヤホンの誕生というわけです。
空気孔も小さなものをいくつか設置
もちろん、「音質追求したら大型化しちゃったから装着感がイマイチなのは許してね」という投げっぱなしは行っていません。大型化は受け入れつつ、そのうえで装着感をできるだけ引き上げるための工夫が行われています。
その意図と効果が特にわかりやすいのは、筐体材としてマグネシウム合金を採用していることです。アルミ合金類と比べてもさらに軽量なそれのおかげで片側9.4gという軽さを達成。実物の「大きさの割に軽ッ!」感は驚きでした。その軽さによって装着の安定感などが高められています。
加えてケーブルの耳周り部分はしっかり目にイヤーハンガー的な形状を持たされており、その補助によっても装着感をサポート。
ケーブルの耳周りはしっかりとした形でイヤーハンガー的にも機能
とはいえデカいはデカいので、個人個人の耳への合う合わないは出やすいでしょう。できれば実店舗での試着を経て購入したい製品です。
ほかの注目ポイントとしては、
●取り外し可能ノズル(音質調整用の機構ではない)
●高純度銀メッキ銅ケーブル
●3.5mmシングルエンド/4.4mmバランス交換式プラグ
●0.78mm 2pinリケーブル
●超豊富な付属イヤーピースによる装着感と音の調整
など。イヤーピースによるフィッティング調整の選択肢が多く用意されているのは、このモデルでは特にうれしいところです。あとプラグ交換システムがイモネジ固定式なのは珍しい仕様。そのための工具も付属します。
付属ノズルは音質調整用ではなくスペアパーツ
大型ピン採用で導電のための接触面積を増やしてあるのが特徴のプラグ交換システム
こちらも付属イヤーピースは豊富。入念に選んで装着安定性を引き上げたいところです
ではそれらの要素から生み出される両機のサウンドの印象をお伝えしていきましょう。両機ともイヤーピースは音調よりフィット感重視で選び、「FD15」の交換式音導管は高音域も伸ばすタイプの黒リングを選びました。赤リングの印象については後述。再生環境はUSB接続スティック型ポータブルアンプ、iBasso Audio「DC-Elite」です。
まず両者の持ち味で対照的だったのが、低音の重心や密度感といった部分。「FD15」はこれぞ低音!という美味しい帯域が充実。ベースやドラムスの厚みや太さや重さ、グッとくる力感や弾みの表現を際立たせてくれました。対して「T3-154」は低音全体をフラットに届けてくれた印象。タイトで力みを感じさせない低音、そこから来る抜けやキレが気持ちよかったです。
たとえば星街すいせいさん「ビビデバ」では、「FD15」はサビのダンサブルでクラブ感のあるリズムをさらに躍動させてくれ、「3T-154」は中間部のヒップホップ的ニュアンスのリズムの抜け感をさらに生かしてくれたといった具合。どちらも低音描写にすぐれつつ、その方向性はそれぞれ異なりました。
その音調傾向は中高域でも共通。「FD15」の特にミドルレンジはリッチ。対して「3T-154」は中高域も癖なくにすっと伸びています。
ホセ・ジェームズさん「Just The Two of Us」のエレクトリックギターは、弦振動を右掌で押さえて制御するパームミュート奏法によると思われる、音色における「パキッ」と抜ける成分と「モコッ」っとこもる成分の割合をフレーズ中で自在にブレンドしていく職人技での表現が聴きどころ。「FD15」はそのモコッのほうの肉感が魅力的で、モコッではなく「モチッ」と表現を変えたくなるほどです。そしてそのモチッと感のおかげでパキッと感も引き立てられていました。対して「3T-154」は、厚みや肉感は十分に確保しつつもそこを強くは主張せず、パキッとした抜け感のほうを強めてよりストレートなタッチでの表現。ギター好きな方に向けて言うならば、「FD15」はP-90的な音色、「3T-154」はストラトらしい音色で聴こえるみたいな感じです。つまりどちらが正しいわけでもなくどちらも魅力的。
上記以外のそれぞれの好印象ポイントも上げておきましょう。
「FD15」はS/N感にもすぐれ、静かさを背景にやや大柄な音像をクッキリと描き出します。ビシッと明確でクリア、現代的な雰囲気を醸し出してくれます。なお赤リングの音導管は、周波数グラフどおり、高域を適度に穏やかにしてくれる印象でした。いずれにせよ、装着感との兼ね合いも出てくるイヤーピースでの音調調整と比べ、音調だけを変化させられる音導管交換は使い勝手がよいです。積極的な活用をおすすめします。
「3T-154」は広い空間にスリムでシュッとした音像が置かれることで余白も残り、その余白によって響きや余韻の成分が際立ちます。アコースティック録音も堪能しやすいタイプ。リファレンス的、モニター的な音調と評してもよいかもしれません。
というのがサウンドインプレッションなのですが、その内容自体は超大口径云々をあまり感じさせないものだったことにちょっとがっかりした方もいらしたかもしれません。
ですがそれはつまり、この両モデルにおいて超大口径ドライバーの採用は、いかにも超大口径っぽい音を出すことを目的としたものではなく、それぞれのメーカーが目指す高音質を得るための手段として選ばれたものなのだということなのでしょう。オーディオとして至極真っ当な在り方です。
しかし散々述べてきたように、超大口径モデルの設計は簡単ではなく、安易に選べる手段ではありません。だがあえて超大口径という手段を選び、それを成し遂げ、目指した高音質を実現した。サウンドだけではなくその心意気も、「FD15」と「3T-154」、現代最新の超大口径ダイナミック型ドライバー搭載機の魅力。そう言えるのではないでしょうか。
その心意気やよし!
そう感じた方はぜひ、超大口径有線イヤホンに注目してみていただければと思います。