ネットワークオーディオプレーヤー/プリアンプの「LINK 10n」。筐体の基本構造は「MODEL 10」「SACD 10」と共通。イルミネーション機能も搭載する
マランツがネットワークオーディオプレーヤー/プリアンプ「LINK 10n」を発表した。先に発表されたプリメインアンプ「MODEL 10」とSACD/CDプレーヤー「SACD 10」に続くマランツ最上位モデル「10」シリーズの一員で、希望小売価格は2,200,000円(税込)。発売日は2024年11月下旬の予定だ。
本体色はシャンパンゴールドとブラック(写真)
「LINK 10n」の背面。プリアンプとしての機能を持つため、フォノを含むアナログ音声入力も装備。デジタル音声入力もUSB Type-A/Type-Bを揃える充実ぶり。さらにはARC専用のHDMI端子まで備えている
冒頭のとおり、「LINK 10n」はマランツの最上位モデル「10」シリーズのネットワークオーディオプレーヤー/プリアンプだ。ネットワークオーディオプレーヤーとしての機能は、D&Mホールディングス独自のネットワークオーディオ機能「HEOS(ヒオス)」に準じたもの。最大384KHz/32bitのPCM、11.2MHzのDSDファイルをネットワーク経由で再生可能だ。
Amazon Musicでのハイレゾ再生に対応していることも「HEOS」ならではの特徴と言える。さらに、「LINK 10n」はRoon Readyに後日のファームウェアアップデートで対応予定。総合音楽管理ソフト「Roon」に対応するとなれば、ネットワークオーディオプレーヤーとしての利便性がさらに上がることになる。
また、「LINK 10n」はプリアンプ機能も持っている。そうは言っても、一般的なネットワークオーディオプレーヤーにあるようなD/Aコンバーター(DAC)付帯機能としての可変出力(バリアブルアウト)のことではない。「MODEL 10」と同等のプリアンプをそのまま搭載しているのだ。こうした充実した仕様から、「LINK 10n」のコンセプトは「最高の音質」と「最高に便利」の両立であるとされている。
「LINK 10n」は“ちゃんとした”プリアンプを内蔵していて、パワーアンプを直結したシステム構築が可能。手元のアプリでネットワークオーディオプレーヤーとして楽曲を選びつつ、音量調整なども可能。とても便利に使える
プリメインアンプ「MODEL 10」と組み合わせる場合、「MODEL 10」のパワーアンプに直結することが想定される。このとき、音量調整などはアプリで行える。“プリアンプ被り”がもったいない印象もあるが、プリアンプを分けることで音質向上も期待できそうだ
「ネットワークオーディオプレーヤーが可変出力を持っていたとしても、もしそれが妥協の産物であれば使いたくない……」。そういう気持ちはとてもよくわかる。そこでマランツが提案したのは、妥協なしのプリアンプ部を搭載したネットワークオーディオプレーヤーだったというわけだ。
そして、その実現方法を説明する方法は実に簡単だ。あくまで大雑把に言えば、ではあるものの、「10」シリーズの筐体を流用しつつ、「SACD 10」のD/Aコンバーター(DAC)と「MODEL 10」のプリアンプを搭載したのだ。ネットワークオーディオプレーヤー機能は「HEOS」を使えばよいわけで、ブランドの資産を最大限有効活用した製品と言えそうだ。
「MODEL 10」と「SACD 10」の詳細は関連記事を参照いただくとして、以下に製品のポイントをあげておこう。
筐体パーツの主要部分は「MODEL 10」「SACD 10」と共通。フロントとサイドパネルは豪華なアルミ削り出し仕様だ
D/Aコンバーター部は「SACD 10」と同様。オリジナルのディスクリート(単体パーツ組み合わせによる)D/Aコンバーター「MMM」を搭載。最終段のアナログフィルターを改善したことが「SACD 10」および「LINK 10n」でのポイントとしてあげられていた
デジタル/アナログ回路それぞれに専用電源回路が充てられるなどの仕様も「SACD 10」と同等
マランツオリジナルのディスクリートアンプモジュールHDAMを採用することなど、プリアンプ回路は基本的に「MODEL 10」とまったく同じだという
プリアンプ回路は「MODEL 10」と同等としながらも、実は少し異なる部分がある。より高密度に実装されているという点だ。筐体に余裕のある大型モデルとはいえ、少し“詰めて”配置せざるを得なかったようだ
アンプは「MODEL 10」を2台使った「コンプリート・バイアンプ」システム。L/Rchのスピーカーをそれぞれ2台のアンプで鳴らす豪華なシステムだ
最後に、「LINK 10n」を試聴できたので、そのインプレッションをお伝えしよう。アンプは「MODEL 10」を2台使ったシステムのため、あくまでネットワークオーディオプレーヤーとしての音を聴くという趣向だ。
再生されたのは、メロディ・ガルドーの「Live in Europe」。「MODEL 10」発表時の試聴でも感じたことだが、微細情報の豊富さからくる臨場感がすばらしい。こうしたライブ音源を聴くと、増幅されてPA用スピーカーから出ているライブ会場の音をそのまま聴いているような感覚すらある。ブルーノート東京で小規模編成バンドの良演奏を聴いたとき、まれに味わえるような体験だ。
情報量が出ていると言っても、やはりエッジを立てるようなわざとらしさがないことが美点だろう。仲野真世の11.2MHz DSDで録音された「MIWAKU」では、録音時に自然と入ったと思しきごく低い帯域を含む音をストレートにワイドレンジに発してくれる。
冒頭に紹介したように、「LINK 10n」はAmazonミュージックでハイレゾ再生が可能だが、さらにRoon Readyに対応予定であることにも注目したい。少なくとも「Roon」経由で、日本での正式サービスインが告知されているハイレゾ対応ストリーミングサービス「Qobuz(コバズ)」の再生ができるということだ。
特にプリアンプとネットワークオーディオプレーヤーを兼ねるシステムを検討している人にとっては、コストパフォーマンスという面でも特筆できるだろう。1台100万円前後のプリアンプとネットワークオーディオプレーヤーを別で購入すると思えば、「LINK 10n」の価格は“お買い得”に感じられてくるかもしれない……。
プリアンプ一体型と堂々と謳うネットワークオーディオプレーヤーはなかなか珍しい存在だ。システムを簡潔にまとめられる妥協のない製品として注目してはいかがだろうか。