レビュー

スタジオリファレンス用イヤホンのスタンダードモデル「Angie」レビュー

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

カスタムIEM(インイヤーモニター)の生みの親とも呼ばれているジェリー・ハービー氏が主宰するオーディオブランド「JH Audio」から登場した、スタジオリファレンス用イヤホンのスタンダードモデル「Angie Universal Fit」(以下、Angie)。店頭実売価格37万円の最上位モデル「Layla Universal Fit」(以下、Layla)の下位に位置づけられた妹分だ。Laylaと同じ技術を採用しつつ搭載するドライバー数を減らすことにより、コストパフォーマンスを高めたモデルで、価格.comでの最安価格は142,200円(2015年7月3日時点)となっている。イヤホンの中でも飛びぬけて高価格な最高級イヤホンの下位モデルはどんな音がするのか。AVライター野村ケンジ氏の音質インプレッションとともにお伝えしていこう。

ローリングストーンズの名曲の名を冠した、JH AudioのAngie。「THE SIREN」シリーズのフラッグシップモデルLaylaの妹分となるイヤホンだ

高域4基+低域・中域に各2基のBAドライバーを搭載

AngieとLaylaの大きな違いは、まずドライバー構成だ。ドライバーはバランスド・アーマチュア(BA)で、Laylaが低域・中域・高域のドライバーを各4基ずつ計12基搭載するのに対し、Angieは低音と中域を各2基+高域を4基配置した計8基構成を採用している。低域と中域の数が減った分の見劣りはあるが、逆に搭載するドライバーが少ない(≒音源が減る)ほど音がまとまりやすいとも言われている。グルーヴ感などでは、Laylaとは一味違った音色が楽しめそうな構成となっている。

ドライバーは、同社がパテントを取得している4基のドライバーをひとつにしたミニクワッドドライバー構成「soundrIVe Technology」を用いており、これは姉妹機でともに使われている。また、クロスオーバーには4次(≒24db/oct)の急峻なスロープを採用しているところもLaylaと同様。しかし、AngieはLaylaよりドライバー数が少ないため、クロスオーバーのチューニングもすべて同じとは考えにくい。こうしたところでも細かい差があるのではないだろうか。

ケブラーファイバー採用のボディはやや小柄に

次に大きな違いがシェルだ。まず上位モデルに比べてドライバー数が4基減っているため、ボディも小柄になっている。シェル素材も異なり、カーボンファイバーからケブラーファイバーに、ベゼルもバーナー仕上げのチタンからブラックアルミに、フェイスプレートもカーボンファイバーからリアルカーボンに変わっており、その素材はほぼ一新されている。クオリティが落ちているという印象を受けるかもしれないが、そういった心配はない。赤と黒の色合いが特徴的なデザインも上品に仕上げられている。

実際につけてみると、Lyalaより確かに小ぶりで、着けやすくなっている。人によってはこれでも大きいと感じるが、ほかのユニバーサルタイプのIEMと比べても極端に大きいことはない。フィット感もまずまずだ。

ブラックアルミのベゼルとリアルカーボンのフェイスプレート。フェイスプレートにはロゴがプリントされている

赤と黒の織り目模様が付いたケブラーファイバーのボディ

赤と黒の織り目模様が付いたケブラーファイバーのボディ

ドライバーから耳までの音の通り道にはステンレス製のチューブが使われている。「FreqPhase テクノロジー」と呼ばれている、0.001ミリ秒以内に遅延を抑えるとともに、各帯域の位相ずれを防ぐ独自技術だ。ノズル穴は3つで、太い管1本と細い管2本の構成

低域調整機能付きケーブルも健在。AK用バランスケーブルも

ケーブルについてはLaylaと同様で、着脱できる独自の4ピンケーブル。本体とのジョイント部には、外れにくく強固な固定が行える、アルミ素材のスクリューロックを採用した。付属ケーブルは、3.5mm3極のアンバランスタイプと、Astell&Kern(AK240/AK120II/AK100IIなど)用の2.5mm4極のバランスタイプ。2種類のケーブルのいずれも、0〜+10dB(Laylaでは+13dBまで)の範囲で調節できる低域調整機能を搭載し、右耳/左耳をそれぞれ好みの具合にチューニングできるようにしている。

このほかの付属品は、キャリングケース、低域調整用ドライバー、イヤーチップ。イヤーチップはフォーム素材とラバー素材の2種類で、それぞれ3種類のサイズ(ラージ/ミドル/スモール)が用意されている。

パッケージには、本体のほか、Astell&Kern用の2.5mm4極のバランスケーブル、キャリングケース、低域調整用ドライバー、イヤーチップなどが同梱されている

野村ケンジによる音質インプレッション

究極のステージモニターとして作り上げられたと想像されるLaylaに対して、このAngieは、多少ながらもコンシューマー向けの活用も想定されている様子。その証拠といっては何だが、帯域バランスはかなりオーソドックスだし、音数もLaylaのような鳴りっぱなし感はなく、ほどよくまとめられている印象がある。おかげで、通常(3.5mm3極アンバランス)接続でも整いのいい、上質なサウンドを聴かせてくれるのだ。音色傾向は、これぞJH Audioといった風の、ヌケの良い高域を持ちつつ、それでいて中域にしっかりとした厚みを持つ、メリハリのよいサウンド。おかげで、躍動感あふれる活気に満ちたボーカルが楽しめる。低域は、Laylaに比べるとやや線が細めだが、その分フォーカス感が高く、グルーヴ感は高い。それよりも、空間表現のすばらしさが特筆もので、定位感のしっかりした、自然な広がり感を持つ音場表現が楽しめる。

同梱された2.5mm4極端子ケーブルによるバランス接続にかえてもLaylaほどの違いはなく、抑揚表現が(階調のキメ細やかさはそのままながら)ややおとなしい印象になり、定位感、フォーカス感がさらに向上したくらい。とはいえ、Angieの実力を発揮しきるためには、できればバランス接続を活用したいところ。バランス接続時のフォーカス感の高まりは大いに魅力的だからだ。そういったフォーカス感の高まりとトレードオフするようなカタチでややおとなしいサウンドとなるが、こちらに関してはLaylaの時のように中村製作所「NXT-2AK」などと組み合わせることで、活気のあるサウンドを作り上げることもできる。

もうひとつ、絶妙な組み合わせがある。それは、GLOVE AUDIOの「A1」を活用することだ。こちらの製品、1世代目のAKシリーズと“合体”させて活用する専用ポータブルアンプだが、良質な解像度感と高い駆動力を持ち合わせているポータブルアンプであるうえ、2.5mm4極端子もそのまま使えるため、Angieにはピッタリな組み合わせだ。

さらに、険しい山なれどもアンバランスのまま音色傾向を好みの方向に仕立てていくのもひとつの手だろう。AKシリーズとChord「Hugo」などをデジタル接続したり、アナログポータブルアンプを組み合わせるなど、自分好みのサウンドに仕立てていくという点では、さまざまな手段が考えられる。Laylaほど尖ったキャラクターを持つ製品ではないので、まずは手持ちの機材を有効活用して、Angieの実力を引き出してみよう。

銭袋秀明(編集部)
Writer
銭袋秀明(編集部)
編集部の平均体重を底上げしている下っ端部員。アキバをフィールドワークにする30代。2015年4月、某編集部から異動して価格.comマガジン編集部へ。今年こそ、結果にコミット!
記事一覧へ
記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
本ページはAmazonアソシエイトプログラムによる収益を得ています
関連記事
SPECIAL
ページトップへ戻る
×