フルデジタルアンプを採用。ニアフィールドでの高音質を実現

デスクトップを“極めた”小型オーディオ、ソニー「CAS-1」が面白い!

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ソニーから非常に興味深いオーディオ製品が登場した。その名は「CAS-1」(※CASはCompact Audio Systemの略)。ハイレゾ対応のBluetoothオーディオシステムで、アナログ入力を非搭載にするなど、思い切った仕様になっている。市場想定価格は80,000円前後(税別)。「高い」と感じる方もいるかもしれないが、その中身をチェックすると、デスクトップオーディオとして、非常にコストパフォーマンスにすぐれた製品であることがわかるはずだ。

デスクトップでの利用に最適化した製品

プレスリリースを見ると、ソニーはCAS-1を「Bluetoothスピーカーシステム」と表現しているが、具体的な使用シーンでいえば、机の上でパソコンやスマートフォンを接続して使用するデスクトップオーディオに属する製品である。

左右のステレオスピーカーとコンパクトなメインユニットで構成されており、一見するとミニコンポ製品のように見えなくもないが、一般的なコンポとは異なり、アナログ入力はいっさい用意されていない。入力は、前面のUSB-A(USBメモリー、ウォークマン用)と、背面のUSB-B(パソコン、ウォークマン、モバイル端末用)のみで、USB経由でのハイレゾ再生に対応。DSDはリニアPCM変換でDSD 2.8MHzに、WAV/FLAC/AIFF/ALACは192kHz/24bitまで対応している。Bluetoothは、高音質コーデックのLDACに対応するほか、NFCの利用も可能だ。アプリ「SongPal」を使ってスマートフォンからの操作も行える(※ただし、Wi-Fiは非搭載でSongPal Linkには対応しない)。

ポイントは音質の設計で、机上で使用することを想定し、スピーカーからの距離が短いニアフィールドで聴く際に高音質で楽しめるように工夫されている。最適なリスニング距離は75cm〜2mと短い。加えて、小音量でも高音質に再生できる技術や機能も採用。ソニーの単品コンポーネントの開発者が集結して開発されており、ソニーのオーディオ製品として、非常に力の入ったモデルとなっている。

ホワイトモデル。メインユニットのサイズは約55(幅)×178(高さ)×210(奥行)mm。ちょうど辞書くらいの大きさとなる

ブラックモデルに付属するスピーカーは木目調の仕上げ。スピーカーのサイズは約95(幅)×178(高さ)×172(奥行)mm

メインユニットの背面

メインユニットの背面

フルデジタルアンプ「S-Master HX」を採用

音質面で大きなトピックとなるのが、フルデジタルアンプ「S-Master HX」を採用したことだ。ソニーの据え置き型オーディオでは、過去、AVアンプやステレオアンプでフルデジタルアンプ「S-Master」を採用していたが、ここ10年間くらいは、アナログアンプにシフトしていた。ただ、この間もデジタルアンプの開発は続けており、CAS-1では、これまでに培ってきたデジタルアンプ技術を集結したという。

フルデジタルアンプを採用した理由は、ボディをコンパクトにしながらも、ハイレゾ音源をより高音質に再生するため。ハイレゾ音源のディテール感や空気感・臨場感を再現することを狙い、具体的には、フルデジタル処理によってD/A変換時のデータのロスを減らし、ノイズを抑制することで高音質を実現しているという。また、CAS-1はデジタル系の入力のみになっており、アナログ信号が混在しないため、フルデジタルのよさを生かせるシステムなのも、フルデジタル化を採用した背景になっているとのこと。フルデジタルアンプは発熱が抑えられるため、ボディをコンパクトにできるのも押さえておきたい点だ。

CAS-1のフルデジタルアンプ「S-Master HX」は、新開発のPWMプロセッサーを採用。従来のデジタルアンプのノイズシェーパーやサンプリングレートコンバーターに改良を施し、従来を上回る高精度な信号処理によって、さらなる低ノイズ化、高解像度化を実現しているという。また、基板に使用するパーツにもこだわっており、クロックには、ESシリーズなどで採用する低位相ノイズの水晶発振器を採用。ローパスフィルター用には新開発の大型トロイダルコイルを搭載しているほか、電解液や電解紙、スリーブまでメーカーと共同で検討した新開発のチップ電解コンデンサーも採用している。このあたりのパーツ設計へのこだわりは、単品コンポの設計とまったく同じだ。

スピーカーアンプの基板

スピーカーアンプの基板

低位相ノイズの水晶発振器を採用

低位相ノイズの水晶発振器を採用

手前がチップ電解コンデンサー、奥が大型トロイダルコイル

手前がチップ電解コンデンサー、奥が大型トロイダルコイル

小音量でも音質を損ねない「パルスハイトボリューム」

電源周りにもノイズ低減の工夫が施されている。電源にはACアダプターを採用しているが、本体内の電源入力の後段に、パッシブ+アクティブのディスクリートフィルターとレギュレーター回路を搭載することで、ACアダプター特有のスイッチングノイズを除去するようになっている。さらに、レギュレーター回路は、パワーアンプに供給する電源電圧を可変して音量を制御するようになっている。

通常のデジタルアンプでは、データの情報量を間引いて音量を下げるようになっているが、CAS-1では、「パルスハイトボリューム」という技術を搭載。この技術では、レギュレーター回路が電源電圧を可変するため、情報量はそのままに増幅率だけが変化するようになっている。従来の「S-Master PRO」にも採用されていた技術で、これによって、高い密度を保ったまま音量を絞ることができるため、小音量時でも高音質再生が可能としている。

さらに、小音量時でもバランスを崩さすに再生できる「ローボリュームモード」も搭載。人間は音圧が下がると高域と低域が聴こえにくくなるが、音量にあわせて聴こえにくくなる周波数帯の音圧を補正することで、聴感上の周波数特性を改善する機能となっている。

ACアダプター

ACアダプター

「PHA-2」と同じパーツを採用するヘッドホンアンプを内蔵

CAS-1の大きな特徴は、スピーカーアンプとは別に、ヘッドホンアンプを独立して搭載していること。スピーカー用とヘッドホン用のアンプ基板が、それぞれ独立したデュアルアンプ構成となっている。お互いの干渉を避けるため電源は別々になっており、スピーカーアンプ利用時はヘッドホンアンプの電源がオフになる(ヘッドホンアンプ利用時はその逆)。

しかも、ヘッドホンアンプの基板は、同社製ポータブルアンプ「PHA-2」と同じ高音質パーツを採用。PHA-2がそのまま内蔵されているイメージで、DAC(PCM1795)、電子ボリュームIC(NJW1194)、ヘッドホンアンプIC(TPA6120)などの主要デバイスにはPHA-2と同じものを採用している。ゲイン切り替えスイッチを搭載するのもPHA-2と同じだ。ステレオミニ端子は、金メッキ処理の高品位なものとなっている。

ユニークなのは、本体内で、スピーカーアンプとヘッドホンアンプの基板が向かい合うように配置されている。これにより、基板の面積をかせいだうえで、コンパクトボディも実現しているのだ。

ヘッドホンアンプの基板(右側がヘッドホンアンプ部)。パーツが左右対称のパターンで配置されている

ヘッドホンアンプの基板(右側がヘッドホンアンプ部)。パーツが左右対称のパターンで配置されている

スピーカーアンプとヘッドホンアンプの基板が向かい合うように配置

スピーカーアンプとヘッドホンアンプの基板が向かい合うように配置

金メッキ処理のステレオミニ端子

金メッキ処理のステレオミニ端子

ニアフィールドでの高音質を実現した付属スピーカー

CAS-1は、付属のスピーカーにも特徴がある。2Wayのブックシェルフ型スピーカーで、ニアフィールドでの高音質を狙い、歪みとノイズを徹底的に抑えた設計になっている。

ウーハーは62mm径ユニットで、振動板には、軽量で高剛性なカーボンファイバーコーンを採用。フレームに、あえて樹脂の比重を高めたモールドフレームを採用することで、ユニットの振動をしっかりと受け止められるようになっている。さらに、銅リング&銅キャップを採用することで、ボイスコイル動作時に発生するコイルのインダクタンスの増減を抑制。非対称の歪みを減らすようになっている。

62mm径のウーハーユニット

62mm径のウーハーユニット

ツイーターは、14mm径のソフトドームツイーター。同社製のスピーカー(SS-HA1/SS-HA3)にスーパーツイーターとして採用されたユニットを応用したもので、指向性が広いのが特徴だ。対応する周波数帯域は50kHzまでとなっている。

14mm径のソフトドームツイーター

14mm径のソフトドームツイーター

ネットワーク回路には、ノイズを抑えるため、ケミコンではなくフィルムコンデンサーを採用。キャビネットも高品位で、前後のバッフル板には12mm厚のMDFを採用する(側面はバーチ合板)。内部はブレースなどで補強し、吸音材で響きをコントロール。ユニークなのは、バスレフポートが底面にあること。ウーハーに近い位置で、かつ底面前方向に開口を傾けることで、机上やニアフィールドでも広がりのある低音を楽しめるという。

ネットワーク部

ネットワーク部

スピーカーの内部構造

スピーカーの内部構造

底面にバスレフポートを配置

底面にバスレフポートを配置

バスレフポートのダクトの内側。シボ加工を施し、エアノイズを低減している

バスレフポートのダクトの内側。シボ加工を施し、エアノイズを低減している

スピーカーの底面は真鍮製のスパイクを採用。前方の2本のスパイクは、仰角8度とフラットの2種類が付属しており、試聴環境にあわせて選択できるようになっている。デスクトップオーディオとして使用する場合は、仰角8度で傾きをつけたほうが、より高音質に楽しめるだろう。さらに、スピーカーの下に設置することで不要な振動を抑える、5mm厚のスチール製の板(スピーカーベース)が付属するのもユニークなところだ。

左が仰角8度のスパイク、右がフラットなスパイクを装着したもの。左のスピーカーには付属のスチール板が設置されている

スピーカー背面

スピーカー背面

付属のスピーカーケーブル。デスクトップ利用を想定し、あえて1.2mと短くなっている

付属のスピーカーケーブル。デスクトップ利用を想定し、あえて1.2mと短くなっている

まとめ

CAS-1は、デスクトップオーディオに求められるスタイルと音質を追求した製品だ。ソニーの単品コンポの開発者が集い、思い切ってアナログ入力を省略し、フルデジタルアンプでの高音質を狙うなど、他にはないソニーらしい面白い製品に仕上がっている。記事のタイトルで“極めた”と少しおおげさな表現を使ったが、ソニーとしては、現時点でデスクトップオーディオに求められるカタチを考え、パッケージにした製品であることは間違いない。

メインユニットもスピーカーもコンパクトなので、特に、ノートPCと組み合わせて、机上で使用するのに適していると思う。大きなリビングで使用することも可能ではあるが、どちらかというと、書斎や自室などの比較的狭いスペースで使ったほうが本領を発揮するだろう。市場想定価格は80,000円前後(税別)。価格.com最安価格(2015年9月29日時点)で47,000円程度のPHA-2がそのまま内蔵されているうえ、専用の高音質スピーカーが付属することを考慮すると、コストパフォーマンスは高い。

最後に音質を簡単にレポートしよう。短い時間ではあるが、ハイレゾ音源でスピーカー再生の音を試聴した限りでは、サイズからは考えられないような高音質を実現していると感じた。特に、ボーカルや楽器の実在感が非常に高く、ハイレゾの空気感がしっかりと再現されていたのが好印象。響きが心地よく、スピーカーで音楽を楽しむことのよさが感じられる製品だと思う。特に、スピーカーから1m程度の距離のニアフィールドでの音のクオリティが高く、計8万円程度のUSB DACと小型スピーカーの組み合わせとしては、これまで聴いたものの中で、かなり高いレベルにあると感じた。Bluetooth再生とヘッドホンもクオリティが高く、デスクトップで使用するのであれば高い満足度が得られる製品だと思う。

デスクトップに設置したイメージで試聴した

デスクトップに設置したイメージで試聴した

付属リモコン。ブラックモデルにはブラックのリモコンが付く

付属リモコン。ブラックモデルにはブラックのリモコンが付く

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

体力勝負ならそこそこ強い編集部デスク。カメラやAV家電を中心に製品のレビュー記事を担当しています。撮られるのは苦手ですが撮るのは好きです。

製品 価格.com最安価格 備考
CAS-1 (B) [ブラック] 66,800 フルデジタルアンプ採用のBluetooth&ハイレゾ対応オーディオシステム
CAS-1 (W) [ホワイト] 66,800 フルデジタルアンプ採用のBluetooth&ハイレゾ対応オーディオシステム
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2017.4.27 更新
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