朝井麻由美の、ぼっち充のススメ

ぼっちが「光るネコ耳ヘッドホン」をつけてクリスマスイルミネーションの中を練り歩いてみた

1人BBQ、1人遊園地など、1人行動をこよなく愛するライター朝井麻由美が、玩具やデジタルグッズを使ったぼっちライフを追求していく連載です。

光る「ネコ耳ヘッドホン」でクリスマスイルミネーションの中にたたずむ

光る「ネコ耳ヘッドホン」でクリスマスイルミネーションの中にたたずむ

クリスマスの精神的な格差を生んでいる最も大きな要因は、おそらくイルミネーションである。つい昨日まで、単なる建物や並木道だった場所が突如として光り始めることで、クリスマスの存在を思い出す。そして、輝いているイルミネーションを、輝いている彼ら彼女らに重ね合わせてしまうのではないかと私はにらんでいる。光り輝くイルミネーション。光り輝く恋人たち。光り輝いていない自分。この仮説が正しければ、自分が光り輝きさえすれば、イルミネーションの中を歩きやすくなるはずである。物理的にで構わない、無理にでも街で光り輝く方法はないだろうか。

探してみた結果、先日発売されたばかりの光る「ネコ耳ヘッドフォン AXENT WEAR」がよさそうである。いわゆるヘッドホンの頭の部分に、LEDライトで光るネコ耳がついているデザインになっている。これを装着して、クリスマスイルミネーションの中を光りながら練り歩いてみたいと思う。キミたちはイルミネーションを見る側かもしれないけどね、こっちは光る側だから、見る側じゃなくて光る側だから、と自家発電をするのだ。

「ネコ耳ヘッドフォン AXENT WEAR」ボディカラーはブルー、レッド、グリーン、パープルの4色を用意。価格は49,800円(税込)

まずは肩慣らしに、日の出ているうちに歩く練習をしてみることにした。いかんせん、ネコ耳なうえに、光るのである。この格好でひとりで街を練り歩くのにはいささか勇気がいる。

平日朝9時の原宿

平日朝9時の原宿

原宿にやってきた。おそらく都内では秋葉原か原宿が、ネコ耳が最もなじむ街である。ところが、午前中だったため原宿のほとんどの店が開いておらず、買い物をしている若者もほとんどいない。原宿らしさの薄い中のネコ耳姿は、どうひいき目に見てもかなり浮いている……。

通りの少ない原宿でかなり浮く

通りの少ない原宿でかなり浮く

通行人はネコ耳ヘッドホンを見事にスル―

通行人はネコ耳ヘッドホンを見事にスル―

だが、しばらく竹下通りを往復してみると、思いのほか誰も気に留めない。視線をこちらに向けて歩き去る人もいるにはいるが、ごく少数。やはり原宿では個性的な格好はよくあることなのだろう。

たまに視線を送ってくる人が

たまに視線を送ってくる人が

モザイクでわかりにくいかもしれないが歩き去る際に思いっきり目線がこちらに向いている

モザイクでわかりにくいかもしれないが歩き去る際に思いっきり目線がこちらに向いている

ドトールに入ってみたがこちらも気に留められず。もしかして:見て見ぬふり?

ドトールに入ってみたがこちらも気に留められず。もしかして:見て見ぬふり?

次は巣鴨へ行ってみることにした。巣鴨は「おばあちゃんの原宿」、原宿は「若者の巣鴨」である。原宿と対極に位置する街へ行って、その差を確かめたい。

山手線で原宿から巣鴨へ移動

山手線で原宿から巣鴨へ移動

巣鴨に着いた

巣鴨についた

巣鴨に着いた。駅を出てから、地蔵通商店街までの道すがら、午前中の原宿以上にネコ耳がなじんでいないことを感じる。街並みとネコ耳の親和性はどう考えても低い。低すぎる。街全体に歓迎されていない空気がぷんぷん漂っている。

巣鴨といえば赤パンツ

巣鴨といえば赤パンツ

巣鴨でもスル―

巣鴨でもスル―

おばあちゃんという生き物は、いつなんどきも気さくに話しかけてくるものだと思っていたが、さすがのおばあちゃんもネコ耳の前にはなすすべなしなのだろうか。商店街を何度往復しても、力いっぱいスルーされ続ける。目すら合わせてくれない。

話しかけてくるおばあちゃんは誰もいない

話しかけてくるおばあちゃんは誰もいない

しばらく歩いたのち、「とげぬき地蔵尊」として有名な「高岩寺」に入った。入口近くでたくさんのおばあちゃんたちが煙を浴びていたので、ネコ耳もそこに混ざって浴びる。ここでもやはり、おばあちゃんたちはみんな自然な顔をしている。怪訝な顔はひとりもいない。隣で煙を浴びるネコ耳のことを、おばあちゃんたちはどう思っているのだろうか。

煙を浴びるネコ耳

煙を浴びるネコ耳

巣鴨らしいお守りがたくさんあった

巣鴨らしいお守りがたくさんあった

お寺の奥にある、「洗い観音」にも並んでみることにした。「聖観世音菩薩像」に水をかけて自分の悪いところを拭くと治るのだという。洗い観音の場でも、ネコ耳の存在は自然に受け入れられている。もしかしたら、これが若者の間で流行っているファッションなのか、と思われているのかもしれない。

洗い観音に並ぶネコ耳

洗い観音に並ぶネコ耳

若者の間で流行っていると思われている? 

若者の間で流行っていると思われている? 

巣鴨を後にし、夜まで待って、いよいよ本題のイルミネーションへ向かう。光っている街に、光っているネコ耳の私が行くのだ。原宿と巣鴨とは比べものにならないくらい、街になじむはずである。

丸の内のイルミネーションとコラボしてみた

丸の内のイルミネーションとコラボしてみた

丸の内へやってきた。やはり思った通りだ。原宿や巣鴨と比べて、街との相性は抜群である。

光る威力を発揮したネコ耳

光る威力を発揮したネコ耳

歩いてみると一目瞭然。光っているネコ耳の私と、光っていないネコ耳ではない人たちの、この格差。文字通り、輝きが全然違う。

輝くネコ耳

輝くネコ耳

ところで、このネコ耳ヘッドホンにはスピーカー機能がついている。iPhoneやiPodなどで音楽を流しながらスピーカーボタンを押すと、自分の聞いている音楽が外に流れるのだ。ヘッドホンなのにスピーカーとして使えてしまっては、ヘッドホンである必要性を疑いたくなるが、今こそ使い時ではなかろうか。今、私は、この丸の内の真ん中で、イルミネーションとしての役割を果たしている。ならば、スピーカーからクリスマスソングを流して、道行く人々のクリスマスを祝おう。そういうことに喜びを感じよう。

スピーカーからクリスマスソングを流しながら歩くネコ耳

スピーカーからクリスマスソングを流しながら歩くネコ耳

クリスマスソングのおすそ分けをする私を、通行人はイルミネーションから目を離して、驚いた顔で眺めていた。物理的にでもいい、他人の輝きをうらやむのではなく自分が輝いてしまえば、クリスマスを愛せる。クリスマスを愛せれば、人のクリスマスも祝えるのだ。メリークリスマス!

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朝井麻由美
Writer
朝井麻由美
ライター・編集者・コラムニスト。最新刊に『「ぼっち」の歩き方』(PHP)。ほか著書に『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA)など。一人行動が好きすぎて、一人でボートに乗りに行ったり、一人でBBQをしたりする日々。
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鈴木ゆり子(編集部)
Editor
鈴木ゆり子(編集部)
1982年生まれのライター・編集者で2児のママ。世の中のさまざまなサービスや習い事を調査する記事を担当。大の飛行機好きで趣味は自衛隊の航空祭巡り。
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