会議「ジャイロボードはオフィスで活用できるのか…」
海外セレブの間で妙な乗り物が流行っているらしい。「ジャイロボード」と呼ばれるそれは、棒のないセグウェイのような乗り物で、ジャスティン・ビーバーやDJのスクリレックスがインスタグラムで紹介して話題となった。
このジャイロボード、すでに日本にも上陸しているのだが、日本ではこの手の乗り物は公道での走行は禁止されているはず。使える場所が結構限られてしまうのではないだろうか。商品の説明を見ると、「公園のアトラクションとして! 」、「工場内の移動手段に! 」、「大きなショッピングモール内の移動手段に! 」、「社内の移動手段に! 」とある。公園はわかる。工場内も、工場で働いている人がこれに乗って作業をするのもアリかもしれない。だが、ショッピングモールや会社内というのは一体何なのか。百歩譲って、ショッピングモールはいいとしても、会社内で使う人はいなかろう。それとも、ジャイロボードに乗ると、仕事がはかどるとでもいうのだろうか。
オフィスでの使用が推奨されている
「ジャイロボード」本体サイズは58.4(幅)×17.8(高さ)×18.6(奥行)cm。重量は約10kg。充電時間1〜2時間で連続航行距離は7〜16km。ボディカラーはブラック、ホワイト、レッド、ワインレッド、ピンク、グリーン、シャンパンブルー、ゴールドの8色
そこで、価格.comマガジン編集部のオフィスで、ジャイロボードに乗って仕事をしてみることにした。乗りこなせれば歩くよりも早く動けるのだ。移動時間が短縮できる分、もしかしたらもしかするかもしれない。
まずはオフィスの入口で乗る練習をした。最初はつかまっていないと何もできないどころか、何もしているつもりはないのに勝手にくるくる回転して、ボードから落ちてしまう。ジャイロボードは体重移動で動く乗り物。動かずに真っ直ぐ立っていれば、ジャイロボードも止まってくれるはずなのだ。それなのに勝手にくるくる動くということは、何もしていないつもりでも、無意識に体がフラフラしているのだろう。
無理
少しずつ動いてみる
不安定な場所で安定して立つにはどうしたらいいだろう、と考えてひらめいた。スキーである。スキーの八の字(ボーゲン)をイメージすると安定するかもしれない。やってみると、安定した……! 八の字になることで、体の真ん中に力が集中し、軸が安定したのだろうか。難しいことはわからないがそういうことにして、さっそくこのジャイロボードを乗り回して仕事をしたい。
まずはオフィスでの仕事といえばお茶汲みだろう。トレーとコップを持って、お茶を入れに行った。
オフィスの休憩室でお茶をゲット
トレーで運ぶ
お茶をこぼしそうになるのを恐れて、ジャイロボードの動きがおのずとゆっくりになるため、歩いたほうが早いかもしれないとの思いが頭にちらつく。
では、コピー取りはどうだろう。ジャイロボードの力で、デスクからコピー機までの移動時間が短縮できれば、今後の人生で、快適なコピー取りライフが約束されるはずである。
快適なコピー取りライフ
結果は微妙。コピー機周辺は棚や段ボール箱などが散乱していて、ジャイロボードで動きやすいとは言いがたかった。すでにこの時点で、ジャイロボードの弱点が判明しつつある。小回りが利かないのだ。ジャイロボードに乗ってデスクへ戻ろう。
よいしょ。座りづらい
ちょうど電話がかかってきたので、足はジャイロボードに載せたまま取ってみた。電話の向こうにいる人は、まさか私がジャイロボードに乗りながら電話しているとは思わなかろう。
電話応対
ネットサーフィン
オフィス内で作業中、急な来客で名刺交換をすることもあるだろう。ジャイロボードに乗ったまま名刺を差し出すかどうかは賛否が分かれるところだ。もしも私が来客の立場なら、相手がジャイロボードに乗りながら名刺を渡してきたら、取り引きしないと心に誓う。
名刺交換
だいぶ慣れてきた。会議にもこのまま参加できる気がする。階段はこれでは降りられないので、
さすがにジャイロボードで階段は無理
エレベーターを待つ。
エレベーター待ち
移動中
このままついでにトイレにも寄った
エレベーターの段差部分を慎重に乗り越え、会議室へ向かった。
会議
正直、廊下の移動も、エレベーターの乗り降りも、会議も、ジャイロボードのおかげではかどったかというと、そうでもない。そろそろオフィスにおけるジャイロボードの存在意義が苦しい。ジャイロボードは何のために生まれ、何のために存在しているのだろう。
快適な仕事の環境作りにはひとつも役に立たなかったが、廊下ですれ違った人たちにはすこぶる好評であった。オフィス内で皆が集中する中、1人で乗り回していたときは、誰もがスルーだったというのに。
「うおー! なにそれ! いいなー! 」と言われた
オフィスでのジャイロボード使用は、仕事の効率を上げるためではなく、殺伐としたオフィスにいくばくかの雑談を、ということなのかもしれない。
なお、ジャイロボードに1日乗り続けた結果、翌日私の足は筋肉痛になった。オフィスにおける「ジャイロボード移動VS徒歩移動」の勝負は、徒歩の圧勝に終わった。
※記事では「ジャイロボード」という製品名で紹介しましたが「ジャイロボード」は旧名になります。現在は、「チック スマート(CHIC SMART)」という名称で販売されています。