特別企画
桐製スピーカーやCNF100%振動板など開発中の新技術をレポート

オンキヨーの最先端スピーカー&ヘッドホン技術をいち早く体験してきた!

オンキヨー開発者の皆さん。前列左が井上氏、前列右が山本氏。後列左から野口氏、吉田氏、藤谷氏、藤井氏

オンキヨー開発者の皆さん。前列左が井上氏、前列右が山本氏。後列左から野口氏、吉田氏、藤谷氏、藤井氏

オンキヨーといえば老舗のオーディオブランドとして広く知られているが、実は、スピーカードライバーの生産供給といったビジネスも同社の大きな柱だ。たとえば、あなたの乗っている車のスピーカーはオンキヨー製である可能性が高い。ほかにも、テレビに内蔵されているスピーカーや、ドライバーを生産しないオーディオメーカーのスピーカーなど、ユーザーが知らない間に「オンキヨー」の音に触れているケースは意外と多い。

オンキヨーは、振動板の素材研究開発からスピーカードライバーを設計生産できる数少ないメーカーだ。いろいろな音が出る産業分野で、縁の下の力持ちとして活躍しているのだ。

そんなオンキヨーが新たに発表した素材や技術の数々が実にユニークで興味深い。そこで今回は、大阪府寝屋川市にあるオンキヨーの研究開発拠点に訪問し、いち早く試聴体験する機会を得た。新しいアイデアと技術がもたらす音質とは? その将来性とは?

創業70周年のチャレンジ

今回訪問したのは、大阪府寝屋川市にある“オンキヨー株式会社”の研究開発拠点。昨年「オンキヨーグループ」と「パイオニアのホームAV事業」が統合して国内では「オンキヨー&パイオニア株式会社」などの新体制がスタートしたが、「オンキヨー株式会社」は引き続き、研究開発や部品・製品供給メーカーとして存続している。

2016年はオンキヨーが設立されてから70周年の節目を迎え、同社のビジネスの核としてきたスピーカーで新たな飛躍を狙う。その意思の表れとも言えるのが、「世界初」づくしのユニークな新技術へのチャレンジだ。

以下、直近で発表された新技術を、それぞれくわしく紹介して行こう。

温故知新!桐製スピーカー

筐体に桐材を用いたスピーカー試作品

筐体に桐材を用いたスピーカー試作品

取材でまず目をひいたのか、桐の無垢材を使用したスピーカーだ。近年のトレンドから説明すると、スピーカーは、細かく粉砕した木材を成型したMDFと呼ばれる素材を使用するケースが多い。強度や耐久性が高い上に加工がし易く大量生産に向くなど、工業製品としてはメリットが多いからだ。

いっぽう、オンキヨーが新たに“桐”に着目したのは、温故知新とも言える発想。1000年以上もの歴史を持つ琵琶や琴といった楽器が桐材を用いていることに着目。研究の結果、桐は多孔質で木材の中では軽く丈夫でありながら、音響変換効率は楽器で用いられるスプルース材やマホガニーと同等以上という特性を見いだしたという。楽器的でもあり、家具的な性格も持つスピーカーボックスにとって、桐は適材と考えたわけだ。

理屈はともかく、とにかく試聴。試作品は大小2セットあり、それぞれを同じ楽曲で一通り確認した。まずは大きいほう。サイズは23(幅)×40(高さ)×38(奥行)cmと少し大きめのブックシェルフといった印象だ。

桐スピーカー試作品(大)

桐スピーカー試作品(大)

1曲目は和楽器を意識しつつバランスのいい、CD「琴・セバスチャン・バッハ大全集」(BVCM-35619)から「G線上のアリア」を再生。尺八の音色は「かすれ」の表現が薄くフルートのような音色になる印象を受けたが、琴の伸び伸びとした美しい余韻は新しい世界に感じた。琴の音色と桐材は相性がいいのか、スピーカーが楽器としての生命を宿したかのようだ。圧巻は鬼太鼓座の「響天動地」(VICG-6055)。言わずとも大太鼓の迫力が聴きどころだか、1曲目「太陽の馬」は、連打でピアニシモからフォルテシモまで移行するさまが臨場感満点。左右から湧き上がるように迫ってくるリアリティーは、従来のスピーカーでは得難い感覚だ。スピーカーボックスを開発した井上氏によると、側面内側には祭り用の太鼓などで使われている「網状鱗彫」という伝統的な彫り手法を採り入れ、また、振動を最適化することで、低域が豊かで美しい響きを実現したという。スピーカー自体が音色を持つ事については賛否が分かそうだが、なかにはこうした楽器的とも言える個性的な製品があっても面白い。ユーザーとしても選択肢が増えるのは歓迎だ。

桐スピーカーの側板内側の「網状鱗彫」がユニーク

桐スピーカーの側板内側の「網状鱗彫」がユニーク

次に小さいほうを試聴。15(幅)×27(高さ)×25(奥行)cmと、コンパクトなデスクトップスピーカーといったたずまいだ。

桐スピーカー試作品(小)スタンドは橅(ブナ)材製で太鼓の台座を想起させるデザイン。音が360度方向に広がるよう、あえて下側も空間を持たせる設計になっている

音が出た瞬間、サイズ感を超える鳴りのよさに驚いた。コンパクトなスピーカーは音場も小さくなりがちだが、ボックス部が楽器のように鳴ることで、生演奏を目の前にしているかのようなスケールが得られるようだ。また、大きいほうのスピーカーでやや不満の残る「G線上のアリア」の尺八も、粒立ちがよく「かすれ」の表現も見事。試しにと筆者の愛聴版、ケイコ・リーの「Beautiful Love」から「ドント・レット・ミー・ビー・ロンリー・トゥナイト」を聴いたが、ボーカルはスピーカー固有の音色を感じさせずナチュラルで、一歩前に出てくる存在感が印象的だ。スピーカーが響きを加えているといっても、人工的にならずナチュラルなのは、天然素材のみに許される特権だろう。

ちなみに大小2つの試作品は、ボックスサイズのほか、ツイーターとウーハーの口径やネットワークのレイアウトも異なるため、どの点が両者の音質の違いにつながっているのかはわからないが、特に小さいほうのスピーカーが奏でる音のインパクトは画期的なもの。桐スピーカーに大いなる可能性を感じた。

スピーカーユニット。手前が試作機小サイズ用、奥が大サイズ用。振動板の口径が異なる

スピーカーユニット。手前が試作機小サイズ用、奥が大サイズ用。振動板の口径が異なる

試作機大サイズ用のネットワーク部。桐材をくり抜いてパーツが固定されている

試作機大サイズ用のネットワーク部。桐材をくり抜いてパーツが固定されている

試作機小サイズ用のネットワーク部。限られたスペースに収めるため、ツイーター用とウーハー用回路が分離されている

なお、ドライバーユニットにもユニークな技術が満載されているので紹介しておきたい。ウーハーの振動板も新たに開発されたもので、植物由来のCNF(セルロースナノファイバー)と楮(コウゾ)を混抄したパルプ素材。強度が高く内部損失が大きいというオーディオ的にすぐれた特性を持つが、何より天然木材への拘りが粋に感じた。

センターの砲弾型イコライザーが天然木の削り出し品で、木目の美しさが目をひく。高価になりそうだが、このような製品が手に入れば、満足度は高そうだ

桐の家紋が入った保護用カバー。ユニークな台と併せ、試作機ながら遊び心も満載

桐の家紋が入った保護用カバー。ユニークな台と併せ、試作機ながら遊び心も満載

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