プロジェクターで有名なOptoma社が、米カリフォルニア発のハイエンドオーディオブランド「NuForce(ニューフォース)」を買収する形でスタートしたOptoma/NuForce。NuForceブランドといえば、デジタルアンプ技術を用いたハイエンドオーディオや、手のひらサイズの「Icon Amp」や「Icon uDAC」といったIconシリーズなどが日本では有名だが、Optomaに買収されてからはイヤホンなどのポータブルオーディオ製品も手がけるようになった。
そんな同社が最近注力しているのが、スマートフォンで音楽を楽しむユーザーに向けたカジュアルラインのイヤホンだ。昨年12月には、1万円前後で購入できるBluetooth接続のスポーツイヤホン「BE Sport3」と、同じく5千円前後で購入できるリモコン付きイヤホン「NE-Pi」の2モデルの発売が日本でも開始された。
これまでのNuForceブランドの製品と比べるとかなり手の届きやすい価格帯の製品となっているが、これまでハイクオリティな製品を多数手がけてきたNuForceブランドらしく、実際の製品も非常にこだわって開発されているという。新製品2モデルの中から、スポーツタイプのBE Sport3をさっそく試用させていただいたので、その実力をレポートしたいと思う。
今回取り上げるBE Sport3は、Bluetooth接続に対応したネックバンドスタイルのスポーツイヤホンだ。対応コーデックについては、SBCよりも高音質での転送が可能なAACとapt-Xの両方に対応している。
昨年9月にイヤホンジャックがなくなったiPhone 7/7Sが発売されてからというもの、イヤホンメーカー各社がBluetoothイヤホンに注力してきたこともあり、2016年後半は本当に数えきれないほどのBluetoothイヤホンが発売された。今となっては1万円前後で購入できるネックバンドスタイルのスポーツイヤホンもそれほど珍しいものではなくなってきたが、今回取り上げるBE Sport3は、この価格帯の製品としては思えないしっかりとした作りの本体とバッテリー駆動時間がほかにはない大きな魅力となっている。
本体については、スポーツイヤホンは軽量化のためにハウジングに樹脂製のパーツを採用しているモデルが多い中、BE Sport3はスポーツイヤホンとしては珍しくアルミニウム素材を全面に採用している。ハウジング素材は、音質はもちろん、製品の見た目や耐久性も大きく左右する非常に重要な要素なわけだか、BE Sport3は特に音質への影響を考慮し、樹脂パーツではなくアルミニウムを採用してきたという。
スポーツイヤホンでは珍しくハウジングにアルミニウム素材を採用
ハウジングにはマグネットが内蔵されており、左右のハウジングをくっつけて保管できる
しかも、BE Sport3はアルミニウム素材をハウジングに採用しつつ、IP55レベルの防塵・防水にもしっかりと対応。ケーブル部も断線しにくいよう、デュポン製のケブラー/バリスティック素材で強化するなど、スポーツイヤホンに求められる汗や水、断線に強い耐久性にすぐれた製品となっているのだ。
デュポン製のケブラー/バリスティック素材で強化したケーブルは、絡みにくいようにフラット形状となっている。本体右側にはマイク付きリモコンも装備している
ハウジングにアルミニウム素材を採用し、おまけに防塵・防水にも対応ということで、通常であればかなり重量感のある製品になりそうなところなのだが、BE Sport3では0.01g単位の軽量化を行うことで、わずか13g(スタビライザー装着時は15g)という軽量ボディに仕上げているのだ。しかも、BE Sport3は、この非常にコンパクトな本体に、最長約10時間の連続駆動が可能なバッテリーも内蔵しているというのだからスゴい。
直径6mmの小型ダイナミックドライバーを採用して筺体を非常にコンパクトに仕上げ、重さを感じさせないように内蔵部品の配置を考えてデザインしているというのもあるだろうが、耳に収めたときに感じる重さはほとんどなく、これでホントに金属製ハウジング採用なの?と思ってしまうくらい軽かった。実際に装着してみれば、その軽さに驚くはずだ。
ハウジングにアルミニウム素材を採用したモデルながら、重量13gという軽量設計となっている
バッテリーはマイク付きリモコン部分に内蔵されている。充電端子はAndroidスマートフォンやタブレットで一般的なmicroUSB形状を採用している
もちろん、NuForceが手掛ける製品ということで、音質に関しても細部までこだわっている。なかでも注目したいのがイヤーチップ。BE Sport3には、イヤーチップの中心部分にくびれを設けることで、中高音域での音質改善に効果があるSpinFitイヤーチップが標準で同梱されているのだが、一般的な標準タイプ3サイズに加え、SpinFit TwinBladeイヤーチップも用意されているのだ。SpinFit TwinBladeイヤーチップでは、2層式の構造で密閉度をさらに高めることで、低音域の改善にも寄与するという。
同梱されているイヤーピース。カラフルなカラーを採用するのがSpinFitイヤーチップ、ブラックカラーを採用するのがSpinFit TwinBladeイヤーチップだ
独自の2層構造を採用するSpinFit TwinBladeイヤーチップ。今後、単体販売も予定しているとのこと
また、BE Sport3はスポーツイヤホンということで、装着感を高めるイヤーハンガーも同梱されているのだが、スタビライザーとSpinFitイヤーチップが非常にカラフルなカラーリングとなっているのもオシャレで面白い点だ。これまでのNuForce製品もデザインについてはかなりこだわっていた印象があったが、こういったちょっとしたアクセントでカジュアルにオシャレを楽しむというのは、これまでにはなかった特徴といえるだろう。
付属のスタビライザーもかなりカラフル
BE Sport3には、今回試用したブラックのほかにローズゴールドのカラバリが用意されている。ローズゴールドモデルのイヤーピースやスタビライザーのカラーは、ブラックモデルと異なる
カジュアル路線を意識してか、パッケージもかなりポップだ
というわけで、ここからは気になる音質についてレポートしたいと思う。BE Sport3は、Bluetoothの対応コーデックとしてAACとaptXの両方をサポートしているが、今回はaptXに対応したハイレゾDAP「AK70」と組み合わせてみた。
スポーツイヤホンは、安全性を確保するためにあえて密閉度を低くすることで外音を聴こえるようにしている。密閉度が低いと低域成分が不足しがちで、曲の輪郭がつかみにくい聴きとりにくいサウンドになってしまうため、故意に低域を強調したメリハリのあるサウンドチューニングを採用しているものが多い。
ある程度騒音のある環境で聞いている分にはそれほど気にならないのだが、静かな環境で聴いていると低域が強調されすぎて、中高域がうもれ、長時間聴いていると疲れてしまうことがあるのだが、BE Sport3はSpinFitイヤーチップのおかげで全体的にメリハリのある元気なサウンドながら、バランスのとれた聴きやすいサウンドに仕上がっている。もちろん、Bluetooth接続ということもあり、有線接続タイプのイヤホンに比べると高域がグンと伸びるわけではないが、アルミニウムハウジングの効果もあってが、一般的なスポーツイヤホンに比べるとワイドレンジで、中高域はかなり聴きやすい。スポーツ時だけでなく、日常的に使うというのであれば、BE Sport3とSpinFitイヤーチップはかなり最適な組み合わせといえそうだ。
最後に、標準で装着されているSpinFit イヤーチップをSpinFit TwinBladeイヤーチップに交換してみた。こちらは、SpinFit イヤーチップ装着時に比べると低域の情報量が増え、ベースの存在感がグッと近くなる印象。スポーツ時に聴いていて気持ちいいと感じる低域の出方だ。SpinFit TwinBladeイヤーチップ自体がやや大ぶりで、サイズも1サイズしかないため、人によっては耳にフィットしないということもあるだろうが、スポーツでの利用がメインなら、こちらの組み合わせのほうがよさそうだ。
SpinFit TwinBladeイヤーチップとの組み合せは密閉度が向上して低域の量感が増えるため、スポーツ時などに効果を発揮する
NuForceがカジュアルユーザー向けに1万円前後で購入できるBluetoothイヤホンを発売すると最初に聞きたときは、コストダウンした製品なのだろうと勝手に想像していたのだが、実際にBE Sport3を使ってみて、その完成度の高さにかなり驚いた。1万円前後という価格帯で、音もよくてコンパクトかつ高機能なBluetoothイヤホンというのはなかなかお目にかかれないのだが、BE Sport3はそれをしっかりと実現し、ポータブルオーディオ分野へ注力するNuForceの本気度がうかがえる製品となっていた。1万円前後で高音質・高機能なスポーツイヤホンを探している人は、BE Sport3はかなりいい選択肢になりそうだ。