続いて、感度別に撮影した作例を用いてα6500とα6300の画質の違いをレポートしよう。
※以下に掲載する作例は、α6500/α6300とVario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSSを組み合わせて、JPEG形式の最高画質(エクストラファイン)で同じ被写体を感度別に撮影したもの(JPEG撮って出し)になります。レンズの焦点距離は53mm(35mm判換算79mm)。撮影は屋内のLEDモデリングライト(色温度3000K)下で行い、絞り優先AEで絞り値をF8に固定し、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オートに設定。その他の細かい設定はすべて初期設定のままとしました(高感度ノイズリダクション:標準、長秒時ノイズリダクション:入、周辺光量補正:オート、倍率色収差補正:オート、歪曲収差補正:切)。
※感度別の画像は撮影写真から等倍で切り出したものになります。リサイズを行なっていない撮影写真は、画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。
画質チェック用に感度別に撮影した写真のサムネイル(※緑枠が等倍で切り出した部分)
F8、1.6秒
α6500(ISO100)の撮影写真(6000×4000、12.7MB)
α6300(ISO100)の撮影写真(6000×4000、13.0MB)
F8、1/1.3秒
α6500(ISO200)の撮影写真(6000×4000、14.7MB)
α6300(ISO200)の撮影写真(6000×4000、13.0MB)
F8、1/2.5秒
α6500(ISO400)の撮影写真(6000×4000、12.8MB)
α6300(ISO400)の撮影写真(6000×4000、12.0MB)
F8、1/5秒
α6500(ISO800)の撮影写真(6000×4000、12.0MB)
α6300(ISO800)の撮影写真(6000×4000、12.1MB)
F8、1/10秒
α6500(ISO1600)の撮影写真(6000×4000、12.7MB)
α6300(ISO1600)の撮影写真(6000×4000、12.8MB)
F8、1/20秒
α6500(ISO3200)の撮影写真(6000×4000、14.3MB)
α6300(ISO3200)の撮影写真(6000×4000、13.0MB)
F8、1/40秒
α6500(ISO6400)の撮影写真(6000×4000、14.6MB)
α6300(ISO6400)の撮影写真(6000×4000、13.8MB)
F8、1/80秒
α6500(ISO12800)の撮影写真(6000×4000、15.2MB)
α6300(ISO12800)の撮影写真(6000×4000、13.6MB)
F8、1/160秒
α6500(ISO25600)の撮影写真(6000×4000、16.6MB)
α6300(ISO25600)の撮影写真(6000×4000、14.7MB)
F8、1/320秒
α6500(ISO51200)の撮影写真(6000×4000、17.9MB)
α6300(ISO51200)の撮影写真(6000×4000、16.0MB)
α6500の画質は、新開発のフロントエンドLSIの搭載と画像処理アルゴリズムの最適化によってα6300よりも中・高感度域での解像感と質感描写力が向上したとされている。上に掲載した感度別の画像を見ると、確かに、同じ感度でもα6500のほうがわずかに解像感にすぐれる結果となった。なかでもISO400〜1600あたりの感度で違いが出るようで、ノイズを抑えつつ細かいところの再現性が高い。ただ、ISO1600を超えてくるとα6500はグラデーション部のノイズがやや目立つのが気になるところ。いっぽうのα6300はα6500よりもノイズリダクションの効果が強く、高感度でもノイズを抑えた画質になっている。どちらかというとα6500のほうが良質な結果ではあるが、等倍画像を見比べてみないとわからない範囲の差で、画質の進化としてはそれほど大きなものではないと思う。
色再現を比較すると、Dレンジオプティマイザーの効果が変わったのか、ホワイトバランスの再現が変わったのか、屋外の夜景や、屋内の電球・蛍光灯下で同じ被写体を撮るとα6500のほうがすっきりとした色に仕上がるようだ。α6300はα6500に比べると同じホワイトバランス設定でもやや赤みが強く出る傾向となった。モデルの傾向の違いなのか個体差なのかは判断できないが、今回の検証では色再現にわずかではあるが違いが出た。
動画については、Super 35mmでの全画素読み出しによる4K/24p動画の撮影に対応するなど基本スペックに違いはないが、α6500はフルHDでの高感度画質が向上しているとのこと。撮り比べてみると、4Kでは差がでないが、フルHDではISO3200〜6400あたりでα6500のほうがノイズが目立たず、解像感も高い結果になった。ただ、以下に掲載するYouTube動画をブラウザーで表示する限りでは、その違いはわからないと思う。静止画の画質と同様、それほど大きな差ではないと認識してもらっていいだろう。
※E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSを装着したα6500とα6300を使ってXAVC S フルHD/24p/50Mbps、35mm、マニュアル、1/25秒、F4、ISO6400、ホワイトバランス:電球、Dレンジオプティマイザー:オート、クリエイティブスタイル:ビビッドの設定で撮影。左にα6500、右にα6300の撮影動画の切り出し(960×1080)を並べた。
画面左(α6500)の撮影動画
画面右(α6300)の撮影動画
※上に掲載したフルHD動画と同じ設定のままXAVC S 4K/24p/100Mbpsに変更して撮影したもの。左にα6500、右にα6300の撮影動画の切り出し(1920×2160)を並べた。
画面左(α6500)の撮影動画
画面右(α6300)の撮影動画
このほか、α6500は、動画の新しい撮影モードとして「スロー&クイックモーション」を新たに搭載している。撮影フレームレートを1fpsから120fpsの8段階から、記録設定を24p/30p/60pから選択することが可能で、フルHD解像度で最大5倍のスローモーション動画と最大60倍のクイックモーション動画の撮影が可能だ。α6300は120fpsでのハイフレームレートの撮影には対応しているが、スローモーション動画を作るには撮影後の編集が必要となる。また、α6500は、カメラ内で動画から静止画切り出しも可能となっている。
※Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSSを装着したα6500を使ってフレームレート1fps、60p記録の60倍クイックで撮影したフルHD動画。日没後、およそ35分間の様子を35秒で収めている。16mm、マニュアル、1/25秒、F4、感度:オート、ホワイトバランス:4300K、Dレンジオプティマイザー:オート、クリエイティブスタイル:ビビッドで撮影している。
最後にα6500とα6300の操作性の違いも紹介しておこう。α6500での主要なアップデートは以下の5点になる。
・液晶モニターのタッチパネル対応
・グリップ形状の見直し
・カスタムボタンの追加
・新開発シャッターユニットの採用(シャッター音の変更)
・メニュー画面の変更
α6500の操作性でもっとも大きな進化となるのが、タッチパネル対応の液晶モニターを採用したことだ。タッチシャッターには非対応になるが、ピントを合わせたい位置をタッチ操作で選択できるタッチフォーカスが可能なほか、ファインダーを覗きながらフォーカス位置を移動できるタッチパッド機能も利用できる。静止画再生中にダブルタップで拡大表示する操作も可能だ。ただ、タッチパネルの感度がそれほどよくないため、特にタッチパッド機能が若干扱いにくいところがあると感じた。
α6500はタッチパネルに対応。ファインダーを覗きながら指先の操作でフォーカス位置を移動することができる
グリップの形状も見直され、α6500は、フルサイズミラーレス「α7シリーズ」の第2世代モデルを踏襲した深い形状のグリップになった。従来よりも強く握ってカメラをホールドしやすくなっている。ただ、望遠ズームレンズ「FE 70-200mm F4 G OSS」を装着してホールドしてみると、従来のグリップに慣れていることもあって若干の違和感があった。望遠ズームレンズのようにレンズ側に重心が傾く場合に安定したホールド感が得にくいところがあり、手ブレ補正の検証を行っても、FE 70-200mm F4 G OSSではα6300のほうが全体的に手ブレの少ない結果となった。グリップのホールド感は個人差があるところなので、気になるようであれば店頭などで確認していただきたい。
左がα6500、右がα6300。α6500はグリップが深い形状になった
ボタンレイアウトは、ボディ上面にカスタム(C2)ボタンが追加され、計3つのカスタムボタンが利用可能。シャッターボタンはボタンの口径が大きくなっている。細かいところでは、モードダイヤル/コントロールダイヤルのローレット形状が変わったほか、背面のボタン類も微妙に形状が変更になった。アイピースカップの素材もやわらかいものになっている。さらに、ファインダー/モニターの切り替えの反応も変わっており、ウエストレベルでモニターを使って撮影しても表示が自動的にファインダーに切り替わりにくくなった。
また、α6500は、5軸対応の手ブレ補正ユニットを搭載しながらもボディサイズを従来と同等に抑えるため、シャッターユニットも新開発のものを採用。これによりシャッター音もα6300から変わっており、より静かで軽快な音になった。
左がα6500、右がα6300。見た目に変わりはないが、モードダイヤル/コントロールダイヤルのローレット形状などが変更されている
ボディ上面。α6500にはカスタム(C2)ボタンが追加された
α6500のメニュー画面は、タブごとに色分けされるようになったほか、画面上部にグループ表記が追加された。従来のメニュー画面のα6300と比べるとどの機能がどの位置にあるのかがわかりやすく、使いやすくなったと感じた。
タブごとに色分けされた新メニュー画面。グループ表記も追加され、従来よりもわかりやすくなった
このほかα6500は、新しい測光モードとして、Aマウントのフラッグシップ「α99 II」にも採用されているハイライト重点測光と画面全体平均測光を追加。フレキシブルスポットもしくは拡張フレキシブルスポットのときに、スポット測光位置をフォーカスエリアに連動させる設定も追加された。適正露出値を1/6段刻みで-1〜+1段までの範囲で変更できる露出基準調整も可能だ。オートホワイトバランスは、標準/雰囲気優先/ホワイト優先の選択が可能になっている。
また、ボディの温度が上がったときに自動で電源がオフになる温度を設定できる自動電源OFF温度機能も追加された。α6300は4K動画を撮影しているときにボディの温度上昇によって、周囲の気温にも左右されるがだいたい25〜30分程度の時間が経過すると撮影中でも電源が落ちてしまうことがある。α6500もその点はそれほど変わらないのだが、自動電源OFF温度の設定を「高」にしておくと、ある程度ボディの温度が高くなっても電源が落ちずに、より長い時間4K動画の撮影が行える。
なお、ボディの放熱処理についてはα6500で少し改善されているようで、4K動画撮影中に電源が落ちても、数分待てば復帰して撮影を続けられることが多かった(α6300は一度電源が落ちるとなかなか復帰できない)。ただ、同じ環境下で検証してみるとα6500のほうが先に電源が落ちてしまうこともあったので、大幅によくなっているというわけではないようだ。
自動電源OFF温度の設定を「高」に設定すると、ボディの温度が高くなっても電源が落ちないようになる
2回に分けてα6500とα6300の比較レビューをお届けしたが、実際に使い比べてみてわかった両モデルの大きな違いは、「連写の持続性」と「ボディ内手ブレ補正」の2点となる。AFについては同等で、画質や操作性はアップデートがあるもののそれほど大きな進化ではないので、「α6000」や「NEX-7」「NEX-6」などの旧モデルからの買い替えでα6500とα6300のどちらを選ぶか迷った場合は、「連写の持続性」と「ボディ内手ブレ補正」に注目して判断してみてはどうだろうか。
α6500の連写持続性の高さであれば、スポーツ競技やカーレースの撮影など、多くのシャッターチャンスがある動体の撮影でもストレスなく連写を続けられる。本格的な動体撮影を視野に入れているのであればα6500を選んだほうがいいだろう。ただ、飛行機や電車などを狙った構図で撮るのであればα6300でも十分に対応できる。使い方によってα6500はオーバースペックになる可能性もあるので、どういった動体の撮影をしたいのか、その動体の撮影で連写の持続性が必要なのかを整理して判断していただければと思う。
また、α6500のボディ内手ブレ補正については、5軸補正による手ブレ補正効果の向上よりも、装着するすべてのレンズで手ブレを抑えられる点を重視してほしい。Aマウントレンズなど手ブレ補正を搭載しないレンズで作品作りを行いたいのであれば、α6500は非常に魅力的なミラーレスだ。
ボディ単体の価格(2017年4月4日時点の価格.com最安価格)はα6500が11万9,000円程度、α6300が7万5,000円程度。α6500は10万円を超える価格ではあるが、5軸対応のボディ内手ブレ補正を搭載し、さらなる高性能化を実現した点を考慮するとコストパフォーマンスは高い。いっぽうのα6300は発売当初の13万円台から大幅に価格が下がっている。動体撮影を視野に入れつつ、スナップ中心で使うのであれば、非常にお買い得なミラーレスと言えるのではないだろうか。