レビュー
人気の中級機と「DIGIC 7」採用のエントリー機を比較レビュー

キヤノンの一眼レフ、この春買うなら「EOS 80D」「EOS 9000D」どっちがいい?【AF・操作性編】

ライブビュー撮影時のAFは性能と使い勝手が異なる

ライブビュー撮影時のAFもEOS 80DとEOS 9000Dで同等のスペックとなる。全有効画素が撮像と位相差AFを兼ね備えた「デュアルピクセルCMOS AF」を採用し、画面の約80%(横)×80%(縦)で撮像面位相差AFによるピント合わせが行える。モニターも同じ3.0型(約104万ドット)で、タッチパネルを搭載する横開きのバリアングルタイプ。画面をタッチすることでAFフレームの位置を自由に変えられるタッチAFや、タッチAFの後にそのままシャッターを切るタッチシャッターの利用が可能だ。ライブビューAFの基本的な使い方に違いはない。

実際に使い比べてみても両モデルのライブビューAFの性能に差は感じなかった。いずれもピント合わせは高速で、APS-Cサイズの撮像素子を搭載する一眼レフとしては最速レベルだ。コントラストAFを併用する前世代のシステム「ハイブリッド CMOS AF III」を採用するEOS 8000Dと比較してみると、位相差AFのみでピント合わせが行われる場合はEOS 80D/EOS 9000DとEOS 8000DでAF速度の差はほとんど体感できないが、暗い被写体やコントラストが低い被写体などEOS 8000DでコントラストAFが働く場合は、位相差AFのみで合焦するEOS 80D/EOS 9000Dのほうがワンテンポ速い。シャッターボタン半押しで1回だけピント合わせを行う「ワンショットAF」に限れば、最新の高性能ミラーレスに引けを取らない速度だと思う。

さらに、EOS 8000Dと比べると、ピント合わせを続ける「サーボAF」の動作が進化している。EOS 8000Dなどハイブリッド CMOS AF III採用モデルでは、AFが可能な全エリアでサーボAFを利用すると被写体を検知してのロックオンでの追尾になるため、動く被写体を追いきれないことが多いが(※ハイブリッド CMOS AF IIIではAFフレーム1点でのサーボAFの利用が推奨されている)、デュアルピクセルCMOS AFを採用するEOS 80D/EOS 9000Dでは、全エリアで複数のAFフレームが反応して動体を追いかけるようになった。

EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMを装着したEOS 80D(左)とEOS 9000D(右)をプレートに取り付けてライブビュー撮影時のサーボAFの追従性を比較した。いったん遠ざかってから近づいてくる被写体(自転車)をシャッターボタン半押しにして追従する様子を撮影した動画になる。カメラの露出はシャッター優先AEで、レンズの焦点距離は85mm。その他の設定も両モデルでそろえている。※風切り音が大きいため音声はオフにしています。

EOS 80DとEOS 9000Dで違いがあるのは、低輝度限界性能と細かいところの使い勝手。低輝度限界性能はEOS 80DがEV0、EOS 9000DがEV-2で、スペック上はEOS 9000Dのほうがより暗いところでもAFが可能だ。使い勝手の部分では利用できるAF方式が異なっており、EOS 9000Dには、横3×縦3の9点のAFフレームで構成されるゾーンを使ってピント合わせが行える「スムーズゾーン」が加わった。スムーズゾーンの特徴は、画面の任意の位置にゾーンを設定できること。タッチ操作でゾーンの位置を調整しながら撮影できるのが便利だ。EOS 80Dも、似たような機能として、AFが可能な全エリアを使って複数のAFフレームでピント合わせを行う「ライブ多点AF」時にエリアを9つのゾーン(1つのゾーンは横3×縦3の9点)に絞ることができるが、ゾーンを任意の位置に設定することはできない。低輝度限界性能が高く、スムーズゾーンを利用できることを考慮すると、ライブビューAFの使い勝手はEOS 9000Dが上回っていると言えよう。

EOS 9000Dは任意の位置に設定できるスムーズゾーンの利用が可能。タッチ操作でゾーンの位置を調整できる

EOS 9000Dは任意の位置に設定できるスムーズゾーンの利用が可能。タッチ操作でゾーンの位置を調整できる

さらに細かいところでは、使い勝手に違いをもたらすものではないが、顔認識や被写体のロックオン機能(画面をタッチして被写体を追尾する機能)が可能なAF方式「顔+追尾優先AF」の仕様が微妙に違う。顔認識やロックオン機能の利用時は同じ仕様になるが、カメラまかせで複数のAFフレームを使って撮影する場合に、AFフレームの形や数、エリアが両モデルで異なっている。EOS 80DはAFフレームの形が正方形で横7×縦5の最大35点、EOS 9000DはAFフレームの形が横長で横7×縦7の最大49点となる。AFフレームの大きさが異なることもあってか、AFが可能なエリアはEOS 9000Dのほうがわずかに狭い(※顔認識ならびにロックオン機能は両モデルとも同じエリアで利用できる)。また、任意の1点でピント合わせを行う「ライブ1点」時のAFフレームの形も、EOS 80Dは縦長で、EOS 9000Dは横長となっている。

EOS 80Dで顔+追尾優先AFとサーボAFを組み合わせて撮影しているときの画面。AFフレームの形は正方形。AFフレームの数は横7×縦5の最大35点となる

EOS 9000DのAFフレームの形は横長で、AFフレームの数は横7×縦7の最大49点。EOS 80Dと比べると縦のエリアがわずかに狭い

こちらはEOS 8000DでサーボAFを利用している画面。複数のAFフレームが選択されず、被写体を検知してのロックオンでの追尾となる。

ただし、EOS 80D、EOS 9000Dとも、従来よりも性能が向上したとはいえ、ライブビュー撮影時のサーボAFの追従性はまだまだ改善の余地がある。離着陸する飛行機を遠くから狙うような、それほど高速に移動しない被写体であれば問題ないが、スポーツ競技など不規則に動く動体をライブビュー撮影で追従するのは難しい。被写体がある程度の大きさでないとAFが食いついてくれないのと、横方向はいいのだが、奥行き方向に動く被写体に対しての追従性がもうひとつ。あわせて、ライブビュー撮影でのサーボAF連写時はコマ速が落ちるのと(EOS 80Dは最高約5コマ/秒、EOS 8000Dは最高約4.5コマ/秒)、連写時にモニターへの映像表示で遅れが発生するため動体を追いかけにくいのも気になるところ。ライブビューでの動体撮影については、ソニーやオリンパスなどの最新の高性能ミラーレスに比べて差があるというのが正直な感想だ。スナップなどでワンショットAFを利用するのであればライブビューでも快適なAF撮影が可能だが、すばやく動く動体の撮影は光学ファインダーを使用したいところだ。

EOS 9000DとEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMを組み合わせて、ライブビューでのサーボAFで追従連写した1枚。AF可能な全エリアで被写体を追いかけて撮影している
EOS 9000D、EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USM、50mm(35mm版換算80mm相当)、ISO160、F5、1/1600秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:オート、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、周辺光量補正:する、色収差補正:する、歪曲補正:しない、回折補正:する、JPEG
撮影写真(4000×6000、5.9MB)

上に掲載した作例で追従連写したコマから12枚をサムネイル化したもの。ドリブルからシュート体勢に入るまではAFが追従してくれたが、そこからシュートするまでのコマはピントが外れてしまった(サムネイルではわかりにくいが)。EOS 80D、EOS 9000Dを使って同じようなシュート練習の様子をライブビューで何度か撮影してみたが、いずれもシュートするところまでは追従できなかった

このほか、キヤノンの一眼レフは従来からそうだが、被写体のロックオン機能の性能が高いことも付け加えておきたい。動体の追従性にすぐれるわけではないので動く被写体に対しては別なのだが、被写体を認識し続ける性能が高く、ピントを合わせる位置を決めてから構図を微調整するやり方で撮る場合にとても役立つ。動かない被写体に対してカメラを動かしてフレーミングしても少々のことではロックが外れない。ロックした位置が画面の外に出てしまっても、画面を元に戻せば復旧することがあるくらいだ。特に、マクロ撮影で構図を追い込みたいときに便利に使える機能である。

EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMを装着したEOS 9000Dを使用して被写体のロックオン機能を検証した。タッチ操作で白い花を選んだ後にカメラを動かしている様子を撮影したものになる。

視野率約100%ファインダーなど操作性は「EOS 80D」に軍配

続いて、EOS 80DとEOS 9000Dの操作性の違いを見ていこう。両モデルとも横開きのバリアングル液晶モニターを採用し、タッチ操作を利用できるというスタイルは同じだが、一眼レフとしての操作性は中級機とエントリー機で相応の違いがある。

EOS 80DとEOS 9000Dともにバリアングル液晶モニターを採用する

EOS 80DとEOS 9000Dともにバリアングル液晶モニターを採用する

EOS 80DとEOS 9000Dの操作性で特に大きな違いを感じたのは、光学ファインダーの見え方、グリップの握りやすさ、ボタン・ダイヤルの操作感の3つだ。

光学ファインダーは、EOS 80Dがペンタプリズムファインダーで視野率約100%・倍率0.95倍、EOS 9000Dがペンタダハミラーファインダーで視野率約95%・倍率0.82倍のスペックになっている。EOS 80Dは、ファインダーで見える範囲がほぼそのまま記録される視野率100%のスペックを実現しているのもポイントだが、EOS 9000Dと比べると倍率の違いも大きい。ファインダーが大きくて見やすいEOS 80Dと比べると、EOS 9000Dは見え方が狭く、少々窮屈な感じだ。

EOS 80Dは視野率約100%・倍率0.95のペンタプリズムファインダーを採用

EOS 80Dは視野率約100%・倍率0.95のペンタプリズムファインダーを採用

EOS 80Dのグリップは横に大きくてしっかりとした形状。いっぽうのEOS 9000Dは最近のトレンドでもある細くて深い形状だ。指や手が特別大きいわけではないが、男性の筆者にとってはEOS 80Dのほうがホールドしやすいという印象。EOS 9000Dの細いグリップもけっして悪くはないが、大きな望遠レンズを装着してレンズ側に重量がかたよる場合などは、EOS 80Dのほうが強く握れる分、安定感のあるホールドが可能だと感じた。

左がEOS 80D、右がEOS 9000D(以下の画像も同じ並び)。EOS 80Dは横に大きいグリップで、EOS 9000Dは細くて深いグリップとなっている

シャッターフィーリングはEOS 80Dのほうが軽快な感じで、シャッターボタン半押しからレリーズするときの押し込みが軽い。EOS 9000Dは少し強く押し込む感じになる。ミラーの駆動はEOS 80Dがモーターによる制御で、EOS 9000Dはバネによる制御。EOS 80Dはシャッター音がやや低く、ミラーショックも少ない。EOS 9000Dは少し高い音でややバタバタした動きのようにも感じるが、従来よりも静音化されており、ミラーショックも軽減されている。撮影のフィーリングは異なるが、ミラーショックは両モデルともよく抑えられていると思う。

装備するボタンやダイヤル、レバーについては、上下左右斜めの8方向に動かせるマルチコントローラーを搭載するなどEOS 80Dのほうが充実しているが、EOS 9000Dもエントリーモデルとしては健闘している。従来モデルと同様、背面に、キヤノンの中上級機に搭載されるサブ電子ダイヤルを装備するほか、親指AFを割り当てられるAFスタート(AF-ON)ボタンも追加された。ボタンやダイヤルを使ってのダイレクトな操作性についてはEOS 80Dが上回るものの、EOS 9000Dも操作できることにそれほど違いはない。ただし、操作感が異なっており、特にサブ電子ダイヤルについてはEOS 80Dのほうがクリック感にすぐれる。ほかのボタン類も全体的にEOS 80Dのほうがしっかりと操作できる印象だ。

上面左側の撮影モードダイヤルと電源スイッチ。EOS 80Dの撮影モードダイヤルは、撮影モードやAF機能、メニュー機能などを登録しておけるカスタム撮影モード(C1、C2)が備わっている。EOS 9000Dは、撮影モードダイヤルでポートレートや風景などのシーンモードを直接選択できるほか、電源スイッチを押し込むことで動画撮影モードに切り替わる仕様だ。ダイヤルの質感については、側面の加工を見るとEOS 9000Dのほうが高く感じる

両モデルとも上面右側に表示パネルを搭載するが、EOS 80Dは画面が大きく、より多くの情報が表示される。表示パネル前のボタンはEOS 80Dが4つで、EOS 9000Dは2つ(表示パネルの照明ボタンを除く)

サブ電子ダイヤルやAFスタート(AF-ON)ボタンなど、背面の操作系は両モデルで似ている。EOS 80Dは、ライブビュー撮影の静止画と動画をスイッチで切り替える仕様になっている

底面。バッテリーはEOS 80DがLP-E6N(LP-E6)、EOS 9000DがLP-E17。撮影可能枚数のスペックはEOS 80Dが約360枚上回っている

左側面のインターフェイス。外部マイク入力、リモコン端子、デジタル端子、HDMIミニ出力は共通。加えて、EOS 80Dにはヘッドホン端子が備わっている

細かいところだが、EOS 9000Dは端子カバーにシボ加工が施されている

細かいところだが、EOS 9000Dは端子カバーにシボ加工が施されている

このほか、EOS 80Dには別売の専用バッテリーグリップ「BG-E14」が用意されているが、EOS 9000Dにはない。従来モデルEOS 8000Dでは用意されていたので、より高性能なモデルになったことを考慮すると残念だ。

EOS 80Dにはバッテリーを最大2個装着できる専用バッテリーグリップBG-E14が用意されている

EOS 80Dにはバッテリーを最大2個装着できる専用バッテリーグリップBG-E14が用意されている

OS 9000Dは、撮影画面とメニューの表示を「標準」と「やさしい」から選択することが可能。画像は「やさしい」を選択したときの絞り優先AE時の画面。絞り値によってアドバイスの内容が変わるほか、「背景をさらにぼかすには」という解説を表示することもできる

EOS 9000Dは、撮影画面とメニューの表示を「標準」と「やさしい」から選択することが可能。画像は「やさしい」を選択したときの絞り優先AE時の画面。絞り値によってアドバイスの内容が変わるほか、「背景をさらにぼかすには」という解説を表示することもできる

こちらはEOS 9000Dでメニューの表示を「やさしい」にした場合の画面。メニューのメインタブの説明が表示されるようになるほか、メニュー内の色のレイアウトも変わる

こちらはEOS 9000Dでメニューの表示を「やさしい」にした場合の画面。メニューのメインタブの説明が表示されるようになるほか、メニュー内の色のレイアウトも変わる

こうした基本的な操作性を比較すると、撮影時の使いやすさの面ではEOS 80Dに軍配が上がる。さすがに中級機とエントリー機の違いは大きく、カメラの操作に慣れている方だとEOS 80Dのほうが撮影しやすいと感じるはずだ。

ただし、こちらもエントリー機と中級機の違いになるが、ボディのサイズ・重量はEOS 80D が約139(幅)×105.2(高さ)×78.5(奥行)mmで約730g、EOS 9000Dが約131(幅)×99.9(高さ)×76.2(奥行)mmで約540g(いずれもバッテリー、カードを含む)で、EOS 9000Dのほうがひとまわりほどコンパクト。実際に持ち比べてみると、サイズの違いよりも190gの重量差が大きく感じられた。EOS 80Dはしっかりとした作りだがその分重い。比べるとEOS 9000Dは軽くて、手や腕にかかる負担が少ない。男性が使うのであればEOS 80Dで問題ないだろうが、子どもの撮影などでパパ・ママ用カメラとして使う場合、操作性よりもカメラの重量を重視するという方もいるだろう。重量が気になるようであれば、店頭やショールームなどで実際に持ち比べてみて体感していただければと思う。

エントリー向けのEOS 9000DはEOS 80Dよりもコンパクトなボディ。重量は190g軽い

エントリー向けのEOS 9000DはEOS 80Dよりもコンパクトなボディ。重量は190g軽い

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

紹介した製品の最新価格・クチコミをチェックする
関連記事
ページトップへ戻る