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デジタル一眼・エントリー機のベストセラー「EOS Kiss X7」の強さの秘密

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発売から4年以上も売れ続けている、デジタル一眼のモンスターヒット機

キヤノン「EOS Kiss X7」

キヤノン「EOS Kiss X7」

一時期は飛ぶ鳥を落とす勢いだったデジタルカメラの販売不振が顕著になってきている昨今ではあるが、そんな中で、ある意味、象徴的な売れ行きを保っている製品がある。それが、キヤノンが2013年4月に発売した、デジタル一眼レフカメラのエントリーモデル「EOS Kiss X7」だ。今から4年前に発売された製品でありながら、価格.comの「デジタル一眼カメラ」カテゴリーでは、発売から長期にわたって売れ筋ランキングの上位をキープしており、2017年5月11日時点でも、売れ筋ランキングの首位を維持している(EOS Kiss X7 ダブルズームキット)。エントリー向けのデジタル一眼カメラは、1〜2年おきにモデルチェンジがなされることが普通であるだけに、これだけの長期間人気を維持することはまずないのだが、本製品だけは、まさに異例の長期人気を誇っている。その秘密を、「価格.comトレンドサーチ」のデータを基に探っていこう。

図1:「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」の売れ筋・注目ランキング推移(過去2年間)

図1:「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」の売れ筋・注目ランキング推移(過去2年間)

図1は、過去2年にわたる「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」の売れ筋・注目ランキング推移を示したもの。これを見るとわかるように、本製品は過去2年にわたって、売れ筋ランキングのトップを走ってきた。まれに首位から順位が下がることはあっても、ベスト5を下回ることはなく、常に3位内をキープしてきたことがわかる。もちろん、本製品は4年前に発売された製品であり、これより以前もほぼ同様の好調な売れ行きを保ってきた。

これだけの長期間にわたっての高い人気を維持するのは並大抵なことではない。デジタルカメラの技術は日進月歩で、この4年の間にも、光を受け取るセンサー(CMOSなど)は大幅な進化を遂げているし、AFの精度や、高感度撮影への対応なども、4年前とは比べるべくもなく進化している。ちなみに「EOS Kiss X7」の主要スペックを見ると、撮像素子は1900万画素のCMOSセンサーで、映像エンジンは「DIGIC 5」。常用ISOは100〜12800で、AFの測距点は9点。連写は約4.0コマ/秒となっている。先日発売された「EOS Kiss」シリーズの最新モデル「EOS Kiss X9i」は、、撮像素子は約2420万画素のCMOSセンサーで、映像エンジンは「DIGIC 7」。常用ISOは100〜25600で、AFの測距点は45点。連写は約6.0コマ/秒と、全ての点で「EOS Kiss X7」を凌駕している。ただ、本体のサイズ・重量は、「EOS Kiss X7」が約116.8(幅)×90.7(高さ)×69.4(奥行)mmで、約407gなのに対し、「EOS Kiss X9i」は約131.0(幅)×99.9(高さ)×76.2(奥行)mm、約532gと、最新モデルのほうが若干大きく重くなっている。

実を言うと、「EOS Kiss X7」と「EOS Kiss X9i」とは、同シリーズでありながらも、若干趣旨を異にする製品だ。それは型番末尾の「i」に現れている。末尾に「i」が付いた型番モデルは、「EOS Kiss X7」と同時に発売された「EOS Kiss X7i」に始まり、その後も「X8i」「X9i」と、すでに3モデルにわたって進化を続けている。これに対して、「i」の付かない「EOS Kiss」シリーズは、実は4年前の「EOS Kiss X7」が最後で、それ以降、真の後継モデルというのは出ていない状況だ。型番末尾の「i」が付いたモデルは、簡単に言うならば、付いていないモデルよりも少しだけ性能がアップしていると考えるといいだろう。たとえば、「EOS Kiss X7」と「EOS Kiss X7i」の大きな違いは、バリアングル液晶の搭載の有無や、AFの性能(クロスセンサーAF)、連射機能(5コマ/秒)など。このように、少しだけ性能がアップしているが、しかし逆にボディサイズはやや大きく、重くなっているのだ。

図2:「EOS Kiss」シリーズの最安価格推移比較(過去2年)

図2:「EOS Kiss」シリーズの最安価格推移比較(過去2年)

この特性は最新モデルの「EOS Kiss X9i」まで継続されている。つまり、型番の末尾に「i」が付く「EOS Kiss」シリーズの各モデルは、エントリー向け製品でありながらも、従来の「EOS Kiss」シリーズよりもやや性能をアップさせ、ミドルクラスの製品に近くなった製品ということができる。そして、このことは、販売価格にも大きく影響しているのだ。図2は、過去2年間の「EOS Kiss」シリーズ・4モデル(全てダブルズームキット)の最安価格推移を比較したものだが、この2年間、「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」の最安価格が5万円前後で推移しているのに対し、同時期に発売された「EOS Kiss X7i ダブルズームキット」はおよそ6万円台後半、その約2年後に発売された「EOS Kiss X8i ダブルズームキット」は11万円台から7万円台まで価格が大きく下落している。そして、今年2月に発売された最新モデル「EOS Kiss X9i ダブルズームキット」は、いまだに11万円前後の最安価格をつけている。

このことからわかるのは、型番末尾に「i」が付くモデルは、全般的に価格設定が従来モデルより高めであるということだ。発売時期や性能が似通っている「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」と「EOS Kiss X7i ダブルズームキット」でも、いまだに2万円近い価格差があり、それ以降のモデルでは、さらに価格差が開く。もちろん、それだけ性能も向上しているわけだが、エントリー向けのデジタル一眼カメラという点で考えると、上記にあげたような性能の違いが、これだけの価格差を生むことに納得できる人は案外少ないのかもしれない。ちなみに、最新モデルである「EOS Kiss X9i ダブルズームキット」の11万円前後という現在の最安価格は、中級モデル(ボディのみ)が購入できる価格帯であり、エントリーユーザーが手を出すには、やや厳しい価格設定と言わざるを得ない。

このように、「EOS Kiss」シリーズの中でも、価格の安さに加えて、ボディが小型で取り回しやすいという特徴を持つ「EOS Kiss X7」は、4年前発売の製品でありながら、いまだにそれなりの価値を多くのユーザーに与え続けている。しかも、真の後継モデルはいまだ発売されておらず、いまでも現役のラインアップとして製造販売されている。このことが、本製品を、4年というロングセラーモデルに仕立て上げている大きな理由といえそうだ。

ここへ来て「EOS Kiss X8i」の売れ筋がアップ。主な理由は7万円台への価格下落

キヤノン「EOS Kiss X8i」

キヤノン「EOS Kiss X8i」

このように、異例の超ロングヒットを続けている「EOS Kiss X7」であるが、逆に言うと、その後に発売されてきた型番末尾に「i」がつくシリーズからは、これを超えるヒットが出ていないという現実がある。その大きな理由は、上記にあげたように、エントリーモデルとしては高めの価格設定と、やや大ぶりなボディ(あくまでも「EOS Kiss X7」との比較)が、エントリーユーザーから敬遠されてきたということにある。

そうでなくとも、デジタル一眼カメラのエントリーモデル市場では、従来の一眼レフ機以外に、ミラーレス機が数多く発売され、しのぎを削っている。ミラーレス機のほうがボディを小型にしやすく、価格も抑えめにしやすいため、デジタル一眼カメラのエントリー層からは、むしろ好感されているのだが、こうしたトレンドの変化も、型番末尾に「i」がつく「EOS Kiss」シリーズにとって逆風になったことは否めない。キヤノン自体も、ミラーレス機である「EOS M」シリーズを2012年より展開しており、現在「EOS M5」「EOS M6」の2モデルを最新モデルとして展開しているが、こちらも価格.comにおける人気はそれほどでもなく、やや苦戦気味だ。その理由は、やはり「EOS Kiss X7」に比べるとどうしても高めに映る価格設定にあるだろう。

図3:「EOS M」シリーズの最安価格推移比較(過去3か月)

図3:「EOS M」シリーズの最安価格推移比較(過去3か月)

図3は、「EOS M」シリーズ(M3、M5、M6。それぞれボディのみ)の最安価格推移を比較したもの。比較用に「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」の最安価格も入れている。これを見ると、約2年前に発売された「EOS M3」の価格がもっとも安く、38,000円台をつけているが、昨年秋に発売された「EOS M5」、そして今年2月に発売された「EOS M6」については、どちらも8万円を超えている。しかも、これはボディのみの価格であり、レンズを購入すれば、10万円を超える価格となる。エントリーユーザーにとっては、この価格はかなり厳しい。5万円以下で、レンズ2本付きで購入できる「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」の価格優位性は、この点でもかなり強いと言える。

図4:「デジタル一眼カメラ」カテゴリーにおける人気モデルの売れ筋ランキング推移(過去3か月)

図4:「デジタル一眼カメラ」カテゴリーにおける人気モデルの売れ筋ランキング推移(過去3か月)

しかし、ここに来て、「EOS Kiss X7」のある種後継モデルである「EOS Kiss X8i」の人気が高まってきている。図4は、直近の「デジタル一眼カメラ」カテゴリーにおける人気モデルの売れ筋ランキング推移を示したものだが、この3か月で、「EOS Kiss X8i ダブルズームキット」のランキングが大きく上昇してきているのがわかる。もう1台、同じような動きをしているものに、オリンパスの「OM-D E-M10 MarkII EZダブルズームキット」があるが、面白いのは、どちらも2年前の2015年に発売された旧モデルであるという点。どちらも製品も、発売時にはさほどパッとしなかった印象があるが、ここへ来て価格が下落し、コストパフォーマンスがよくなったことで、人気が掘り起こされた印象がある。

図5:「EOS Kiss X8i ダブルズームキット」「OM-D E-M10 MarkII EZダブルズームキット」の最安価格推移(過去2年)

図5は、過去2年間における「EOS Kiss X8i ダブルズームキット」「OM-D E-M10 MarkII EZダブルズームキット」の最安価格推移を示したもの。これを見ると、2年前の発売当初はどちらも10万円前後の価格でスタートしているが、徐々に価格が下がっていき、直近では、「EOS Kiss X8i ダブルズームキット」が72,000円台、「OM-D E-M10 MarkII EZダブルズームキット」が64,000円台まで下がってきている。図4の売れ筋ランキングでランクが上がってきた時期と照合すると、およそ7万円前後という価格レンジに入ってきてから、どちらの製品も人気が上がってきている。やはり、エントリー向けのデジタル一眼カメラというのは、レンズキットで7万円台程度というのが、多くのユーザーが許容できる価格レンジのイメージなのかもしれない。ただ、これらに比べても、「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」の46,200円という最安価格は、圧倒的なインパクトがある。

図6:「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」「EOS Kiss X8i ダブルズームキット」のユーザー満足度推移(過去2年)

しかし、気になるのは、これだけ技術革新の激しいデジタルカメラ市場で、いくら安いとはいえ、4年前に発売された「EOS Kiss X7」の性能に不満はないのかということだろう。図6は、過去2年間における、「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」「EOS Kiss X8i ダブルズームキット」のユーザー満足度推移を示したものだが、「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」のほうはこの2年ほとんど変わらず、ほぼ4.65で安定した満足度を維持している。これに対して、約2年後に発売された「EOS Kiss X8i ダブルズームキット」のほうも、直近ではほぼ同じ程度の4.66となっており、いずれもそこそこ評価としては高めだ。

比較的最近本製品を購入したユーザーレビューを見ると、やはりコンパクトデジカメからステップアップして、始めてデジタル一眼カメラを使うというエントリーユーザーからの評価が多く書き込まれている。「初心者ですが、簡単な操作で使用できました。子供の運動会、音楽発表会など色々と使用できました。細かい設定などは勉強していこうかと思います」「全然まだ使いこなせておりませんがとても綺麗な写真が撮れます。空の青がとても綺麗にうつるので子供の写真に空も意識して入れるようになりました。それだけで素敵な写真になります」「お店でミラーレスカメラと迷ったけど思い切って購入、イベント事で持って行って、撮ってる最中までは小さいカメラにしておけば良かったかなーと思ってましたが家に帰ってパソコンで見て私でもこんなにキレイに撮れるのかとびっくり!買ってよかったです」など、エントリーユーザーにとっては十分な画質、性能で、むしろ難しい操作を必要としない点は好感されている。また、カメラ愛好家からも、「登山や食べ歩き用に購入しました。コンパクトで軽いし持ちやすいです。パンケーキレンズを装備すれば食べ歩き用には十分です」「とても軽く、携帯性に優れたカメラです。画質を星4つにしていますが、5Dmark3と比べたらそうかなと思うだけで、十分に綺麗です」など、十分な画質に加えて、今でもクラス最軽量というコンパクトボディが好感されている。

このように、4年前に発売され、今も好調に売れ続けている「EOS Kiss X7」の魅力は、エントリーユーザーにも手が出しやすい低価格と扱いやすさ、十分な画質、そして小型ボディにあると言えそうだ。ただ、逆に言えば、この4年間、本製品を超えるような総合的な魅力を備えた製品が、エントリー向けデジタル一眼市場に登場していないということでもある。そのひとつの問題が、大幅な価格上昇にあることは間違いないだろう。5万円以下のプライスをつけている本製品のコストパフォーマンスの高さはやや異常とも言えるだろうが、少なくとも、レンズキットで7万円台という価格レンジを実現する製品でないと、エントリー向けデジタル一眼カメラとしては、もはやヒットは難しいと言えるのではないだろうか。

鎌田 剛(編集部)

鎌田 剛(編集部)

価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。

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2017.8.18 更新
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