パナソニックが2018年1月に発売した「LUMIX DC-GH5S」(以下GH5S)は、映像制作にミラーレスカメラを使用するユーザーをターゲットにしたレンズ交換式のミラーレス一眼カメラです。同社がマイクロフォーサーズマウントのハイエンドカメラとして開発した「GH5」をベースに、あえてセンサーの画素数を落とすことで高感度撮影時のノイズ耐性を上げるなどの改良を施し、「高い水準の映像制作ニーズに応える」とうたうハイエンド志向のモデルです。
今回はそのデモ機を使い、実際に動画を撮影して性能をチェックしてみることにしました。なお、この記事は、動画のカジュアルユーザーからハイアマチュア向けに実機を使用してわかった情報をお届けすることを目指しているため、写真(静止画)の撮影性能についての評価は割愛しています。あらかじめご了承ください。
ミラーレスカメラ「LUMIX DC-GH5S」の動画性能を、前モデル「DC-GH5」と比較レビュー
マイクロフォーサーズマウントのミラーレス機としてはボリューム感のあるボディ。これは好みが分かれるところかもしれませんが、筆者が実際に使用した印象は、「撮影時に安定して保持するのにちょうどよい重量とサイズで、なおかつ持ち歩きの負担にもなりづらい」というほどよいバランスでした。
ロゴマークが「GH5S」となっているなどの点を除けば、ボディのデザインは「GH5」とほぼ同じです
本体サイズは138.5(幅)×98.1(高さ)×87.4(奥行き)mmで、本体重量は約660g(本体、バッテリー、メモリーカード1枚含む)です。
ディスプレイを内側に向けて収納できるので、持ち運び時などに傷をつけてしまう心配が大幅に減ります
角度を自由に変更できるフリーアングル式のディスプレイはハイ / ローアングルでの撮影に便利。また、画面をレンズ側に向けることも可能なので、海外のYouTubeで大流行している「Vlog(動画版ブログ)スタイル」の自撮りにも最適です。
ディスプレイサイズは3.2インチでタッチ操作に対応
電源スイッチやホワイトバランス、ISO、露出の補正などを操作するボタンは、すべてカメラを構えたまま自然に押せる位置にまとめられており、慣れれば目視しなくてもスムーズに扱えます。それぞれのボタンの高さを微妙に変えることでボタンを押しやすくしている点などには、細かな作り込みも感じられます。また、ボタンを押すと「カチッ」というハッキリした応答があるため、暗い場所でもとまどうことなく操作できました。
ひときわ目を引く「REC」と書かれた赤いボタンが録画開始用
ドライブモードダイヤルにデザインのアクセントとしてあしらわれた赤いリングは「GH5」にはないもの。兄弟機の写真用ハイエンドモデルカメラの「DC-G9」と似たデザイン特徴です。
メタリックな赤がスポーツカーを連想させるドライブモードダイヤル
外部メディアには、2枚のSDメモリーカードへ「順次・バックアップ・振り分け」の3つの方法でデータが記録可能です。また、2スロットともUHS-II Video Speed Class 60 規格の高速書き込みに対応しており、ALL-Intra(最大400Mpbs)という高いビットレートで撮影した動画データを保存できます。
ボディ右側に2つのSDメモリーカードスロットを搭載
また、映像出力用のHDMIポートにはタイプAを採用。前モデルの「DC-GH4」ではより小型のタイプDだったものを、あえて大きくした理由は耐久性を考慮してとのこと。
本体左側にはMIC端子、ヘッドホン端子、HDMIポート、USBポートを備えています
「GH5S」専用に新たに開発されたセンサーは、「GH5」の2033万画素のほぼ半分となる1028万画素。あえて画素数を半数程度まで減らし撮像素子のセルサイズを拡大することで、暗所でもより多くの光を取り込むことができ、ノイズの少ない写真や動画の撮影を可能にしている点が「GH5S」の最大の特徴です。
メーカー公称のS/N比は「GH5」と比べて約1.5段アップ。感度特性も約2.4倍に向上
以下、実際に「GH5S」で動画を撮影してみました。暗所でもノイズの少ない動画撮影を可能にしているとのことなので、朝の渋谷や夜の新宿で撮影。カメラの設定は「オート」で、使用したレンズは「GH5S」「GH5」ともに標準5倍ズームレンズ「LUMIX G VARIO 12-60mm / F3.5-5.6 ASPH. / POWER O.I.S.(H-FS12060)」です。画質は4K、フレーム数は60fpsで撮影しています。
※上のスクリーンショットは「GH5S」で撮影した動画のイメージです。画像にして、Webサイト掲載用に圧縮する際に元の動画からはかなり画質が劣化していますので、より実際の画質に近い映像は以下のリンク先からご覧ください
<「GH5S」で撮影した動画のサンプル>
以下の動画では「4K・手持ち・昼間撮影」2種と「4K・三脚・夜間撮影」2種の映像サンプルをご覧いただけます。
なお、「GH5S」で実際に撮影した映像は48秒ごろからスタートします。
※ YouTubeにアップロードする際にも圧縮による劣化が起こり、「カメラからそのまま出力されたデータ」より画質が下がっていますので、あくまでも「撮影した動画をオンラインで配信した場合はこう見える」という参考のひとつとしてご覧ください。
なお、撮影時間帯は日の出直後の街が徐々に明るくなるタイミングでしたが、実際に撮影した映像をPCの大画面で見てもディテールはハッキリとしており、シャドー部のノイズも少ないクリアな仕上がりでした。
動画に特化した「GH5S」と汎用性にすぐれる「GH5」で、実際に撮影した動画の画質にはどれくらい差があるのか? できる限り条件を同じにして撮影した動画から、その違いを探ってみることにしました。
「GH5S」と「GH5」を1列に並べて、ほぼ同じタイミング、同じレンズ、同じ設定で撮影して比較しました
先にもご紹介したとおり「GH5S」はあえて画素数を落とすことで、暗所での撮影能力をアップさせることを狙ったカメラです。その成果を調べるために、夜の街を撮影した結果は以下の通りです。
※上のスクリーンショットは「GH5S」で撮影した動画のイメージです。画像にして、ウェブサイト掲載用に圧縮する際に元の動画からはかなり画質が劣化していますので、より実際の画質に近い映像は以下の動画からご覧ください
画像中央のビルの壁にかけられた広告とそれを照らすライトにご注目いただくと、「GH5S」で撮影した映像(上記画像)のほうがわずかに色の再現具合がよく、シャープな映像になっていることが見て取れるはずです。
また、以下の動画には早朝に手持ちで撮影した映像のサンプルもあります。こちらを見ると「GH5S」にはセンサーシフト式の手ぶれ補正機構が非搭載、「GH5」には搭載、という違いがおわかりいただけると思います。
なお、「GH5S」と「GH5」で撮影した映像を並べて比較したシーンは1分10秒頃からスタートします。
今回のテストで「GH5S」と「GH5」を比較した結果、「GH5S」のほうが夜の街などの暗い場所における撮影にややアドバンテージを持つことがわかりましたが、その差は劇的というほどではありませんでした。もちろん「GH5S」は暗所撮影用のスペックアップだけでなく、フルHD 240fpsのスローモーション撮影や、Cinema4K 60fpsの撮影が可能になっているなどの強化もあるため、より映像を作り込みたい人向けに適した1台です。
いっぽうで、センサーの面積を最大限使い切るために、ボディ内手ぶれ補正機能を搭載しないという割り切りもあります。そのため、旅行などに持ち出して身軽に手持ちで撮影をしたい場合には「GH5S」より「GH5」のほうが使い勝手がよさそうです。
■Mr.TATE ( Masahira TATE )
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世界50か国以上を旅したバックパッカー。週刊アスキー編集部などを経て、AppBankに入社。「バイヤーたてさん」として仕入れとYouTubeを活用したコンテンツコマースに取り組み、上場時は広報として企業PRを担当。現在はフリーランスで活動中。