カメラがデジタル化されてデジタルフィルター機能が搭載されるようになり、レンズフィルターよりも撮影後の画像をカメラ側で加工することが増えてきた。これに合わせてカメラメーカーも個性的なエフェクトを次々と開発し、現在では定番の機能となっている。その流れとは別に高解像度でシャープすぎるカメラの描写に対して、ハイライトとシャドーのコントラストを抑えるために生まれたのが“ブラックミストフィルター”である。
元々、映画やテレビ撮影などで使われる動画用フィルターだったが、その人気の高さからカメラ用が発売された。主に人物向けで、光源をやわらかくする効果があり、夜景の光や逆光、木漏れ日などの点光源もフワッと幻想的な雰囲気に仕上げてくれる。今回はブラックミストに加えて、同様の効果を持つKANIのCDFフィルター、比較用に従来からあるケンコー・トキナーのMCプロソフトンを加え、合計5種類のフィルターで撮影して比べてみた。
φ72mmフィルターを使い、作例撮影には富士フイルムのミラーレスカメラ「X-E4」を組み合わせた。使用したレンズは、「XF16-80mmF4 R OIS WR」と「XF10-24mmF4 R OIS WR」
光をにじませる効果のある「MCプロソフトン( A )」とより効果の強い「MCプロソフトン( B )」、そして「ブラックミスト No.1」とより効果の弱い「ブラックミスト No.05」の4種類はケンコー・トキナーの製品だ
KANI「Cinema Diffusion Filter No.0.5」はごく自然な効果が得られるという
まずはLEDランタンの光源を入れて近距離からの撮影でテストしてみた。レンズ焦点距離は120mm相当で絞りは開放のF4だ。
フィルターなしの状態
撮影写真(6240×4160、9.87MB)
「MCプロソフトン( A )」を使うと光源の回りにフレアが現れ、ソフトフォーカスになった。
「MCプロソフトン( A )」を装着した状態
撮影写真(6240×4160、9.05MB)
「MCプロソフトン( B )」も同様の効果があり、近接撮影時には効果の差はほとんどないようだ。
「MCプロソフトン( B )」を装着した状態
撮影写真(6240×4160、8.93MB)
「ブラックミスト No.1」は霧のように白い範囲が広がり画面全体がソフトな雰囲気になった。
「ブラックミスト No.1」を装着した状態
撮影写真(6240×4160、8.54MB)
「ブラックミスト No.05」はソフト効果が弱くなったが、フィルター効果の範囲はNo.1と変わらない。
「ブラックミスト No.05」を装着した状態
撮影写真(6240×4160、9.24MB)
「Cinema Diffusion Filter No.0.5」は、ケンコー・トキナーのブラックミストフィルターよりもさらに弱いソフト効果が現れた。
「Cinema Diffusion Filter No.0.5」を装着した状態
撮影写真(6240×4160、9.15MB)
続いて、ポートレート撮影で各フィルターの効果をテストしてみた。フィルターなしでの撮影では、120mm相当なので背景はキレイにボケている。モデルは亜希子さん。
フィルターなしの状態
撮影写真(6240×4160、11.1MB)
「MCプロソフトン( A )」を使うと画面全体にソフトフォーカス効果が現れる。
「MCプロソフトン( A )」を装着した状態
撮影写真(6240×4160、10.9MB)
「MCプロソフトン( B )」ではさらにソフトフォーカス効果が強くなることが確認できる。
「MCプロソフトン( B )」を装着した状態
撮影写真(6240×4160、10.8MB)
「ブラックミスト No.1」は画面全体に霧がかかったようになる。この後記載した「ブラックミスト No.5」と比べると、効果が強力なことがよくわかる。
「ブラックミスト No.1」を装着した状態
撮影写真(6240×4160、10.8MB)
「ブラックミスト No.05」は「ブラックミスト No.1」よりも効果が弱わり、人物のディティールが失われないのが好印象だ。
「ブラックミスト No.05」を装着した状態
撮影写真(6240×4160、11.3MB)
「Cinema Diffusion Filter No.0.5」をポートレート撮影に使うと、「ブラックミスト No.05」に近い効果が得られるが、厳密に比較してみると、こちらのほうがさらに弱い効果と言える。
「Cinema Diffusion Filter No.0.5」を装着した状態
撮影写真(6240×4160、11.4MB)
最後に、超広角ズームに「Cinema Diffusion Filter No.0.5」を装着して撮影してみた。人物の顔の回りが若干ソフトな描写になっていることがわかる。
「Cinema Diffusion Filter No.0.5」を装着した状態
撮影写真(6240×4160、14MB)
こちらがフィルターなしの画像。同じ明るさになるように撮影したが、顔はクッキリしている。
フィルターなしの状態
撮影写真(6240×4160、14.7MB)
こうして撮影してみると従来のソフトフィルターとブラックミスト、Cinema Diffusion Filterは明らかに違いがある。その効果は自然で、わずかに人物の描写をやわらかくしてくれる。今回は風景での検証はしていないが、風景の場合も弱めに効くので使いやすい。今まで撮影後の画像をPhotoshopで補正していたが、これらフィルターを使えば、同じような効果が撮影時に得られるのだ。
これらフィルターの使い方のポイントは効かせすぎないことなので、ブラックミストならNo.05、Cinema Diffusion FilterならNo.0.5あたりがちょうどいい。これより強い効果のフィルターを使うと、画面全体にソフト効果が現れ、またその効果がハッキリ出過ぎてしまう。撮影条件としては、レンズは望遠、逆光、または半逆光で効果が現れやすい。また、点光源のある夕景や夜景も効果的だ。もし、ピーカンの順光で撮る場合はNo.1を使ったほうがいいかもしれない。
デジタル時代になってから使うフィルターと言えば、PL(偏光)かNDフィルターと思っていたが、ブラックミストは、なかなか魅力的なフィルターだと改めて確認できた。人物撮影時、カメラバッグに忍ばせておきたい強力な味方になりそうだ。
カメラとオーディオが専門のライター。モノクロフィルムの現像、カラーのプリントを経て、デジカメ時代に突入。現在は仕事もプライベートもミラーレスOLYMPUS OM-D E-M1MK2を愛用。「阿佐ヶ谷レンズ研究所」にて掲載記事をまとめて発信中。