レビュー

キヤノンのミラーレスで味わう“開放F1.0”の世界! 「NOKTON 50mm F1 Aspherical」レビュー

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2023年10月26日、コシナから「フォクトレンダー(Voigtlander)」ブランドの大口径MFレンズ「NOKTON 50mm F1 Aspherical」のキヤノンRFマウント用が発売されました。キヤノンからのライセンスを得た初めてのサードパーティー製RFマウント用レンズです。開放F1.0の描写を中心に、その魅力をたっぷりご紹介します。

開放F1.0の明るさが特徴の「NOKTON 50mm F1 Aspherical」にRFマウント用が追加されました

開放F1.0の明るさが特徴の「NOKTON 50mm F1 Aspherical」にRFマウント用が追加されました

電子接点を搭載し、Exif記録やボディ内手ブレ補正などに対応

「フォクトレンダー」は、コシナが手掛ける高品位なMFレンズブランド。個性のある描写に加えて、絞りリング・フォーカスリングの操作感にもこだわっていて、MFで撮る楽しさを強く感じられるのが魅力です。

「フォクトレンダー」ブランドでは大口径タイプのレンズに「NOKTON」の名称を付けていますが、「NOKTON 50mm F1 Aspherical」は、同ブランドのフルサイズ用として最も明るいF1.0という開放絞り値を実現したのが最大の特徴です。まず2022年1月にVMマウント用が登場し、その後2023年2月にニコンZマウント用が、そして2023年10月にキヤノンRFマウント用が追加されています。

今回紹介するRFマウント用のポイントは、先にも触れたように、キヤノンのライセンスを得て商品化されていること。レンズマウント部に電子接点を搭載していて、撮影した画像データへのExif記録やボディ内手ブレ補正(3軸)、3種類のフォーカスアシスト機能(拡大表示、ピーキング、フォーカスガイド ※「EOS RP」を除く)に対応しています。

キヤノンのライセンスを受けたレンズで、レンズマウント部に電子接点を搭載しています

キヤノンのライセンスを受けたレンズで、レンズマウント部に電子接点を搭載しています

筐体は「フォクトレンダー」ブランドらしく金属製。RFマウント用のサイズは79.3(最大径)×64.0(全長)mmで、重量は650gと、小型・軽量化が進むミラーレス用としては重さを感じる標準レンズかもしれません。ですが、コシナ独自の高精度な研削非球面レンズ(GAレンズ)を採用したことで、開放F1.0の大口径レンズとしては可能な限りの軽量化を実現していると思います。

操作性では、絞りリングのクリック感が小気味よく、フィルムカメラ時代のレンズを彷彿とさせるものがあり、個人的には非常に好感が持てました。RFマウント用は、絞りリング・フォーカスリングともに「EOS Rシリーズ」のローレットパターンに準じたデザインを採用していて、カメラとレンズの調和を意識している点にも、コシナらしい気遣いを感じました。

「EOS Rシリーズ」のローレットパターンに準じた絞りリング・フォーカスリングを採用。絞りリングにはクリックの有無を切り替える機構が備わっています

「EOS Rシリーズ」のローレットパターンに準じた絞りリング・フォーカスリングを採用。絞りリングにはクリックの有無を切り替える機構が備わっています

シャープなピントとやわらかなボケの調和が心地よい

今回、フルサイズミラーレスカメラ「EOS R6 Mark II」と組み合わせて「NOKTON 50mm F1 Aspherical」のRFマウント用を試用しましたが、最も感銘を受けたのは、何と言っても絞り開放での描写です。

F1.0という絞り値では被写界深度がきわめて薄いのですが、ピントの芯はとてもシャープ。そのシャープな写りの被写体をF1.0のやわらかなボケが包み込む空気感は、ほかでは得がたい唯一無二の描写と言えるでしょう。周辺光量落ちが見せるレトロな風合いが、ほどよいスパイスとしてよい相乗効果を生んでいるように感じました。

また、12枚の絞り羽根が描き出す円形のボケは非常に美しく、人工の点光源のボケはもちろん、木漏れ日や逆光時の自然光の丸ボケにはため息が出るほどです。

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/320秒、ISO100、+1.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、3.4MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/320秒、ISO100、+1.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、3.4MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/250秒、ISO640、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、5.7MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/250秒、ISO640、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、5.7MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/1600秒、ISO100、+3.0EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、4.5MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/1600秒、ISO100、+3.0EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、4.5MB)

ただし、カメラ側での各種収差補正に対応していない点には留意したいです。2段程度絞ればほぼ気になることはありませんが、条件によっては周辺光量落ちが目立つと感じる場合があるかもしれません。

また、光学的な特性から、「EOS R」「EOS RP」「EOS R6」では撮影条件によって画面周辺部にマゼンタ被りが生じる場合があるとのことです。レンズの描写と相まった味として楽しめる要素と言えるかもしれませんが、この3モデルのユーザーは少し気にしておいたほうがよいと思います。

少し絞ると“硬派な視点”に変化

「NOKTON 50mm F1 Aspherical」は、F1.0のとろけるようなボケに包まれた幻想的な世界観が魅力的ですが、少し絞り込むことで、撮影者の見たままの空気感を記録できる少し硬派な視点に変化するのも、もうひとつの特徴と言えるかもしれません。

以下の2枚の写真は、F1.0とF2.8の絞り値で背景のボケ感を比較したものです。F2.8のボケ感も十分にやわらかいですが、F1.0と比べるとボトルの輪郭がかなりはっきりと描写されているように感じられます。

絞り値F1.0で撮影

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/80秒、ISO320、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、4.3MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/80秒、ISO320、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、4.3MB)

絞り値F2.8で撮影

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F2.8、1/80秒、ISO3200、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、5.1MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F2.8、1/80秒、ISO3200、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、5.1MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F2.8、1/60秒、ISO320、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、5.6MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F2.8、1/60秒、ISO320、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、5.6MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.2、1/60秒、ISO6400、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、6.5MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.2、1/60秒、ISO6400、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、6.5MB)

最大の魅力はやはり「F1.0が魅せる世界」

繰り返しになりますが、「NOKTON 50mm F1 Aspherical」のいちばんの魅力は、絞り開放で見せる、やわらかさの中に芯のある描写です。

以下に、絞り開放で撮影した写真をいくつか掲載します。このレンズならではの空気感による、独特でどこかなつかしさを感じさせる世界をご覧ください。

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/320秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、4.8MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/320秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、4.8MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/100秒、ISO250、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、6.3MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/100秒、ISO250、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、6.3MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/250秒、ISO400、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、7.1MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/250秒、ISO400、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、7.1MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/200秒、ISO100、+2.0EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、4.0MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/200秒、ISO100、+2.0EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、4.0MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/60秒、ISO100、+2.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、3.9MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/60秒、ISO100、+2.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、3.9MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/800秒、ISO100、+2.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、6.4MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/800秒、ISO100、+2.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、6.4MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/8000秒、ISO100、-2.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、3.5MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/8000秒、ISO100、-2.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、3.5MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/8000秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、5.8MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/8000秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、5.8MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/250秒、ISO100、-1.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、3.4MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/250秒、ISO100、-1.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、3.4MB)

まとめ 撮ることに喜びをくれるレンズ

「フォクトレンダー」ブランドのフルサイズ用として最も明るい「開放F1.0」の絞り値を持つ「NOKTON 50mm F1 Aspherical」は、「コシナの矜持」を随所に感じさせつつ、カメラのコンセプトとの調和にも手を抜かない、まさにコシナらしさが詰まったレンズに仕上がっています。

今回、いろいろな場所に「NOKTON 50mm F1 Aspherical」を連れ出しました。開放F1.0のMFレンズということで、より慎重にピントを合わせたり、微妙なピント面を見極めたりして、普段のスナップ撮影以上に長い時間被写体と向き合っていたように思います。

自分の指先の延長のようになじむ金属製のフォーカスリングを回して、薄いピントの芯を探し出したときの感動は言葉では伝え切れないものがあります。ぜひこの感動を「EOS Rシリーズ」のユーザーに味わってもらえたらうれしいです。

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/6400秒、ISO100、+1.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、7.7MB)

EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/6400秒、ISO100、+1.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、7.7MB)

金森玲奈 公式Webページ/SNSアカウント
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Instagram:kanamorireina
Twitter:@kanamorireina

金森玲奈
Writer
金森玲奈
1979年東京生まれ。写真家。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務などを経て2011年からフリーランスとして活動を開始。暮らしの中で記憶からこぼれ落ちていく何気ない日々のカケラを撮り続けている。
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真柄利行(編集部)
Editor
真柄利行(編集部)
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣とこだわりを持っています。フォトグラファーとしても活動中。パソコンに関する経験も豊富で、パソコン本体だけでなく、Wi-Fiルーターやマウス、キーボードなど周辺機器の記事も手掛けています。
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