キヤノン「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」(2023年12月発売)は、APS-Cフォーマット用の「RF-Sレンズ」としては初の超広角ズームレンズです。
これまで、「RF-Sレンズ」では焦点距離18mm(35mm判換算28mm相当)が最も広角で、フルサイズと比較するとどうしてもフレーミング的に物足りなさを感じる場合がありましたが、広角端が10mm(35mm判換算16mm相当)の本レンズの登場により、「EOS Rシリーズ」のAPS-Cミラーレスカメラでも気軽に広角域撮影が楽しめるようになりました。
超小型・軽量な超広角ズームレンズ「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」。今回、「EOS R7」と組み合わせて使用しました
「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」の広角端10mm(35mm判換算16mm相当)で撮影した写真。広々とした自然風景の撮影などに活躍するレンズです
EOS R7、RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM、10mm(35mm判換算16mm相当)、F4.5、1/2000秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート
撮影写真(6960×4640、8.7MB)
「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」の最大の特徴は、何と言っても、超広角対応ながらコンパクトなサイズ感を実現していることです。
「RFレンズ」の最新レンズでは、カメラ側での歪曲収差補正を前提に設計することで小型・軽量化を図っているモデルがいくつかありますが、本レンズもそれらと同じ。カメラ側の歪曲収差補正が自動的にオンになる仕様を採用し、大幅なダウンサイジングを達成しています。
そのサイズは約69(最大径)×44.9(全長、収納時)mmで、重量は約150g。同じ焦点距離をカバーする一眼レフ用の「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」(最大径74.6×全長72mm、重量約240g)と比較すると、大きさは約2/3で、重量は90gほど軽量化しています。
今回は、APS-Cモデルの上位機種「EOS R7」と組み合わせて本レンズを使用しましたが、ここまで小型・軽量なのであれば、「EOS R10」や「EOS R50」「EOS R100」といった小さいAPS-C機との相性もよさそうだと感じました。
左が「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」で右が「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」。「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」が沈胴式であることを差し引いても、ひと回り以上コンパクトです
フィルター径も「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」の67mmから49mmへと大幅にサイズダウン
レンズフードを装着するとサイズ感により差が出ます
「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」のレンズ構成は、非球面レンズやUDレンズを含む10群12枚。接写に強いのも特徴で、AF時は最短0.14m(ズーム全域)、MF時は最短0.086m(10mm時)での撮影に対応しています。最大撮影倍率はAF時が0.23倍(18mm時) 、MF時が0.5倍(10mm時)で、MF撮影時は広角端10mmでハーフマクロが可能。被写体にぐっと近づいて迫力ある広角マクロ写真を撮ることができます。
沈胴式を採用していて、ズーム時にそこまでレンズの全長が伸びないのは、接写撮影の際のうれしいポイントと言えるでしょう。操作性では、フォーカスリングをコントロールリングとしても使用可能なので、よく使う機能を割り当てておくのもいいでしょう。
AF時の最短撮影距離まで寄って望遠端で撮影。5mmほどのちいさなミモザの花の細部までしっかりと描写しています
EOS R7、RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM、18mm(35mm判換算29mm相当)、F6.3、1/60秒、ISO200、+1.0EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート
撮影写真(6960×4640、14.2MB)
MF撮影時は広角端の最短撮影距離が0.086m (8.6cm)と、さらに近接での撮影が可能。広角レンズはボケにくい性質のレンズですが、被写体に思い切って寄ることで前後のボケを生かすことができるでしょう
EOS R7、RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM、10mm(35mm判換算16mm相当)、F5.6、1/60秒、ISO1000、+2.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート
撮影写真(6960×4640、7.5MB)
今回、「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」を使って、広角域でのスナップ撮影を行いました。そのなかからレンズの特徴が伝わりやすい写真をいくつかご紹介します。
特徴的なデザインのビルを広角端で撮影。多面ガラスに写る風景がそれぞれ独立した世界のように見えて面白かったです
EOS R7、RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM、10mm(35mm判換算16mm相当)、F7.1、1/125秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート
店頭のマネキンとディスプレイのキリンが睨めっこ
EOS R7、RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM、18mm(35mm判換算29mm相当)(、F7.1、1/80秒、ISO160、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート
撮影写真(6960×4640、9.0MB)
同じくディスプレイの人形に最短撮影距離まで寄って撮影。迫力があります
EOS R7、RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM、10mm(35mm判換算16mm相当)、F7.1、1/80秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート
撮影写真(6960×4640、11.0MB)
車の助手席でダッシュボードにカメラを置いた状態で撮影しました。超広角のダイナミックな画角とスローシャッターで生まれる光跡が深夜の疾走感を演出してくれました
EOS R7、RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM、10mm(35mm判換算16mm相当)、F5、0.5秒、ISO500、+0.3EV、ホワイトバランス:白色蛍光灯、ピクチャースタイル:オート
撮影写真(6960×4640、14.4MB)
広角端で撮影した1枚。サイドから強い光(太陽光)が入っていますが、フレアやゴーストは発生していません
EOS R7、RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM、10mm(35mm判換算16mm相当)、F4.5、1/1250秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート
波打ち際でカメラを構えていたところ急に迫ってきた波にあわてて後ずさりながら撮った1枚です。打ち寄せる波の迫力が伝わる写真になりましたが、本レンズは防塵・防滴仕様ではないので撮影シーンによっては注意が必要です
EOS R7、RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM、10mm(35mm判換算16mm相当)、F4.5、1/2000秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート
撮影写真(6960×4640、10.3MB)
超広角ズームレンズというと、どうしても周辺の描写が甘くなりがちですが、「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」は、四隅では若干の甘さを感じたものの、広角端・望遠端ともに全体的にキリッとした描写が得られました。キヤノンのレンズにしてはコントラストが高めな印象を受けましたが、シャープな描写とうまくマッチしているように思います。
「RF-Sレンズ」初の超広角ズームレンズ「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」は、カメラ側に歪曲収差補正を任せることで大幅な小型・軽量化を実現しており、コンパクトなAPS-Cミラーレスと組み合わせることで、気軽に持ち出して軽快に超広角撮影を楽しめるのが魅力です。
しかも、価格.com最安価格(2024年2月14日時点)が49,500円(税込)と、リーズナブルな価格なのがうれしいです。超広角ズームレンズとしてはかなりお買い得な製品と言えるでしょう。
「EOS Rシリーズ」のAPS-C機を所有していて、まだ超広角レンズを使ったことがない人にとって、新しい世界を見せてくれるレンズになるはずです。