カメラ・写真系のYouTuberとして活躍中の写真家Jimaさんが「アクションカメラの可能性」を3回にわたって解説する短期連載の3回目。最終回は、初心者向けに動画編集のポイントを解説します。
短期連載の最終回は動画編集の始め方を紹介します
皆さん、こんにちは。写真家のJimaです。
この短期連載ではアクションカメラの魅力を紹介していて、過去2回は、日常記録用カメラとしての、また縦動画撮影用カメラとしての魅力を掘り下げました。
最終回となる今回は、アクションカメラで撮影した動画を簡易的に編集する楽しさを共有したいと思います。
私は、動画の撮影自体は料理の材料にたとえて「素材を集めること」、その後の編集は「素材を調理すること」だと考えております。
素材(動画データ)がないと調理(編集)することはかないません。そのため、過去2回の記事では「まず撮影してみよう!」ということを意識して、アクションカメラを気軽に使う方法を紹介した次第です。
この短期連載では、DJIのアクションカメラ「Osmo Action 4」などを使ってアクションカメラの活用方法を紹介してきました
極端な表現ですが、動画は編集しなくても楽しめます。ただ、ちょっとした編集を加えるだけで、誰もが見やすい動画になります。家族で共有するにしろ、SNSにアップロードするにしろ、編集することでより多くの人が快適に楽しめるものに変わるのです。
最近は、4Kや8K動画を撮影できる高性能なミラーレスカメラが普及し、プロレベルのクオリティの映像が身近なものになりつつあります。カメラ=写真撮影機という印象を持っている人にとっては、少しとまどうほどにカメラの動画撮影機能が強調されている状態ではないでしょうか。
最近はミラーレスの動画撮影機能が進化し、4Kはもはやスタンダードなスペックで、8Kで撮れるものが増えてきました。そうした高性能なミラーレスと並べてみると、中央のアクションカメラ(「Osmo Action 3」)のコンパクトさがよく伝わると思います
また、作品レベルのこだわりの動画を制作する人のことを指す「映像クリエイター」という言葉も一般的になりつつあります。書店では本格的なカラーグレーディングを解説する本も並び始めていますね。
映像クリエイターの間で最近人気の編集アプリ「DaVinci Resolve」。多機能で高度なカラーグレーディングも可能です。無料版も用意されています
こうした動画を取り巻く環境から、「せっかく動画を撮るなら、高画質なカメラを使ってこだわったものに仕上げないといけない」と考える人もいることと思います。
過去2回の記事でも述べましたが、動画を楽しむのに高性能なミラーレスカメラが絶対に必要というわけではありません。特に、これから動画を始めてみたいという人にとっては、大きくて重い機材よりも、小さくて軽いアクションカメラのほうが扱いやすいと思います。
アクションカメラは、携帯性にすぐれるだけでなく、手ブレ補正を中心に機能も大幅な進化を遂げています。最近では、1インチクラスの大きな撮像素子を搭載するモデルも登場しているほどです。
左がニコンの一眼カメラ用のバッテリー「EN-EL15c」で、右がDJIのアクションカメラ「Osmo Action 3」。アクションカメラのコンパクトさがよくわかると思います
最近はアクションカメラも進化していて、グレーディングに対応できる10bit記録に対応するようになりました
確かに、画質だけを見れば、最新のミラーレスカメラのほうが有利です。ただ、アクションカメラは取り回しがいいため、とにかくたくさんの素材(動画データ)を集めることができるのがいいのです。
アクションカメラに限らず、動画編集で重要なのは「完成イメージ」を意識することです。完成イメージを想定してゴールへ向かわないと再編集することが増えてしまい、想像以上に時間を要することになります。編集作業を楽しむのならよいのですが、やはり時間はかけたくないものです。
「完成イメージ」というと難しく考えてしまうかもしれませんが、やることはシンプルです。
意識してほしいのは
1.縦横どちらの向きの動画にするか
2.動画の長さ(尺)
の2点のみです。
あとは、撮影した素材(動画データ)中から、訪れた場所や出来事に応じて、おおざっぱに必要なものを切り貼り貼りするだけで十分。ひとつのカットの長さを短くして映像の切り替わりのテンポ感を意識すると、見ていて楽しい動画に仕上がりますよ。
動画の視聴方法を変えたのがスマートフォンです。横だけでなく縦でも画面を見るため、縦向きの動画が流行るきっかけになりました
動画編集初心者の人におすすめしたいのが「縦動画」です。スマートフォンなどで動画を視聴することを想定して、時間は30秒から50秒程度でまとめてみましょう。いわゆる「ショート動画」です。
何時間も撮影したものを30〜50秒程度に納めてしまうのは抵抗があるかもしれませんが、編集の負担を考えると、これくらいから始めたほうがいいと思います。完成した後に見返して「この部分を変更したい」と思ったときに尺が短いと調整が楽です。
対して、「横動画」の場合は、テレビや映画などでもなじみのあるフォーマットのため長尺編集が可能です。YouTubeでも10分や30分、60分といった長時間の横動画を見ることがありますよね。
私の場合、YouTubeでは、縦動画は50秒前後のショート動画が多く、横動画は機材や撮影知識を解説する30〜60分の長尺動画と用途を切り分けております。
ただ、動画の尺が長くなればなるほど編集作業が増え、書き出し(動画ファイルとして完成させる)にも時間がかかり、ハードルが上がってしまいます。やはり、始めのうちは短い尺から試すことをおすすめします。
動画編集に必要なのはパソコンと編集アプリです。最近はスマートフォンやタブレットでも動画編集が行えますが、やはりパソコンを使ったほうが便利です。
編集アプリは、いろいろなメーカーのものがあって、最初にどれを選んでいいのか判断が難しいと思います。私の経験からは「どれでもひと通りのことができる」と言えます。数年前は「このアプリは安定している」とか「このアプリは書き出しが速い」といった比較要素がありましたが、今は改良されており、低価格なものでも必要十分な機能が備わっています。
そのなかで、アクションカメラで撮影したフルHD素材を扱うのであれば、「Adobe Premiere Rush」の無料版と「iMovie」(無料で利用可能)を使うことをおすすめします。カット編集や簡易的な色編集のみであれば、まずは無料版で十分。無料版でもテキストの追加やプリセットの適用、再生速度や音量の調整なども可能です。
「Adobe Premiere Rush」の編集画面。無料版では一部機能の利用が可能です
いきなり高機能な編集アプリに触れるのもいいですが、そうしたアプリは多機能ゆえに複雑で、使いこなせようになるまで時間を要します。その点、利用頻度の高い機能に絞り込まれた無料版は操作がシンプル。動画編集の楽しさに触れるにはこれで十分です。
そして動画編集が楽しいと感じ、「もっとこだわった編集がしたい!」と思ったら有料ソフトを試すようにしましょう。
ちなみに、編集アプリの次のステップとしては、「Premiere Elements」や「Filmora」「Final Cut Pro」などの低価格かつ必要な機能が揃っているパッケージ版(買い切り型)をおすすめします。月額課金(サブスクリプション)の「Adobe Premiere Pro」や、最近はやりの「DaVinci Resolve」など、プロが使うアプリに移行するのもいいのですが、操作方法などをしっかりと学ぶ必要があって敷居が高いです。低価格の動画編集ソフトで試してみることを推奨します。
「Premiere Elements」の編集画面。次のステップとして選びたいアプリです
3回にわたって「アクションカメラの可能性」をテーマにその魅力を紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
商業撮影ではブライダルの動画を、プライベートではYouTubeチャンネルの動画(ショート動画を含む)を制作する私の経験から、「アクションカメラで気軽に動画を撮る魅力」をお伝えしました。今回の短期連載をきっかけに、「アクションカメラで動画の撮影と編集を楽しんでみよう!」と思っていただけたなら幸いです。
動画撮影は何かと難しく考えられがちです。始めから機材も編集アプリもしっかり揃えないといけないと思っている人もいることと思います。しかし、実際は、アクションカメラなど小さなカメラでも十分に楽しむことができます。
アクションカメラで撮影した動画を気軽に切り貼りし、ショート動画として家族やSNSなどに共有することで、「動画を撮影してよかった!」と実感できることと思います。ぜひチャレンジしてみてください!