自動車ライターのマリオ高野です。この春からタイヤを新調するにあたり、ダンロップの実用車向け新作タイヤの「LE MANS V(ル・マン5)」を選びました。価格.comでもかなり評判がよく、試乗会に参加した同業ライターからもすこぶる評価が高かったことが選んだ理由です。
サイズは205/55R16、筆者が店頭購入したときには1本1万7700円。4本で7万800円でした
愛車は、スバル・インプレッサG4。グレードは1.6i(5MT/AWD)で、標準装着のタイヤはグッドイヤーのエクセレンス。純正タイヤのサイズは195/65R15でしたが、今回、タイヤとともにアルミホイールも交換したかったので、205/55R16にインチアップしました(編集部注:インチアップとはそれまで装着していたサイズよりも大きなタイヤに替えること。詳細は後述)。
交換前に装着していた純正タイヤのサイズは195/65R15でした
タイヤには初心者には読み解けない英数字が書いてありますが、ここで解説します。最初の「205」はタイヤの幅の数字で205mmという意味。新タイヤは10mm幅が広くなり、理屈としては接地面積が増えてグリップがよくなります。
「55」はタイヤの扁平(へんぺい)率で、65から55に変えたということは、タイヤが少し薄っぺらくなったことを意味します。タイヤが路面の凹凸ショックを吸収するクッション量が減るので、理屈としては乗り心地が悪くなりますが、ゴムが薄っぺらくなる分カーブなどでタイヤがゆがむ量も減ることから、クルマの動きがキビキビした感じになります。
扁平率は純正タイヤの65から55へと高くなり、タイヤの厚みが薄くなるので、原理としては乗り心地が悪くなります
「R」とはタイヤのラジアル構造のこと。乗用車向けのタイヤはほとんどラジアルなので、ほぼ気にしないでよいでしょう。
「16」とはリム径のサイズで、アルミホイールと密着するタイヤの内径のサイズです。今回は、15から16にアップしましたが、タイヤの外径は変わらないので、速度計などの修正は必要ありません。アルミホイール(リム径)をインチアップさせる目的は、多くの場合“ビジュアル面の向上”にあります。一般的にはホイール部分が大きくてタイヤが薄っぺらいほうがスポーティーに見える効果があるからです。ホイールを大きくすると、より大きなブレーキを装着できるようになったり、扁平率が低くなったりする(タイヤが薄っぺらくなる)など、走行性能の向上につながる要素もあります。
タイヤの製品ラベルには、さらに最大負荷能力を示すロードインデックスや、速度記号も示されています。今回買った「ル・マン5」のロードインデックスは「91」なのでタイヤ1本あたりの最大負荷能力は650kg、速度記号は「V」なので、時速240kmまで走行OKという性能がわかります。
時速240kmなど出すわけありませんが、それだけ性能に余裕があるということなので、高規格であればより安心です。
私の場合の作業工賃は4本で8,200円(バルブ交換、廃タイヤ処分料込み)。合計7万9000円でした
通販でタイヤを買った場合、自宅に配送されてくると意外と大変ですし、そもそもアルミホイールへの装着は素人ではできないので、取り付けを依頼するディーラーやショップに「直送可能かどうか」をまず確認しましょう
装着後は、タイヤが純正サイズからわずかに太くなったにもかかわらず、明らかに転がり抵抗が減ったことが強く感じられました。動き出しから滑るように路面を転がります。といっても、もちろん本当に滑るわけではありませんが、むしろ路面をガッチリつかんでいる感触は増しているのに、滑るように抵抗なくタイヤが転がる様子が伝わるのです。
スバル・インプレッサG4(4代目)に装着した姿。交換前の純正タイヤはグッドイヤーのエクセレンス(技術的にはダンロップと同じ住友ゴム)
装着後すぐに埼玉県所沢市〜岡山県美作市の往復などで1400kmほど走り、さまざまな状況を試しました。道中では雨にも見舞われましたが、タイヤのラベリング性能どおり、ウエットグリップも確かなものでした。
転がり抵抗が減ったことは、燃費の向上からも明らかです。過去に、純正タイヤでも同じルートを同じペースで走ったことが何度もありますが、今回の平均燃費は18.5km/リッターで、約1km/リッターよくなりました。
新品の状態。装着後100kmほどはできるだけていねいに運転して「慣らし」をしました
純正装着タイヤとの性能格差からすると、もっと伸びることを期待したので、燃費に関しては期待ほどではなかったといえます。しかし、いつもより速めのペースで走ったときの燃費の悪化の幅が小さいことは意外な美点でした。純正装着タイヤで多少速めのペースで高速巡航をすると、約14km/リッターまで落ちていましたが、「ル・マン5」では16km/リッター程度をキープできました。
「燃費を気にしないで走ってもあまり落ちない」というのは実用的で助かります。
圏央道・入間IC〜中国道・作東IC往復(約1300km)の高速巡航平均燃費はリッターあたり18.5kmでした
さらに、転がり抵抗が減りながらも、高速域での安定感は感動レベルでよくなったことは特筆に値するでしょう。明らかにクルマの直進安定性がよくなりました。
タイヤの転がり抵抗の少なさと、雨天時も含めた安心できるグリップ感は相反する性能にて、いったいどのようにして両立させているのか非常に疑問ですが、ダンロップでは、主に先進のコンピューター解析技術の向上にあると説明します。いくら説明されても私のアタマでは理解できないのですが、スーパーコンピューターの計算能力の向上のおかげで分子レベルでの物質同士の組み合わせやそのつながり方を改善できるようになり、タイヤの材料の一部であるシリカや変性基などの見えない分子の状態が把握できるようになったことで、狙った性能が引き出せるようになったといいます。
そして、最も期待していた静粛性については、私の過度な期待をも上回るものでこれまた感激しました。
私の愛車スバル・インプレッサG4 1.6i(5MT/AWD)の最大の難点は、ロードノイズを拾いやすくて高速巡航では騒々しいことだったのですが、それが劇的に解消!
愛車のスバル・インプレッサG4(4代目)最大の難点は、タイヤのロードノイズをよく拾って静粛性があまりよくないことでしたが、それがかなり改善されてうれしいかぎり!
アルミホイールは軽量・高剛性で定評のあるBBS製。硬くなったのに不快ではないという乗り味の改善効果は、このホイールによる部分もあるのは間違いありません
タイヤが発する絶対的な音量が減ったことに加え、ノイズの音質が耳障りなものではなくなったことが大きいです。
文字にすると、「ガー」「ジャー」などの濁音系のノイズが、「シャー」や「サー」といったスッキリした音質に変わりました。これだけでもうるさく感じる要素は激減します。
高速巡航をしていて疲労度を高める大きな要因の1つであるロードノイズが激減したことで、今回の所沢〜岡山ドライブは、愛車で行ったものとしては過去最高に疲れませんでした。
タイヤの裏側に仕込まれた「特殊吸音スポンジ」により、空洞共鳴音を抑制するとのこと
あと、乗り心地に関しては、単純に表現すると以前よりも硬くなりましたが、快適性は増しています。路面の凹凸を乗り越える瞬間の衝撃はやや強まったものの、クルマの足元がしっかりしているおかげで、その衝撃が不快ではないのです。今回のタイヤは以前よりも幅が太くなり、厚みも薄くなっているので、乗り心地が悪くなるのは承知のうえでしたが、高速域での安定感アップなど、走りのよさが得られたことからすると、全面的に許容できる程度の硬さです。
硬いといえば硬いので、人によっては乗り心地が悪くなったと感じるかもですが、個人的な好みからすると、ややブワブワしていた以前よりも引き締まった感触となり、大変好ましいといえます。
メーカーがうたっているとおり、低燃費と快適性については猛烈に満足度が高いです。ロングライフについてはサーキット走行でもチェックする予定!
というわけで、現状での「ル・マン5」の満足度はすこぶる高いものがあります。燃費がそれほど伸びなかったこと以外は、全域において期待以上の性能でした。
私の愛車のスバル・インプレッサG4 1.6i(5MT/AWD)との相性は予想以上によかったといえるので、車重1250kg、最高出力115馬力程度の実用車には特におすすめできます。
耐摩耗性と、ある程度摩耗が進んだときの性能の落ち幅については未知数ながら、今後はサーキット走行などの過酷な状況下での走りも試す予定なので、また機会があれば報告します。
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。3台の愛車はいずれもスバルのMT車。