バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
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未来を感じる軽二輪クラスの電動バイク! BMW「C evolution」で“駆け抜ける歓び”を実感

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4輪車の世界では普及の進む電動車両(EV)だが、2輪の世界ではまだ一般的になっているとは言い難い。その要因のひとつに、魅力的な車種がリリースされていないことがある。現在、国内メーカーから発売されている電動2輪車のほとんどは原付クラスのモデルで、位置付けとしても近距離移動に特化したものが多い。バイク乗りとして“乗りたくなる”魅力を持ったものは数少ないのが現状だ。しかし、そんな状況を大きく変える可能性を秘めた車種「C evolution」がBMWから発売された。「C evolution」は大手メーカー製としては初となる軽二輪(250cc)クラスのスクーターでありながら、排気量が上のクラスに匹敵する動力性能を持つ。“駆け抜ける歓び” を標榜するBMWが送り出した電動バイクは、どのような走りを味わせてくれるのだろうか。

都会的デザインの車体に近未来的なUIを搭載

今回、2017年5月12日に発売された「C evolution」は、実は2代目にあたる。初代モデルは日本国内ではリリースされなかったものの、ヨーロッパをはじめとする海外市場では2014年に発売され、スペインやイタリアでは警察の白バイとしても使用されていた。そんな初代モデルとの大きな違いは、バッテリー。BMWは4輪車でも、EVの「i3」やプラグインハイブリッドのスポーツカー「i8」など、電気を駆動力に用いる「i」シリーズの展開に力を入れており、「C evolution」には最新の「i3」と同様のバッテリーを採用。4輪でつちかったバッテリー技術を応用することで、初代モデルで100km程度だった航続距離が160kmまで延長した。2代目「C evolution」は日常使いで走るに十分というだけでなく、ショートツーリングにも出かけられそうなほどのスペックを備えている。

イタリアのサルディニア州、スペインのバルセロナで白バイとして活躍する初代「C evolution」

イタリアのサルディニア州、スペインのバルセロナで白バイとして活躍する初代「C evolution」

まずは、外観を見てほしい。車体は同社のスクーター「Cシリーズ」に共通するシックな雰囲気のデザインで、奇抜な部分はないが大人びていて個人的にはカッコイイと感じる。車体の中央部に配置されたバッテリーはアルミダイキャスト製のケースに入れられ、フレームとしての役割も果たす。BMWらしい合理的な設計だ。そして、電動マシンらしさを一番感じるのはコックピットまわりだろう。右手でアクセルを回し、両手でブレーキをかけるといった構造はエンジン車と変わりないが、メーターとして装備される液晶パネルは、同社の4輪EVである「i」シリーズと通じるテイストの、タブレットを立てたようなデザインとなっている。最近のBMWのバイクはほとんどの車種に走りのキャラクターを変更できる走行モード切り替え機能が搭載されているが、「C evolution」はそのモードも電動らしい。電費を優先する「ECO PRO」と標準的な「ROAD」、アクセル操作にダイレクトに反応して加速し、回生ブレーキの効きも強めに設定された「DYNAMIC」、そしてアクセルを戻しても回生ブレーキの効かない「SAIL」の4つの走行モードが用意されている。

「C evolution」も位置する「C」シリーズはBMWでは「アーバンモビリティー」と呼ばれるだけあり、都会に溶け込むようなデザインとなっている

デザイン上のアクセントともなっているグリーンにペイントされた部分にバッテリーが収納されている

デザイン上のアクセントともなっているグリーンにペイントされた部分にバッテリーが収納されている

中央部にタブレットを取り付けたようなコックピットは、もっとも近未来的な雰囲気を感じる部分だ

中央部にタブレットを取り付けたようなコックピットは、もっとも近未来的な雰囲気を感じる部分だ

モニターの表示も電動らしい。アクセルを開けると右側にバーが伸びて行き、アクセルを戻すと回生ブレーキの効き具合が左側に伸びるバーで表示される

シート下には、フルフェイスのヘルメットひとつなら余裕で収納できる容量の大きな荷室を装備。充電器を入れておくと便利だろう

続いて、動力性能についての解説へと移ろう。電動バイクというと“静かでおとなしい乗り物”というイメージを持っている人も多いかもしれないが、電気モーターはガソリンエンジンと異なり、出だしから最大トルクを発揮できる特性を持っているため、加速にすぐれたモデルが多く、“静かだがおとなしい”ワケではない。原付クラスでもその加速力を味わうことができるが、より大きなモーターを装備した軽二輪クラスではさらに強力なスタートダッシュが期待できる。事実、「C evolution」の最高速度は電子制御のリミッターにより129km/hに抑えられているが、50km/hまでの加速は2.8秒となかなかの数値。最高出力は35kW(48ps) /4,650rpmと驚くような数値ではないものの、軽二輪車クラスとしてはかなりパワフルだ。最大トルクはスペック上は72Nmとされているが、実質的にはリアホイールで600Nm近くを発生するという。同社の650ccスクーター「C 650 SPORT」が63Nmであることからも、相当高い数値であることがわかる。

モーターは後輪の前側に搭載されている(円筒形の部分)

モーターは後輪の前側に搭載されている(円筒形の部分)

後輪を支えるスイングアームには、動力を伝える機構を内蔵。ホイールベースは1,610mmと、スクーターとしては一般的な長さだ

スクーターでありながら剛性を高めやすい倒立式のフロントフォークを採用している点に、BMWらしい走りへのこだわりが感じられる。タイヤサイズは120/70 R15で、ブレーキはダブルディスクを採用

リアホイールは片持ち式のスイングアームで支えられる。タイヤサイズは160/60 R15。マフラーが存在しないため、スッキリとした見た目だ

なお、日本の法規では軽二輪にあたるため、大きめの車格ながら普通自動二輪免許(以前の中型免許)で乗ることができる。

試乗レポ! 街中から高速まで電動バイクでどれだけ楽しめる?

筆者はこれまで何台かの電動バイクに試乗してきたが、そのほとんどが原付(二種も含む)クラスだったこともあって、電気モーターならではの加速のよさは感じるものの、バイクを操る楽しさをあまり感じることはなかった。いっぽう「C evolution」は軽二輪クラスの車格であり、かつ“駆け抜ける歓び”を掲げるBMWが送りだすモデルであることから、その乗り心地に期待がつのる。

車体サイズが947(幅)×1,255(高さ)×2,190(長さ)mmなので、シート高はそれほど高くはないものの足つきはよくない。身長175cmの筆者で両足のかかとがつかない感じだ。車重も175kgあるため、停車中にバランスをくずすと少しドキッとするが、車体バランスはよく、慣れれば怖い思いをすることもなくなった
※車体サイズの幅はミラーを含んだもの、高さはミラーを省いたものとなります

「C evolution」はキーを回すと電源がONになるが、アクセルを操作しても車体は動かない。これは、自動車でいうところの“アクセサリー電源が入った状態”と同じだ。走行するためには、電源ONの状態でブレーキを握ってセルボタンに当たるボタンを押さなければならない。電動バイクには、キーをONにすればアクセル操作だけで走り出せるものもあるが、「C evolution」がそのような仕様とせずにエンジン車同様の操作を採用したのは、エンジン付きのバイクに慣れたユーザーに対する配慮だろう。

ブレーキを握りながらボタン(赤い部分)を押して、モニターに「READY」と表示されれば走行可能

ブレーキを握りながらボタン(赤い部分)を押して、モニターに「READY」と表示されれば走行可能

アクセルをひねって走り出し、最初に感じたのはやはり加速のよさ。アクセルの操作に対してダイレクトに加速する感じは、エンジン付きのバイクの感覚と明らかに異なる。エンジン車の場合、スクーターであればエンジン回転の上昇にともなって加速力が増し、ミッション付きのバイクであればクラッチをつなぐという操作が必要。いっぽう「C evolution」は右手の操作だけで大きめの車体を自在に加速させられる。これは、かなり楽しい。また、アクセルを戻すとエンジン車のエンジンブレーキのように回生ブレーキがかなり強く効く。思い切り戻すと停止するまではいかないものの、その一歩手前までは減速する感じだ。ブレーキをかけなくてもアクセルの操作だけで速度を自在にコントロールできるので、加減速の多い街中では重宝するだろう。BMWの「i3」などのEVも回生ブレーキの効きはかなり強力で、ワンペダルで操作できることをウリにしているが、その考え方は2輪車でも共通のようだ。

回生ブレーキで減速もコントロールできるので、右手を回すことで速度はかなり自由に操れる

回生ブレーキで減速もコントロールできるので、右手を回すことで速度はかなり自由に操れる

ちょっと意外に感じたのは、走行中の音。電動バイクは無音に近い静かさで走行できるものが多いが、「C evolution」は大きめのモーターを搭載しているためか、「キーン」という電子音が比較的大きく聞こえる。乗っている筆者にだけに聞こえていると思っていたら、カメラマンにも聞こえていた!(下の動画参照) 走行中に音がするということは、歩行者に後ろから近づくようなシーンでも気付いてもらうことができるので、この点はプラスにとらえていいだろう。

バイク乗りなら、“操る楽しさ”が得られるかも重要なポイントだ。車体は大きめで車重も結構あるものの、重心が低いこともあって倒し込む操作は軽快。そして、車体を倒せばそれにともなってハンドルが切れていくというバイク本来の動き方をしてくれるので、コーナーを曲がるのが楽しい!

車体を倒し込むことで曲がるというバイク本来の動き方をしてくれるので、何気ない交差点を曲がるのもワクワクする

また、エンジン車のように回転数によるトルクの変動がないのも快適さに貢献してくれる。エンジン車の場合、狭い道でのUターンでは回転数が上がり、加速力によって車体が起き上がってしまうが、そういった挙動がないため、非常にコントールしやすい。下の動画を見てもらえばわかるように、ギクシャクすることなく、スムーズに傾いて曲がっていける。

走行がとても楽しいので、高速道路も走ってみた。アクセルをひとひねりすれば車体が一気に加速するので、少し混んでいるようなシーンでなら交通の流れを十分にリードできる。最高速度は限られているが、都市高速レベルであれば難なく走れそうだ。思うままに加速し、コーナリングも気持ちいいので、長距離ツーリングに出るのでなければバイク本来の楽しみを存分に堪能できる。

航続距離通知機能は秀逸。だが、充電には課題が残る

乗り心地も大切だが、電動バイクにおいては1回の充電で走れる距離と充電方法をしっかり確認しておかなければならない。「C evolution」の航続距離はカタログ値で最大160kmとなっているものの、使い方や環境などによってその距離は変わってくる。バッテリー残量から残り航続距離を表示してくれるモデルはあるが、「C evolution」はひと味違う。それまでに走った平均電費から残りの走行距離を割り出してくれるのだ。つまり、乗り手の走り方、クセを加味し、その人に適する航続距離を教えてもらえる。国内外、数多くの電動バイクを目にしてきた筆者でもこのような機能は見たことがなかったので、ユーザーに寄り添った、この役立つシステムには感動した。

モニター右下に表示される残りの走行可能距離は、それまでの電費実績から計算されるため、実際の数値に近い

モニター右下に表示される残りの走行可能距離は、それまでの電費実績から計算されるため、実際の数値に近い

ただ、充電機能については少し課題あり。200V電源が自宅にあれば問題ないが、ない場合は設置工事が必要になる。街中に増えつつある電気自動車用の急速充電器を使えればよいのだが、残念ながらこれにも非対応。今回、試乗しながら200Vの普通充電器を探してみたところ、数は思ったよりもあった。しかし、コインパーキングの中に設置されているなど2輪車での利用が想定されていないため、走りに行った先で使える充電器を探すのは結構苦労しそうだ。このような背景には、これまで200Vで充電する電動バイクがほとんどなかったことがある。とはいえ、こういった設備の部分が足かせとなり、この楽しい乗り物が普及しないのはもったいない。2輪車でも利用できる200Vの充電器増設を切に願う。

2輪車で利用できる200Vの充電器がなかなか見つからなかっので、最終的にBMWのディーラーで充電させてもらった。約30分で10%程度の充電ができることを確認

試乗を終えて

期待以上の性能で“操る歓び”を与えてくれた「C evolution」。特に交通量が多く、ストップ&ゴーの多い街中では、その加速力は感動ものだった。スタートダッシュが鋭いのはもちろん、どの速度域からでもアクセルをひとひねりすれば車体が押し出されるような加速を味わえる。ヨーロッパで白バイとして使われていると冒頭で触れたが、確かに街中で違反車を追いかけたりするには最適な車種といえるだろう。

そしてもうひとつ、実際に街中で乗って走行以外の部分で「おっ!」と感じたことがある。「C evolution」は175kgという車重があるため、人力で押し引きするのはかなり大変。純粋な重量もさることながら、回生ブレーキとしても作用するモーターが抵抗となっているようだ。とはいえ、駐車の際など、バイクを押し引きしなければならない場面は多く、おっくうな気持ちだったのだが、たとえば下の動画のようにバックでモーターの力を使えばラクラクに! 左ハンドルにあるボタンを押しながらアクセルを開けるとモーターが逆回転してバックする機能で、モーターを利用しない時に比べると同じ距離を約半分の時間で移動できた。もちろん、同様にバイクを押す際にもモーターの力を活用可能。慣れないとバランスを取るのが少し難しいが、押し引き操作の負担が軽減されるのはありがたい。

電動バイクらしいユニークな機能でライダーをサポートしつつ、鋭い加速と街中を走る楽しさをあわせ持つ「C evolution」のような電動バイクは、なかなかない。少々充電に課題は残るが、これまでにない電動バイクの可能性と魅力を秘めた、これからが楽しみなマシンだ。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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