トヨタ「C-HR」ハイブリッドのフロントイメージ
トヨタ「C-HR」ハイブリッドのリアイメージ
「取りまわし性」
C-HRのボディサイズは、全長が4,360mm、全幅は1,795mmだ。セダンに当てはめると、全幅はトヨタ「クラウン」並みにワイドだが、全長はトヨタ「カローラアクシオ」よりも少し短い。最小回転半径も5.2mに収まるから、サイズとしては取りまわし性はよい。
2WDのハイブリッドは全高が1,550mmに収まり、立体駐車場を使いやすいこともメリットだ。今はスバル「XV」など、全高を1,550mmに収めたSUVが登場しているが、車種数は多くない。
「視界」
トヨタ「C-HR」のサイドイメージ。後席サイドウィンドウの面積が狭く、下端も高いので、斜め後ろはかなり見にくい
ただし、C-HRの視界には注意したい。C-HRはサイドウィンドウの下端が高く、後ろに向けて大きく持ち上げている。しかも、後席側のドアに備わるサイドウィンドウは面積が狭い。そのために斜め後方の視界は劣悪と言っても過言ではなく、真後ろも視認できる面積が少ないために、かなり見にくい。たとえば、駐車場から後退しながらの出庫や縦列駐車をする時などは、ドライバーがかなり不安を感じるだろう。
この点を開発者に尋ねると、「後方視界はトヨタの社内基準をギリギリでクリアした」という。つまり、視界はトヨタの乗用車の中でも最低ランクだから、選ぶ時には注意が必要だ。
トヨタ「C-HR」のリアイメージ。真後ろも視認できる面積が少なくてかなり見にくいといえる
バックカメラも用意されるが、視野は限られ、側方から急速に接近する自転車などを見落としやすい。バックモニターに頼って後退するのは危険がともなう。それなのに、後方を振り返っても、ほとんど後ろ側の様子がわからないから困る。ただ、この傾向は、日本車、輸入車を問わず、今の乗用車全般に当てはまるものだが……。
評価:★★☆☆☆(2点)
コメント:取りまわし性はよいが、後方視界はかなり悪いので注意が必要だ
トヨタ「C-HR」ハイブリッドのインパネ
トヨタ「C-HR」ハイブリッドのメーター
C-HRのインパネの質感は、コンパクトSUVとしては高い部類に入る。メーターも見やすい。エアコンスイッチが収まるインパネの中央部分をドライバー側に傾けるなど、造形を工夫しながら操作性もよい。
C-HRのインパネ中央にあるエアコンスイッチなどは運転席側へとやや傾けられており、操作しやすい
特に、エアコンのスイッチは高い位置に備わり、手を伸ばしやすく、手探りの操作もできる。インパネの上側にはやわらかいパッドを装着して、肌触りにも配慮した。
ハリアーほどではないが見栄えはよく、内装の質感はC-HRが好調に売れる理由のひとつに位置付けられる。
評価:★★★★☆(4点)
コメント:コンパクトSUVとしては上質な内装で、スイッチ類の操作性もよい
トヨタ「C-HR」のフロントシート
前席はサイズに余裕を持たせ、背もたれは肩の周辺まで確実にサポートする。座った時は座面が適度に沈んでボリューム感があり、腰の近辺の支え方もよい。長距離を移動した時も疲れにくく、峠道などを走った時は運転姿勢が乱れにくい。前席の満足度は高いだろう。
トヨタ「C-HR」のリアシート
後席は、SUVとしてはあまり広くない。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は握りコブシ2つ弱にとどまる。シートの造りも、座った時の腰の収まり方がいまひとつだ。そして、先の項目でも触れたように後席はサイドウィンドウが小さいために側方が見えにくく、閉塞感がともなう。
また、後席の外側のドアハンドルは高い位置に装着されるから、子供では開閉しにくいことが考えられる。4名乗車には対応できるが、ファミリーカーとして使うなら後席の居住性とドアの開閉性を確認したい。
荷室は、床面積は相応に確保しているが、外観のデザインを優先させてリヤゲートが寝ている。そのために背の高い荷物は積みにくいが、実用面の支障はさほどないと思われる。
トヨタ「C-HR」のラゲッジルーム
評価:★★★☆☆(3点)
コメント:フロントシートはサポート性がよいが、リアシートの座りはいまいちでやや狭く、閉塞感もともなう。ラゲッジルームは平均的だ。
「動力性能」
トヨタ「C-HR」試乗イメージ
C-HRでは、4WDには直列4気筒の1.2リッターターボ、FFの2WDには1.8リッターのハイブリッドを組み合わせる。
まず1.2リッターターボの動力性能だが、ターボを装着しない自然吸気のガソリンエンジンに当てはめると“1.8リッター並み”だ。車重が1,400kgを超えることもあって加速力が高いとまではいえないが、エンジンの性格は実用回転域の駆動力に比較的余裕があり、扱いやすい。高回転域が伸びないので、峠道でスポーティーな運転を楽しむような使い方には向かないが、市街地や高速道路の走行には適している。
1.8リッターハイブリッドの動力性能は、現行のトヨタ「プリウス」と同じだ。車重はプリウスに比べて約70kg重いが、加速性能に不満はない。モーターはもともとエンジンに比べて反応が素早く、C-HRやプリウスが搭載するタイプは動力性能も比較的高い。アクセルペダルを軽く踏み増した時の加速感は滑らかで、底力も感じる。
グレードの選び方としては、滑らかに走るならハイブリッド、少し回転を高めて走るならターボだ。ただし、JC08モード燃費には大きな差があり、ハイブリッドは30.2km/L、ターボは4WDでもあるから15.4km/Lにとどまる。
C-HRのプラットフォームは、プリウスと同じ設計の新しいタイプで、操舵感はハンドルの切り始めから正確に反応する。プリウスは少し機敏でスポーティー感覚を演出するが、C-HRは正確性を重視した。背景には、高速走行時にも的確に操作できないと困るという欧州のニーズがあるためだ。
「走行安定性」
トヨタ「C-HR」試乗イメージ
C-HRは走行安定性もすぐれ、後輪の接地性を重視したセッティングだから、高速道路や峠道でも安心感が高い。特に危険を回避するために、下り坂のカーブでブレーキを踏みながらハンドルを内側へ切り込むような場面でも、後輪の安定性が削がれにくい。これも欧州車風だ。
ボディ剛性や足まわりを入念に設定したので、後輪の接地性を重視しながら、峠道をスポーティーに走っても旋回軌跡を拡大させにくい。先に述べたように、SUVとしては天井を低めに抑えて重心を下げたこともあり、動力性能は平凡でも、走行安定性と乗り心地のバランスはすぐれている。
なお、タイヤサイズは標準タイプが17インチ、上級は18インチを装着する。18インチは操舵感が少し機敏で、峠道のカーブを曲がる時は、17インチに比べてタイヤの歪みが生じにくい。
評価:★★★★☆(4点)
コメント:欧州に合わせたため、ハンドリングが正確で走行安定性にもすぐれている
トヨタ「C-HR」試乗イメージ
乗り心地は、比較的コンパクトなSUVとしては快適だ。大径タイヤとホイールを装着するのにバタバタとした粗さを抑えた。路面の荒れた市街地を低速で走ると少し硬く感じるが、タイヤが路上を細かく跳ねるような動きはないから、乗り心地が上質に感じる。
18インチタイヤでも、17インチに比べて乗り心地はさほど悪化せず、適度な引き締まり感をともなうから、特にクルマ好きのユーザーとは相性がよいだろう。C-HRはボディ剛性の高さもあって、足まわりを滑らかに動かすので、走行安定性とあわせて乗り心地も上質にできた。
評価:★★★★☆(4点)
コメント:プラットフォームのや足まわりのよさなどから、乗り心地は上質だ
トヨタ「C-HR」フロントイメージ
安全装備では、トヨタの上級安全装備「Toyota Safety Sense P」を全車に標準装備した。ミリ波レーダーと単眼カメラをセンサーに使い、歩行者や車両と衝突する危険が発生した時には警報を発し、状況がさらに悪化すると緊急自動ブレーキを作動させる。同じセンサーを使って、運転支援の機能としては全車追従型の「レーダークルーズコントロール」も備わる。設定された速度で走り、先行車がいる時は車間距離を自動制御しながら追従走行を行う。そのために作動中はドライバーのペダル操作が軽減される。
さらに、上級グレードとなるC-HRハイブリッドの「G」グレードと、C-HRターボの「G-T」グレードには、「ブラインドスポットモニター」も標準装備されている。ドライバーの死角に入るような斜め後ろの並走車両を検知して、ドアミラーのインジケーターを点灯することで知らせてくれる。
注意したいのが、ヘッドランプだ。バイビームLEDヘッドランプは上級の「G」と「G-T」のみに15万1,200円でオプション設定され、標準タイプの「S」と「S-T」ではハロゲンヘッドランプしか装着できない。
また、カーナビはディーラーオプションで装着される。これに組み合わせるバックカメラは3万7,800円で、メーカーオプションとして設定されている。
評価:★★★☆☆(3点)
コメント: 「Toyota Safety Sense P」が全車標準装備されるので、安全性は高い
トヨタ「C-HR」リアイメージ
【トヨタ C-HRのグレードラインアップと価格】
※価格は全て税込み
S-T:2,516,400円(ターボ)
G-T:2,775,600円(ターボ)
S:2,646,000円(ハイブリッド)
G:2,905,200円(ハイブリッド)
C-HRを購入したいユーザーにとって、LEDヘッドランプは必須の装備だろう。そうなると、前述の快適&安全装備でも述べたとおり、推奨グレードは上級グレードとなるC-HRハイブリッドの「G」(290万5,200円)、あるいはC-HRターボの「G-T」(277万5,600円)になる。
トヨタ「プリウス」と価格を比べてみると、プリウスの中級グレードである「Aツーングセレクション」(292万6,800円)が、C-HRハイブリッドの上級グレード「G」とほぼ同じ価格だ。C-HRは、SUVの割に価格上昇が抑えられていて、買い得感がともなう。
C-HRターボの「G-T」は、価格差が12万9600円しか違わないが、4WD(23万円相当)を装着した。この金額を価格差に加算すると、ハイブリッドとターボの実質価格差は約36万円だ。これも妥当な金額だろう。
C-HRターボを購入検討する際に注意したいのは、「エコカー減税の違い」についてだ。ハイブリッドは、購入時に納める自動車取得税や同重量税が免税になるが、ターボは減税対象外になってしまう。そのために、「G-T」グレードの場合では約9万円の税金が徴収され、この金額を前述の実質価格差となる36万円から差し引くと27万円となる。
さらに、JC08モード燃費はハイブリッドが「30.2km/L」、ターボは「15.4km/L」だから、レギュラーガソリン価格が1L当たり135円、一般的な実用燃費計算であるJC08モードの85%を実用燃費とすると、1km当たりの走行コストはハイブリッドが5.3円、ターボは10.3円になる。そうなると、27万円の実質差額は5〜6万kmで取り戻せてしまう。このように考えると、買い得なのはC-HRハイブリッドの「G」だ。
ただし、4WDが欲しい時は必然的にターボを選ぶしかない。また、現状ではターボは4WDのみだから「ターボの運転感覚は好きだけれど4WDは必要ない。2WDにして価格を下げてほしい」というニーズには対応できていないという問題もある。LEDヘッドランプが上級グレードの専用オプションになることも含めて、グレードと装備の設定が少し不親切だ。
評価:★★★☆☆(3点)
コメント:プリウスなどと比べてもC-HRは買い得な価格に設定されている
C-HRはSUVだが、その価値観はクーペに近い。前席は快適でインパネ周りも上質だが、後席と荷室は少し狭く、後方視界はかなり悪いからだ。視界は安全を左右するから注意が必要だが、もしそこに不満がなければ、C-HRハイブリッドはプリウスに近い価格で、魅力があるだろう。
特に、現行プリウスはデザインの個性が強く、「同じ個性的なクルマにするならCH-R」と考えるユーザーが多い。そのために先代プリウスからC-HRに乗り替えるケースが増えて、プリウスの販売不振にも繋がった。
C-HRは、走行安定性と乗り心地のバランスにすぐれ、安全装備も充実している。視界の悪さやターボで2WDを選べないなどといったグレード構成の不親切に不満を感じなければ、選ぶ価値はあるだろう。
総合評価:★★★★☆(4点)
運転のしやすさ(取りまわし性/視界):★★☆☆☆(2点)
内装(質感/スイッチの操作性とメーターの視認性):★★★★☆(4点)
居住性&荷室(前後席の居住性/荷室の使い勝手):★★★☆☆(3点)
走行性能(動力性能/走行安定性):★★★★☆(4点)
乗り心地:★★★★☆(4点)
安全&快適装備:★★★☆☆(3点)
価格:★★★☆☆(3点)
総合評価:★★★★☆(4点)