風を切って走行するバイクのライディングウェアにはすぐれた防風性能と保温性能が求められる。また近年は、普段使いもできる“いかにも”ではないデザインも求められるように。そんな条件を満たす最新の秋冬モデルを紹介しよう。計7着、すべてを実際にバイク走行時に使用し、着心地や使い勝手をチェックしている。
身長165cm、体重65kgの筆者がすべて試着。サイズ感を揃えるため、日本国内メーカー製はMサイズ、海外メーカー製はSサイズを着用している(ウェアの中はTシャツを着用)
比較的早い段階から街中で着ても違和感のないデザインのライディングウェアを展開している「RSタイチ」の中から選んだのは、ミリタリー風の「タンドラ ウィンター パーカ」。肩、肘、背中にプロテクターを装備しているものの、見た目には存在を感じさせない仕上がりでカジュアルに着こなせる。プロテクターは動きをさまたげない作りとなっているほか、肩と肘のパッドは位置を調整できるので着用時の違和感もない。さらに、表生地には撥水加工が施されており、多少の雨も問題なし。2重構造となった内側のフロントファスナーをきっちり閉めれば、首もとから侵入する雨風も防げる。中綿入りのライナーは取り外すこともできるので、春秋冬と長く使えるだろう。サイズは筆者にちょうどいい感じで、厚手の服を中に着込んでも動きがもたつくこともなさそうだった。
ボア付きフードは取り外し可能
【素材】表地:ナイロン 裏地:ポリエステル インナー:ナイロン 中綿:サーミックライト 【カラー】ディープネイビー(写真のもの)、ブラック、ダークカーキー 【サイズ】S、M、L、XL、XXL、3XL、4XL(ブラックのみ)
ライナーはファスナーで簡単に取り外しできる
ポケットの内側が起毛素材となっているので、手をつっこめばあたたか!
腕や腰の部分にはアジャスターを装備。フィット感を調節できるほか、走行中のバタつきも抑えられる
別売の胸部プロテクターを装着することもできる
ホンダがミリタリーウェアブランド「AVIREX」とコラボした「CWU-45P ライディングブルゾン」も注目アイテムだ。米軍で長期間メインのフライジャケットとして使われていた「MA-1」の後継にあたる「CWU-45P」に、プロテクターなどライディングジャケットに適する機能を盛り込むとともに、重量やダブつきを軽減。特に、腕の動きの自由度を増すために両肩部に施された機構「アクションプリーツ」は秀逸で、ライディング時に肩や腕にストレスを感じることがなかった。また、中綿の「THERMOLITE」の保温性もよく、外気温19℃の中をバイクで走ると少し汗ばむほどポカポカ。といっても、速乾性もあるので蒸れによる不快感はない。
背中、肩、肘にソフトプロテクターを装備
【素材】表地:ナイロン100% 中綿:ポリエステル100% 裏地:ナイロン100% リブ素材:アクリル70%/ウール30% 【カラー】セージグリーン(写真のもの)、ネイビー 【サイズ】S、M、L、LL、3L、4L
裾はゴムで適度に締まるようになっているので、走行風で巻き上がりにくい
首もとは衿が高くないため、ネックウォーマーやマフラーを併用するほうがいいだろう
胸部プロテクター(別売)を取り付けることも可能
ミリタリーらしさを出すために、ロゴはワッペンにアレンジ
もうひとつ、米軍のフライジャケット「N3-B」をベースにしたライディングジャケットを紹介したい。N3-Bは最強の防寒性を持った1着と言われているが、ライディング用とされた「PJ-8107 N-3Bライダース」は真冬以外でも使えるように、インナーが取り外せるようになっている。さらに、表地は厚めながら透湿素材とすることで蒸れを軽減。防水性能を備えた生地と2重構造のフロントファスナーで、走行風をしっかりガードしてくれる。インナーにはたっぷりのボア、そして肩、肘、背中にプロテクターを装備しつつ、タイトなシルエットに仕上げているのは見事。ライダー用の立体的な裁断が採用されているので、動きやすさもバッチリだ。
ロング丈なので、腰まわりもあたたか。フードは取り外すこともできる
【素材】ポリエステル 【カラー】ブラック、オリーブ、デジカモ(写真のもの) 【サイズ】メンズ:M、L、LW(ブラックのみ)、XL、XXL(ブラック、オリーブ)/レディース:WM、WL(ブラック、オリーブ)
インナーは取り外しできるので、冬以外でも着用可能
下からの走行風の侵入を防ぐウエストゲーターも装備されている
裾ファスナーがあるので、ウェアのずり上がりも軽減される
別売の胸部プロテクターを装着することもできる
筆者が知る限り、バイク用のレインウェアやグローブ、バッグなどをここ数年モデルチェンジしていないモンベルから、2輪関係者の熱い視線を集めるアイテムが登場。それが、ライダースジャケットのような「ビエントクロス ジャケット」だ。新素材「ゴアテックス インフィニアム」を採用し、表面は恒久的に保水せず、高い防風性と透湿性を実現。さらに、フロントファスナーは止水仕様となっているので、雨が中に入りにくい。そして、とてもスリムに見えるが、裏地にはフリースが装備されている。実際に、外気温19℃前後の日に試着してバイクで走行してみたが想像以上に暖かかった。実は、このジャケットはバイク用ではないのだが、性能はもちろん、コンパクトにたたんで持ち運ぶこともできるので、かなりライダーと相性がいい。
レザーっぽく見える生地だが、とてもやわらかくて軽い。サイズによって重量は異なるが、平均重量はたった443gだ
【素材】表地:ゴアテックス インフィニアム ソフトラインド・シェル 裏地:ポリエステル 【カラー】ガンメタル 【サイズ】XS、S、M、L、XL
裏地のフリースは肌触りがよく、着心地がいい。防風透湿フィルムが生地の外側に装備されており、蒸れにくいのも◎
ボタンまで閉めれば、首もとに走行風もほとんど入ってこないので体が冷えにくい
手を入れたりするポケットの内側には起毛素材を採用
右胸、左腕、内側にファスナー付きのポケットがそれぞれひとつずつ、そして手を入れるためのポケットが2つと、計5つのポケットがあるのも便利
バイク用のウェアはシックな色合いが多いが、鮮やかなモデルが欲しいならクシタニの「アドーレジャケット」がいいだろう。防風・防水・透湿のストレッチ素材のアウターと中綿の入ったインナーがワンセットとなったスタイルで、ここまで紹介したライディングウェアのインナーのようにファスナーなどで留めることはできないが、それぞれを単体で着ることもできる。インナーとアウターを着ると非常に暖かく、外気温16℃くらいならアウターだけでも十分。レビュー中に雨が降ってきたが、止水ファスナーが採用されていることもあり、内側に水が入ってくることもなかった。プロテクターは標準装備されていないが、別途購入すれば、肩、肘、背中、胸に装着できるようになっている。
インナーを着てもまだ余裕があるので、さらに着込むこともできそうだ
【素材】<アウター>表地:ポリエステル87%、ポリウレタン13%、裏地:ポリエステル100%(メッシュ)、フード裏:綿100%/<インナー>表地:ナイロン100% 中綿:ポリエステル100% 裏地:ポリエステル100% 【カラー】ブラック、サックス、オレンジ 【サイズ】S、M、L、LL、XL
インナーにはダウンのようなボール状になった綿が入っており、ふんわりとした着心地。バイクのタンクが傷つかないようにフロントのファスナーは生地でおおわれているので、インナーだけで着た際の使い勝手もよい
フロントファスナーだけでなく、ポケットにも止水ファスナーを採用
裾からの巻き上げの風を防ぐストームガードを装備するバイク用のウェアは多々あるが、使用しない際にジャケットに収納できる仕様はめずらしい
背中の裾にはリフレクターが配置されており、夜間、後方からの自動車などに存在をアピールしてくれる
クシタニ「アドーレジャケット」と同じように、取り付けないタイプのインナーを備えたライディングウェアをもうひとつ紹介しよう。ミリタリージャケット「M-65」をライダー用にアレンジした「M-56 Cotton Parka」は、コットン素材をアレンジしたヴィンテージ感ある風合いで、そのまま街に繰り出してもおしゃれで引けを取ることはない。アウターのコットン素材は風を通しやすいものの、裏地に防風シートが装備されているので、外気温15℃前後の日中にバイクで走っても寒さは感じなかった。もちろん、インナーを着込めばさらに防寒対策ができる。プロテクターはソフトタイプのものを、肩、肘、背中に配置。肩の後ろにプリーツが設けられており、肩や腕も動かしやすい。
フードは脱着可能。背中部分と袖にはベンチレーションが設けられている
【素材】表地:綿100% 別布:ポリエステル100%、牛革 裏地:ポリエステル100% 【カラー】Meisai、 DigiMeisai、 Black 【サイズ】レディス、S、M、L、XL
アウターのずり上がりを防ぐため、背中の裾部分に滑り止めが装備されている
袖のバタツキを抑えられるように、フィット感を調整する機構も用意
ジャケットの内側にあるポケットは片方が防水仕様となっている
シンプルなデザインのインナー。単体で着用することもできる
ヨーロッパ発のブランド「PANDO MOTO」の「Camo」は、日本国内に流通するライディングウェアではあまり使われていない素材「DYNEEMA」を採用している。この素材、非常に耐久性が高いのが特徴。メーカーのサイトでは、ナイフやハサミで切ろうとするが切れない様子が紹介されているほどだ。さらに、肩と肘にはプロテクターを装備。今回試着したアイテムの中で、もっとも分厚いプロテクターだったが、スリムなシルエットにおさめられているのがすばらしい。硬めの生地ではあるが、動きづらさもなく、安全性を意識するなら有力だ。ただし、風が通りやすいこともあり、防寒性に関してはやや劣る印象。外気温20℃程度の時にはジャケットの下がTシャツでも大丈夫だったが、17℃くらいになると肌寒く感じたので、冬に使用するならインナーダウンなどを中に着たほうがいいだろう。
ヨーロッパのサイズ規格なので日本人が着るならワンサイズ小さいサイズを選んだほうがいいだろう
【素材】DYNEEMA 【カラー】カモ 【サイズ】XS、S、M(XL、XXLは取り寄せ可能)
標準装備されている肩と肘のプロテクターは取り外しできる。なお、このプロテクターはイギリスのプロテクターメーカー、KNOX社製だ
背中にもプロテクター(別売)を装着できるようになっている
前側のポケットはすべてボタンで留められる仕様
脇には蒸れを逃がす通気穴が設けられている