レビュー

人気のカロッツェリア「FH-9400DVS」を自腹でレビュー/スマホ接続で “コスパ最強”のディスプレイオーディオ

価格.comで「カーオーディオ」の注目ランキングを見ると、常に高い人気を誇っている商品がある。それが、カロッツェリア(パイオニア)のAV一体型2Dメインユニット「FH-9400DVS」だ。

FH-9400DVSはスマートフォンと接続することで、スマートフォンアプリを車載機のディスプレイに表示して操作することができるというものだ。

価格.comで高い人気を誇る、カロッツェリア「FH-9400DVS」

価格.comで高い人気を誇る、カロッツェリア「FH-9400DVS」

FH-9400DVSが発売されたのは2018年6月だが、ベースとなった先代モデルである「FH-9300DVS」から数えると、実に2年以上に渡って売れ続けている人気商品。今回は、その人気の秘密を探るべく「カーナビ伝道師」でもある筆者がFH-9400DVSを自腹で購入してテストしてみた。

実はスマホとの連携も早かったカロッツェリア

現在のカーナビゲーション市場は、おおむね「純正」「市販(設置型&PND)」、そしてスマートフォンを使った「カーナビアプリ」の3つに大別される。それぞれに長所と短所があるが、近年爆発的にユーザーを増やしているのが「カーナビアプリ」であることに異を唱える人は少ないだろう。

現在、有料や無料を問わず多くのユーザーに利用されている「カーナビアプリ」ではあるが、スマホ単体で使用する場合には画面サイズが小さいことや、車内という極めて厳しい環境下における本体の熱暴走や振動、そして最悪の場合には故障することも考えられる。

いっぽう、スマートフォンをクルマで活用するためのOS(オペレーションシステム)として開発されたのが、アップルの「CarPlay」、そしてGoogleの「Android Auto」だ。どちらも、専用ケーブルなどを使って車載ユニットにスマートフォンを接続することで、スマートフォンに触れることなくアプリを操作できるようにするというもの。

かつてカロッツェリアが販売していた「アプリユニット」と呼ばれる車載機も、iPhoneなどのスマートフォンと接続することで車載機からスマートフォンアプリを使うことができた

もともと、カロッツェリアはスマートフォンとの連携に関しては先駆けのブランドで、CarPlayやAndroid Autoが世に出る前に「スマートフォンリンク」という考えのもと、「アプリユニット」と呼ばれるモデルをすでに発売していた。当時、筆者も飛びつくかのごとく即購入したのだが、併用していた「サイバーナビ」や「楽ナビ」などとナビ機能を比較すると、みずからの求めるレベルまで届いておらず、またアプリの数も限定的だったこともあって、結果として短期間で手放した記憶がある。

だが、2014年にCarPlayがリリースされたことを受けて、カロッツェリアはCarplayに対応した「SPH-DA700」を、そして2016年7月には正式に提供が開始されたAndroid Autoに対応する「FH-9300DVS」を2017年5月に発表した。それが、今回購入した「FH-9400DVS」へと繋がっていくことになる。

カーナビアプリに光明が見えてきた

筆者は自動車ジャーナリストという商売柄、クルマで取材現場へ時間どおりに到着しなければならないことから、カーナビは「商売道具」とも言える。しかし、中古で入手した軽自動車に装着されていた古い純正カーナビ(ベースはカロッツェリアのサイバーナビ)は地図更新がすでに終了しており、さらに通信を使った渋滞情報(これもカロッツェリアで言うところのスマートループに近い機能)も、通信プロトコルが現在のスマートフォンとマッチングしなくなっていた。まさに新型カーナビへの換装は急務であった。

カロッツェリア「FH-9400DVS」

カロッツェリア「FH-9400DVS」

しかし、そこで新型カーナビを買うというのも少しワンパターンだ。通信を活用するテレマティクス機能は欲しいし、なるべくならば安価で購入したい。そこで、前々から目を付けていたのが「FH-9300DVS」だ。しかし、カーナビアプリの機能がいまひとつの出来だったので、結果として「待ち」の状態でいたところ、FH-9300DVS がFH-9400DVSへとスイッチした。それが2018年の4月のことである。

FH-9400DVSを購入しようと考えながらも、どうしても“二の足”を踏んでしまうのが、CarPlayとAndroid Autoのカーナビアプリとしての性能だ。当時のCarPlayのカーナビアプリは情報精度が低く、カーナビとしてはあまりにも「普通」であった。いっぽう、Android Autoは「Google Map」を使うことでCarPlayよりはるかに実用性が高かった。

そこに飛び込んできたのが、「iOS12」の登場だった。iOS12では、CarPlayがサードパーティー製のアプリをサポートするようになったが、何よりもGoogle Mapへの対応がFH-9400DVSの購入への背中を大きく押したと言ってもいいだろう。

さて、ここまで長い話を書いたのも、筆者の想いだけでなくCarPlayやAndroid Autoに興味がある人に“買い”のタイミングがやっと来たことをお伝えしたかったからだ。それでは、FH-9400DVSの実力を解説していこう。

スマホ連携だけでなく、フルHDの映像やハイレゾ音源などの再生も

FH-9400DVSは、7V型(正確には6.94型)のワイドVGAを搭載する、幅180mmの2DINサイズのメインユニットだ、最近では「ディスプレイオーディオ」と呼ばれることも多い。前述のとおり、スマートフォンのアプリが使用できるほか、DVDビデオやCD、AM/FMチューナー(ワイドFMにも対応)、Bluetoothを搭載し、フルHD画質の動画再生やハイレゾ音源(FLAC)をはじめとした、多彩なフォーマットの再生にも対応している。

カロッツェリア「FH-9400DVS」のハードキーは、ディスプレイ下部に集中して配置されている。CarPlayとAndroid Autoでは一部キーの内容が異なるものの、音量キーや発話キーなどは共通だ

ハードキーの一番右を押すことで、ディスク挿入口が現れる

ハードキーの一番右を押すことで、ディスク挿入口が現れる

いっぽう、テレビチューナーについてはワンセグすら搭載していない。筆者はもともと、車内では映像を見ないので問題ないのだが、どうしてもテレビ機能が欲しいのであれば、他社で発売しているメインユニットを選ぶことになる。ただし、当然のことながら商品の価格は上がるし、地デジを受信するためのアンテナを配線する手間なども増える。さらに、ショップで取り付けをする際には工賃自体も上がることなどを覚悟しておく必要があるだろう。

装着に際しては、前モデルとなるHDDナビは幅200mmのワイドDINモデルだったので、取り付けに必要な、

(1)すき間を埋めるスペーサー(化粧パネル)
(2)配線キット
(3)ステアリングリモコンケーブル
(4)純正バックカメラ接続アダブター

上記を購入した。これらに関しては取り付ける車種によっても異なるので、カタログやWebなどで確認するか、心配なら量販店などのショップで聞いてみるといいだろう。

輸入車でよく見る“あの画面”が表示されて感動!

右から「Lightningケーブル」、FH-9400DVSに接続されているUSBケーブル、Android Auto用USBケーブル

右から「Lightningケーブル」、FH-9400DVSに接続されているUSBケーブル、Android Auto用USBケーブル

FH-9400DVSとスマートフォンとの接続は、FH-9400DVSの背面にあるUSB端子に専用ケーブルを接続して、あらかじめグローブボックスなどに回り込ませておく。その専用ケーブルとスマートフォンを接続することで、FH-9400DVSを使うことができる。

筆者所有のiPhone7(iOS12)とFH-9400DVSをつないでみた

筆者所有の「iPhone 7」(iOS12)とFH-9400DVSをつないでみた

筆者の「iPhone 7」を、Lightningケーブルを使ってFH-9400DVSと接続してみると、CarPlayの画面が表示される。

ひとつの画面上にセットできるアプリは8個まで(左)。9個以上アプリが登録されたときには、画面を左にスワイプすることでアイコンが表示される(右)。なお、アプリの位置は自由に変更することができる

画面に表示されるアプリの配置は、好みに応じてカスタマイズが可能だ。輸入車などではおなじみのCarPlayの画面が愛車でも表示されるというのは、筆者としてはちょっとした“感動”である。

ディスプレイ下のホームキーをタッチすることで、Android Autoのホームメニュー画面が現れる。Carplayと同様、表示する項目や位置などのカスタマイズが可能だ

Android Autoでは、目的地までの案内とスマートフォンに登録されている予定表などを同時に表示させることができる。カード形式で表示されるので、確認がしやすい

いっぽう、Android Autoについても筆者所有のモトローラ「moto g6 plus」を使って接続してみたが、CarPlayに比べるとやや地味な印象を受ける。もっとも、その日のスケジュールなどを考慮して、必要な情報がすぐに表示できるということなどは、アップルとGoogleそれぞれの考え方の違いが反映されていておもしろい。

ちなみにCarPlayは「iOS12」以上、Android Autoは「Android 5.0(Lollipop)」以降を搭載するスマートフォンが必要だ(厳密に言えば、GPSや加速度センサー等を搭載しているタブレットでも動くのだが)。とくに、Android Autoの場合は、世界中で数多くのスマートフォンが発売されていることもあるので、OSが対応しているからと言って必ず使えるという保証はない。そのため、自分のAndroidスマートフォンがAndroid Autoに対応しているどうかの確認は、http://support.google.com/androidauto にアクセスして確認してみてほしい。

CarPlayのカーナビアプリは選択肢が豊富

CarPlayで「カーナビタイム」アプリを起動。地図が見やすく、マップや地点情報などの更新が早い。さらに、よく使う道を覚えてくれる学習機能なども搭載されている

CarPlayやAndroid Autoは、それぞれ対応したアプリが車内で活用できるのが最大のメリットだ。特にCarPlayの場合、標準カーナビアプリの「マップ」のほか、前述した「Google Map」や「Waze」、そして2019年4月に対応した「Yahoo!カーナビ」などさまざまな無料アプリを使うことができる。だが、筆者がイチ押ししたいカーナビアプリは、ナビタイムジャパンの有料アプリ「カーナビタイム」だ。

「カーナビタイム」アプリでは、目的地までのルート検索を「推奨」「高速」「無料」「距離」のほか、積極的に渋滞を回避する「超渋滞回避ルート」なども選択することができる

もともと、高い渋滞回避能力を持つカーナビタイムがCarPlayに対応したことは、筆者としてはかなりのインパクトがあった。正直、有料と聞いただけで抵抗があるユーザーもおられるとは思うが、月額数百円から始められるので、まずは短い期間で体験してみるのもいいだろう。

ちなみに筆者は、楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングで購入することができる「365日チケット(4980円)」を契約している。たとえば、一般的なiTunes Storeで月額決済すると、ひと月600円×12ヶ月=7,200円になるが、365日チケットなら年間で2,220円も割安になるからだ。

「Yahoo! カーナビ」の画面。無料アプリながら、推奨ルートや高速優先、一般優先などのルートが選択できる

「Yahoo! カーナビ」の画面。無料アプリながら、推奨ルートや高速優先、一般優先などのルートが選択できる

いっぽう、無料という点ではCarPlayのYahoo!カーナビへの対応はFH-9400DVSという商品の魅力をさらに拡大させたと言えるだろう。地図更新や渋滞情報などの実用的なサービスも含めて無料であり、ユーザーからの圧倒的な支持を受けていることは今さら説明の必要もないほどだ。

もちろん、無料カーナビアプリの本命であるGoogle Mapにも注目だが、2019年3月にGoogleは基本となる地図をこれまでのゼンリンから自社開発のものへと切り替えた(ただし取引自体は部分的に残っていると聞く)。実際、変更したその直後に走行してみたのだが、右折禁止個所を右折と案内したり、一瞬どうなるのかと心配した。だが、そこはさすがのGoogle。驚くほどのスピードで、日々改良が施されているというのが現状だ。

日本での認知度がまだ低いWazeに関しては、日本ではいまのところ未導入ではあるものの、GPSが届かないトンネル内でも交通情報の取得や自車位置を補足する「Waze Beacons」という武器が控えている。この発想自体がすばらしいし、何よりもWazeはGoogle傘下の企業であり、世界のアクティブユーザー数は1億人を超えるという。

「Android Auto」による「Googleマップ」画面

「Android Auto」による「Googleマップ」画面

CarPlayもAndroid Autoも、カーナビアプリ自体はスマートフォンで動作させることから、自車位置の測位は基本的にGPSに頼ることになる。加速度や方位センサーなどを搭載しているスマートフォンの場合、トンネルの中でも自車位置を維持しようと踏ん張るが、やはり最後はロストしてしまうことが多い。この点は、今後マップマッチング機能の強化や、自車が推定して走っている速度から位置を割り出すなど、アプリの改良に期待したい点だ。

スマートフォンとはUIが異なる

CarPlayもAndroid Autoも、初めて操作をすると、あれ?と違和感を覚えるはず。それは、スマートフォン単体でアプリを使うと、かなり細かく操作できるのに対して、ディスプレイオーディオへ接続して使ってみると、意外と制限が多くなるからだ。これは、CarPlayもAndroid Autoも共通なのだが、あくまでも車内で使うことを前提としているので、なるべくシンプルで階層が浅い専用UIを組み込んでいるということに起因している。

たとえば、Yahoo!カーナビではiPhoneで登録したお気に入り地点などをFH-9400DVSで目的地にすることができないといったことがある。ただし、これについてはYahoo!も把握しており、今後のアップデートで対応する予定とのことだ。そのほか、地図のスクロールや拡大、縮小などもFH-9400DVSの画面上で可能だが、スムーズさという点ではスマートフォンには及ばない。

FH-9400DVS本体に備えられている「発話キー」ボタンを押すことで、SiriやGoogleアシスタントの音声認識機能を使うことができる

ディスプレイ下部の発話キーを押すと、CarPlayなら「Hey Siri」、Android Autoなら「OK Google」の音声コマンドによる操作が可能となる。この音声コマンドは、ステアリングからなるべく手を離さずに適切な操作を可能にするディスプレイオーディオのキモと言える。もちろん、音声認識は個人差があるので万能とまでは言えないが、特にAndroid Autoは発音に対して的確に反応してくれる印象を受けた。

この価格でこの音質! いろいろ楽しめる音質調整機能

スマホとの連携に目が奪われがちなFH-9400DVSだが、パイオニアらしく「音」についてもかなりこだわっている。

「タイムアライメント」機能を使って、音楽を聴く機会の多い娘のために助手席重視でセッティングしてみた。リスニングポジションは、写真の「フロントL」のほか、「フロントR」「フロント」「ALL」の4つからセレクトできる

「グラフィックイコライザー」を使って、細かな音の調整が可能だ。あらかじめセッティングされたプリセットモードもあるので、手軽に調整することもできる

スペックとしては、50W+50Wのアンプやパイオニアフルカスタムによる「高性能48bitデュアルコアDSP」のほか、厳選されたパーツの採用などもあるが、個人的には「タイムアライメント」と「13バンドグラフィックイコライザー」がお気に入りだ。

タイムアライメントは、ドライバーとスピーカーの距離の差による音場を最適化できる機能だ。カロッツェリアのサイバーナビなどには、専用マイクを使って簡単に理想の音響空間を構築できる「オートタイムアライメント&オートイコライザー」と呼ばれる機能があるが、FH-9400DVSに搭載されているタイムアライメントはそこまでの機能ではない。だが、調整すると音の定位などはかなり変化するし、前方定位を目指して自分好みの音場に調整していくのもおもしろいと感じた。

また、ハイレゾ音源に関しては、FLACファイルで192kbps/24bitまで対応。44.1kHz/16bitにダウンサンプリングされるのは少々残念ではあるが、同じ楽曲のハイレゾと圧縮音源の音とを聴き比べてみるとその差は歴然だ。

アプリの進化は、イコール機能向上に繋がる。まさに“コスパ最強”のカーAVシステム

購入から使い込んできたFH-9400DVSだが、最大の魅力は接続するアプリがアップデートすれば、そのメリットをユーザーがダイレクトに享受できるという点にある。

筆者は、現在もCarPlayを中心に日々カーナビアプリを切り替えながら使っているが、そもそもカーナビアプリ自体のアップデートのスピードが半端なく早い。もちろん、その中にはちょっとした“バグ修正”なども入っているのだが、アプリによっては2〜3週間ごとに新機能の追加やUIの修正を行っているものもある。また、FH-9400DVSに接続している間はスマホが同時に充電される。当たり前のことではあるが、いちいち電池残量で悩んだりすることが減る点もありがたいところだ。

価格.comを見ると、FH-9400DVSの最安価格(2019年6月26日時点)は37,000円台。FH-9400DVSに必要なパーツ(筆者の場合は約7,000円ほど)をプラスしても、コスパは抜群と言っていいだろう。

また2019年4月には、廉価版の「FH-8500DVS」も発売されたが、現状では実勢価格はFH-9400DVSとほぼ同じだ。FH-8500DVSはディスプレイが6.8型とやや小さい点が気になるので、それを考慮すると、いまFH-9400DVSは買いのタイミングと言える。

アプリのチカラとは言え、常に最新のテレマティクス体験ができる「進化するディスプレイオーディオ」、それがFH-9400DVSの魅力だ。

高山正寛

高山正寛

ITS Evangelist(カーナビ伝道師)/カーコメンテーター/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。1959年生まれ。リクルートで中古車情報誌「カーセンサー」の新車&カーAV記事を担当しフリーランスへ。ITSや先進技術、そしてカーナビ伝道師として純正/市販/スマホアプリなどを日々テストし布教(普及)活動を続ける。

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