レビュー
すっかりATに慣れてしまった筆者が久々にMTに乗ってみたら……

スズキ「スイフトスポーツ」に試乗すると“MT車の楽しさ”を思い出す

AT全盛の今、MTを選ぶ価値とは?「スイフトスポーツ」に乗って確かめてみた

ごく個人的な話で恐縮だが、筆者はかつて“MT派”で、何台ものMT車を乗り継いできた。しかし、6年前にMT車を手放してからは、すっかり“AT派”になっている。ATの多段化や効率化、ドライバビリティの向上が進んだ今、あえてMTを選ぶ理由はないと考えているからだ。

ATにすっかり慣れてしまった筆者だが、久々に乗るMT車はどう感じるのだろうか

ATにすっかり慣れてしまった筆者だが、久々に乗るMT車はどう感じるのだろうか

しかし、今もMT派の人たちは多いし、メーカーも少ないながらMT車をラインアップしている。それは、今もMTならではのよさがあるからに違いない。そこで、改めてMT車に乗ってその魅力を確かめてみることにした。

MTの醍醐味“機械との対話”を思い出す

数少ない国産MT車として外せないのが、スズキ「スイフトスポーツ」。200万円を切る価格でスポーティーな走行を楽しめて、居住性や使い勝手も高くバランスの取れた1台だ

MTのよさを再確認するにあたって、スズキ「スイフトスポーツ」を選んだ。最高出力103kW(140PS)、最大トルク230Nm(23.4kgm)を発生する1.4L直噴ターボエンジンを搭載。183万6,000円からという低価格も魅力な、もっとも身近なホットハッチだ。MTはクロスレシオの6速タイプで、マニュアルシフトを楽しむのには、うってつけといえる。

適度な重さのクラッチを踏み、シフトを1速に。クラッチを少しずつつなげて走り始めると、すぐにスイフトスポーツは“走りのクルマ”であることを訴えかけてきた。

スズキ「スイフトスポーツ」を操ることで、すぐにMT車を操る楽しさを思い出した

スズキ「スイフトスポーツ」を操ることで、すぐにMT車を操る楽しさを思い出した

1.4L直噴ターボエンジンは低速から力強く、すぐに吹け上がる。クロスレシオなこともあって、2速、3速、4速……と、次々と変速を要求してくる。と同時に、忘れていたMTのおもしろさを思い出す。

それは、クラッチの加減ひとつで動力をコントロールできる“自在感”だ。エンジン回転からタイヤまで、すべてのメカニズムを自分の手足でコントロールしている感覚は、どんなにダイレクト感が増したとしてもAT車には望めない。機械を操っているこの感覚こそ、MT車の醍醐味だ。

現行「スイフトスポーツ」はトルクが太いため、かなり低い回転域からでも何事もなかったかのように加速を始めていく。これなら、MT初心者でもラクに運転することができるだろう

また、エンジン回転を自分でコントロールするからこそ、エンジンの素性や性格も手にとるようにわかる。スイフトスポーツの場合、最大トルクを2,500-3,500rpmの幅広い回転域で発生するから、どこでクラッチをつないでも力強く加速するのだが、それを下回っても強大なトルクを発生していることがわかった。たとえば、6速1000rpmからでも苦しさを感じずに加速する。こうしたエンジンの特性は、AT車ではなかなか見えてこないものだ。MT車では、このように“機械との対話”が密になる。

MT車を運転していると、いかにAT車でラフな運転をしていたのかがわかるほど、操作がていねいになっていく

MT車を運転していると、いかにAT車でラフな運転をしていたのかがわかるほど、操作がていねいになっていく

もうひとつ、MT車に乗って再確認したことがある。それは運転がていねいになるということ。乱暴にクラッチをつないだり、ずぼらにアクセルを踏み込んだりすれば、それはすぐにクルマの挙動に現れてギクシャクした動きになる。“機械との対話”を求められるMT車では、上手に対話ができなければスムーズに走らせることができない。助手席に乗る同乗者の頭が前後に揺すられているのが目に入るたび「ごめんなさい」という気持ちになり、自然と1つひとつの動作がていねいになっていくのだ。

久しぶりにクラッチを操作したのだが、すぐに慣れることができた。これは、「スイフトスポーツ」のクラッチがやわらかく、扱いやすいこともあるだろう

また、クラッチを踏みシフトを操作して……と必要な動作が増えるため、信号が青になるとき、車線変更をするとき、前のクルマがブレーキを踏んだときなど、あらゆる場面で先を読んで早めに操作する必要に迫られる。知らず知らずのうちに“先を読む”ようになるのは、安全のために大切なことだろう。

「セーフティパッケージ」はぜひ装着したい

「スイフトスポーツ」は、「1.4リッターでここまで速いのか!」と思わせるほど、あっという間に速度が上昇していく。まさにスポーツカーそのものだ

ところで、このスイフトスポーツというクルマ、ホットハッチとして本当に優秀だ。たっぷりしたトルクのおかげで低速域でも扱いやすいし、アクセルを踏み込めばシートに身体を押し付けられるぐらい速い。足回りは硬めだが、お尻をたたかれているような不快なゴツゴツ感はまったくなく、ホットハッチだからと言って何かを諦める必要はない。

もちろん、5ドアボディの居住空間や荷室はノーマルのスイフトと同じだから、コンパクトハッチバックとしての使い勝手もそのままだ。

「スイフトスポーツ」の隠れた特徴のひとつが「アダプティブクルーズコントロール」だ。MT車にもかかわらず、前方の車両を車間距離を保ちながら追従してくれる。これなら、MT車で長距離移動はちょっと疲れるから……とはならないだろう。

ひとつ驚いたのは、セーフティパッケージを装着すると、MTでもクルーズコントロールが追従式のアダプティブクルーズコントロールになること。上り坂にさしかかったときや速度が落ちたときには、ドライバー自身でシフトダウンをする必要はあるが、ロングドライブの強い味方となることは間違いない。

セーフティパッケージには、アダプティブクルーズコントロールのほかに「デュアルセンサーブレーキサポート」「車線逸脱抑制機能 」「車線逸脱警報機能 」「ふらつき警報機能」「先行車発進お知らせ機能」「ハイビームアシスト」「SRSカーテンエアバッグ」「フロントシートSRSサイドエアバッグ」「リヤシートベルトフォースリミッター&プリテンショナー(左右2名分)」がセットされており、これで86,400円なのだから、選ばない理由はないだろう。

片手運転になってしまうMT車のデメリットも

すっかりAT派になっていた筆者だったが、スイフトスポーツでの今回のドライブを通じて、“機械との対話”という忘れていたMT車ならではの醍醐味を再確認できた。「もうMT車を買うことはないだろう」と思っていたが、「もう一度、MTに乗ってみるのもありかもしれない」と思うぐらいにその楽しさを感じたものだ。

MT車でシフトチェンジする際は、瞬間的に片手運転になってしまう。ギアをチェンジする一瞬に訪れる緊張感も、MT車の醍醐味のひとつではあるが……

しかし、MT車ならではのデメリットだってある。一番は、“片手運転が増えること”だ。シフト操作をするから片手を離すシーンが増えるのは仕方のないこと。しかし、安全上は好ましくない。また、シフトやクラッチ操作に集中力がいくらか奪われる。「MT車なら踏み間違いの暴走事故は防げる」との論調もあるが、いっぽうでMT車ならではのデメリットがあることも承知しておかなくてはいかないと感じさせられた。

ここまでAT車が普及したいまでも、また何年ブランクがあっても、やはり「MT車は楽しい!」ということが改めて確認できた

こう結論づけては元も子もないかもしれないが、ATかMTかは、やはり「自分が何をクルマに求めるか」によるだろう。ATにはATの、MTにはMTのよさがそれぞれにある。しかし、ATが急速に進化していく中で「MTに乗ること」の価値を再発見できたのは、今回の大きな収穫だ。ミニバンをMTで乗りたいとは思わないが、スイフトスポーツのようなホットハッチなら、MTを選んで“機械との対話”を楽しむのも大いにアリである。

木谷宗義

木谷宗義

車メディアとSNSの編集者。編集者として企業メディアやSNSのコンテンツ制作を手がける他、自身もライターとして年間約100本の記事を執筆する。自動車の歴史から機能解説、ドライブデートまでその幅は広いが、その主軸はひとりの自動車ユーザーとして「役に立つこと」。1981年、神奈川県生まれ。

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