レビュー
“湘南”の美しさが込められたプレミアムコンパクトカー

高級感あふれる日産「ノート AUTECH」が“青”にこだわる理由

日産のコンパクトカー「ノート e-POWER」のカスタムモデルである、「ノート AUTECH(オーテック)」が2021年3月に発売された。

ノート e-POWERの製品画像
日産
4.05
(レビュー245人・クチコミ16929件)
新車価格:202〜244万円 (中古車:67〜278万円

今回は、ノート AUTECHの特徴やノート e-POWERとの違いなどを、デザイナーへインタビューするとともに、試乗にも連れ出したので、その印象もあわせてお伝えしたい。

エクステリアは「湘南」の美しさを表現

「AUTECH」とは、日産の特装車両などを開発、製造する、1986年創業のメーカー「オーテックジャパン」が展開しているブランドのひとつだ。

オーテックジャパンでは、「AUTECH」や「ライダー」など、市販されている日産車のカスタムモデルの開発のほかにも、警察車両や冷凍車、遊園地や幼稚園の送迎用バスなど、さまざまな架装車両、さらにはヒストリックカーのレストアまで手がけている。

そんなオーテックジャパンのカスタムモデルは、日産のさまざまな車種に設定されており、“プレミアムスポーティー”と呼ばれるデザインフィロソフィーと、“湘南”のキーワードをもとにデザインされている。

日産「ノート AUTECH」と、オーテックジャパン デザイン部の若林康二さん(左)、青山雄未さん(右)

日産「ノート AUTECH」と、オーテックジャパン デザイン部の若林康二さん(左)、青山雄未さん(右)

今回、ノート AUTECHの内外装の特徴について、オーテックジャパン デザイン部の青山雄未さんと若林康二さんのお2人に話をうかがった。

オーテックジャパン デザイン部の若林康二さん

オーテックジャパン デザイン部の若林康二さん

まず、エクステリアについて若林さんは、「湘南の美しさにインスパイアされた、日産の“プレミアムスポーティー”なサブブランドとしてのたたずまいを目指しています」と言う。そのポイントは、大きく3つだ。ひとつめは、AUTECHブランドの専用ホイールがあげられる。

「モチーフは、水中に差し込む光の躍動感。きらめきです」。それを表現するために、切削表現を取り入れたそうなのだが、「通常は、切削面以外はブラックペイントにすることで、切削のグラフィックパターンを強調するデザインにします。ですが、我々はきらめきをモチーフにしていますので、ペイント部分にも明るめのシルバーを用いました。コントラストとしては淡くなりますが、その中でドラマが見られるような表現に挑戦しました」と説明する。

次に、クロームドット加飾だ。この加飾は、ブランドの一貫性を示すために、グリルやフォグフィニッシャーなどに採用されている。「AOG(オーテックオーナーズグループミーティング)が開催されている、大磯から見た海面のきらめきをモチーフにして、グリルで表現しています」と若林さん。

近年、多くのプレミアムブランドでも、グリルのドット表現が用いられている。だが、そのほとんどは「ホットスタンプ」と呼ばれる平面的なもので、立体感はあまり感じられない。その理由は、手がかからず量産が簡単だからだ。だが、オーテックでは「サプライヤーは大変ですが、手間のかかる処理をすることで、あえて粒の立体感を施しています。そうすることで、さまざまな角度から見たときに、きちんと光るのです。そこを、とても大事にしました」と語る。

最後は、金属調のフロントロアグリルだ。「白波の勢いや美しさを、モチーフにしています」と若林さん。この塗装は、単純なシルバーではなく「初めに黒を吹いて、その後に黒を透過するシルバーを吹いています。そうすることで、コントラストが強く出るのです。金属の強い質感を表現することで、バリューを高めています」とのことだ。

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日産
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新車価格:202〜244万円 (中古車:67〜278万円

インテリアは、海や空の青さを表現

オーテックジャパン デザイン部の青山雄未さん

オーテックジャパン デザイン部の青山雄未さん

インテリアについては、「湘南の海の“さざ波”を感じさせるような、美しく上質な素材と、匠の技で仕立て上げています」と青山さんは言う。

インテリアにおけるポイントも3つあり、それぞれ情緒に訴えかけてくるような仕立てがなされていると言う。まずは、“海と空の仕立て”だ。「深みのある美しい青が、湘南にはたくさんあります。その青を、それぞれの素材ごとにこだわってチューニングしているのです」と、青山さん。

あえて、部位ごとにカラーを微妙に変える必要性があるのだろうか。その理由について、青山さんは「すべて同じ青にしてしまうと、内装をコーディネートしたときに、使っている位置や素材が違うために、異なる青に見えてしまうのです。たとえば、ステアリングであれば比較的上の位置に用いられますが、シートは影が落ちる部分もあります。ですので、それらをトータルコーディネートしたときに、青がもっとも美しく見えるようにチューニングしているのです」と言う。

さらに、素材で言えば「本革は、青が表面に均一に見えるように、木目は全面に青が出ないよう、光ったところだけに出るようにしています」など、カラーを細かにチューニングしていることを説明してくれた。

次は、“海の仕立て”だ。シートのキルティング部分や、メイン材のエンボス部分などに、波のイメージが表現されているという。「広がる波のような、ダイナミックなリズムを表現したいと思い、リズミカルな波のパターンを入れるために、凹凸や影などを調整しています。リズム感が生まれ、シートに座った瞬間からその世界が広がっていくような、躍動感を表現しました」と話す。

最後に、“空の仕立て”だ。「湘南の魅力は、青い海だけではありません。空も、青空と雲のレイヤーが、非常に美しいと感じています」と青山さん。「そこへ落ちる影。青空と雲の影であったり、雲に映り込む海の青であったり。そういったところからも、インスパイアを受けています。オーテックの証である刺しゅうやステッチなどは、専用にチューニングして影がきれいに落ちるようにデザインしています」と述べた。さらに、「これらは、匠がいるからこそ、できているのです」と語った。

こだわりぬいた「AUTECHブルー」

AUTECHブランドへのこだわりは、これだけではない。ボディを包み込むブルーにも、それは表れている。実は、これまで説明してきたブルーには、「AUTECHブルー」や「湘南ブルー」といった呼称が使われているのだ。この、呼称の使い分けについて、青山さんは食材にたとえながら、「湘南ブルーは、いわゆる“生”の状態で、それぞれ異なる青を湘南ブルーと言っています。それを調理し、最後にコーディネートすることで、湘南ブルーだったものから、AUTECHブルーへと昇華されるのです」。つまり、湘南をイメージした青は、さまざまな表情でクルマに反映され、それらすべてをコーディネートして統一させた完成形を、AUTECHブルーと呼んでいるのだ。

ちなみに、このAUTECHブルーのボディカラーは、ユーザーにもかなり好評という。AUTECHブランドで販売された車両のうち、AUTECHブルーの販売比率は50〜70%近くを占めているのだそうだ。

AUTECHブルーへのこだわりは、「もともと、オーテックジャパンの創業時のエンブレムそのものが、海や空をイメージした青をモチーフにしています。AUTECHブランドは、創業の地である湘南をインスパイアしているという“伝統”の意味を込めること、そしてe-POWERをはじめとする電気自動車の“革新”の意味を込めるために、AUTECHブルーをブランドカラーにしているのです」と説明する。

さらに、そのこだわりは、いかに湘南の景色に映えるかまで検討されているという。青山さんによると、「湘南の、美しい四季折々の景色や、さまざまな天候、時間による変化などを、クルマに落とし込めないかと考えました。エクステリアカラーでは、湘南エリアの天気(晴れ、くもり、雨、雨上がり)と時間(昼、夕方、夜)をかけ合わせた12のシーンにおいて、実際に現地へ実車や塗装した板を持ち込み、どのように映るのかなどを綿密に検証しています」。その結果、AUTECHブランドでラインアップされている車種を横並びで見ると、実は1台1台微妙に異なる青が使われているのだ。それは、クルマのサイズや面の抑揚などから、どの青を採用するのかが、前述のような検証やデザイナーによって細かに検討されているからだ。

ノート e-POWERの製品画像
日産
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(レビュー245人・クチコミ16929件)
新車価格:202〜244万円 (中古車:67〜278万円

先代ノートから、飛躍的に進化した走行性能

さて、こだわりぬかれたノート AUTECHへと乗り込んでみよう。基本的に、ベースモデルとの違いは前述した内外装なので、走りそのものに関しては手が加えられていない。したがって、先代「ノート e-POWER」と比較してみると、走行中に発電のためにエンジンがかかった際の違和感や、加速におけるエンジン音がむやみに高まる様子などは感じられなかった。さらに言うと、ルノーとの共同開発によってプラットフォームが刷新されたことによる大きなメリットとして、ハンドリングが非常によくなり、高速道路などでの中高速コーナーも安心してスムーズに抜けられることに感心した。さらに、高速道路など高い速度域における直進安定性も、非常に良好な印象だ。

先代ノート e-POWERで「ワンペダル」と呼ばれていた、アクセルペダルのみで回生ブレーキをコントロールして減速させる機能は、新型でも引き続き採用されている。だが、先代と違って、新型では実際の使用シーンに沿った味付けがなされている。高速域では、アクセルペダルを戻した際に、むやみに強い減速が起こらないようにセッティングされており、軽いエンジンブレーキが効く程度にとどめられている。いっぽうで、低速域ではこれまでどおり、アクセルペダルを全閉すれば、ブレーキペダルを強めに踏むような減速が得られる。ただし、先代と大きく異なるのは、完全停止までは行われない(その代わり、先代にはなかったクリープが追加されている)点で、それには注意が必要だ。

乗り心地に関しては、少々硬めの印象を受ける。一般道はもとより、高速道路においても路面の凹凸やうねりが直接体に伝わってくる感じだ。このあたりは、ボディ剛性が高められていることから、しなやかな足のセッティングも可能なはずなので、ぜひ今のハンドリングのよさは残したまま、乗り心地の改善を望みたいところだ。

センスのよさに、匠の技が感じられる

最後に、ノート AUTECHの総合的な印象を語っておこう。インテリアでは、助手席前のウッドパネルなどは上質ながら、インパネ前面に広がるシボに少々チープさを感じさせるなど、若干のちぐはぐさも覚えた。だが、全体的にはプレミアムスポーティーに設えられていることを、強く感じる。特に、ステアリングやシートのブルーステッチ、シート表皮の青などは落ち着いているうえに、特別なクルマであることが強く印象に残った。スポーティーさを演出するには、一般的には赤などを使いがちだが、青を用いてここまでうまく仕上げられているさまは、見事と言うほかない。

エクステリアにおいても、それは同様だ。「オーロラフレアブルーパール」と呼ばれるボディカラーは、「スカイライン」などにも採用されている特別色で、ノート AUTECHに落ち着いた印象が与えられている。さらに、専用ホイールもボディ下端のシルバーの加飾とともに、全体を引き締めている。フロントに埋め込まれた、ブルーの専用シグネチャーLEDだけは少々やり過ぎな感もあるが、それ以外は上質かつスポーティーな印象が与えられているエクステリアと言えるだろう。

また、ノート e-POWERの先進安全デバイスを一切殺さずに、内外装をここまでチューニングしている苦労は、計り知れないものがある。しかも、それらをセンスよくまとめているところに、匠の技を感じさせてくれるのだ。

価格は、ベールモデルのノート e-POWER(Xグレード)の2,186,800円に対して、ノートAUTECHは約32万円高い2,504,700円(いずれも税込)になる。価格差から、ちゅうちょする方もおられるかもしれない。だが、ブルー・ブラックコンビシートや専用ボディカラーなど、これまで述べたプレミアムな価値が手に入ることを考えると、決して高くはないのではと思う。

また、これは夢のような話ではあるが、できることなら日産のモータースポーツ部門である「NISMO」との共同開発で、パワートレインや足回りに手を加え、さらなる高みが望めるようなクルマを開発してほしいと思う。現在、AUTECHブランドの車種は内外装のカスタムのみとなってしまっているからだ。これまで述べた、AUTECHが目指しているプレミアムスポーティーを、実際の走りにおいても実現してほしい。決して、むやみに走りに振るのではなく、上質な乗り心地や走りが得られる、特別なクルマがほしいと感じているユーザー層は決して少なくないだろうし、それこそがオーテックが最終的に目指すべきターゲットユーザーであると感じたからだ。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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