レビュー
本格派のクロカン4WDながら、市街地でも扱いやすくなった現行モデル

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」長距離試乗。 日本で唯一、クルマで走れる砂浜へ

日本における輸入車市場において、順調に販売台数を伸ばしているのが、FCAジャパンが展開する「ジープ(Jeep)」ブランドだ。2009年は、年間1,000台ほどの販売台数であったのだが、2020年には13,000台あまりにまで伸びてきている。

2018年にフルモデルチェンジされた、4代目のジープ「ラングラー」(現行モデル)。電子制御によって、悪路における走破性がさらに高められたほか、エクステリアを中心にデザインが刷新され、安全性能や快適性の向上なども図られた

2018年にフルモデルチェンジされた、4代目のジープ「ラングラー」(現行モデル)。電子制御によって、悪路における走破性がさらに高められたほか、エクステリアを中心にデザインが刷新され、安全性能や快適性の向上なども図られた

ラングラーの製品画像
ジープ
4.50
(レビュー36人・クチコミ1133件)
新車価格:536〜658万円 (中古車:70〜808万円

特に、ジープのDNAが色濃く継承されている「ラングラー」は、堅調な販売を示しているという。そこで、今回は「ラングラー アンリミテッド サハラ」に乗って、長距離試乗へと出かけてみることにした。筆者は、2018年にラングラーが4代目へフルモデルチェンジされた際に、オフロードを中心としたテストコースですでに試乗している(“かっこよさ”が日本でウケているジープ「ラングラー」!11年ぶりの新型をオフロード試乗)のだが、今回は一般道や高速道路などを走ることによって、日常の交通の中において、ラングラーがどのようなふるまいをするのかを試してみたい。

なお、今回試乗したラングラー アンリミテッド サハラには、2種類のエンジンがラインアップされていた。なぜ、過去形なのかというと、今回試乗したラングラーのメインエンジンである3.6リッター V型6気筒エンジン搭載車が、先日受注受付を終了してしまったからだ。ただし、もういっぽうの2リッター4気筒ターボエンジン搭載車については、引き続き継続販売されている。今回の試乗においては、一般道や高速道路などを普通に走らせた際の運転フィールなどを中心にレビューしているので、ラングラーに興味はあるけれども乗ったことがないという方などは、当記事を参考としていただければ幸いだ。

念のため、搭載エンジンのスペックを記しておくと、3.6リッター V型6気筒エンジンの最高出力は209kW(284ps)/6,400rpm、最大トルクは347Nm(35.4kg・m)/4,100rpmを発揮する。ちなみに、2リッター4気筒ターボエンジンの最高出力は200kW(272ps)/5,250rpm、最大トルクは400Nm(40.8kg・m)/3,000rpmになる。

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」のエクステリア。砂浜を一般車で走ることができる、石川県の「千里浜なぎさドライブウェイ」にて撮影

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」のエクステリア。砂浜を一般車で走ることができる、石川県の「千里浜なぎさドライブウェイ」にて撮影

今回は、石川県にある波打ち際を走ることのできる「千里浜なぎさドライブウェイ」を目指した。4,870×1,895×1,840mm(全長×全幅×全高)という大柄なボディサイズは、数字で見るよりも実車のほうがより大きく感じられる。大きく張り出したフェンダーとともに、全高の高さがそう思わせるのだ。

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」のインテリア

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」のインテリア

ドアを開け、右足をステップに掛けるとともに、Aピラーにあるアシストグリップを右手でつかみながら室内へ乗り込むと、特徴的なヒップポイントの高さに改めて驚く。横に並んだ4トントラックと、ほぼ同じくらいの目線で、なかなか爽快な気分にさせてくれるのだ。シートやミラーなどのポジションを調整して(シートは手動調整)、ブレーキを踏み込み、ステアリングの左奥にあるスタート・ストップボタンを押し込むと、一瞬の身震いの後、V型6気筒エンジンは目覚めた。

右奥がシフトレバーで、左手前が「セレクトラック フルタイム4×4システム」を切り替えるための副変速機レバー

右奥がシフトレバーで、左手前が「セレクトラック フルタイム4×4システム」を切り替えるための副変速機レバー

いかついシフトレバーを操作して、Dレンジを選択する。その左手にある、副変速機のレバーが「4H AUTO」になっていることを確認しつつ、ゆっくりとアクセルを踏み込むと、1,980kgのラングラー アンリミテッド サハラは、意外にも軽々と走りだした。

副変速機を確認した理由は、ラングラーの基本レイアウトとしてはパートタイム4WDでありながら、4H AUTOを選べば前後のトルク配分をクルマ側が適宜判断するオンデマンド式になるからだ。副変速機のポジションは、全部で4つある。奥から順に、FRを保つクルージング向けの「2H」。前後トルクを自動で配分してくれる「4H AUTO」。トルク配分が前後50:50で固定されて、悪路における走破性を高めてくれる「4H」。そして、前後50:50に固定されたうえ、ファイナルギア比が2.72へと低くなり、高い駆動力によって悪路を走破することのできる「4L」だ。今回は、市街地や高速道路などの走行がメインになることもあって、「4H AUTO」で走らせた。

さて、市街地へと乗り出した印象は、活発なエンジンとトランスミッションのセッティングによって、重いボディをぐいぐいと小気味よく引っ張って走らせてくれるということだ。それほど低速トルクは感じられないのだが、ATのセッティングが引っ張り気味で、エンジンの高回転側を使うことから、エンジン音も含めて積極的に走らせているように感じられた。

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」のフロントシート

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」のフロントシート

乗り心地は、少々前時代的なもので、まるでトラックに乗っているようなイメージだ。たとえば、レンジローバーのようなふわっとした乗り心地を期待すると、まったく違う印象で驚くかもしれない。いっぽう、シートはホールド性が高く、しっかりしている。クッション性も高いので、路面からの突き上げをやわらげてくれる。

市街地を走らせていて一番うれしかったのは、小回りがきくようになったことだ。6.2mという最小回転半径の数値だけを見ると、そうは思われないかもしれない。だが、筆者も試乗したことのある、先代モデルの7.1mと比較すると、もはや雲泥の差だ。たとえば、路地から大通りに出て左折するときに、先代であればもはや対向車線にまで注意を払う必要があったのだが、新型ではそこまで気を遣うことがなくなったのは、大きなメリットと言えそうだ。ただし、運転席から左右のフロントフェンダーがつかみにくいのは、少々気になるところではある。

前席と後席の頭上が大きく開き、開放感あふれるキャンバストップ

前席と後席の頭上が大きく開き、開放感あふれるキャンバストップ

室内は、窓の上下方向が意外と狭いので、開放感はあまりない。ただし、キャンバストップは前席から後席まで広々と開くので、たとえば海沿いなどを走っている時は開放感あふれる室内空間になる。実は、今回もそれを期待して海沿いで開けてみたのだが、意外と風に舞った砂が入ってくるので、すぐに閉めてしまった。

ステアリングは、切り始めの感覚は若干鈍く、そこからさらに切り込むとスパッと切れるタイプだ。最初は、少々違和感を覚えるかもしれないが、慣れてしまえば気にならなくなる。もちろん、タイヤの影響(ブリヂストン「DUELER H/T(255/70 R18 M+S)」)もあるだろう。こういったセッティング、特に切り始めを鈍くした理由は、一般道よりも悪路走破性に重きを置いているからだ。たとえば、悪路で岩などを乗り越えた際のステアリングへのキックバックを緩和させるとともに、そのときに一気にステアリングが切れてしまって思いもよらない方向に向かわないようにするためだ。前述の乗り心地に関しても、悪路を見越したうえでのセッティングであろう。

ラングラーにも、この世代からアイドリングストップが搭載されている。再始動時のスムーズさはもちろん、停まる際のブレーキ操作の違和感もなく、高く評価できるものだ。

ステアリングはドライバーに近い位置に備えられており、インパネデザインやメーター、スイッチ周りなどもシンプルなものだが、視認性が高く操作もしやすい

ステアリングはドライバーに近い位置に備えられており、インパネデザインやメーター、スイッチ周りなどもシンプルなものだが、視認性が高く操作もしやすい

ドライビングポジションは極めて古典的で、ステアリングは若干ドライバーに近く、メーター周りはフラットで垂直に立っているようなイメージだが、目障りということはまったくなく、特に水平基調であることでクルマがどのような姿勢であるのかがひと目でわかるのも、オフロード重視と言える点のひとつだ。ただし、フットレストがないのは非常に不便だった。悪路はもちろん、市街地や高速道路などの移動においても、フットレストは体を支えてくれて、また足を休める際に非常に有効だからだ。

高速道路では活発に走るが、コーナーは少々苦手

では、このあたりで高速道路に乗ってみよう。市街地と同じように、料金所や合流に向けてのスタートダッシュは活発で、一気に制限速度をオーバーしようとする。そこからクルージングに入るわけだが、100km/hで8速の場合にはだいたい1,500rpmくらいの回転数なので、それほどエンジン音は気にならない。ただし、フロントウインドウが平面であることによって、雨が当たる音が意外と大きかったり、ボディ全体の風切り音も現代のクルマとしては大きいほうだ。

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」のエクステリアイメージ

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」のエクステリアイメージ

日本の高速道路は、連続したコーナーが多い。そういったシチュエーションで、ラングラーは若干安定性を欠く動きを見せることがある。前述したように、ステアリングの切り始めが若干鈍く、それ以上ステアすると一気に切れるために、コーナーでは意外と神経を使った。これは、シャシーがラダーフレーム形状であることも関係しており、ステアに対してクルマの動きが遅れがちになることも要因のひとつとなっている。その代わり、直線においては淡々と真っ直ぐに走ってくれて、たとえば直線がひたすら続くアメリカのハイウェイなどを、クルーズコントロールをオンにして走らせるといったような走り方に主眼が置かれているようだ。

もうひとつ、クルマの性格が顕著に表れたのは、エンジンが高回転型ということだった。高速道路で上り坂になると、積極的にシフトダウンしてガンガン高回転域を使って登坂する。最初は、なぜこんなに高回転を使うようなセッティングなのだろうと不思議に思っていた。もっとトルクを重視して、低回転域で走るようにすれば、燃費も伸びて静粛性も高まるからだ。しかし、このクルマのそもそもの成り立ちや用途を考えるに至ると、合点がいく。これは、オフロード走行を踏まえたエンジンセッティングなのだろう。副変速機の項で説明した通り、4Lなどを使う際にゆっくりと走らせながら、かつエンジンが高回転まで回すことが多いので、そのようなシーンで適切なエンジン特性になっているわけだ。

高速道路における乗り心地は、市街地と同様に硬めで、段差や荒れた路面などのショックが体に伝わってくるのだが、シートの出来がいいので、それほどの疲労感は感じられなかった。

砂浜程度では一般道と変わらない!?

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」のエクステリアイメージ。千里浜なぎさドライブウェイにて撮影

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」のエクステリアイメージ。千里浜なぎさドライブウェイにて撮影

ラングラーの製品画像
ジープ
4.50
(レビュー36人・クチコミ1133件)
新車価格:536〜658万円 (中古車:70〜808万円

「千里浜なぎさドライブウェイ」は、日本海側の砂浜を全長8kmほど走ることのできる、れっきとした“道路”である。したがって、シーズンによっては観光バスなども走るという。今回は、波が高いということもあって全行程は走破できなかったが、数キロをのんびりと往復することができた。また、波打ち際のほうが砂は固く締まっているようで、そちらのほうが安定して走ることができる。いっぽう、陸側はサラサラの砂が多く、2駆のクルマなどでは、はまって抜け出せなくなる人もいるのだそう。その陸側へ少しだけあえて入って、アクセルを踏み込んでみたのだが、4輪のうちのどれかがわずかにスリップした後、前後輪にトルクが配分され、すぐに何事もなかったかのように発進していった。この程度の砂地は、ラングラーにとっては舗装路とまったく同じなのだと感じた。

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」の走行イメージ。千里浜なぎさドライブウェイにて撮影

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」の走行イメージ。千里浜なぎさドライブウェイにて撮影

千里浜なぎさドライブウェイは、特に車線は決められておらず、のんびりと砂浜を走らせる観光客や、波打ち際で停車して景色を眺めたり、適当にクルマを止めてBBQを楽しむ人たちが見受けられた。そういった人たちがいることを前提に、みなこの道路を走っているので、決して危険なことはなく、また、非常にマナーがいいことにも感心した。くれぐれも、こういったところでスピードを出したりはしないでほしいと感じる(制限速度は30km/h)。数少ない、波打ち際を走ることができる貴重な道路なので、これからも今の状態を維持してもらいたいからだ。

ちなみに、千里浜なぎさドライブウェイでラングラーを2台見かけることができた。やはり、こういったシーンにラングラーはとても似合うクルマだった。

レギュラーガソリンなのが救い

最後に、ラングラーの燃費を報告しておこう。

市街地:5.8km/L(6.1km/L)
郊外路:8.5km/L(9.5km/L)
高速道路:9.9km/L(10.9km/L)
( )内はWLTCモード

燃費は、上記の結果となった。現代の水準では、決して褒められる数値ではないが、車重や高回転を好むエンジン特性などを考えれば、妥当なところとも言えそうだ。ちなみに、油種はレギュラーである。

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」のエクステリアイメージ。千里浜なぎさドライブウェイにて撮影

ジープ「ラングラー アンリミテッド サハラ」のエクステリアイメージ。日本海をバックに撮影

今回、ラングラーと長距離でじっくりと付き合ってみて、日本においてこのクルマは、“欲しい”か“欲しくないか”で選ばれているように感じた。つまり、さまざまな評価や印象を述べてきたが、そういったものを超えて、ユーザーが「このクルマ、欲しい!」と直感的に憧れるかどうかで選ばれているクルマのように思えた。たとえ、乗り心地が多少悪くて、高速道路などで気を遣うような場面があったとしても、エクステリアデザインなどから感じられるジープブランドが持つ悪路での絶対的な信頼感や、本格的なギヤが醸し出す雰囲気に魅力を感じたならば、きっと後悔せずに乗ることができるだろう。1941年以来、今に至るまでのジープのDNAが、現代のラングラーにも連綿と受け継がれてきていることを、肌で感じ取ることができたからだ。

[Photo:内田俊一/FCAジャパン]

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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ラングラーの製品画像
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4.50
(レビュー36人・クチコミ1133件)
新車価格:536〜658万円 (中古車:70〜808万円
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