レビュー

乗り心地のよさがすばらしい、内外装もこだわり抜いたシトロエン「C5 X」

ステランティスジャパンから、シトロエンの新たなフラッグシップモデル「C5 X」が発売される。

シトロエンのフラッグシップモデル「C5 X」が2022年10月1日に発売される。セダンやステーションワゴン、SUVを組み合わせたような独創的なデザインが特徴で、シトロエン独自のハイドロニューマチックサスペンションの流れをくむ最新システム「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)」が全車に標準装備されている

シトロエンのフラッグシップモデル「C5 X」が2022年10月1日に発売される。セダンやステーションワゴン、SUVを組み合わせたような独創的なデザインが特徴で、シトロエン独自のハイドロニューマチックサスペンションの流れをくむ最新システム「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)」が全車に標準装備されている

C5 Xの製品画像
シトロエン
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(レビュー-人・クチコミ3件)
新車価格:484〜636万円 (中古車:―円

パワートレインは、ガソリンエンジンとPHEVの2種類で、価格は484万円から。発売は2022年10月1日が予定されている。今回、記者発表会とともに2時間ほどC5 Xのガソリンエンジン搭載車を試乗することができたのでレポートしたい。

■シトロエン「C5 X」のグレードラインアップと価格
※価格はすべて税込
C5 X SHINE:4,840,000円
C5 X SHINE PACK:5,300,000円
C5 X PLUG-IN HYBRID:6,360,000円

古のビッグシトロエンに比べると“普通”で扱いやすい

C5 Xという名称は、フラッグシップである「C5」に、セダン、ステーションワゴン、SUVの3つの要素をクロスオーバー(X)させた独創のスタイリングをさすということに加えて、これまでのビッグシトロエンである「CX」や「XM」などのXの系譜を継承していることも示唆している。

シトロエン「C5 X」のリアエクステリア

シトロエン「C5 X」のリアエクステリア

C5 Xのデザインは明らかにクロスオーバーのスタイリングで、見方によってはトヨタの新型「クラウンクロスオーバー」に見えなくもないのだが、海外も含めれば登場はC5 Xのほうが早かったので、クラウンのほうが似ている、というのが正しい見解かもしれない。最低地上高を上げながら、流麗なルーフラインによって伸びやかなエクステリアが表現されている。また、シトロエンとしてはめずらしく、リアハッチゲートを備えていることもC5 Xの特徴のひとつだ。ビッグシトロエンは、いずれもリア周りがなだらかな形状で、いかにもハッチゲートを備えているように見えたが、実はハッチゲートではなく通常のセダンのようなトランクを備えていたのだ。これは、ボディ剛性の確保が最大の目的だったと考えられる。しかし、EVやPHEVなどの電動化戦略によって、新プラットフォームによる高剛性化が図られたことで、求めるボディ剛性が確保できたのであろう。なぜなら、C4などでも大きなハッチゲートが備えられており、利便性が大幅に向上しているからだ。

シトロエン「C5 X」のインテリア

シトロエン「C5 X」のインテリア

古のビッグシトロエンのインテリアは、エクステリア以上に独創的で、ボビン式のメーターや、メーターの左右に筒形のスイッチボックスが設けられているなど、初見で乗り込むとしばらくはその扱い方を理解するまでスタートできないことすらあった。しかし、C5 Xではそのようなこともなく、必要なスイッチ類は必要かつ扱いやすいところに配されているので、すぐにでもスタートできる。

いたるところに「ダブルシェブロン」が

フランス車の内装を評して、実用一点張りでプラスチッキーと言われた時代もあったが、それは過去の話で、C5 Xに至っては高い質感とともに、走らせても軋み音すら聞こえない精緻なつくりである。そのインテリアを眺めていると、いたるところにダブルシェブロン、シトロエンのマークが設えられていることに気付く。これは、カラー&マテリアルのデザイナーである柳沢知恵さんがマネージャーを務めるチームでデザインしたものだ。

シトロエン カラー&マテリアルデザイナーの柳沢知恵さん

シトロエン カラー&マテリアルデザイナーの柳沢知恵さん

「C5 Xは、フラッグシップとしての役割がありますので、シトロエンの新しいデザインアイコンをカラーマテリアルで表現するのがいちばんの目標であり、目的、そしてゴールでした。乗り込んだ時のコンフォート感や居心地のよさ、そして上質感はもちろんですが、このクルマで表現したデザインアイコンが、新しい世代のアイコンになってほかのクルマにも波及していく。その皮切りになったらよいと思っていました」と語るように、インテリアには大きく5つの特徴的なアイコンが配されている。

「C5 X」のステッチやパーフォレーションなどに施されている、シトロエンのエンブレム「ダブルシェブロン」

「C5 X」のステッチやパーフォレーションなどに施されている、シトロエンのエンブレム「ダブルシェブロン」

まず、シートには2つ。ひとつは、まるで一筆書きのようなダブルシェブロンのステッチ。そして、その下にはアクセントクロスがあり、触ると日本の印伝のような凹凸が感じられる。これらによって、シトロエンがインテリアデザインで訴求している水平基調のデザインをアピールする効果も生んでいる。また、シートには空調機能が搭載されており、パーフォレーション、いわゆる空気穴が開いている。それをうまく使って、ダブルシェブロンが表現されている。

ダッシュボードのシボやドアの木目パネルをよく見ると、これらにも「ダブルシェブロン」が施されているというこだわりようだ

ダッシュボードのシボやドアの木目パネルをよく見ると、これらにも「ダブルシェブロン」が施されているというこだわりようだ

そして、ダッシュボードのシボにもダブルシェブロンが描かれている。最後は、ドアなどの木目パネルに表現されたダブルシェブロンだ。実は、これらはやわらかい木というテーマで、2016年に発表された『CXPERIENCE』というコンセプトカーのアイデアを、量産車で表現したものだ。前述のうち、シボとパーフォレーション、そして木目の3つは同じ柄で、縮尺だけが異なるもの。したがって、データで縮尺を揃えると重ね合わせることが可能という遊び心も含まれているのだ。

フラッグシップモデルらしい、すばらしい乗り心地のよさ

「C5 X」のセンターコンソール周り

「C5 X」のセンターコンソール周り

すてきなインテリアを眺めながらエンジンをスタートさせ、センターコンソールにあるスイッチでDを選択(ちなみに、ここにもダブルシェブロンが配されている)する。手にとてもなじむレザーステアリングを握り、ゆっくりとアクセルを踏み込むと、フワッとした乗り心地とともにC5 Xは走り始めた。

「C5 X」は走り始めた瞬間から、乗り心地のよさを存分に感じさせてくれる

「C5 X」は走り始めた瞬間から、乗り心地のよさを存分に感じさせてくれる

まず、駐車場から一般道へ出るために段差を超えた瞬間、さっそくC5 Xの乗り心地のよさを感じることができた。それは、サスペンションがスッと伸び縮みすることで、ショックを吸収するさまが手に取るようにわかったからだ。そこから、アクセルを踏み込んでいくと、過不足のないトルクとパワーを発揮し、C5 Xは思い通りの加速を披露してくれる。

「C5 X」の走行イメージ

「C5 X」の走行イメージ

搭載されている1.6リッターターボエンジンは、最大出力180ps、最大トルク250Nmと必要にして十分な値で、さまざまな状況で力不足を感じることは少ないだろう。フランス車は、どちらかというとエンジンはできるだけ小さく、ボディは大きくという思想を持っているが、それはこのC5 Xも同様で、1.6リッターという排気量がそれを示唆している。最近のDセグメントであれば、1.8〜2リッターほどだ。したがって、ターボでその部分を補っているとも言える。では、ダウンサイジングターボのように線が細いエンジンの特性なのかというと、そんなことはない。しっかりと下からトルクが発生して、それに合わせてシフトアップ、ダウンがなされるので、特にターボであるとか、排気量が小さいといった意識は持たずに済むだろう。

「C5 X」の走行イメージ

「C5 X」の走行イメージ

そして、注目の乗り心地は、まさにC5 Xの真骨頂と言える。搭載されている「PHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)」は、ダンパーの中にもうひとつダンパーが備わっており、従来のダンパーでは吸収しきれなかったショックなどを、内蔵されたもうひとつのダンパーが受け止められるようになっている。その結果として、低速域から高速域まで、ふわりとしなやかさを伴いながら、ショックをきれいに吸収し、乗員にそれを伝えることはあまりない。たとえば、石畳などをそこそこのペースで走らせても、ゴトゴトという音はしても、乗員にその振動が伝わってこないのだ。そして、60km/hを超えるころからフラットな乗り心地が際立ってくる。やはり、大型のシトロエンは、高速道路を淡々と移動する、まさに高速巡洋艦と言えるだろう。また、信号からのスタートダッシュで、少し強めにアクセルペダルを踏み込むと、若干テールを下げ、フロントを持ち上げ気味に走り始めるさまも、少し古いシトロエンを彷彿とさせ、思わずニヤリとさせられた。

ちなみに、PHEVではPHCに電子制御が組み込まれた「アドバンストコンフォート アクティブサスペンション」が採用される。こちらは、速度やロール、路面からの入力などさまざまなパラメーターを元に、4輪それぞれ個別に電子制御で減衰力を調整するというものだ。DSブランドや、メルセデス・ベンツなどに採用されている、カメラなどで予測して制御するといったものではないが、シトロエンが追求するコンフォートのひとつの回答だといえるだろう。

「C5 X」の試乗イメージ

「C5 X」の試乗イメージ

さて、C5 Xは高速道路でのコーナーリングも非常に安定している。ある程度のロールは許すものの、その動きは穏やかで、かつ不安になるほどの傾きもないために、自信をもってコーナーに飛び込んでいけるのだ。その際のハンドリングもきわめて自然で、思い通りのラインを描くことができ、またそこに段差があったとしても、きれいにいなしていくさまは特筆ものだった。いっぽう、市街地では若干タイヤのバタつきが感じられたのだが、もう1サイズダウンしたタイヤをチョイスすれば、かなりの改善が見られると思えた。

フランス車のレザーシートは、どちらかというと少しパンと張ったようなもので、モケットのほうが掛け心地がよいものが多い傾向にあった。しかし、C5 Xにかぎっていえば、しなやかで包み込まれるようなレザーシートは、一度姿勢を決めてしまえば、そのまま何時間も座っていられるような、とても快適なシートだった。

低速時に少々違和感が

さて、ここまで絶賛したC5 Xだが、この2時間の試乗で最も気になったことは、エンジンとトランスミッションのマッチングだった。

「C5 X」の走行イメージ

「C5 X」の走行イメージ

たとえば、前方の信号が赤になって徐々に減速。トランスミッションが2速から1速へ落ちるあたりでギクシャクとした動きが発生し、また、停止寸前にガツンとショックが出ることがあった。これが、何らかの一定条件の元で出ることはなく、ある時は非常にスムーズで、その後は結構なショックを伴うなど、再現性がないような感じであった。そこで、さまざまなシチュエーションを試してみたのだが、アイドリングストップがオフになった時、それが劇的に減ったことから、その要因のひとつはこのアイドリングストップにあるということなのかもしれない。また、シフトタイミングも関係することから、次のような要因が考えられる。まず、減速時に燃費を少しでも稼ぐために直前までATのロックアップ(簡単にいうとトルクコンバーターなどを介さずエンジンとトランスミッションを直結)を解除せず、ぎりぎりまで引っ張って限界時点でロックアップ解除。そうすると、ギアが2速から1速へと変速。その際に、同じ速度だと2速と1速ではエンジン回転数が違うため、1速に落ちると若干加速気味になる。そこで、ギクシャクとした動きになる。それに伴ってブレーキをより強く踏むことになり、これも要因のひとつになる。さらに、アイドルストップが介入することで、エンジン回転数が0になることによって、ブレーキの踏力の変化も関係してしまうようだ。これらは、コンピューターのセッティングで改善できるはずなので、ドライバビリティ向上のためにもぜひ対応策を検討してほしいと感じた。このロックアップに関しては60km/hくらいでも結構効いているようで、アクセルを戻しても空走感が付きまとい、思った以上にエンジンブレーキがきかず、ブレーキを多用することになったからだ。

シトロエン「C5 X」のエクステリアイメージ

シトロエン「C5 X」のエクステリアイメージ

正直にいうと、個性が強いシトロエンのようなクルマを、2時間という短時間で評価するのはなかなかに困難なことである。どうしても特徴的なところ、今回であれば乗り心地のよさや低速域のギクシャクとした動きが目立ってしまい、ほかに目が行き届かなくなるからだ。しかし、例えば何時間も淡々と高速道路を走らせた際、あるいは夜中、仕事に疲れて帰宅時に空いた国道を走っている時など、C5 Xが光るシーンを含めて評価しなければ、C5 Xにいたっては本当に味わったとは言えないだろう。なぜなら、大型シトロエンの最大の魅力は、目的地までいかに快適に乗員を運んでいくかだからだ。そして、そのコンフォート性をシトロエンとして極めようとしているからで、現在それを最も具現化しているのがこのC5 Xであるはずだ。その点を踏まえて、今回の試乗を振り返ると、確かにこれまでと同様に、シトロエンらしさを備えた、実に魅力的なモデルということが言えそうだ。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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新車価格:484〜636万円 (中古車:―円
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