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新型「スペーシア」を最強ライバル「N-BOX」と比較! 買い得なのはどっち!?

スズキで最も売れている軽自動車「スペーシア」が、2023年11月に3代目へとフルモデルチェンジされた。

「スペーシア」は、全高が1,700mmを超えるスライドドアを備えた軽スーパーハイトワゴンで、広い室内空間や快適な装備などが特徴的なクルマだ。そして、今回の新型モデルでは、燃費性能や安全性能を進化させているほか、後席へ新たに追加されたシートアレンジによって快適性も増している。

左が新型「スペーシア」で、右が「スペーシアカスタム」

左が新型「スペーシア」で、右が「スペーシアカスタム」

そんな「スペーシア」のライバル車と言えば、ホンダ「N-BOX」が筆頭としてあげられる。「N-BOX」は日本国内における最多販売車種で、こちらも2023年10月に新型モデルへとフルモデルチェンジされた。「N-BOX」の室内空間は軽乗用車の中でも最大級の広さで、新型モデルでは操舵感や乗り心地をアップさせている。

左が新型「N-BOX」で、右が「N-BOXカスタム」

左が新型「N-BOX」で、右が「N-BOXカスタム」

「スペーシア」と「N-BOX」は価格が近いこともあって、選択に迷う人も多いことだろう。そこで今回は、この2台をさまざまな視点から比較してみたい。

ボディサイズ、視界、小回り性能を比較

まず、「スペーシア」と「N-BOX」の全長や全幅はどちらも同じ値で、軽自動車の規格ギリギリのボディサイズだ。また、全高も「スペーシア」は1,785mm(2WD)で「N-BOX」はそれよりも5mm高いだけと、ほとんど同じ値になる。

「スペーシア」のフロント、リアエクステリア。外観デザインのモチーフは、先代は「スーツケース」だったが、新型は頑丈さを想起させる「コンテナ」になっている

「スペーシア」のフロント、リアエクステリア。外観デザインのモチーフは、先代は「スーツケース」だったが、新型は頑丈さを想起させる「コンテナ」になっている

「N-BOX」のフロント、リアエクステリア。全体的にはキープコンセプトだが、フロントグリルやヘッドライトの造形に変更が加えられている

「N-BOX」のフロント、リアエクステリア。全体的にはキープコンセプトだが、フロントグリルやヘッドライトの造形に変更が加えられている

前方視界は、「スペーシア」はインパネの上面が平らで視界がよい。「N-BOX」は、先代モデルは運転席周りのインパネが高かったために、あまり視界がよくなかった。だが、新型モデルではメーターの配置が変更され、インパネ上端の高さが70mm低く抑えられていて、インパネの上面が平らになったために視界が向上している。側方や後方の視界については、「スペーシア」「N-BOX」ともに同等だ。

「スペーシア」のインテリア

「スペーシア」のインテリア

「N-BOX」のインテリア

「N-BOX」のインテリア

最小回転半径は、14インチタイヤを装着した「スペーシア」は4.4mで、同「N-BOX」は4.5mになる。さらに、15インチタイヤを装着した「スペーシア」は4.6mで、同「N-BOX」は4.7mだ。したがって、小回り性能は「スペーシア」のほうが少し勝っている。

結果:
視界は「スペーシア」「N-BOX」ともに同等
小回り性能は「スペーシア」が少し勝る

前後席の居住性を比較

シートの座り心地について、前席は両車ともに快適なのだが、どちらかというと「N-BOX」のほうが腰をしっかりと支えてくれて、「スペーシア」よりも着座姿勢が安定しやすい。

両車の乗り心地で差があるのは後席だ。「N-BOX」は、先代モデルは座面に突っ張り感があって乗員のサポート性に少々不満があったのだが、新型モデルでは改善されている。

いっぽう、「スペーシア」は主力グレードの後席へ新たに「マルチユースフラップ」と呼ばれる機能が装着された。ふくらはぎを支えてくれて、リラックスした姿勢になれるのだが、「マルチユースフラップ」を使わずに普通に座ると座面の前端が少々硬めに感じられた。もし、「マルチユースフラップ」を備えた「スペーシア」を購入するときには、後席の座り心地を確認しておきたい。

「スペーシア」の後席には、「マルチユースフラップ」と呼ばれるふくらはぎを支えてくれる機能が備えられている(グレードによる)。上は「オットマンモード」で下は荷物ストッパーモード

「スペーシア」の後席には、「マルチユースフラップ」と呼ばれるふくらはぎを支えてくれる機能が備えられている(グレードによる)。上は「オットマンモード」で下は荷物ストッパーモード

また、室内の広さについて前席は同等だが、後席空間は「N-BOX」のほうが少し上まわっている。身長170cmの大人4名が乗車したとき、後席を後端までスライドさせると「スペーシア」の膝先空間は握りコブシ4つぶんだが、「N-BOX」は4つ少々に広がる。だが、足元空間はどちらもかなり広く、「スペーシア」でも十分な広さと言えるだろう。

「N-BOX」の後席は、座り心地がよく空間も広いのでくつろぐことができる

「N-BOX」の後席は、座り心地がよく空間も広いのでくつろぐことができる

結果:
前席の座り心地は同等
後席の座り心地も同等だが、「N-BOX」のほうがやや広い

荷室やシートアレンジを比較

両車とも、後席の背もたれを前側に倒すと座面も連動して下がり、大容量の荷室に変更できて便利だ。路面からリヤゲートの開口下端部までの高さは、「スペーシア」が510mmで「N-BOX」は470mmと低い。「N-BOX」なら、荷物を積むときなどに大きく持ち上げる必要がない。

「N-BOX」は荷室高が低いので、荷物もラクに積み込むことができる

「N-BOX」は荷室高が低いので、荷物もラクに積み込むことができる

結果:
「N-BOX」は荷室高が低いので荷物を積みやすい

収納設備を比較

「スペーシア」は、助手席の前側に比較的大きめな小物が置けるトレイが装着されている。その下には、ボックスティッシュが収まる引き出しがあり、さらにその下側にはグローブボックスが配置されている。

「スペーシア」の助手席前のインパネは、先代はフタを閉めるタイプの小物入れが装備されていたが、新型はオープンタイプのトレイへと変更されている

「スペーシア」の助手席前のインパネは、先代はフタを閉めるタイプの小物入れが装備されていたが、新型はオープンタイプのトレイへと変更されている

そのほか、メーターパネルの上側やドアノブの部分などにも小さなトレイが装備されている。助手席の座面を持ち上げると、大きな収納ボックスが備わり、これには取っ手も付いているので車外へと持ち出せる。「スペーシア」には、大小さまざまな収納スペースが備えられている。

スペーシアは、メーター上などさまざまな場所に小物入れが装備されていて便利だ

スペーシアは、メーター上などさまざまな場所に小物入れが装備されていて便利だ

「N-BOX」も収納設備は豊富なのだが、先代に比べると細かなトレイが省かれている。その代わり、グローブボックスの容量は2倍へと拡大された。

「N-BOX」の助手席前インパネには、コルクのようなぬくもり感のあるトレーが備えられている

「N-BOX」の助手席前インパネには、コルクのようなぬくもり感のあるトレーが備えられている

結果:
「スペーシア」は便利な小物入れなどが多く便利

動力性能やエンジンフィールを比較

両車とも、ターボを装着しないNAエンジンについては動力性能が少々不足気味だが、実用回転域は「N-BOX」のほうに余裕がある。具体的には、2,000〜3,000rpmの低回転付近でも駆動力の落ち込みが小さい。

画像は「N-BOX ファッションスタイル」グレード(NAエンジン)の走行イメージ

画像は「N-BOX ファッションスタイル」グレード(NAエンジン)の走行イメージ

最大トルクは、「N-BOX」は6.6kg-m(4,800rpm)で、「スペーシア」は5.9kg-m(5,000rpm)だ。「N-BOX」は、実用域に近い回転数で高トルクを発揮する。いっぽう、高回転域においては両車ともそれほどの違いは感じられない。

ターボエンジンも、両車で性格が異なる。「N-BOX」は、回転数の上昇に応じて駆動力が加速度的に高まるターボの特性が抑えられており、1Lエンジンを積んでいる感覚で自然に運転できる。

結果:
「N-BOX」は実用域の駆動力が高く運転しやすい

走行安定性や操舵フィールを比較

「スペーシア」は、背の高い軽自動車の中では比較的よく曲がり、ワインディングなども走りやすい。その代わり、ステアリングホイールを回し始めたときの手応えは少し曖昧だ。もう少し、正確性を高めたいところだ。

「スペーシア」の走行イメージ

「スペーシア」の走行イメージ

「N-BOX」は、機敏な印象はないものの、新型ではパワーステアリングを改善した効果もあって、ステア操作に応じて車両の向きが正確に変わるようになった。

「スペーシア」は、混雑した市街地などをキビキビと走る用途に適しており、「N-BOX」は少し曲がりにくいが高い速度域の直進安定性にすぐれている。車線変更をするときなども、小さな操舵角から車両の向きが変わって運転がしやすい。両車の走行安定性や操舵フィールについては、一長一短だ。

結果:
「スペーシア」は市街地の小回り性、「N-BOX」は高速域の安定性が高い

乗り心地を比較

全般的に、軽自動車は乗り心地が硬めなクルマが多い。燃費向上のために、転がり抵抗を抑えたタイヤが装着され、指定空気圧が高めに設定されているからだ。さらに、足まわりのコストが安く抑えられ、高重心のボディで走行安定性を確保する必要もあるため、総合的に乗り心地が悪影響を受けやすいのだ。

「スペーシア」は、前述の特徴が少々感じられ、路面の細かな凹凸を乗員に伝えやすい。特に14インチタイヤ装着車は、やや乗り心地が粗く感じられる。だが、15インチタイヤになると、足まわりの設定は同じだが、乗り心地は少し重厚になる。

「スペーシアカスタム」の走行イメージ

「スペーシアカスタム」の走行イメージ

「N-BOX」の14インチタイヤ装着車は、足まわりが柔軟に動き、指定空気圧が「スペーシア」に比べて低いこともあって、乗り心地は快適に感じられる。15インチタイヤ装着車の足まわりは、14インチに比べると硬めに設定されているが、それでも不快感は生じない。

「N-BOXカスタム」の走行イメージ

「N-BOXカスタム」の走行イメージ

結果:
乗り心地は「N-BOX」のほうが快適

安全装備と運転支援機能比較

衝突被害軽減ブレーキの前方センサーは、「スペーシア」は範囲を広げた単眼カメラとミリ波レーダーが備えられている。いっぽう、「N-BOX」は単眼カメラと音波センサーになる。両車とも、低速域で作動する前後両方向の衝突被害軽減ブレーキも装着されている。

両車で若干の違いはあるが、安全装備や運転支援機能の水準については同程度だろう。

結果:
安全装備や機能については互角

燃費性能比較

燃費について、「スペーシア」には全車マイルドハイブリッドが搭載されている。2WDのWLTCモード燃費は、NAエンジンの主力グレードが23.9km/Lで、標準ボディのハイブリッドGは25.1km/Lに達する。カスタムハイブリッドXSターボは21.9km/Lだ。「N-BOX」の燃費は、NAエンジンの標準仕様が21.6km/L、カスタム仕様は21.5km/L、カスタムターボは20.3km/Lになる。

「スペーシア」は、新型になって燃費を大幅に向上させた。新型モデルと先代モデルのハイブリッドXグレード同士で比べると、先代モデルから新型モデルに乗り替えればガソリン代を11%節約できることになる。

「スペーシア」は、新型になって燃費値を大幅に向上させている

「スペーシア」は、新型になって燃費値を大幅に向上させている

「スペーシア」は、ターボエンジンでも21.9km/Lと高い燃費値を達成しており、カタログ燃費上では「N-BOX」のNAエンジンよりもすぐれている。

結果:
燃費は「スペーシア」のほうがすぐれる

それぞれの買い得グレードと推奨ユーザー

機能や装備の割に価格が抑えられた買い得グレードは、「スペーシア」は標準仕様のハイブリッドX(170万5,000円)だ。対する「N-BOX」は、標準仕様の標準グレード(164万8,900円)になる。価格は「スペーシア」のほうが少し高いものの、軽自動車は競争が激しく、機能や装備と価格で決まる買い得度は同程度だ。納期を販売店に尋ねると、両車とも「2〜3か月に収まる」(2023年12月時点)と言う。

「スペーシア」は適度によく曲がり、市街地を機敏に走る用途に適している。収納設備も豊富に備わり、日常的な使い勝手に重点を置いて開発された。

市街地などでの取り回しなどがしやすい「スペーシア」

市街地などでの取り回しなどがしやすい「スペーシア」

「N-BOX」は、操舵感や乗り心地など走りの基本性能が煮詰められている。直進安定性にもすぐれ、軽自動車としては少し高い速度域をターゲットにしている。運転支援機能も標準装備され、長距離を移動する機会の多いユーザーに対応した。

高い速度域においても安定した走行が可能な「N-BOX」

高い速度域においても安定した走行が可能な「N-BOX」

「スペーシア」と「N-BOX」は、サイズがほぼ同じで価格も近い。似通った軽自動車に思えるが、性格はそれぞれ異なるので、両車の装備や乗り心地などを比較して判断したい。

(写真:島村栄二、価格.comマガジン編集部)

渡辺陽一郎
Writer
渡辺陽一郎
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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