クルマの価格は上昇し続けており、15〜20年前に比べると1.2〜1.5倍ほど高くなっている。
たとえば、2009年に発売された4代目のホンダ「ステップワゴン」は、最も安価なGグレードで208万8,000円だった。だが、現行型の「ステップワゴン」でいちばん安い「エアー」グレードは、316万9,100円に達する。最も安価なグレードが100万円以上も高くなり、比率に換算するとおよそ1.5倍になった。
いくら機能や装備が進化していても、所得が伸び悩んでいる日本で100万円を超える値上げはつらいだろう。
そこで、注目したいのが中古車だ。中古車なら、新車よりも安く購入できる。だが、年式が新しいと新車からの値下げ額は少なく、逆に年式が古すぎたり過走行であったりすると、故障などのトラブルが心配になってくる。
そこで、筆者がおすすめしたいのが、7年落ち程度の中古車だ。近年は中古車価格が高騰している背景もあって、3〜5年落ちくらいでは新車からの値下げ幅は少ないのだが、7年落ち程度になると買い得感が高まってくる。走行距離は、少し幅を持たせて2〜5万キロくらいで、修復歴はない車両が望ましい。パワートレインは、ハイブリッド車は高いのでNAエンジンもしくはディーゼルエンジン。外観は、エアロモデルは人気があって中古車価格もおおむね高いため、標準仕様をおすすめしたい。
今回は、前述の選び方を目安としたうえで、「ミニバン」「スーパーハイトワゴン」「軽自動車」「SUV」の各ボディタイプでファミリー向けにおすすめの中古車を8車種選んでみたので、購入検討の参考になれば幸いだ。
なお、上記の動画でも当記事と同内容のファミリー向け中古車を紹介しているので、ご参考頂ければ幸いだ。
※中古車価格は個体の状態や相場などによって変動しますので、記事中の中古車価格は、あくまで目安のひとつとしてご参考ください
まず、ファミリー向けのミドルサイズミニバンの中古車としては、先代のホンダ「ステップワゴン」があげられる。7年落ち程度の中古車価格は、1.5Lターボエンジン搭載車でおよそ180〜200万円前後。新車時価格の60〜70%に収まる。
ホンダ「ステップワゴン」(先代)のエクステリア
「ステップワゴン」は車内が広く、3列目シートを床下に格納できるので広大な荷室になる。売れ筋グレードなら、リヤゲートに縦長のサブドアが内蔵しているので、狭い場所でも荷物を出し入れできる。さらに、サブドアから乗員の乗り降りも可能だ。1.5Lターボエンジンは動力性能に余裕があるので、多人数が乗車しても使いやすい。
先代「ステップワゴン」は、3列目シートを床下へ格納できるので、ラゲッジルームを広く使うことができる(現行も同様)
先代「ステップワゴン」には、バックドアを横にも縦にも開けられる「わくわくゲート」が採用されている
日産「セレナ」も、7年落ち程度なら先代型のNAエンジン車が190〜210万円前後で販売されている。「セレナ」は人気が高いので、中古車価格も新車時の70〜75%に達する。
日産「セレナ」(先代)のエクステリア
先代型でも車内の広さは現行型と同等で、標準ボディは5ナンバーサイズのミニバンとしては最大級のスペースを備えている。さらに3列目シートも快適で、ミドルサイズながら多人数でも長距離を快適に移動できる。さらに、シートアレンジも多彩で、ミニバンの使い勝手が追求されている人気の高いモデルだ。
先代「セレナ」の室内イメージ
3列目シートは不要だが、2列シートで車内が広く、ミニバンのようにスライドドアが装着されている便利なクルマに乗りたいというユーザーニーズに応える人気車が、スーパーハイトワゴンだ。全高が1,700mmを超えるので車内が広く、後席の居住性もすぐれている。さらに、後席を格納すると自転車なども積める大容量の荷室になるなど実用性も高い。スーパーハイトワゴンは、ミニバンに比べると新車価格が安いため、中古車も購入しやすい価格帯となっている。
コンパクトカーのスーパーハイトワゴンとしては、まずトヨタ「ルーミー」があげられる。2016年に発売されて以降、フルモデルチェンジされていないため、7年落ちでも現行型になる。中古車価格は100〜120万円前後で、当時の新車価格の65%ほどだ。車内が広く、荷室の使い勝手などもすぐれている。
トヨタ「ルーミー」(現行)のエクステリアと室内イメージ
同じく、コンパクトカーのスーパーハイトワゴンとしては、先代のスズキ「ソリオ」もあげられる。7年落ちの中古車価格は、NAエンジン搭載車の売れ筋グレードで80〜100万円前後だ。
「ソリオ」の走行性能や乗り心地、シートの座り心地などは、先代型でも現行「ルーミー」に比べてすぐれている。それでも、スズキは軽自動車メーカーのイメージが強く「ルーミー」よりも人気が低いため、中古車価格が安いのでねらい目だ。「ソリオ」の7年落ちの中古車価格は、新車時の50〜55%に収まる。
スズキ「ソリオ」(先代)のエクステリアと室内イメージ
機能や質の割に価格の安い中古車を買いたいのなら、「ルーミー」よりも「ソリオ」を選ぼう。中古車の価格は、人気度でも左右される。買い得な中古車は、「高機能で装備を充実させた不人気車」だ。ボディカラーも、不人気なカラーのほうが安くなる。言い換えれば、「すぐれた不人気車を見極めること」が、得する中古車を購入する秘訣になる。
軽自動車のスーパーハイトワゴンは、ホンダ「N-BOX」の人気が高い。先代型が登場した2017年以降は、ほぼ毎年、国内販売で1位を獲得しているほどだ。
ホンダ「N-BOX」(先代)のエクステリア
「N-BOX」の全高は1,700mmを超えており、エンジンルームが短く抑えられていることから、先代型でも前輪駆動の軽乗用車としては車内が最も広い。さらに、後席の頭上や足元空間には十分な余裕があり、4名で乗車しても快適だ。しかも、「N-BOX」は燃料タンクが前席の下に搭載されているので、荷室の床も低い。後席をワンタッチで格納すれば、自転車が積めるほどに広い荷室になる。
ホンダ「N-BOX」(先代)の室内イメージ
リアシートを前方へ倒すと、荷室を広く使うことができる
先代「N-BOX」の中古車価格は、2017年式のターボを装着しないNAエンジン車でおよそ100〜110万円前後だ。新車価格と比べると、およそ60〜70%になる。「N-BOX」は軽自動車だが、中古車と新車の価格ともにコンパクトカーの「ルーミー」とほぼ同じだ。クルマの製造コストは、サイズではなく主に使われる部品の点数で決まるので、コンパクトカーと軽自動車では大きな価格差が生じにくい。
スライドドアを装着しない、全高が1,700mm以下の軽自動車としては、外観をSUV風にアレンジしたスズキ「ハスラー」の中古車も買い得だ。
スズキ「ハスラー」(先代)のエクステリア
「ハスラー」の居住空間や荷室は、「N-BOX」ほど広くはないものの、4名乗車は十分に可能だ。後席の背もたれを前側に倒せば座面も連動して下がり、床の平らな荷室に変更できる。このアレンジは、後席の前後スライドとあわせて左右独立式だ。つまり、「ハスラー」のシートアレンジは、全高が1,700mmを超えるボディにスライドドアを装着したスーパーハイトワゴンと同等で、全高が1,700mm以下の車種としては最も充実している。ちなみに、この特徴は新旧「ハスラー」に共通するものだ。さらに、荷室の床は水拭きできるようになっているので、汚れたアウトドア用品を積んだときなどの掃除もしやすい。
先代「ハスラー」の室内イメージ
7年落ちの先代「ハスラー」の中古車価格は、NAエンジン搭載車でおよそ90〜100万円前後だ。先代型の売れ筋グレードの新車価格は130〜150万円だったので、中古車価格は新車時の60〜70%になる。「ハスラー」は人気車なので、中古車価格は「N-BOX」と同じく少々高めだ。
人気のボディタイプであるSUVも、車内が広くファミリーカーとして使いやすいクルマは多い。その中でも、おすすめの中古車としてマツダ「CX-5」があげられる。「CX-5」は車内が広く、4名で乗車したうえでラゲッジルームへ荷物を十分に積み込める。
マツダ「CX-5」(現行)のエクステリアと室内イメージ
さらに、2.2L直4クリーンディーゼルターボエンジンなら実用回転域の駆動力が高く、その割に燃費がよい。さらに、クリーンディーゼルエンジンが使う軽油の価格も安いので、燃料代を抑えられるというメリットもある。
現行「CX-5」は2017年の初頭に発売されたので、7年落ちでも現行型が手に入る。中古車価格は、クリーンディーゼルターボエンジン搭載車の7年落ちでおよそ180〜200万円前後なので、新車時の60%程度になる。人気の高いSUVの現行型としては、中古車価格が低めに抑えられているので買い得だ。
コンパクトSUVでは、ホンダ「ヴェゼル」があげられる。ボディサイズの割に車内が広く、後席も快適だ。燃料タンクを前席の下に搭載しているので、後席を格納すると大容量の荷室になる。ボディはコンパクトでも、実用機能はミドルサイズのSUVに相当する。
ホンダ「ヴェゼル」(先代)のエクステリアと室内イメージ
「ヴェゼル」の7年落ちの中古車は先代型になり、NAガソリンエンジン搭載車の価格はおよそ150〜170万円前後だ。新車時の売れ筋価格帯は220〜250万円なので、先代型でも中古車価格は新車時の65〜70%に達する。「ヴェゼル」は購入希望者の多いコンパクトSUVなので、新車価格の割に中古車価格はやや高めになる。