EV専用のプラットフォーム&ボディに、スーパースポーツとそん色ない高い運動性能を備え、大量に搭載されたリチウムイオン電池により長い航続距離を実現したモデルS。このクルマは、これまでの量産EVと比べると異なる点が多い。クルマの内容も、会社同様にユニークなのだ。
たっぷりと装備された電池のおかげで、充電にかける手間は、ずいぶんと軽減できた。試乗車として借りたモデルSは、ほぼ満充電という状態。数q走った段階で、モニターを見ると、残りの走行可能距離は396kmとある。カタログ値の8割程度の数字は、日本ブランドのEVと同じようなものだ。
都内でクルマを借り受けた後、茨城まで足を伸ばしてみた。高速道路を使って往復で約150kmの行程だ。この時点でモデルSの航続距離の長さに対するありがたみを感じる。日本製のEVであれば、150kmの行程は、どこかで充電をしたくなる距離。しかも、茨城方面は急速充電インフラが乏しい。ところがモデルSであれば、まったく問題ない。試乗会などで、ひんぱんに訪れる箱根エリアも、往復200kmほどの距離。日本製EVであれば途中で急速充電を、となるが、モデルSなら往復も射程内。仕事での移動に往復200〜300kmという距離のドライブが多い人間としては、モデルSの航続距離の長さは大きな魅力となった。
茨城から戻ってきても、まだ走行可能距離は200km以上ある。そのため、この日は、充電設備のない駐車場にモデルSを停めることとした。次にクルマを出す際には、CHAdeMO(チャデモ)方式の急速充電設備が用意された有料駐車場に立ち寄り、充電を実施。時間の都合で、約20分という中途半端な充電時間となってしまったが、走行可能距離を40kmほどプラスできた。その後、数日は遠出の予定もないため、充電なしでこまごまと乗り回した。
2015年3月2日現在、日本国内2819か所に設置されているCHAdeMO方式の急速充電施設を利用して充電してみた
充電時は給電口部分が緑色に光る
横浜市のみなとみらい地区の大規模商業施設には200Vでの普通充電可能な駐車場がある。そこで食事がてら充電しておこうかと入庫してみれば、10ほどもある充電設備は日産リーフでぎっしり。さすが日産のお膝元なだけはあるということか。仕方ないので、その日の充電はあきらめる。このように日延べできるのも、モデルSの余裕ある電池容量ならではだ。
さらに数日が経ち、モデルS返却の期日となった。気がつけば残りの走行可能距離は60kmほどに。このまま返却もできるが、最後に自宅から15分ほど走ったところにある高速道路のパーキング施設に向かう。そこで30分の急速充電を実施した。走行距離に換算すれば100km分ほどを充電。コーヒーを飲んで、のんびりと充電を待っていると、それほど長くは感じなかった。
結局、約1週間の試乗期間で400km弱を走破。最終的に、30分×2回の急速充電を行って、走行可能距離140kmほどで返却した。もし、テスラの公式充電施設であるスーパーチャージャーを利用していれば1回の充電で、もう少し多くの走行可能距離を残して返却できた計算になる。1週間で1〜2回の充電であれば、それほど手間には感じないし、電池容量が大きいだけ、余裕をもって充電を行えるのはうれしいポイントだ。もちろん、自宅で200Vの普通充電できるのがEV運用という意味はベストとなる。
高速道路のパーキング施設にも急速充電器が設置されている。ドライブの合間にコーヒーでも飲んでいると、30分の充電時間はあっという間だ
テスラが用意する世界最速の充電スタンド、スーパーチャージャー。モデルSなら数十分で満充電になるという
ちなみに、実際に使ってみて思ったのは、「商業施設の駐車場における普通充電がもっとたくさんほしい」ということ。食事や買い物、映画を見ている間に、時間を気にせず充電しておければ使いやすいからだ。ファミリーレストランやショッピングモールなどで気軽に充電できるようになれば、もっとEVが身近になるだろう。200Vの普通充電設備であれば、設置にかかる費用は、それほどに大きくはない。EVが増えてくれば、導入する施設も増えるはず。これは、ニワトリが先か? タマゴが先か? の関係に似ているが、ニワトリとタマゴの双方が普及していけば、ユーザーにとっては魅力的な選択肢が増えることになるはずだ。