新型「ハリアー」の走りはどうなのか? ハイブリッド車のパワートレインの印象は、「いかにもTHSU!」というもの。EVモードでスタートし、途中でエンジンとモーター駆動をひんぱんに切り替えながら走るのが、トヨタのTHSUの走行ロジックだ。その切り替えが非常にスムーズで、マルチインフォメーションディスプレイを見ないとエンジンで走っているのかモーター駆動中なのか判別できないのが特徴である。新型「ハリアー」は静粛性が高められていることもあって、音も振動もドライバーにあまり伝わらず、よけい切り替えの判別が難しい。その結果、ドライバーにとってパワートレインの存在が非常に希薄なものになる。パワー感は必要十分。パワフルとは感じなかったが、不足とも感じない。それよりも、静粛性の高さやスムーズさが魅力に思えた。これならば、同乗の人間との会話もしやすいし、同乗者がクルマに酔うことも少ないのではないだろうか。
ちなみに2リッターのガソリンエンジンのFFモデルにも試乗したが、そちらはもう少しエンジン音や振動がドライバーに伝わってくる。しかし、それも最小限のもの。ハイブリッド車同様に、エンジンの存在を主張するようなものではなかった。またパワーに関しても、印象はハイブリッドと同じ。パワフルではないが、不足はない。普通に走っている限り、不満を感じることはなかった。
ハイブリッド車もガソリン車も、その走りはスムーズで必要十分なもの。速さや力強さを追求した体育会系とは正反対の、大人っぽく余裕のあるキャラクターであった。
エンジンとモーター駆動をひんぱんに切り替えながら走るトヨタのTHSUの特徴だが、「ハリアー」はその切り替えがとてもスムーズ。エンジンで走っているのかモーター駆動中なのか、マルチインフォメーションディスプレイを見ないと判別できないほどだった
ハイブリッド車のマルチインフォメーションディスプレイ
ガソリン車のマルチインフォメーションディスプレイ
ひとつ気になったのは、先進安全装備の内容だ。衝突被害軽減自動ブレーキであるプリクラッシュセーフティは用意されているが、その作動は時速15km以上。先行車に追従するレーダークルーズコントロールは時速50〜100kmでの作動となる。つまり、全体の速度域が高く、高速道路上での渋滞時など、低速状況では作動しないというものだ。確かに、生命を守るという意味での衝突被害軽減自動ブレーキの必要性は高速域のほうが高い。しかし、現状の日本のマーケットでは低速域の衝突被害軽減自動ブレーキの普及が急速に進んでいる。新型「ハリアー」を選ぶときは、その点が他メーカーと違っていることを把握しておく必要があるだろう。
ナビ画面には、車両を上から見下ろしたような映像を表示するパノラミックモニター(左右確認サポート付)を装備。目視だけではわかりづらいクルマの周囲の状況をしっかりと確認できる
駐車場や見通しの悪い場所からの発進時に、側方から現れる人やクルマを検知して映像と音でしらせてくれるのが「左右確認サポート」。トヨタ車初採用となる安全技術だ
道路上の白線/黄線をカメラで認識し、クルマが車線を逸脱する可能性がある場合に、ディスプレイ表示とブザー音で注意喚起してくれる「レーンディパーチャーアラート(ステアリング制御付)」もトヨタ車初装備なる
新型「ハリアー」の内容を精査し、試乗を通して感じたのは、「非常に狙いがハッキリしている」ことだ。「格好よく乗ること」に特化している。正直、走りやパッケージングなどはほどほど。目新しい最新テクノロジーがあるわけでもない。燃費性能も悪くはないが、これもそこそこである。しかし、インテリアやエクステリアの見栄えは妥協しない、そんな狙いが強く感じられるのだ。そうしてできたクルマは、「デートに最適」なものになる。昔風に言えば「スペシャリティカー」だ。1970〜90年代には、そうした「デートカー」が数多くリリースされており、そして、そのどれもが高い支持を得ていたのだ。逆に言えば、この10年ほどは、そうしたジャンルのクルマが少なくなっていた。これも、「若者のクルマ離れ」の理由のひとつになっていたのではないだろうか。
優雅なジャケットを着てパーティーに行くような、そんな華やかな気持ちになれるSUV。それが新型「ハリアー」だ。しかも、意外に手頃な価格から手に入れることができる。こういう選択肢があることが、「ハリアー」が若者に支持される理由になっているのだろう。