“弾丸”試乗レポート
安全装備と、低重心のもたらす走りを備えたドイツ流ミニバン

クルマの本質的な機能を追及した「ゴルフトゥーラン」試乗レポート

2015年1月12日、久しぶりのフルモデルチェンジを実施したフォルクスワーゲンのコンパクトミニバン「ゴルフトゥーラン」が発売開始となった。すでに、速報をお届けしているが、今回行った試乗で、かなり高いポテンシャルを備えていることがわかった。その特徴や走りはどのようなものなのか? モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏がレポートする。

モデルサイクルが短縮しているドイツ車にあって、10年ぶりのモデルチェンジが敢行されたゴルフトゥーランの実力に迫ってみよう

最新のフォルクスワーゲンのMQBで一気に2世代分進化

「10年ひと昔」というけれど、10年前のゴルフといえば「ゴルフV」。現行型ゴルフが第7世代であることを考えれば2つも前になる。ゴルフをベースにミニバンに仕立てたゴルフトゥーランは、2003年に誕生してから、本家ゴルフの2世代分を生きる長寿モデルとなっていたのだ。そして今回の新型モデルでは、1世代をスキップして、最新のゴルフ7と同じMQB(モジュラートランスバースマトリックス)に基づいて開発された。

新しいゴルフトゥーランのサイズは全長4535×全幅1830×全高1640〜1670mm。旧型から全長で130mm、全幅で35mm大きくなって、全高が30mmダウンしている。数字には出ていないがボンネット部分が高くなったこともあって、ボリューム感は相当に高まっている。しかもホイールベースが従来よりも110mm延長された。全長が伸びたようにタイヤ&ホイールの位置も移動しているため、間延び感のないスタイリッシュなフォルムを実現している。しかし、大きくなったとはいえ、最新のMQBシャシーということで、車両重量は旧型比で最大20kgも軽量化した1560kgであり、燃費性能も23%改善したJC08モード燃費18.5km/Lを達成。3列シート7人乗りのミニバンとしては、優秀な数字を実現している。

最新のMQBシャシーを採用。全長と全幅は大きくなったが、全高が抑えられた

最新のMQBシャシーを採用。全長と全幅は大きくなったが、全高が抑えられた

ボンネットが高くなるなど、ボリューム感は増したが、車両重量は最大で20kgの軽量化を実現している

ボンネットが高くなるなど、ボリューム感は増したが、車両重量は最大で20kgの軽量化を実現している

発売されたのは3グレード。エンジンはすべて最高出力110kW(150馬力)、最大トルク250Nmの1.4リッター直列4気筒ターボ。フォルクスワーゲンがTSIエンジンと呼ぶ直噴のダウンサイジング ターボ エンジンだ。トランスミッションは7速DSG。ベーシックなグレードが284万7000円の「TSIトレンドライン」、ミドルグレードが317万円の「TSIコンフォートライン」、そして最上級が376万9000円の「TSIハイライン」だ。

国内に投入されるグレードはいずれも、1.4リッター直列4気筒ターボエンジンを採用。最高出力110kW(150馬力)、最大トルク250Nmを発生する

作りのよいインテリアと基本的な実用性を押さえたユーティリティ

スタイルだけでなく、ヘッドライトまで続く水平基調のゴルフトゥーランの新しいフロントフェイスも、最新のゴルフやパサートなどのデザイン テイストと同様なもの。見た目がモダンになったのも新型モデルの大きな魅力だろう。

ドライバーズシートに収まると、新型ゴルフトゥーランが最新ゴルフ7との兄姉モデルであることが実感できる。高品位な造りのよさを見ることができるのだ。ただし、最上級グレードでもシートにレザーを採用していないように、けっしてゴージャスではない。しかし、キチッと作り込まれた精密さを感じる。華美ではないが、安っぽくはないのだ。

3列シートは、2列目と3列目がフラットに折りたたむことができる。操作も日本車同様に簡単だ。3列目のシートに乗り込むときは、2列目シートのショルダーにあるレバーを引けば、2列目シートが倒れ込みながら前方にスライドする。ひとつの動作で3列目に乗り込めるというイージーエントリーを採用。5ドアのミニバンとして、使い勝手の基本は押さえてある。

ヘッドライト周辺のデザインは最近のフォルクスワーゲンに共通する水平基調のデザイン。なおTSIハイラインでは、LEDヘッドライトが標準装備されている

華美ではないが、品質の高さを感じるインテリア。近ごろのフォルクスワーゲンに共通する好ましさがある

華美ではないが、品質の高さを感じるインテリア。近ごろのフォルクスワーゲンに共通する好ましさがある

1列目シート、セダンのようなコンソールボックスがあり、ウォークスルーは行えない

1列目シート、セダンのようなコンソールボックスがあり、ウォークスルーは行えない

2列目シートは独立型の3人掛け。いずれも3点式シートベルトである

2列目シートは独立型の3人掛け。いずれも3点式シートベルトである

3列目シートは2人掛け。こちらも3点式シートベルト

3列目シートは2人掛け。こちらも3点式シートベルト

レバーひとつで、2列目シートが倒れこみながら前方にスライドする。3列目シートの搭乗もラク

レバーひとつで、2列目シートが倒れこみながら前方にスライドする。3列目シートの搭乗もラク

助手席、2列目、3列目シートは折りたたみも可能。操作も国産ミニバンのように簡単

助手席、2列目、3列目シートは折りたたみも可能。操作も国産ミニバンのように簡単

低重心を生かした走り。ドイツ車らしい高い質感と豊富な安全装備も魅力

ゴルフトゥーランの走りを端的に言えば、「ドイツ車そのもの」だ。ステアリングの手応えもアクセル&ブレーキの踏み応えも、やや重みを感じさせる。しかし、ダルいのではなく、カチッとした硬質な反応だ。エンジン音はミニマム。しかし、アクセルを強く踏み込めば、意外なまでに力強い加速を味わえる。考えてもみれば、トルクはNA2.5リッターエンジン並なのだ。ドシッとした高速での直進性もある。足回りもシャキっとしており、腰砕けのようなロールはない。それでいて、ビリビリという微振動はしっかりと遮断しており、不快感はない。やる気になれば、相当にキビキビ走らせることができる。ただし、家族なり乗員を多数乗せているときはおとなしく走ることをおすすめしたいが…。とにかく、むやみに背を高くしていないこともあるのだろう、走行性能は日本のボックスタイプのミニバンとは別次元。まさにゴルフ譲り。ドイツ車らしい、すぐれた走行性能を備えているのだ。

ドイツ車的な重厚さを基本としつつ、しっかりなされた遮音と力強い加速で軽快で洗練されており、疲労感も少ない

また、新型ゴルフトゥーランには、ほかにも大きな美点がある。それが充実した安全装備類だ。安全の基本となる9個のエアバッグ、前席むち打ち軽減ヘッドレスト、全席3点式シートベルト、エマージェンシーストップシグナル(急ブレーキを踏むと自動でハザードランプが点灯する)、時速30km以下で作動する衝突軽減自動ブレーキ機能付きのプリクラッシュブレーキシステム“Front Assist”、ドライバー疲労検知システム、万一の事故の可能性をシステムが検知したときにシートベルトの拘束を強めつつ窓を閉じるプロアクティブ オキュパント プロテクション、交通事故の衝撃を感知すると二次被害を防止するために車両を減速させるポストコリジョンブレーキシステム、対歩行者事故での被害を軽減するアクティブボンネット。これらがすべて標準装備となる。さらにオプションとして、全車速追従機能付きのACC(アダプティブクルーズコントロール)とレーンキープアシストを用意。また、後席のシートがチャイルドシートに早変わりするインテグレーテッドチャイルドシートもオプションで用意している。

全車速追従機能付アダプティブクルーズコントロールをTSIハイラインに標準装備。作動速度範囲 30km/h以上で、停止するまで利用可能なので、渋滞に入っても使える

エアバッグのセンサーが感知した衝突をきっかけに、自動でブレーキをかけて車両を10km/h以下になるまで減速させ、二次被害を防ぐポストコリジョンブレーキシステムは標準装備だ

万一の衝突時に歩行者の被害を軽減するアクティブボンネット

万一の衝突時に歩行者の被害を軽減するアクティブボンネット

15〜36kgの子どもに仕えるオプションのインテグレーテッドチャイルドシート

15〜36kgの子どもに仕えるオプションのインテグレーテッドチャイルドシート

国産ミニバンとは目指すものが違う。ドイツ製品らしいすぐれたツール

ドイツ車らしい高い走行性と、充実した安全装備類。この二つが新型ゴルフトゥーランの最大の魅力だろう。とはいえ、スライドドアもないし、背もそれほど高くはない。子どもが室内で起立できるような広大な室内空間とスライドドアが欲しい人には、最初から選択肢には入らないだろう。しかし、「普通に乗車できればいい」「スライドドアにこだわらない」「走りはよいほうがよい」「高い安全性が欲しい」と考えていれば、ゴルフトゥーランを選択肢のひとつに入れるべきだろう。

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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