糖質制限ダイエットや「ロカボ」食を実践するとなれば、糖質たっぷりの小麦麺を主体とするラーメンは諦めるもの。カップ麺なんてもってのほかだ。しかし近年はメーカーの努力により、糖質制限中でも比較的罪悪感なく食べられる、糖質量を抑えたカップ麺のラインアップが充実してきている。筆者は日常的にカップ麺レビューの仕事をしていることもあり、「糖質オフ」をうたうカップ麺もさんざん食べ尽くしてきた。そんな筆者が個人的に、「低糖質カップ麺の中でも結構おいしい」と感じるベストナインをご紹介しよう。
お湯を入れたら食べられるお手軽カップ麺。糖質オフ、ロカボ的には天敵とされるのが常識だが……?
現在、糖質制限に関してはそれを提唱する医師によって、おもに3つの潮流がある。おさらいしてみよう。
【1】山田悟医師の提唱する、ゆるやかな糖質制限食。通称「ロカボ」。1食の糖質量は30〜40g以下。
【2】糖質制限の第一人者として語られることの多い、江部康二医師による高雄病院のスーパー糖質制限。1食の糖質量は20g以下。
【3】カップ麺などもってのほかの、釜池豊秋医師の糖質ゼロ食。1日1食で糖質は5g以下!
【1】に関してはほとんどの糖質オフカップ麺を食べることが可能だ。【2】に関しても、1日の総糖質摂取量の調整で糖質オフカップ麺は食べられる。
ほとんどの糖質オフカップ麺は、糖質の塊である小麦麺に食物繊維を練りこむことで糖質量を抑えている。食物繊維は一般に無味無臭と言われるが、食感がざらつきやすく、そこをどのように克服するかがポイントだ。なお、糖質量はパッケージに表記されていなくても、炭水化物量と食物繊維量が記載してあれば計算可能。「炭水化物量-食物繊維量=糖質量」である。
スープに関してはそもそも糖質の高い材料を使用しなくても作ることができるので、糖質量にはそこまで影響しないことが多い。ちなみに、食物繊維は繊維なのでむやみに食べ過ぎると腸にガスが溜まるなどの問題も出てくることもあるので注意しよう。
明星食品は「はじめ屋」という高品質な低糖質カップ麺を作っているうえ、ファミリーマート専売の「RIZAP醤油豚骨ラーメン」も手がけるだけに大いに期待してしまったのだが、とにかく味の薄さが惜しい「明星 低糖質麺 ローカーボNoodles ビーフコンソメ」。麺はぼんやりとやわらかく、そうめんのような食感だ。かやくに味付き牛肉、赤ピーマン、玉ねぎ、インゲンが入っているのだが、味付き牛肉と一緒に食べた時のみおいしく感じる。ただ、糖質は12.8gと江部式スーパー糖質制限レベルなので、糖質オフ効果を求める人にとっては大きな魅力。
内容量:54g(うち麺40g)/糖質:12.8g/カロリー:179kcal
同シリーズに「鶏白湯」も存在するが、そちらは味が薄いうえに麺のクセをもろに感じてしまうので論外だった
「低糖質カップ麺を食べていこう」という強い意志がある人ならば、味が薄いくらいであきらめてはいけない。それなりの手間をかければ、その味わいはぐっとおいしくなるのだ。カップ麺だからと面倒がらずに、家に以下の「5種の神器」ともいうべき調味料を用意しておこう。
味が決定的に薄いと感じたら、塩か醤油を足す。麺のクセが気になるなら胡椒で風味をごまかす。ラーメン感を強めたければ、ラー油を追加、旨みが物足りなければ「味覇(ウェイパー)」などの中華万能調味料を投入する。醤油や「味覇」には若干の糖質が含まれているものの、そんなに大量に使用するものではないので、誤差のレベルと考えて問題ないだろう。「明星 低糖質麺 ローカーボNoodles ビーフコンソメ」にしても、醤油と塩を足すことで、俄然おいしく食べられるようになる。若干反則気味だが、それほどに糖質制限の道は甘くないのである。
左から醤油(丸島醤油)、塩(アルペンザルツ)、コショー(ギャバン)、ラー油(S&B)、味覇(ウェイパー)
「麺ごこち 糖質50%オフ 芳醇鶏だし醤油ラーメン」は2017年9月18日にリニューアル発売されたもので、発売前から気になっていた。というのも、前述のとおり糖質オフ麺というのは独特の食感と風味があり、げんなりしてしまいがち。そのため、脂が多く香りの強さでごまかしの効きやすいとんこつ味が有利。こうしたすっきりとした鶏だし系の醤油ラーメンは、麺の風味のごまかしが効きづらい。だからこそ、どう処理してくれたのかが気になっていたのだ。
結果はかなりの健闘。もちろん、麺の向こうに特有の臭みをわずかに感じてしまうのだが、中華麺風のツルツル感はしっかり実現しているのに驚いた。ぶっちゃけ、あっさりすっきり東京ラーメン的な糖質オフ・カップ麺の中では最高レベルだと思う。ただ、ワンタンはそうしたクセを強調することになってしまっているのが不思議。糖質量はロカボ枠に余裕で収まる31.8gと、副菜の同時食べも可能だ。
内容量:84g(うち麺50g)/糖質:24.6g/カロリー:246kcal
かやくはワンタン、ごま、ねぎ、卵。そう、商品名には入っていないが、ワンタン麺だ。そして高級ブランド鶏・名古屋コーチンでダシをとっている
もともとカップ麺に比べて、カップ焼きそばは空腹を満たすのに適していると言われる。なぜなら、麺量がカップラーメンより多い(=糖質量が多い)からだ。なので、この挑戦には非常に興味を持った。最近、まるか食品が「ペヤング ソース焼きそば」のスピンアウトで「ピーヤング 春雨」というのを出していたが、そもそも春雨は糖質が高いうえ、ソース味でなかったことにがっくり来たばかりなので、余計に期待は高まる。
“マヨビーム”的にからしマヨネーズをかけて食べるスタイルになっており、こってりドロドロの濃厚な焼きそばが楽しめる。ちなみに、マヨネーズは脂質量こそ高いが糖質は低いので正しい選択。麺の違和感も、これだけドロドロだとほとんど気付かない。ただ麺量も90gと多く、糖質量も30g台に突入しているので、食べ過ぎには注意したい。
内容量:121g(うち麺90g)/糖質:31.8g/カロリー:514 kcal
かやくはキャベツ、アオサ
低糖質麺の違和感を低減しやすいとんこつスープを活用した、結果にコミットする1杯。糖質17.5gという江部レベルの糖質オフがすごい。スープはとんこつとニンニク臭が強烈で、麺は博多ラーメンでバリカタや粉落としという茹で時間を短くした時のような食感だ。ただ、非常に惜しいのが、塩分を控えてしまっているところ。腎臓が悪い人前提でもあるまいし、塩分を抑えてしまうのはどういうことか。具材と一緒に食べている時はいいが、全体的に味が薄い。ここは塩と、ラーメン感を高めるためにラー油を入れることをおすすめする。工夫次第でかなりおいしい。
内容量:78g(うち麺54g)/糖質:17.5g/カロリー:279kcal
かやくは味付け豚肉、チャーシュー、ネギ。容器は大きいがスープは少なめ設定だ
ファミリーマート限定発売/明星食品「RIZAP醤油豚骨ラーメン」
原型となる「シーフードヌードル」が好きな人なら、違和感なくおいしく感じられる「シーフードヌードル ライト」。ただライトの基準はあくまでカロリーベース。糖質は「シーフードヌードル」と比べると低いが、この後に登場する「カップヌードル ナイス」よりはずいぶんと高い。おいしいことはおいしいのだが、糖質オフ的には減点要素。かやくは、いか、キャベツ、味付卵、魚肉練り製品、ねぎと、カニカマ&卵のハーモニーでシーフードヌードルファンの満足を高めているのはいささかずるい気もする。食べ慣れた味は、やはり強い。
内容量:57g(うち麺40g)/糖質:28.3g/カロリー:198kcal
油で揚げずに油を霧状にふりかける「ミスト・エアードライ製法」と「オリジナル3層麺製法」で作られたノンフライ麺。「オリジナル3層構造」は、内部に食物繊維を練り込むことによって、舌に違和感を与えないという究極の製法
これもはっきり言ってずるい。日常的に「カップヌードル」のオリジナル版を常食している人でなければ、ごまかされてしまうレベルだ。何よりもかやく類。黄色鮮やかな卵、えび、謎肉というオールスターが、まさに食べ慣れた味のほとんどを担い、麺への注意をそらす。
内容量53g(うち麺40g)/糖質24.8g/カロリー:198kcal
「ミスト・エアードライ製法」と「オリジナル3層麺製法」で作られたノンフライ麺
エースコックの意地を見せた、完成度の高いカップ麺。とんこつラーメン、なかでも博多ラーメンが好きな人なら感動するのではないか。麺の違和感をとんこつスープでコーティング、博多的な真っ白スープに、バリカタ感のある麺だから、合わないはずがない。
ただ、これもワンタンは余計。せっかくの麺の粉っぽさを解消しているのに、ワンタンが粉っぽさを出してしまって、威力半減。しかしとんこつ、博多風硬麺仕上げという理想的なコンビネーションはやはり素晴らしい。
内容量:88g(うち麺50g)/糖質:24.5g/カロリー:255kcal
かやくはワンタン、ごま、ねぎ。こちらもネーミングにはないが、ワンタン麺なのだ
「カップヌードル」ファンならばこれが1位でもいいと思う。この「ナイス」シリーズにハズレはない。そして、この最新製品(2017年10月時点)である「カップヌードル ナイス 濃厚!キムチ豚骨」は、麺の風味をごまかしやすいとんこつスープにキムチを合わせたのが素晴らしい。
とんこつ風味とキムチ風味の2つで食感を撹乱するのだから、「カップヌードル」に限りなく近づけることができている。さらにおいしい謎肉も投入しているので、「カップヌードル」ファンにはおすすめ。普通においしい。
内容量:58g(うち麺40g)/糖質:19.1g/カロリー:178kcal
かやくは味付き豚ミンチ、白菜キムチ、キクラゲ、ねぎ、赤唐辛子。麺の作り方は明記されていないが、「カップヌードル ライト」と同様なのではと感じる
3度のリニューアルで、ついに頂点を極めた感のある「明星 低糖質麺 はじめ屋 こってり醤油豚骨味」。ただ、なぜか店頭で見かける機会がほとんどないのが最大のウィークポイント。見かけたら即買いをおすすめしたいくらい、完成度の高い低糖質カップ麺だ。
スープは後入れの粉末・液体の二段構え。湯入れ4分後、しっかり麺をほぐすというノンフライ麺のお約束をしっかり守ったあと、粉末スープをきれいに溶かし、液体スープを入れると、糖質オフという言葉を忘れるくらいのおいしそうな一杯が出来上がる。ドロリ感ほどほどのとんこつ醤油は食べやすく、何より麺の完成度に恐れをなす。さながらおいしいつけ麺を食べさせる有名店のような黄色いツルツル麺で、ニンニクが鋭く香り立って食欲をそそる。これで江部クラスをちょっとはじける程度の糖質量というのには驚く。
内容量:87g(うち麺57g)/糖質:21.3g/カロリー:291kcal
糖質オフ系では少数派の平型カップ麺。かやくはチャーシュー、メンマ、ねぎ。2015年に誕生、2017年3月になぜか塩分オフのリニューアル。そして今年7月に3度目のリニューアルを果たした
話題作なので、念のために手を出してみた「おどろき麺0」。何と麺を寒天にするという荒技だ。あまりにも角度の違う攻め方に同列線上では語れないと思ったので番外とした。食べてみると、これはもうカップスープの領域。麺の代わりに入っている寒天麺は、どう考えてもクラゲ感しか感じない。まずいわけではないのだが、どこからどう味わってもラーメンの仲間ではない。
「香ばし醤油麺」は、内容量:17.9g/糖質:4.7g/カロリー:42kcal
「酸辣湯麺」は、内容量:15g/糖質:4.7g/カロリー:49kcal
糖質制限中やロカボ食実践中の人にとってうれしい糖質オフカップ麺。正直に言ってしまうと、おいしく味わう一番確実な方法は、カップ麺自体のおいしさを半分忘れるくらいまで、2〜3か月に渡って一度カップ麺を断ってみることだ。するとカップ麺のおいしさのハードルが下がり、おおかたの低糖質カップ麺をおいしく食べることができるだろう。
そんな悠長なことはしたくないという人なら、今回紹介した、かなりイイ線いっているカップ麺を試してみてもらいたい。そして、「どうせカップ麺なんだから」と手間を惜しまずに、調味料などで工夫してほしい。そうすれば、糖質オフでもかなりの満足を得られるはずだ。
元「月刊歌謡曲(ゲッカヨ)」編集長。今はめおと編集ユニット「ゲッカヨ編集室」として活動。家電や雑貨など使って楽しい商品のレビューに命がけ!