糖質制限ダイエットやロカボ食実施中の人にとって、小麦粉やそば粉を使ったうどんやそばは大敵だ。だが、年末といえば「年越しそば」だし、近年は「年明けうどん」なるものもある。そんな人々に朗報なのが、三菱食品が展開する「食べるをかえる からだシフト」の糖質コントロールシリーズ。同シリーズの乾麺、「糖質コントロール そば」、「糖質コントロール うどん」が、どの程度おいしいのか、「糖質コントロール つゆ」とともに、温かい&冷たい調理で試してみた。どちらも「アベックラーメン」などで知られる老舗乾麺メーカー・五木食品の手によるものなので、麺好きとしては期待せずにはいられない。
一見、何の変哲もない乾麺とそばつゆに見えるが、糖質制限ダイエッターにうれしい糖質オフ食品だ
とは言え、何も考えずに飛びつくのは愚かだ。一体どのようにして糖質カットを実現しているのか、身を守るためにも知っておくべきだろう。
パッケージ裏の原材料名を見てみると、「糖質コントロール そば」の原材料は、そば粉、小麦粉、小麦たん白、食塩、山芋粉/加工デンプン、増粘剤(アルギン酸エステル)。「糖質コントロール うどん」の原材料は、小麦粉、小麦たん白、食塩/加工デンプン、増粘剤(アルギン酸エステル)。そばもうどんも小麦粉より70〜80%糖質オフとなる小麦たん白(グルテン)を使用している。増粘剤として表示されているアルギン酸エステルは食物繊維なので、この2つから糖質オフが実現できているとわかる。
また、忘れてはならないのが、そば(うどん)つゆ、「糖質コントロール つゆ」だ。こちらも名古屋の老舗醤油メーカー・イチビキ製。つゆは必ずといっていいほど甘み、つまり糖質が含まれている。その点「糖質コントロール つゆ」は、甘味料をアセスルファムK、スクラロースといった、血糖値を上げないとされている人工甘味料などに置き換えることで低い糖質量を実現している。
「糖質コントロール そば」の糖質量は1人前(80g)当り糖質 26.4g。一般的なそばと比べて糖質40%オフとなっている。1袋2人分(160g)入り。また、「糖質コントロール つゆ」は、糖質80%オフの100ml当り糖質4.2gを実現。枕崎産かつお節を使用している本格派だ
「糖質コントロール うどん」の糖質量は1人前(80g)当り糖質 34.7g。「糖質コントロール そば」より糖質量は多くなるが、通常のうどんと比べて糖質30%オフとなっている。1袋2人分(160g)入り
見た目では糖質オフかどうかはわからない。そばはそば粉の色が薄い気がするし、うどんは細めで沖縄そば的な感じだ
グルテンはアレルギーがなければ問題ないし、食物繊維も摂りすぎると弱冠ガスがたまりやすくなる程度なので、危険な成分は含まれていない
まずは、シンプルにそばの味がわかる「糖質オフの年越しきつねそば」を作ってみた。作った限りでは、普通の乾麺のそばと何ひとつ違いはない。ゆで時間はパッケージに書いてあるよりも短めでいい気がした。
具はシンプルな構成で、ネギと油揚げ
通常売られている味付け油揚げは甘いタレで味付けされているので、さらっと水洗いしたあと、絞って糖分を抜く。出ていけ、糖質!
作り方は普通の乾麺のそばと同じ。ゆで時間は冷たいそばで6〜7分。温かいそばで5〜6分だ。その間に「つゆ」を希釈して温めておかなくてはならない(写真奥)
ゆで上がり。香りはいくぶんそば感が弱い気がする
具材をのせて、できあがり
アツアツを食べてみると、普通においしいおそばだ。コシはあるが、少しだけ粘りが足りない気もする。が、誤差の範囲。おいしい駅の立ち食いそば屋を感じさせる味わいだ。これはリピートしたくなる。糖質オフ麺というものは、食感がザラザラすることが多く、テンションが下がりがちだが、これは山芋が含まれているせいかツルツル感も申し分ない。
冬の風物詩ともいうべき鴨肉。筆者は1年を通してお取り寄せしてしまうくらい大好物だ。そばの味わいと鴨とネギのハーモニーは国宝級だと個人的には思う。なので、冷たいそばには「鴨汁せいろそば」を作ってみたい。
冬はスーパーの店頭でもお目にかかれるちょっとお高い食材、「鴨」
材料は、わさび、金ごまなどと、忘れてはならないのがゆず(皮を使用)。わさびを出さない蕎麦店もあるが、筆者はないとがっかりする
鴨とネギは、フライパンで焼き目を付ける。火を通しすぎると鴨肉はポソポソになるので、半生状態で温かいつゆとともに一緒に瞬間ゆでする
そば粉特有のヌルヌルを取るために、水洗い。そんなにヌルヌルは多くなかった
ゆずの皮を削いで、つけ汁に入れたら完成だ
糖質オフによる多少の不自然さも、鴨パワーが全てカバー。何も問題なくおいしい。いくらでも食べられる。コストはアップするが、鴨の脂ほどそばに合う具材はそうはないので、これはおすすめ。ただ、冷たいそばのあとは、食べ終わったつゆにそば湯(ゆで汁)を注いで楽しみたくなるが、惜しいことにその味わいは今ひとつだった。
ここ2、3年で急速に存在感を増しているのが、「年越しそば」に対する「年越しうどん」。純白のうどんに紅い具材を使用して縁起を担いで作られる紅白うどんだ。今回は「糖質オフの長老喜(チョロギ)うどん」にチャレンジした。
「よろこんぶ」ということでとろろ昆布、かまぼこやチョロギなどのおせち系食材で彩りよく
黒豆と一緒に入っていることが多い謎の食材・チョロギ(ちょうろうぎ)。シソ科植物の球根部分であり、幼虫ではないのでご心配なく。「長老木」などと書くこともあり、縁起のよさは極め付き
ゆでて、器に移す。この時、カッコつけないでトングを使うと楽だ
後から温めておいたつゆをかける。「糖質コントロール つゆ」はそのままだとちょっと筆者の好みより甘めなので、醤油と海塩をちょい足しし、濃厚味を出すためにだしの素も追加。さらに純米酒も投入してひと煮立ちさせて旨味を加えてみた。糖質オフ製品は、こうした工夫次第で元の味をアレンジできることを忘れずに。まあ、砂糖やみりんを足したら台なしだが
おめでたい感じで完成
うどんというには細めで、いわゆる沖縄そばに近い感じ。ただその味わいは、通常の乾麺うどんとほとんど変わりなし。というか、違いがわからないレベル。次に温かいそばを作るなら、豚の骨つき肉と一緒に煮込んで沖縄そばを作ろうかなと思ったくらいだ。また、時間が経ってものびにくいようである。
冷うどんとしても、非常においしく食べられた。筆者は世の中の大根おろしがすべて鬼おろしになってしまっても一向に構わないほど、粗めの食感で水気の少ない鬼おろしの大根おろしが好物。さっぱり食べたいと思ったので、冷うどんはぶっかけアレンジだ。
大根おろしと梅ともみじおろしとシソの葉
普通のおろし金ではなく、土産物店でもよく売っている粗めの食感が楽しめるようになる竹製の鬼おろしを使用
勢いよく水洗い。ゆで汁ごとザルにあけてもOKだ
具材をパパっとのせて、はい、できた
ザクザク食感の辛い大根おろしにシソの香り、梅の酸味。まさに「夏バテ防止」な季節外れの味わいになってしまったが文句なしにおいしい。ただ惜しいのは、「糖質コントロール うどん」は、「糖質コントロール そば」よりも糖質が高めなところ。普通のうどんよりも3割しか糖質オフでないというのは物足りない。
実はラインアップには「糖質コントロール そうめん」もある。季節外れにもほどがあるし、暖房の効いた室内で食べるというのは「冬のハーゲンダッツ」並みに罪悪感がみなぎるなか、作ってみたのが「季節外れそうめん〜プチトマトを添えて〜」。
こちらもうどん同様糖質30%オフだが、そうめんはもともとの糖質量が多いので、1人前(80g)当り糖質 35.8gと、糖質量は3種の中でもっとも多い
これももはや糖質オフだかどうだか気がつかないレベル。店で出してもわからないのではないか。実は白米以上に血糖値を急上昇させることでも有名なのがこのそうめん。糖尿病患者なら厳禁だし、量制限がゆるやかで血糖値をゆるやかに上げることを目標にするロカボ食でも推奨されない食品であることを考えると、実はすごく貴重かもしれない。
少しでも血糖値の急上昇を防ぎたいなら、糖質の吸収を遅らせる油分を補うという手もある。糖質オフのそうめんを、これまた沖縄風に油で炒めて、そうめんチャンプルーにすればいいかもしれない。
含まれる糖質量を考えれば、そばもうどんも(もちろんそうめんも)、糖質制限ダイエッターには要注意であることには変わりない。ただ、そばに関しては、そば粉を100%使用した十割蕎麦ならたまにはOKとされることも多い。なぜならそば粉自体は、糖質量はあれども吸収スピードが穏やかだからだ。なので、この3つのラインアップの中では、糖質オフ的に1番有利なのはそばである。
ただ、どの製品も1食26.4g以上の糖質を含み、「糖質コントロール つゆ」も希釈度によるが4g程度の糖質含まれると考えると、1食で30g以上の糖質を摂取する計算となる。もっとも有名な江部康二医師による「スーパー糖質制限食」の1食糖質制限量は20gなので、アウト。それよりもゆるやかな山田悟医師の提唱する「ロカボ食」なら40gまでOKなのでぎりぎり大丈夫なレベルか。
ただ、糖質オフ製品はなかなかおいしいものに出会えない中、糖質コントロールシリーズは通常の乾麺と遜色ないおいしさと使い勝手を実現している。ロカボ食の味の面でくじけそうな糖質制限ダイエッターにとっては、この時期特にうれしい製品となることだろう。
元「月刊歌謡曲(ゲッカヨ)」編集長。今はめおと編集ユニット「ゲッカヨ編集室」として活動。家電や雑貨など使って楽しい商品のレビューに命がけ!