高コスパなチョコレートスナックの筆頭と言えば、「ブラックサンダー」です。
甘さに調和する絶妙なほろ苦さやザクザク感、適度なボリューム、そして手ごろな価格が魅力ですが、インパクトのあるネーミングやパッケージデザインを始め、「白いブラックサンダー」や「ひと目で義理とわかるチョコ」といった、ひねりのきいた企画力も見逃せません。
そのノリのよさから、新フレーバーや限定商品が次々と登場するのも特徴ですが、今回注目したのは「ブラックサンダー史上最も高級なビターチョコ」と「ブラックサンダー史上最も高級なミルクチョコ」の2商品。
「ブラックサンダー史上最も高級なビターチョコ」と「ブラックサンダー史上最も高級なミルクチョコ」。2021年1月9日から全国の「セブン-イレブン」で限定発売されています
これまでも、リッチさをウリにした「ブラックサンダー」はありましたが、「史上最も高級」をうたうとは、なかなか挑戦的じゃないですか。ということで、定番の「ブラックサンダー」のほか、チョコ感200%超にこだわった「ブラックサンダーひとくちサイズ」と、フランス産発酵バターを使った「ブラックサンダー 至福のバター」、そして特設サイトで限定販売されている「至高の超生ブラックサンダー」もそろえて比較。それぞれの味の特徴をチェックしました。
1個30円の定番から3,500円のネット限定品まで食べ比べました
まずは基準となる味の確認から。スタンダードな「ブラックサンダー」をじっくりと食べてみます。なお、販売元は有楽製菓で、同製品の誕生は1994年。当時の主力だった「チョコナッツスリー」という20円の商品に対し、重量感のある食感のお菓子として30円の「ブラックサンダー」が生まれました。
1本21gあたり112kcal。長年「若い女性に大ヒット中!」の一文が表記されていましたが、全世代に浸透したからか今はありません
パッケージや味は少しずつ進化していて、2017年には表面をカバーするチョコレートの比率を7.5%増量するなど、14年ぶりにレシピをフルリニューアル。しかも2020年にはザクザク感とカカオ感を一層アップさせ、おいしさにさらなる磨きをかけました。
ゴツゴツしたクッキー生地を、チョコレートがしっかりコーティング。このガッツリとしたルックスも特徴のひとつです
改めてじっくりと食べてみると、チョコレートよりもクッキーやビスケットのザクザク感が際立った味わい。内部のクランチパフが大きめで、それがザクッと硬めの食感を強めているのでしょう。また、味がライトなので、次の1個に手が伸びやすいとも思いました。味のバランスはもちろん、ボリューム感もかなり絶妙です。
採点は各5点満点(以下同)
次はいよいよ、本稿の主役である「セブン-イレブン」の限定品「ブラックサンダー史上最も高級なビターチョコ」を味わってみます。
最大のウリは、特有のザクザク食感はそのままに、「ブラックサンダー」史上最も高級なチョコレートを使っていること。この「ビター」のほうは、エクアドル産のカカオがおいしさの決め手です。
1袋に55g入りで、エネルギーは302kcal。ロゴ付近には小さく「高級な雷神」と表記されています。メーカー希望小売価格は158円(税別)
なお、パッケージの下部にはいくつかの注釈が書かれています。この商品名の「高級」というのは、一般流通品の「ブラックサンダー」シリーズ史上で最も高価なチョコレートを使っているということ。このエクアドル産高級チョコレートは、コーティング部分に使用されています。つまり、一般流通していなかった特別な「ブラックサンダー」には、より高級なチョコレートが使われていたということかもしれません。
袋の中には、ひと口サイズの「ブラックサンダー」が8粒入っていました。計55gなので、ひと粒約7gの計算です
食べてみると、確かにビター。甘さは控えめながら、チョコレートの濃度やコクは深く、カカオの含有率も多いのではないかと推測できます。かすかに酸味も感じ、酒は使っていないのですが、リキュール入りチョコレートのような妖艶さも。粒が小さく、チョコレートの味が濃いためにザクザク感は控えめになっていて、全体的に大人な味わいに仕上がっています。
濃密でビターなカカオ感に、ほのかな酸味。コーヒーのほか、ウイスキーなどの洋酒のストレートやロックにすごく合うと思います
次は、「ビター」と同時発売された「ブラックサンダー史上最も高級なミルクチョコ」を試食。
こちらは、コーティングしている素材にガーナ産カカオとフランス産ミルクを配合した、ミルクチョコレートを使用しているのが特徴です。
55g入りで301kcal。先述の「ビター」タイプより1kcalだけ低く設計されています。メーカー希望小売価格は158円(税別)
パッケージは白いですが、ホワイトチョコレートを使っているわけではありません。ただ、「ビター」タイプに比べるとチョコレートの色は淡め。これは、ミルクの量が多いからだと思います。このミルク感が味わいにどれだけ影響しているのか確かめてみます。
手触りや香りに関しては、「ビター」とそこまで大きな違いはありません
食べてみると、ミルク感は強めですが、想像していたほど甘くはなく、チョコレートのやわらかさにおいても「ビター」と大きな違いは感じられませんでした。いっぽう、ほろ苦さはやや抑えめでしょうか。また、口どけやまろやかさは豊かで、重厚とも言える贅沢感。ほのかに塩みをきかせているのか、味の輪郭もふくよかな気がします。
通常の「ブラックサンダー」に比べると、確かにリッチ。とはいえ、個人的には「ビター」タイプのほうがより高級感を感じました
ここまでの3商品を並べてみました。明らかに違うのは、同じ量を食べても、高級タイプのほうが味のアタックや余韻が強いことです
次は、2020年11月からコンビニ限定で発売されている「ブラックサンダーひとくちサイズ」。こちらはサイズが小さいだけでなく、2倍のチョコ感を特徴としてアピールしています。つまり、味わいにも高級感が感じられるはず、ということで確かめてみました。
先述の高級タイプと同じく、1袋に55g入り。エネルギーは296kcal。メーカー希望小売価格は100円(税別)
こちらは、「ブラックサンダープリティスタイル」という商品で使用しているチョコレートを、品質から見直し、大幅にリニューアルしたもの。“ザクザクおいしい満足感をひと口サイズで楽しめる”というコンセプトはそのままに、チョコレートのカカオ分を大幅にアップすることで、よりチョコレート感が楽しめるようになっているそうです。
「史上最も高級な〜」が税別158円なのに対し、容量は同じですがこちらは税別100円
実感として、「チョコ感200%超え」はやや大げさな気もしますが、確かにチョコレートが多めにコーティングされています。甘みはやや強い印象で、ほろ苦さに大きな違いはなし。通常の「ブラックサンダー」に比べて粒が小さく、それでいて生地に対してチョコが多いのでザクザク感は控えめ。結果として、まろやかさや口どけが豊かな、コク深い味わいに仕上がっています。
「ブラックサンダー史上最も高級なビターチョコ」のビター感やカカオの濃さを減らしつつ、甘みをアップさせたような味わいです
バリエーション豊富な「ブラックサンダー」には、プレミアムシリーズというラインも存在します。次に食べるのはその第1弾として発売された「ブラックサンダー 至福のバター」です。スタンダードの「ブラックサンダー」が1個30円なのに対して、サイズはほぼ変わらず1個50円という強気のプライス。味は価格に見合っているのでしょうか。チェックしてみます。
内容量は22gで122kcal。定番の「ブラックサンダー」に比べて1g多く、10kcal高くなっています
特徴は、生地のひとつであるバタービスケットに、フランス産発酵バターを使っていること。この発酵バターというのは、ヨーロッパで主流(日本は有塩でも無塩でも非発酵バターがメジャー)となっている乳酸菌で発酵させるタイプで、バターの風味やコクの濃厚さが特徴です。
下が「ブラックサンダー 至福のバター」。通常の「ブラックサンダー」(上)に比べると、クリーミーな色合いなのがわかります。生地だけではなくチョコレートの配合も違うのでしょう
バターの効果は絶大で、明らかに個性的な味わい。まろやかで、甘さも上々。ほんのりと塩みもきいていて、バターのマイルド感とあいまって塩キャラメルのようなニュアンスを感じられます。そのいっぽう、ほろ苦さは皆無と言っていいほどなく、それも独自性を演出していると思います。50円という価格をどう見るかですが、定番に比べて贅沢な味わいが楽しめることは間違いありません。
チョコレートのカカオやビター感は抑えめですが、お菓子としての完成度はピカイチ
ラストは、2021年1月25日から有楽製菓の特設ECサイトで販売されている「至高の超生ブラックサンダー」。豊かなカカオ感と北海道産生クリームのクリーミーな味が特徴の「ミルクチョコレートタイプ」と、シャンパンの華やかな香りとフランボワーズの酸味がアクセントとなった「ホワイトチョコレートタイプ」の2種アソートです。前者を味わってみました。
1箱2本入りで税別/送料別で3,500円と、なかなかの代物。写真左側が箱のフタで、右側の金色の箱の底面にスペックが書かれています。「ミルクチョコレートタイプ」は143gで785kcal
箱の中には、重量感のあるチョコレートバーが2本、包装されて入っていました(右は「ホワイトチョコレート」)。生チョコレートですが、未開封かつ20℃以下の冷暗な場所であれば冷蔵不要です
「至高の超生ブラックサンダー」は、過去最大量の生チョコレートを使用し、そのうえで「ブラックサンダー」ならではのザクザク食感との究極のバランスを実現しているとか。価格的にはチョコレート菓子の範疇(はんちゅう)を超えたレベルですが、その実力やいかに。
やわらかいので、上手にカットするにはナイフを使ったほうがベターです
これはスゴい……。もはやケーキです。
ガトーショコラのようなズッシリとした濃密感が圧倒的で、そのうえで生チョコレートを贅沢に使っているため、しっとりを通り越してネットリ。その中で光るのが、丸いビスケット生地の存在感。生チョコレートに触れて湿らないように別のチョコレートでコーティングしているそうで、大きさもあいまってザクザク感がしっかりと主張してきます。確かにこのクランチ感がなければ、ただの濃厚な生チョコレートケーキになっていたかも。
価格差が100倍以上ある、スタンダードの「ブラックサンダー」(左)と比較。ここまでいくと、別物のお菓子ですが、振り幅の違いを感じられて興味深いです
また、ミルキーでありながら、カカオのコクも濃厚。素材には、ベルギー産チョコレートのほか、フレッシュフルーツのようなアロマが香るコートジボワール産のカカオマスを使っているとか。0.2%含まれている洋酒ともあいまって、フルーツは使われていないのですが、プラムのような甘酸っぱいニュアンスも。お菓子としては高価ですが、かえってプレゼントにはふさわしい「ブラックサンダー」だと言えます。
食べ比べて感じたのは、史上最高級や至高の超生など、ネタ的な側面もありながら、おいしさは確かだということ。そのうえで、それぞれのウリがしっかり感じられて、どの商品もすばらしいと思いました。これは「ブラックサンダー」の基本的な味のクオリティが、ズバ抜けてよいということになるでしょう。
もうすぐバレンタインデー。昨今は、贈り物をするだけではなく、自分へのご褒美としてチョコレートを買う人も増えているそうですが、在宅が推奨される今年はよりその動向が強いはず。本稿を参考に、多彩な「ブラックサンダー」でおやつ時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。