2021年、東京五輪で日本中を沸かせたニュースと言えば、同大会から採用された「混合ダブルス」で、水谷隼選手と伊藤美誠選手のペアが金メダルを獲得したこと。そもそも、五輪での金メダル獲得は、日本卓球界初となる快挙であり、水谷・伊藤ペアは同種目の初代王者として金字塔を打ち立てました。
水谷選手は、同大会の「男子団体」でもチームを銅メダルへと導く活躍で、日本中を歓喜の渦に巻き込みましたが、その熱狂の裏で話題となったのが、水谷選手監修のレトルトカレーです。商品は、「水谷隼カレー」、「水谷隼ブラックカレー」、「水谷隼ハンバーグハヤシ」の3つ。当時は、どれも品薄状態が続きました。
写真中央が「水谷隼カレー」。左が「水谷隼ブラックカレー」で、右が「水谷隼ハンバーグハヤシ」です
水谷選手の写真が載ったパッケージもさることながら、「ボクのパワーの原動力!」というキャッチフレーズもインパクト大! もちろん、その味も気になるところです。そこで今回は、3商品を実食して、それぞれの味付けや具材、ボリュームをレポート。また、メーカーから水谷選手との開発秘話も取材してきました。
水谷選手のこだわりが、各商品にどのように生かされているのかを聞いてきました
今回紹介する3商品に共通している最大の特徴は、「やまと豚」という国産銘柄ポークを使っていること。これは販売元であるフリーデンが、「やまと豚」の生産者を兼ねた豚肉メインの食品企業だからです。
また、「やまと豚」は、「ITI(国際味覚審査機構)」において、2015年から7年連続で三ツ星を獲得しているお墨付きのブランド。有名とんかつ店を始め、レストランでも採用されています。
ということで、まずは「水谷隼カレー」からチェック。「やまと豚」はもちろん、野菜にもすべて国産を使用し、じっくり炒めたタマネギのほか、ニンジンとジャガイモもたっぷり。化学調味料も不使用で、こういった素材へのこだわりにもアスリート監修の矜持を感じます。
スペックは、1袋200g当たり225kcal、炭水化物25.8g
1箱の内容量は、200g。無印良品でいちばん人気の「素材を生かしたカレー バターチキン」や、世界初の市販用レトルトカレー「ボンカレー」は180gなので、「水谷隼カレー」はレトルトカレーとしてはやや多めです。この点も、どこかアスリートらしいと言うか、未来の水谷選手を目指す少年少女がモリモリ食べている姿が思い浮かびます。
加えて、小袋に入った「辛味スパイス」が添付されているのも特徴。1/3を混ぜれば中辛、2/3で辛口、全部入れれば激辛というのが目安とのことです。辛いカレーが好きな大人から、刺激が苦手なお子様まで多くの人に食べてほしい。そんな水谷選手のやさしさを感じずにはいられません。
「辛味スパイス」は、赤唐辛子をメインに、砂糖、食塩、ブラックペッパーを調合。この刺激度合いもチェックしていきます
ここからは、いよいよ盛り付けて実食。具材が大きくて食べ応えがありそう、というのが第1印象です。カレーソースは、ドロッとしたテクスチャーで、昔ながらのほっこりとしたザ・カレーライス的なタイプ。
この写真で見ても、具材の大きさは一目瞭然
食べてみると、自然な甘みを感じるマイルドな味わい。自慢の「やまと豚」を筆頭に、具材がゴロッとしていて、噛むたびに各素材の味が感じられます。そして味の染み方も秀逸。豚肉やニンジンは甘みが豊かでやわらかく、ジャガイモは甘くほくっとしています。味付けは、スパイスの余韻がやさしく広がる甘口で、コクも十分。いっぽうで、「辛味スパイス」は想像以上のパンチがあります。全部入れるとかなりの辛さなので、気を付けながら使いましょう。
レトルトでこの具材の大きさは、なかなかのもの。味も具材の質も、そしてボリュームも大満足です
この「水谷隼カレー」についてフリーデンに取材したところ、商品部の清水元太さんから、開発時の水谷選手とのやり取りを教えてもらうことができました。
「水谷選手がカレー好きということもありますが、遠征が多く、国によっては食事に苦労することも多いため、どこでも持って行けるレトルトカレーを作ろうということで、開発がスタートしました。水谷選手からは、『具が大きい、家庭で食べるようなカレーがいい』というリクエストがあり、200g中100gが具材の『水谷隼カレー』が完成。2015年6月より発売しています」(フリーデンの商品部・清水元太さん)
なるほど。具材の大きさだけでなく、家庭的な味も水谷選手の希望だったのですね。容量の半分が具材というのも驚きですが、カラダが資本のアスリート御用達であれば納得です。
「水谷隼ブラックカレー」は、通常の「水谷隼カレー」より辛みを増した大人な味がウリ。ネーミングどおりの黒いソースも特徴です。「水谷隼カレー」のデビューから3年後の、2018年6月に発売されていますが、こちらの開発秘話も清水さんに教えてもらいました。
「『水谷隼ブラックカレー』は、『もっと辛みを効かせたカレーも作りましょう』という水谷選手の声を元に開発しました。40種類のスパイスを入れて、いっそうスパイシーな味わいに仕上げています。また、黒色に関しては、竹炭を入れることで特徴を出しました」(清水さん)
1袋220g当たり297kcal、炭水化物24.2g
「水谷隼ブラックカレー」は、内容量が「水谷隼カレー」より20g多い220gという点にも注目。大人な味ということですが、辛さに慣れてくる中学生以上の卓球キッズが、バクバクと食べているシーンが想像できます。
具材の大きさはこちらも健在。ボリュームも香りもひときわストロングな印象です。なお、「辛味スパイス」も付いています
食べてみると、甘み豊かな「水谷隼カレー」をベースとしながらも、確かにスパイス感が増していて複層的なフレーバーが広がります。辛さはやや強く、中辛レベルでしょうか。また、グレイビーなうまみやビターなコクも感じられておいしいです。
もちろん、「やまと豚」と国産野菜を使用しつつ、化学調味料は不使用。ニンジンは入っていませんが、その分肉とジャガイモの存在感が際立ちます
最後は、2021年3月から発売されている「水谷隼ハンバーグハヤシ」。「やまと豚」のハンバーグに黒毛和牛の牛脂を入れることで、やわらかい食感と、ソースのコクとうまみの向上を実現したとか。「なぜハヤシソースなのか」や「ハンバーグを採用したのか」など、開発秘話も聞きました。
1袋220g当たり262kcal、炭水化物25.1g
「『水谷隼ハンバーグハヤシ』は、辛さがどうしても苦手でカレーが食べられない人もいるということで、『老若男女、誰でも食べられて、もっとフリーデンの魅力をみなさんに知っていただける商品を』という水谷選手の希望を商品化したものです。そこで、辛くないハヤシソースを採用。また、豚肉に強みを持つ弊社の特徴を表現する形で、ハンバーグを入れました。ハヤシソースは、水谷選手がイメージする、“お母さんが作ってくれた懐かしい味”に仕上げました。コレ!といった強い個性はありませんが、だからこそホッとする家庭の味わいに仕上がっています」(清水さん)
ゴロッと大きめのハンバーグは、約80gという大きさ。野菜は国産のタマネギが印象的で、化学調味料はもちろん不使用です
カレーと比べると、スパイス感や辛みがないのは当然ですが、テクスチャーが比較的サラッとしているのも特徴。タマネギの甘みに、トマトのうまみと酸味を生かした味わいで、クリーミーなニュアンスも感じられます。ハンバーグは、ふっくらしていて、口の中でもほぐれやすいやわらかさ。味も染みていて、コク深い煮込みハンバーグとも表現できます。
ボリュームは十分ながら、食べやすく、親しみやすさを感じる仕上がりでした
3商品の試食レビューをまとめると、「水谷隼カレー」は大きな具が盛りだくさんで食べ応え十分、「水谷隼ブラックカレー」はスパイシーでグレイビー、「水谷隼ハンバーグハヤシ」はハンバーグの存在感が際立つ個性的なレトルトハヤシという印象でした。レトルトカレーやハヤシソースは数多販売されていますが、この水谷選手監修の3商品は味わいが本格的で、カレーファンやハヤシライス好きも納得できるおいしさだと思います。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。