10月に入り、そろそろ年の終わりが見えてくる頃。年末年始の予定も立ち始め、「おせちの予約をしなければ」と考えている人もいらっしゃるかもしれません。
おいしいおせちとともに新年を迎えたいものです
しかしおせちって、1年の最初に食べる豪華なお取り寄せフードにもかかわらず、ぶっつけ本番というか、「本当においしいのか」食べるまでわからず、若干ギャンブルなのが怖いところでもあると思います。筆者もそうした理由から、これまで注文したことはありませんでした。
そんなニーズからか、近年おせちメーカーでは「おためしおせち」を販売しているところが増えている様子。毎年8月下旬のおせち予約開始と同時にミニサイズの「おためしおせち」を販売しており、事前に味が確認できるわけです! 今回はそんな「おためしおせち」を何種類か食べてみました。
「おためしおせち」は2007年からおせちメーカー老舗の博多久松が始めたのが最初だと言われており、近年では複数のおせちメーカーが500〜3,000円前後の「おためしおせち」を販売しています。
一般的なおせちが約20〜25cm四方の重箱入りなのに対し、「おためしおせち」は14cmほど。iPhoneXと同じくらいの縦幅です。
iPhoneXと同じくらいのミニサイズのおせち
ミニサイズではありますが具材はぎっしりと14品も入っており、1人分の1食としてはかなり豪華です。博多久松のものはなんと500円(税込・送料別)で、とても利益が出ているようには思えません。実際、利益を出すためではなく、「実物を見ることができないから買わないという方もいるし、リスクを負ってまで買ってくれる方はいない。スーパーでも初めて食べるものは試食をしてから買うのと同じように、おせちも納得して買ってほしい」という思いから赤字覚悟でやっているのだそう。8月下旬から限定数に到達次第終了となるのですが、「毎年この『おためしおせち』だけで十分」という人も結構多いのだとか。
それでも、「おためしおせち」を買った人の20〜25%(大体4人に1人)は本番のおせちを買ってくれるそうで、それだけの自信と実績があるからできていることなんですね。
ある調査によると、おせちを購入する人の約1割は9月までに予約を完了しているというデータもあり、必ず来る「お正月」というイベントに対し、かなり気合いが入っている人が多い様子。そのため「絶対に失敗したくない」というニーズも多く、事前に試食したい人は多いのかもしれません。
では、実際のところはどうなのか? おためしおせちを注文し、食べてみることにしました。
注文から3日前後で冷凍便にて届きます。
それぞれパッケージが異なるのも面白い
保管時は冷凍で、食べる前にそれぞれ規定の時間だけ冷蔵庫で解凍します。短いものでは12時間、長いものでは24時間の解凍時間が必要でした。
冷凍で届いたものを冷蔵庫で12〜24時間解凍します
そもそも、ネットで注文するおせちは冷凍で届き、冷蔵庫で解凍するものが多いようです。水っぽくならないのか? 本当に上手に解凍できるのか? こうした不安も「おためしおせち」で確認できるのはよいかもしれません。
それでは実際に食べてみましょう。まずは博多久松 「おためしおせち 全14品」。
→本番(おためしおせちにいちばん近い商品)は、博多久松「和洋折衷おせち『博多』」
博多久松「和洋折衷おせち『博多』」
※「おためしおせち」に入っている「たらば風味蒲鉾」のみ「博多」には入っていません。
おせちメーカーとして知名度が高く、その味に定評のある博多久松。「おためしおせち」
は500円(税込+送料950円)という破格の値段ながら、高級感のあるパッケージが印象的でした。
小さくても高級感のあるパッケージ
見た目もかなり豪華で、13.8cm四方の重箱の中にギュッといろんな具材(14種類)が詰まっています。
高級感とおせち感あふれるビジュアル
海老が入っているとおせちは華やかになりますし、テンションも上がりますね! 殻を剥くのは若干面倒ですが、見映え的にはこのビジュアルが欠かせません。
海老があるだけでうれしい
高野豆腐は、冷凍していたものを解凍した感が若干ありますが……じゅわっと水分が出てくるのが高野豆腐のおいしさでもあるのであまり気になりません。特においしかった具材は、「鶏つくね照り焼き」です。ただのつくねではなく、香ばしい味わいが感動ものです。
高野豆腐は「寿」の焼き印付で芸が細かい
意外だったのは洋風デザートのガトーショコラが入っていたこと。本番のおせちにも入っているものですが、とにかく濃厚でおいしかったです。
デザートは洋風なんですね!
博多久松の「おためしおせちは」は、味の濃いもの(「キングサーモンマリネ」や「鶏つくね照り焼き」)、ジューシーなもの(「やわらか干しトマト」や「翡翠若桃」)、甘いもの(「ガトーショコラ」や「黒豆密煮」)のバランスが非常によいと感じました。
続いては蔵王福膳「お試しおせち かぐや」です。
→本番は……特になし
こちらは、蔵王福膳のおせち全体の味見用として用意された商品のため、「これが本番」というものはないようです。中身には昨年のおせちの中で特に好評だった食材15品をピックアップしているそう。
「お試しおせち かぐや」も見た目はかなり華やか!
蔵王福膳の代表的なおせち「伊達百万石」
ちょっとよいお弁当をいただいたときのような高揚感!
細やかな飾りがあることで、お正月感がより高まります!
ミニサイズだけどていねいで本格的!
サイズはiPhoneXより少し大きめの約15cm四方。価格は1,980円(税込・送料無料)!
彩りも美しい
なんだこれ? となったのは「海老かんざし」。かわいらしいビジュアルです。海老と魚肉のすり身、ニンジンやサトイモが使用されています。
「海老かんざし」
そのほか、「一口にしんの昆布巻き」や「黒煮豆」「さつま芋きんとん」「伊達巻き」「かまぼこ」などオーソドックスなおせちの具材が味わえるおせちでした。全体的な評価として、本当に驚くほど、解凍した「水っぽさ」がなかったのがすごいと思いました。
最後はフードスタジオ「ビストロおせち 洋風 『お試しおせち』」です。
→本番は……フードスタジオの洋風おせちシリーズ「ワインによく合うビストロおせち」
「ワインによく合うビストロおせち」
「お試しおせち」は、洋風おせちシリーズ「ワインによく合うビストロおせち」でよく使われているメニューをお試し用に13品ピックアップしたもの。フードスタジオは「ワインによく合うビストロおせち」を始めとしたおせちを19年製造しているメーカー。ほとんどのメニューが自社開発&自社製造なのでオリジナリティーあふれる洋風おせちが魅力です。
フタを開けてみると、うーん、華やか!
和洋どちらの場合でも、有頭海老がいるとやはり映えますね。
おせちっぽさは薄れますが「絶対どれもおいしいやん!」と唸りました
サイズはiPhoneXとほぼ同じ12.5p四方。価格は2,200円(税込・送料無料)です!
ミニサイズでこの感動ビジュアルとは……
有頭海老はビスククリームソース付きで特別感があります!
そそるビスククリームソース
ワインに合うな〜と思ったのは「スモークサーモンのチーズロール」。ドライトマトオイル漬けとバジルソースで味付けしたチーズがスモークサーモンで巻かれています。そうそう、こういうのが欲しいんですよ!
予想どおり、ワインに合うウマさの「スモークサーモンのチーズロール」
あまりお目にかかれないシリーズとしては「野菜畑のピンチョス」も魅力でした。ヤングコーン&ズッキーニ&セミドライトマト&黒オリーブ。パクッといけるひと口サイズではありますが、それぞれの味が塩味とともにお酒のアテとして最高の仕事をしてくれます。
ミニ串に刺さっているのが、かわいい「野菜畑のピンチョス」
とにかく1つひとつの味にこだわっているのがわかります。「馬頭鯛のハーブ麹焼き」や「味噌チーズフラン」はもっとたくさん食べたいと思ってしまうほど。
「馬頭鯛のハーブ麹焼き」
「味噌チーズフラン」
洋風のおせちは味がイメージしにくいこともあり、「買って失敗したら嫌だな」と思っていましたが、お試ししたことで「もっとたくさん量を食べたい!」と思えたので、この「お試しおせち」は大成功だな! と感じました。
3種類の「おためしおせち」を試食しましたが、本来の目的である「おせちの味を確認する試食」としての役割は確かに果たせていると感じました。
冷凍で届いたものを解凍する練習にもなりますし、「水っぽさはない! あり!」と不安を払拭することもできました。想定外の副産物としては、「おためしおせち」で晩酌を楽しむのもありなのではないか、ということ。
おせちはやっぱり日本酒に合う
特にひとり暮らしだとおせちを頼んでも量が多すぎますし、頼む勇気はありません。ですが、「おためしおせち」ならちょうどよい量でいろんな具材を楽しめます。おせちは味付けが濃いものも多いですから、お酒のアテとしてもぴったり。試食と晩酌を兼ねることができちゃうわけです。
残念ながら10月半ばになると「おためしおせち」自体が完売してしまっているメーカーも多いですが、来年もきっと販売されるはず。どのおせちを購入しようか迷っている方はひと足早いお正月気分で1人分のおせちの試食を楽しんでみてはいかがでしょうか。