今年も酷暑を迎え、「そうめん始めました」という人も多いでしょう。でもちょっと待って! この商品をご存じですか? 今回紹介したいのは「ヤマサ麺屋一杯」です。
左から、「ヤマサ 麺屋一杯 鶏がら煮干つゆ 醤油」「同 鯛だしつゆ 塩味」「同 シビ辛麻辣(マーラー)つゆ」
こちらは、ヤマサ醤油が2024年2月20日に生み出した新シリーズで、コク深いラーメン風の味わいを持つ新感覚のそうめんつゆです。近年は、そうめん専門店が明太子クリームそうめんなど、独自で新しいそうめんの食べ方を提案するようになったことが開発背景にあるそう。
「ヤマサ 麺屋一杯」の公式サイトより
そうめんはほかの麺類に比べてややマイナーな存在であるため、このユニークな新提案はナイスアイデア。ヤマサ醤油はそうめんつゆにおいても一大メーカーですが、こうしたビッグネームによる遊び心は、そうめんの市場拡大にも寄与するはずです。
となると、ますます味わいが気になります。そこで、「ヤマサ麺屋一杯」各種と定番のそうめんつゆ「ヤマサ そうめん専科」を比べつつ、麺のほうも有名ブランド「揖保乃糸」から、そうめんと中華麺を用意して食べ比べてみました。
今回はこれらを食べ比べ。「ヤマサ そうめん専科」と味はどう違うのか、また、そうめんと各つゆの相性なども深掘りします
まずは「ヤマサ 麺屋一杯」3商品の特徴をチェック。
「ヤマサ 麺屋一杯 鶏がら煮干つゆ 醤油」は、煮干しが効いた醤油ラーメンをイメージ。醤油ダレをベースに鶏と魚介の旨味を効かせ、味のパンチとすっきりした余韻を両立させているのがポイントです。
「ヤマサ 麺屋一杯 鶏がら煮干つゆ 醤油」。100mLあたり41kcal、糖質は6.4g
続いて「ヤマサ 麺屋一杯 鯛だしつゆ 塩味」は、鯛だしラーメンがモチーフです。鯛、ホタテ、煮干し、カツオ節による魚介の旨味に、薄口醤油と天日塩のコクを調和。さらに柚子果汁を加え、柑橘のアクセントを香らせています。
「ヤマサ 麺屋一杯 鯛だしつゆ 塩味」。100mLあたり46kcal、糖質は8.5g
そして「ヤマサ 麺屋一杯 シビ辛麻辣つゆ」は、豆板醤やクミン、唐辛子、花椒油(かしょうあぶら)を使ってスパイスフルな味わいに。辛さレベルは1〜5段階中の4とパッケージ下部に記載されています。
「ヤマサ 麺屋一杯 シビ辛麻辣つゆ」。100mLあたり41kcal、糖質は6.7g
では、定番のそうめんつゆ「ヤマサ そうめん専科」とは何が違うのでしょうか。最も近い味であろう「ヤマサ 麺屋一杯 鶏がら煮干つゆ 醤油」と比べると、「ヤマサ そうめん専科」は鶏などの動物系だしは入っておらず、いっぽうで魚介が5種類(カツオ節、宗田節、煮干し、サバ節、昆布)使われています。
左が「ヤマサ 麺屋一杯 鶏がら煮干つゆ 醤油」で、右が「ヤマサ そうめん専科」(100mLあたり48kcal、糖質9.5g)。つゆ表面の油分や、色の濃淡なども異なります
それではまず、つゆをそのまま味わってじっくり比べていきましょう。
ということで、「ヤマサ 麺屋一杯 鶏がら煮干つゆ 醤油」からテイスティング。おお、これは……魚介のだし感は豊かでありながら、煮干しのシャープな苦みも存在しつつ、鶏を思わせるふくよかなボディもしっかり。家系ラーメンでおなじみの鶏油(チーユ)的な香りは弱いものの、油分によるとろみはあって、麺にしっかりからみそう。
醤油のコクはまろやか。それもあってか、キレはゆるめで余韻は長めです
続いて「ヤマサ 麺屋一杯 鯛だしつゆ 塩味」は、鯛を中心に魚介全体の風味が「同 鶏がら煮干つゆ 醤油」よりもパワフル。アラ汁を思わせるほどどっしりしており、そこにホタテ調の甘やかな貝だしが調和します。途中からは柚子の香りがクッと上昇し、和のフルーティーな酸味を演出。これは想像以上に個性的です。
どこか、魚醤(ぎょしょう)を思わせるエッジもありますが、個人的にはこのアタックもおいしい個性だと思います
いっぽうで「ヤマサ 麺屋一杯 シビ辛麻辣つゆ」は、味の開発をもっと頑張れる気がしました。個人的には豆板醤が強めに出ている分、どこか旨辛系の鍋つゆっぽい味わいに感じます。もう少しシビレや、クミンのようなオリエンタルスパイスのニュアンスを出すと、新奇性が高まると思いました。
豆板醤のほか、明太子のような旨辛さもあって、この点は好きな感じ。旨味は十分で、奥にはだし感も。酸味もそこそこありますが、もっと甘酸っぱさやシビレがあってもいい気がします
そして定番「ヤマサ そうめん専科」の味わいは、カツオ節や宗田節が特に豊かなだし感に醤油のコクが加わり、甘めでキリッとした関東系。煮物やお浸し、鍋や丼ものの味付けなどにも幅広く使える万能なつゆです。
和だしの旨味がふくよかな、甘じょっぱい味。それでいてサラッとしていて、上品にまとまっています
「ヤマサ そうめん専科」を味わうと、「ヤマサ 麺屋一杯」の開発意図をより強く理解できました。決定的に異なるのは、甘さと油分です。「ヤマサ 麺屋一杯」は甘さをなくして油分を加え、商品ごとに調味料、果実味、スパイスなどを工夫することで、ラーメン感のある新しいそうめんつゆを目指しているのでしょう。
本企画で、つゆの味と同じぐらい気になるのが麺との相性です。はたして、ラーメンのスープをイメージして開発されたそうめんつゆは、そうめんとラーメン、どちらの麺がよりマッチするのでしょうか。今回合わせてみるのはこの2商品です。
兵庫県が誇る播州そうめんの名門、揖保乃糸の定番「揖保乃糸 上級」(左)と、その技術を活用した「揖保乃糸 手延中華麺 龍の夢」(右)を使います
それぞれの麺をゆでて冷水にさらし、まず素材の味をチェック。「揖保乃糸 上級」はツルッとしたしなやかなタッチと、口の中でふわっと広がるやわらかさが絶妙です。そうめんならではの極細麺は凛々しい束となり、シャバシャバのつゆでもしっかりからむでしょう。
ピシッとしたコシと、引っ張ればビヨンと伸びる弾力が好バランス。小麦のナチュラルな香りも豊かで、お手本と言えるそうめんです
そうめんと中華麺の最大の違いは、アルカリ塩水溶液の「かん水」が入っているかどうか。「揖保乃糸 手延中華麺 龍の夢」も当然「かん水」入りで、特有の色や風味が特徴です。また、「揖保乃糸 上級」よりも少々太めで、加水率(麺が含んでいる水分の割合)は少なめな気がします。
いい意味で野暮ったい風味は、濃いつゆによく合いそう。食感は「揖保乃糸 上級」同様にしなやかな口当たりですが、よりパツッとしています
そんなこんなで、そうめん「揖保乃糸 上級」を「ヤマサ 麺屋一杯」の各つゆと合わせてみると、これが好相性。極細麺の束が、とろみのあるつゆとよくからみます。また、ピュアな麺の味にパンチのあるつゆが合わさることで、そうめんの新たな魅力が開く感じに。
「揖保乃糸 上級」を「ヤマサ 麺屋一杯 鶏がら煮干つゆ 醤油」へ、ドボン。上品で極細のそうめんながら、口の中で広がる感じはラーメン風です
では、「揖保乃糸 手延中華麺 龍の夢」と「ヤマサ 麺屋一杯」のマッチングはどうでしょうか。うん……やはり、こちらのほうがしっくりきてしまいます。ラーメンをイメージして生み出されたつゆですから、ラーメンの麺に合うのは当たり前と言えるでしょう。
同じつゆでも「揖保乃糸 手延中華麺 龍の夢」のほうが、どうしても収まりがいい感じ
もちろん「ヤマサ 麺屋一杯」は「揖保乃糸 上級」とも合いますが、「揖保乃糸 手延中華麺 龍の夢」のほうが、よりシンデレラフィット。前世から結ばれる運命だった、と言えてしまうほどのお似合いっぷりです。
「ヤマサ 麺屋一杯 鯛だしつゆ 塩味」でも同様。「揖保乃糸 上級」も十分おいしいですが、「揖保乃糸 手延中華麺 龍の夢」のほうが、よりシンクロ率が高いです
ベストマッチな理由は、いい意味でのクセにあると思います。「ヤマサ 麺屋一杯」には油分や少しのとろみがあり、香りがパワフル。しかも商品ごとに鶏×魚介、鯛×柚子、スパイシーといった一芸が光ります。
こちらは「ヤマサ 麺屋一杯 シビ辛麻辣つゆ」と、「揖保乃糸 上級」の組み合わせ。これも十分マッチしますが、「揖保乃糸 手延中華麺 龍の夢」に比べるとスマートすぎる印象も
いっぽうの「揖保乃糸 手延中華麺 龍の夢」は、「かん水」によるいい意味で野暮ったい風味がおいしさの構成要素。それぞれが持つ、ある種のクセやトガり具合が共鳴し合うのではないかと思います。なお、定番そうめんつゆ「ヤマサ そうめん専科」で同じように試したところ、より相性の奥深さを実感しました。
「ヤマサ そうめん専科」を、そうめん(左)と中華麺(右)で食べ比べ。こちらも興味深い結果に
結論を言えば、「ヤマサ そうめん専科」には「揖保乃糸 上級」のほうが合うと思います。その理由は、次のように考えました。「ヤマサ そうめん専科」には、「ヤマサ 麺屋一杯」にある油の香りやとろみはありません。しかしいっぽうで、和だしの豊かな香り、醤油の力強いコク、ストレートな甘さなどが浮き彫りとなり、すっきりとした潔い味に仕上がっています。
4商品を中身とともに並べると、このような感じ
さらに言えば、「ヤマサ 麺屋一杯」に比べると「ヤマサ そうめん専科」はシンプル。粋な味だからこそ、繊細なタッチで麦の甘みや風味などをストレートに感じられる「揖保乃糸 上級」のほうが、「揖保乃糸 手延中華麺 龍の夢」より合うのだと思います。
今回の結果をまとめると、「ヤマサ 麺屋一杯」は、そうめんの新たな魅力に気づかせてくれるつゆであると言えます。「ヤマサ そうめん専科」などの定番めんつゆも安定のおいしさですが、ぜひ好みに応じて「ヤマサ 麺屋一杯」を試していただきたいです。
各商品にはアレンジ例も載っています。「揖保乃糸 手延中華麺 龍の夢」を使って写真のように盛り付ければ、それこそガチな冷やしラーメンに!
なお、「ヤマサ 麺屋一杯」の3種を比べて個人的に好きだった味は「ヤマサ 麺屋一杯 鯛だしつゆ 塩味」。今回紹介したつゆは、どれも開封後の賞味期限が3日間と短いので、どれか1本を選ぶならぜひこちらを!