“完全栄養食”市場のカップ焼きそばカテゴリーに、面白い動きが見え始めています!
というのも、同業界のパイオニア、ベースフード社が2025年1月、2月と、立て続けに新作「ベースヤキソバ(BASE YAKISOBA)」の3商品を発売。同年3月からはうち2商品が一部コンビニにも並び、さらにテレビCMを展開するほど攻めているのです。
新作「ベースヤキソバ」の「ソース焼きそば」(左)「旨辛まぜそば」(右)「塩焼きそば」(中央上)
ちなみに、3商品のうち「ベースヤキソバ ソース焼きそば」と「同 旨辛まぜそば」の2商品は、2024年4月に同社初の完全栄養即席麺としてデビューした「ベースパスタ ソース焼きそば」と「同 旨辛まぜそば」のリボーン(生まれ変わり)版。その新旧を食べ比べたところ、確かな味の進化を感じ、ソース焼きそばのほうは「味がペヤングに似てるかも?」と思うほど。
そこで「ベースヤキソバ」の新旧と、有名カップ焼きそばや競合商品などを集めて食べ比べを実施。それぞれの特徴や味わいをレポートします。
「ベースヤキソバ」の新旧比較と、近しい特徴やフレーバーの商品との食べ比べをおこないます
まずは「ベースヤキソバ ソース焼きそば」と「同 旨辛まぜそば」の新旧比較から。そもそも「ベースパスタ」の即席麺デビューが2024年4月で、「ベースヤキソバ」での再出発が2025年1月ですから、約9か月でのスピード刷新です。なお、「塩焼きそば」は今回が新発売で、旧モデルはありません。
手前が生まれ変わった「ベースヤキソバ」(新)で、奥が「ベースパスタ」時代(旧)。味は、左の味がソース焼きそばで、右が旨辛まぜそばです
この短期間でどれだけ味が変わったかを確かめるべく食べ比べると、想像以上の進化に驚かされました。特に印象的なのは、麺のクオリティアップ。新旧ともに、小麦粉よりも低糖質かつ栄養価が高い全粒粉が使われているのですが、新作のほうは全粒粉特有の余計な穀物臭がマスクされているうえ、粉っぽいボソボソ感が抑えられ、つるもち感がアップしています。
左が旧作(試食用の小ポーション)で、右が新作の「ベースヤキソバ ソース焼きそば」
また、麺の形状にも違いが。「ベースヤキソバ ソース焼きそば」は細くシュルッとした、ソースと絡みやすい仕様に。「同 旨辛まぜそば」はもちもちして食べごたえも豊かな、平打ち麺になりました。
味わいは、「ソース焼きそば」は香ばしくまろやかなソースの味が特徴。「旨辛まぜそば」のほうは、4種の香辛料(唐辛子、花椒、山椒、胡椒)を独自にブレンドし、ピリッとした辛みの中に、旨味を感じられる深みのある味が特徴です。
「ベースヤキソバ 旨辛まぜそば」の旧作(左)と新作(右)。色味や麺の形状に違いがあることがわかるでしょう
新旧食べ比べを終えて個人的に気になったのが、新作「ベースヤキソバ ソース焼きそば」の味付け。香りや味が、何となく「ペヤング ソースやきそば」に似ている気がするのです。そこでメーカーのベースフードに、教えてもらえる範囲で味付けに関する質問をしてみました。
おなじみ、まるか食品の「ペヤング ソースやきそば」(以下、「ペヤング」)。同社は群馬に本社があり、特に東日本にファンが多い印象です
すると、「理想としたのは専門店や屋台の焼きそば以上に、家庭で楽しまれている焼きそばの味です。ペヤングもおいしいのですが、より目指したい味の商品名をあげるとすれば、マルちゃんのイメージですね」という答えが!
そこでプレスリリースをよく読んでみると、“「ベースヤキソバ ソース焼きそば」は、スパイシーなソースの香ばしさと旨味が広がり、キャベツの具材感と共に、昔お家で食べたことがあるようなどこか懐かしさを感じるやさしい味わいのソース焼きそばを再現しています。”と記載がありました。
ふむふむ。確かに「マルちゃん焼そば」は、すべての麺商品の中でも最も食べられているブランドと言われるいっぽう、「ペヤング」などのカップ麺市場では西日本に「日清焼そばU.F.O.」、北海道に「やきそば弁当」、東北信越に「焼そばバゴォーン」とライバルが君臨。“昔お家で食べたことがあるような”と一律で言い切っている手前、より説得力のあるブランドは「マルちゃん焼そば」だと言えるでしょう。
ということで「ベースヤキソバ ソース焼きそば」に関しては、ほかのソース味焼きそば商品とも食べ比べました
ならば論より証拠。「マルちゃん焼そば」と「ペヤング」、さらには同じ完全栄養食の競合である「完全メシ 日清焼そばU.F.O. 濃い濃い屋台風焼そば」も用意して、それぞれの特徴を深掘りしていきます。
※「完全メシ 日清焼そばU.F.O. 濃い濃い屋台風焼そば」は2025年3月24日に「完全メシ 日清焼そばU.F.O. ぶっ濃い屋台風焼そば」にリニューアル。今回検証した商品はリニューアル前のものです。
まず、完全栄養食について簡単に触れておきましょう。完全栄養食には明確な定義こそないものの、厚生労働省が提示した「日本人の食事摂取基準」を基に、“1日に必要な栄養素の1/3を含む食品”を示すのが一般的。
ベースフードの「ベース○○」各商品や日清食品の「完全メシ」ブランドもその栄養素を満たしており、日々の食事に取り入れることで、バランスが崩れがちな栄養素を上手に摂取できるのが魅力です。
こちらが「ベースヤキソバ ソース焼きそば」のライバル的商品「完全メシ 日清焼そばU.F.O. 濃い濃い屋台風焼そば」(以下、「完全メシ 日清焼そばU.F.O.」)。2024年4月デビューなので、旧作「ベースパスタ ソース焼きそば/旨辛まぜそば」とほぼ同期です
そのうえで完全栄養食は、カロリーや糖質などのスペックはどうなのか、という点も気になるでしょう。通常のカップ焼きそばの代表として「ペヤング」も加えてチェックしてみると、下記の表のとおりでした。
完全栄養食同士で比べると、「完全メシ 日清焼そばU.F.O.」のほうが量は多いですが、それを加味しても少しだけ「ベースヤキソバ ソース焼きそば」のほうがローカロリーかつ低糖質です。
3品の比較では、カロリーと糖質に完全栄養食の優位点はそこまでなさそうですが、脂質は控えめかつ、たんぱく質は多めだと言えるでしょう。
それではいよいよ、「ベースヤキソバ ソース焼きそば」と、「マルちゃん焼そば」、「ペヤング」、「完全メシ 日清焼そばU.F.O.」の4種を食べ比べます。
調理前の状態。「マルちゃん焼そば」は、最も定番のチルド麺「マルちゃん焼そば 3人前」から1食分を使用しました。四者とも、麺の太さや縮れ具合に加え、色も異なる点に注目
各商品を、表記されているレシピに従って調理します。「マルちゃん焼そば 3人前」は具材なしで調理。カップ麺3種に関してはどれも時間が異なり、「ペヤング」は3分、「ベースヤキソバ ソース焼きそば」は4分。「完全メシ 日清焼そばU.F.O.」は5分でした。
完成。「ペヤング」は、ふりかけがある分、少々見栄えがいい感じ
ソース焼きそばの麺を並べると、ご覧のとおり。色や縮れ方だけでも、それぞれ個性が分かれています
焼きそば界の王者である「マルちゃん焼そば 3人前」から味わってみると、蒸し麺ならではのナチュラルな小麦粉の風味と、シュルむにっとした食感がいいですね。味は、香りが少々スパイシーながらも塩味、甘み、旨味、コクなどが好バランスに調和し、さすがの完成度です。
甘香ばしい、テリのあるソース味が絶大な安定感
次は改めて「ベースヤキソバ ソース焼きそば」を実食。こうして食べ比べてみると、甘酸っぱさとスパイス感が好バランスな点は「マルちゃん焼そば」的だと感じます。ただそこに、丸い大豆肉ミンチの風味や、ノンフライながらも乾麺であるという素材感が、「ペヤング」らしさを匂わせているとも感じます。
麺の特徴としては今回食べ比べた中で最も縮れが強め。乾麺ならではのドライなタッチは「ペヤング」寄りですが、油感がやさしくジャンクさを抑えた万人向けの味は「マルちゃん焼そば」的
続いて、「ペヤング」で答え合わせ。これも普遍的なおいしさですが、いい意味で駄菓子のようなフレンドリーさが、実に愛らしいウマさです。フルーティーな酸味がきいたさっぱり系であるものの、別添のスパイスが絶妙な香ばしさとジャンク感をプラス。細めの麺とも相性抜群です。
パツッとした、ナイスなモサモサ感。これも「ペヤング」の魅力です
ソース味焼きそば食べ比べの最後は、「完全メシ 日清焼そばU.F.O.」。味は、同じブランド名を冠するだけあり、めちゃめちゃ「U.F.O.」! ひと口目から感じる濃厚なソーステイストは、ファンも納得でしょう。
あのDNAはしっかり。ただしわかりやすい違いとして、なぜか麺は本家より細いです
より具体的には、熟成すら感じる豊かなコクと香ばしさ、さらにフルーティーな甘酸っぱさがしっかり主張するソースの味。とはいえキレもよく、また、細かいながらも紅生姜やあおさ(青のり)が爽やかな隠し味を演出し、余韻は重すぎません。「U.F.O.」ならではの平べったい味付け豚肉も健在で、具材の物足りなさもなし。お見事です。
最後に、シリーズの新作「ベースヤキソバ 塩焼きそば」も食べてみました。こちらは、チキンやホタテ、ネギの風味を感じるオーソドックスな塩焼きそばのおいしさに、ペッパーの個性をきかせた味わいが特徴です。
「ベースヤキソバ 塩焼きそば」。1食83g(麺65g)あたり298kcal、糖質38.2g、脂質7.6g、たんぱく質15.8g
麺は「ベースヤキソバ ソース焼きそば」と同等もしくはそれより細く、パツッとした低加水ながら、もちもち感もあるテクスチャー。味付けも同様にやさしい方向性で、複雑さのあるソース焼きそばよりシンプルな、さっぱり系の塩胡椒フレーバーです。その分、麺を構成する全粒粉などの素材の風味も感じますが、異質さはありません。
具材は、中粒サイズの大豆肉ミンチがメイン。細かな青ネギが爽やかなアクセントで、全体的にモダンな塩焼きそばという印象です
塩焼きそばに関しても、王道商品と食べ比べてみました。それは「俺の塩」。「マルちゃん」「やきそば弁当」「焼そばバゴォーン」などを有する名門、東洋水産の塩焼きそばブランドです。
左の「ベースヤキソバ 塩焼きそば」に対して、右が「俺の塩」(ともに、かやくは開封して乾麺の上にかけた状態)。やはり麺の色からして、明らかに異なります
「俺の塩」は、熱湯1分調理というスピード湯戻しと、それによるコシの強い細麺や、ホタテと昆布の旨味が大きな魅力。赤穂の塩を使ったソースはコクが豊かで、味の厚みを演出しています。
1分湯戻しによる、ハリのある低加水の細麺は非常にしなやか。シュッとした、スマートなすすり心地です。独自の「かまほた(貝柱風かまぼこ)」も秀逸!
こうしてさまざまな焼きそばと比べながら「俺の塩」を食べると、この商品は中華料理の焼きそば的側面があると感じました。それは、ホタテが醸し出すXO醤的な奥深い旨味や、具材のキクラゲ、そしてあっさりしていながらも香り高いオイル感。改めて圧倒的なおいしさと同時に、「ベースヤキソバ 塩焼きそば」とは味の方向性がかなり異なることがわかりました。
「ベースヤキソバ 塩焼きそば」は、シンプルでモダンな大豆ミンチと塩胡椒の焼きそば。「俺の塩」は和風の奥に中華の面影がにじむ、技巧派の上品な海鮮焼きそば
最後に改めて、完全栄養カップ焼きそばの各味わいの特徴をひと言でまとめました。選ぶ際の参考にしてみてください。
なお、本稿では「完全メシ 日清焼そばU.F.O. 濃い濃い屋台風焼そば」が2025年3月に「同 ぶっ濃い屋台風焼そば」にリニューアルしたと触れましたが、同時に日清食品は世界的名作「カップヌードル」のまぜそばを「完全メシ 汁なしカップヌードル」として発売もしています。このように、ますます面白くなる完全栄養食市場、今後も目が離せません!