日本人にとってもっともポピュラーな薬味といってもいい「わさび」。家で使うのはチューブタイプのものが多いですが、お刺身についていたり、スーパーで本わさびそのものが売られていたりといろいろなわさびがありますよね。普段はあまり気にしませんが、そういえば味が微妙に違う気がします。それに、「本わさびは辛くない」という噂も聞いたことがありますね。本当なのでしょうか? 気になる……。そこで今回は、わさびを真剣に食べ比べてみることにしました。
というわけで今回は4種類のわさびを用意して、検証してみました。左から本わさび(約1,500円)、スーパーで売られていたあらぎりわさび(約300円)、100円ショップに売っていたチューブわさび(100円)、お刺身パックに入っていたわさび(無料)です。
わさび4種
それぞれの成分、見た目、辛味やニオイ、食べ物と一緒に食べてみてどうだったかを比べてみます。
左上から時計回りに、本わさび、お刺身についていたわさび、100円ショップのチューブわさび、あらぎりわさび
本わさび以外は、西洋わさびが入っていました。ご存じの方も多いと思いますが、原材料名は、多く使っているものから順に書かれています。これを考えると、お刺身についていたわさびは「西洋わさび、本わさび」の順に、100円ショップのチューブわさびも「西洋わさび、本わさび」、あらぎりわさびは「本わさび、複合調味液、還元水飴(あめ)、西洋わさび」と記載されているので、お値段が安いものほど西洋わさびの割合が多くなっていることがわかります。
西洋わさびはホースラディッシュともよばれているもので、ローストビーフなどの上にのっている、白い色をした薬味ですね。本わさびと同じく「アブラナ科」ではあるのですが、本わさびと違って、生命力が強く土中に埋めておくだけで容易に成長するそうです(本わさびはきれいで冷たい水の中で育てる必要があり、非常に繊細)。コスト面から西洋わさびが配合されているようです。
見た目を比べるため、いよいよ本わさびをすりおろしてみました。本当は鮫皮のおろし器があればよかったのですが、筆者宅にはチーズ削り器しかありませんでした…。
水分が多いからか、やや滑り気味
わさびの見た目比較です
やはりおろし器の問題でしょうか、繊維質な状態となりました。
庶民である筆者からすると、一番見覚えがある、おなじみのわさびはお刺身についてくるパックに入ったわさび。ほどよく水分が抜けた鮮やかな黄緑色で、パックの切り口からヌルっと出る感じ。ほかのわさびは水分が多く、ねっとりしている印象。
色はやや深めの緑、黄緑に近いもの、薄めの緑などさまざまですが、高いものほど色が薄いように感じます。着色料が使われていないのでしょうか。
ニオイを嗅ぎ比べてみます
ニオイで辛さを感じたのは100円ショップのチューブわさび。とにかく鼻に強烈にとがった刺激を与えます。
ほどよくツーンっとくる感じのニオイだったのはあらぎりわさび。
お刺身についてくるわさびはじんわりと辛さが漂ってきます。
本わさびはツーンとくる辛味というよりも、やや苦そうに感じました。
わさび単体の味比較。並びは上記の写真と同様
続いてわさび単体で味わってみた辛味。
100円ショップのチューブわさびはニオイと同様、とがった辛味を感じました。
あらぎりわさびは原材料に水飴などが使われているからでしょうか。まろやかな中に辛味を感じます。
お刺身についてくるわさびは、単純に辛味だけを感じます。
最後に削ってできた本わさびを口にしたところ、最初に感じたのはやはり苦み。そのあと鼻から抜けるようにほのかにツーンとした感覚を覚えます。しかし「辛い!!」ともだえるような味ではなく、爽やかな感じだったのが不思議です。
「いいわさびは辛くない」と聞いたことがありましたが、確かに本物のわさびは辛いというより苦みとスッとした爽やかさが混在する感じでした。苦いというのは聞いたことがなかったので調べてみたところ、やはり今回はおろし方がまずかったようですね…。わさびには「シニグリン」という“辛味のもと”の成分が入っているんですが、このシニグリンは苦いんだそう。わさびをすりおろして細胞が壊されることで、シニグリンとそれを分解する酵素が出会い、辛味が生まれるというわけです。つまり、今回はうまくすりおろすことができなかったので、シニグリンがそのまま残っていたのではないかと思います…とほほ。きっと上手におろせばもっとおいしかったんでしょう。
最後に食べ物と一緒に食べてみました。今回はお肉とお刺身で検証。
お肉にわさびを添えていただきました
お刺身にわさびを添えていただきました
不思議と、どのわさびも単体で食べたときより辛味が落ち着いた気がします。どうやら食材に脂が含まれているとわさびが効きにくくなるらしいんです。脂の成分がわさびの辛味成分の揮発を防ぐことで、マイルドな感じになるんだとか。
これまでは、鼻から抜ける辛さがわさびらしさだと思っていたのですが、今回本わさびを食べてみて考えが一変。
わさびの辛味というよりも、お肉もお刺身も、食べ物の味を際立たせてくれるかのような香りに意識がいきます。たしかに辛味自体はあるのですが、決して辛いだけというわけではないのです。これは非常におもしろい発見でした。
どれも薬味としておいしくいただくことができましたが、個人的にはやはり本わさびをすりおろしていただいた味が上品に感じられましたので、わさびが苦手な方にも一度はオススメしたいです。