リコーダーなのか、サックスなのか

リコーダーとサックスが合体!? ヤマハの新感覚楽器「Venova」を素人が吹いてみた

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ヤマハから登場した「Venova」(ヴェノーヴァ/型番:YVS-100)は、「リコーダーみたいなのに、吹くとサックスのような音が鳴る」という新感覚の管楽器。そんな超話題のVenovaですが、本当にシロウトがリコーダー感覚で吹けるようになるものなのでしょうか? というわけで、管楽器初心者がVenovaの演奏にトライしてみました!

これがVenova! 見るからにフシギな感じの楽器

これがVenova! 見るからにフシギな感じの楽器

【関連記事】リコーダーなのにサックスの音!? ヤマハの“新感覚”楽器「Venova」が日本上陸

リコーダーなのか、サックスなのか

さっそくVenovaの特徴を見ていきましょう。ABS樹脂製の白いストレートな本体には、リコーダーのような音孔があいています。しかし、吹き口にはマウスピースとリードが付いているという、何ともフシギな楽器です。

結局Venovaはリコーダーなのかサックスなのか。結論からいうと、マウスピースとシングルリードが付いているという点で、本物のサックスと同じ“シングルリード楽器”です。しかしチューニングはC調で設計されており、リコーダーとほぼ同じ指使いで、音孔を直接押さえるスタイルで演奏するところがポイント。吹いてみると、この見た目からは想像できない“サックスっぽい音”が出てくるのです。

こちらが同梱物。Venova本体のほか、キャリングケースやストラップ、クリーニングスワブ、説明書が入っています

白いリコーダーのようなフォルムにマウスピースとリードが付いたVenova。雅楽の篳篥(ひちりき)を思い出す人もいるかも? ABS樹脂製なので水洗いも可です

背面がグネグネした独特のデザインになっていますが、これは内部で主管を蛇行して配置しているため。蛇行した主管の形がそのまま出ているのです。これにより音孔の配置間隔を狭めて、リコーダー感覚で押さえられるようにしています

付属のマウスピースと樹脂製リードは、Venova専用に設計されたものだそう。マウスピースはヤマハのソプラノサクソフォン用「4C」と同等とのことです。管楽器をやっている人なら、自分の愛用マウスピースを装着して演奏することもできるようですよ

リガチャーで固定する仕組みなどは普通のリード楽器と同じ。製品に装着された状態で出荷されてくるので、届いたらそのまま吹き始めることができます

C調で設計されているので、ソプラノリコーダーと同じ指使い・押さえ方で演奏できます

C調で設計されているので、ソプラノリコーダーと同じ指使い・押さえ方で演奏できます

背面には、本物のサックスと同じように「オクターブ・キイ」を配置。これを押さえて、1オクターブ上の音(E5〜C6)を鳴らします

低音部には、より無理なく押さえられるようにキイを配置(写真左)。また、ファを鳴らす音孔にアダプターのはめ込みができるようになっています(写真右。緑マルの部分)。このアダプターを装着すると「ジャーマン式」、取ると「バロック式」の押さえ方でファの音を鳴らせます。このあたりはめちゃめちゃリコーダー感覚!(写真はジャーマン式の状態)

Venova最大の萌えポイント!「分岐管構造」でサックスのような音を実現

一般にリード楽器は、サックスのような形の円錐形管楽器と、クラリネットのような形の円筒形管楽器に分類され、それぞれ異なる音色で鳴ります。Venovaは、見た目はストレートな円筒形ですよね。しかし、本体の一部を分岐させた「分岐管」が付いていることで、円筒形でありながら円錐形管楽器に似た音色を再現するのです。

筆者も今回初めて知りましたが、「1本の円錐管は、2本の円筒管で近似される」(!)という理論があるそうで、この原理を応用しています。電子音ではなく、アナログな構造でサックスっぽい音を再現するという、この仕組みがアツい。どことなく「大人のピタゴラスイッチ」的な魅力も感じて、グッときてしまいました。

緑マルで囲った部分が分岐管です。これが付いていることで、円筒形の見た目からは想像がつかない円錐形楽器に似た音が鳴ります

分岐管の原理は、玉川大学工学部 実吉純一教授による理論。これを基に、ヤマハが理論拡張してVenovaに取り入れています

ちなみにこの「分岐管構造」、実は1993年に発売されたヤマハ製シンセサイザー「VL1」のモデル音源再生で使用されたノウハウなのだそうです。VL1は、物理モデルを組み込んで“仮想楽器”を無尽蔵に創出するというシンセ。VenovaはこのVL1の考え方を継承し、“逆にVL1の音をアナログで鳴らせるようにした楽器”という見方もできるかもしれません。

さすが、アナログからデジタルまで、そしてコンシューマー向けからプロ向けまで、幅広い楽器開発を行ってきたヤマハの歴史が垣間見えるような構造です。有名な例の「ヤマハの歴史コピペ」に、Venovaを新しく加わえてもイイくらいなのでは……!

こちらが1993年発売の「VL1」。物理モデルをベースにした、当時世界初の「バーチャル・アコースティック音源」を搭載するシンセです

Venovaにトライ! シロウトが吹いても音が出るか?

それではいよいよ、Venovaの演奏に挑戦してみましょう。国内・海外含め、オンライン上にはプロミュージシャンによるステキな演奏レポートが多数ありますが、本記事はガチの初心者によるチャレンジ企画です。

筆者の吹奏楽歴は、以前に本サイトの企画で子ども向けのサックス風おもちゃ「jSAX」を練習した経験のみ。以下、そんな初心者のインプレッションとしてご覧ください。

同梱の説明書には、音を鳴らすためのコツが書かれています。これを参考にトライ!

同梱の説明書には、音を鳴らすためのコツが書かれています。これを参考にトライ!

まずは……音出しをがんばってみる

まずは……音出しをがんばってみる

jSAXでは音を出すまでに苦労した筆者でしたが、Venovaも本物のサックスと同じで「リードをふるわせて音を鳴らす練習」が必要です。クラリネット経験のある先輩に吹いてもらったらすぐに音が出たので、リード楽器を吹いたことがあるとラクラク鳴らせるみたいです。

いっぽう、シロウトの筆者がお伝えしたいのは、「初心者は3日がんばろう」です。筆者が何とか音を出せるようになったのは、練習を始めて2日目でした。以前にjSAXを練習した経験もあるので、完全に初めてだったらもう少しかかったと思います。まずは音出しを目標に、初心者は3日間くらいみっちり吹きまくってみましょう。

……そして、Venovaにはここからもうひとつ山場が。

肺活量が足りない……!

管楽器としては普通なのでしょうが、初心者の感覚だと、Venovaは見た目の印象以上に強く息を吹かないと音が鳴らないので驚きます。個人的な肺活量の問題で、息が続きませんでした。1万円という価格にしては、演奏感が本格的すぎる……!

ちなみに上述のjSAXも、Venovaと同じ1万円前後の製品ですが、筆者が感じた1番の違いはこの演奏感。jSAXのほうはリードの鳴らし方さえマスターすれば、そこまで強く息を吹かなくてもそれなりに音が出る印象でした。jSAXはあくまでもおもちゃとして、子どもの肺活量でも吹けるようにうまく工夫されているということでしょう。

いっぽうでVenovaのほうは、カジュアルなのにリード楽器の醍醐味がしっかりあると言えます(=楽をさせてくれません)。このあたりは、さすが楽器メーカーです。

最初のうちは、ちょっと吹くたびにこんな感じでゼーゼーしまくり。田舎の落ちこぼれ女子高生がビッグバンド・ジャズをやる映画『スウィングガールズ』をご存知でしょうか? 女子高生たちが初めて楽器を吹いたときに全く音を鳴らせず、肺活量をきたえるシーンがあるのですが、まさにアレを思い出しました。→価格.comで「スウィングガールズ」をチェック!

それでも何度も練習していると、たまに「……あ、今日は結構音が出る!」という瞬間があるんですよね。そして、下手でもめげずに吹いているうちに、そういう“吹ける日”が増えてきます。Vanovaを使って感じた1番の魅力は、そんな楽器練習の本質的な楽しさを味わえること。練習後には、床に水滴がポツポツ落ちていることも多々ありました。

以下の動画は、1オクターブ(C4〜C5)を鳴らしてみたところです。見た目のイメージに反した(?)太い音色がおわかりいただけるでしょうか。

【演奏動画アリ】簡単に吹ける楽曲から練習してみよう!

Venovaで吹く楽曲を選ぶのも、楽しい時間です。VenovaのチューニングはC調なので、ソプラノリコーダーの楽譜を使うのもアリ。どのカテゴリーにも属さない新感覚な楽器だからこそ、自由に好きな楽曲を吹いてみるとおもしろいのではないでしょうか。

なお、通常のサックスと同じように、最初のうちは低音部を鳴らすのが難しくて音が裏返ります。初めは「ファソラシ(F4〜B4)しか音が出ない」なんて状態に陥ることも。……でも大丈夫! そんなときは、少ない音で鳴らせる曲を吹いてみましょう。チャルメラおじさんの曲なら「ソラシーラソ、ソラシラソラー」でいけますし(なおチャルメラはダブルリード楽器。ちょっと音も似てます)、

マックのポテトが揚がったときの曲なら「ソファソ、ソファソ」の2音でいけますし!(←前向き)

1オクターブ分の音が出るようになったら、同梱の説明書に載っている「聖者の行進」「アメージング・グレース」の楽譜を練習するとイイでしょう。

同梱の説明書には、1オクターブ以内で比較的カンタンに演奏できる2曲の楽譜も載っていて、助かります

同梱の説明書には、1オクターブ以内で比較的カンタンに演奏できる2曲の楽譜も載っていて、助かります

以下の動画は、「聖者の行進」(C調バージョン)を、練習している筆者。初心者が7〜8日くらいがんばってやっとコレですが、あと3日くらい練習すればもう少しモノになりそうな気がして、どんどん吹きたくなります。なお、体を揺らしながらノリノリで演奏しているように見えますが、実際は息が苦しくてもだえているというのが正しいです。やりがいがハンパないよ……!

オクターブ・キイで高音の練習もしていきましょう。1930年代スウィング・ジャズの名作「Sing,Sing,Sing」の“出だしだけ”なら超カンタンに吹けます。心の中のベニー・グッドマンと一緒に、手軽にジャズ気分!

分解せずケースに入れられるのが楽

ちなみに、Venovaには専用のキャリングケースが付属していますが、本体を組み立てた状態のままでこのケースに入れることができます。このあたりの手軽さはリコーダーに近いかも。本体を分解しなくてもしまえるというのはかなり楽で、いろいろな場所に持っていきたくなります。

分解不要! そのままケースにしまえます

分解不要! そのままケースにしまえます

まとめ。「もう少しで吹けそう!」やりがいのある楽しい楽器

というわけで、ヤマハから登場した話題のVenovaにチャレンジしてみました。初心者でも、がんばればそれなりに音が出るようになるのがおわかりいただけたのではないでしょうか?

アマチュアが楽しく楽器練習するコツは、「自分の好きな曲を演奏すること」だと筆者個人は思うので、音出しに慣れてきたら、好きな楽曲の主旋律を吹いて練習するのがイイかも。特に低音部(C4〜E4)を鳴らせるようになると、だんだんサックスっぽさが出てきて楽しくなってきます。

ちなみに、吹奏楽部出身の先輩に吹いてもらったら、サクッと音が鳴りました。それでも、最初のうちは低音を安定させるのが難しい様子。先輩いわく「ちょうどイイ具合に難しい! カンタンには鳴らせないけど、もう少しでうまく吹けそうという絶妙なやりがいがある」とのこと。まさにこの絶妙な難しさが、大人を飽きさせないVenovaの魅力!

Venovaが味わわせてくれたのは、「練習すればするほどうまくなるから、どんどん演奏したくなってくる」という、楽器練習の本質的な醍醐味と楽しさ。それに、本物の吹奏楽にも興味が湧いてきました。Venovaがきっかけで、いつか本物のサックスやクラリネットにもチャレンジしてみたいなと思えます。大人の新しい趣味にぴったりな、まさに新感覚な楽器でした。これで1万円程度なら安い!

杉浦 みな子(編集部)

杉浦 みな子(編集部)

オーディオ&ビジュアル専門サイトの記者/編集を経て価格.comマガジンへ。私生活はJ-POP好きで朝ドラウォッチャー、愛読書は月刊ムーで時計はセイコー5……と、なかなか趣味が一貫しないミーハーです。あ、90年代アニメも好き。

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2017.9.19 更新
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