自動車ライターのマリオ高野です。
クルマやカーライフとはまったく関係ありませんが、子供の頃から昆虫などの小さな生き物が好きで、アリの行列などは、朝から晩まで丸一日観察していても飽きないものでした。
45歳になった今も、アリの行列を観察するのは大好きです。さすがに、いい大人がアリの行列を1日中見ているのはどうかとの自制心が働くので、最近はあまり見なくなりましたが、自宅では水生昆虫のゲンゴロウを繁殖させたりするなど、虫たちへの関心は尽きることがありません。
筆者が飼育するコガタノゲンゴロウ。水槽の中を元気に泳ぎ回っています
虫たちは生態も興味深いですが、彼らの体の動きもまたナゾだらけ。昆虫やクモ、ムカデなどは頭がとても小さく、物量的には脳みそなんてないに等しいというのに、多数の脚や羽根を複雑に動かして素早く動いたり、高精度に飛翔できたりするのも不思議でなりません。
自分はというと、たった2本ずつしかない手足さえうまく動かすことができず、いつになっても草野球でホームランが打てない、マトモに守備ができないなど、情けないかぎり。虫たちは、学習もトレーニングもしないのに、なぜあんなに素早く動くことができるのでしょう?
考えれば考えるほど不思議でなりません。
いったい、虫たちの身体能力を司る脳や神経はどのようになっているのか?
知性はあるのかないのか……?
そんなことを考えてるうちに、原稿の締め切りが迫ってしまうこともしばしばです……。
ワタシは独身だし友達も少なく、子供と接する機会が極端に少ないので、子供たちからそういう類いの質問を受けて困る機会はないのですが、世のお父さんたちは、お子さんらから虫の体の動きについて聞かれて答えることは多いのではないでしょうか?
遅れた原稿を進めるべく夜中に仕事をしているさなか、ちょっと息抜きに「虫」「知性」「運動」などのワードでググって研究中に発見したのがコチラ!
タミヤの「楽しい工作シリーズNo.230 ムカデロボット工作セット」です。
箱の雰囲気は、いかにもタミヤのプラモという感じ。必要な道具はニッパーとドライバー類。各部を潤滑させるグリスは余分にあったほうがいいでしょう
プラモデルやラジコンの要領で組み立てると、ムカデの体の構造を再現したムカデロボットが完成。センサーやAIが搭載されているわけではないのに、地形に合わせて自動的に進む方向を変えながら動く様子が観察できるというものです。
部品点数は多くはありません
「ネジ止めとはめ込みだけで手軽に組み立て可能」とあるとおり、組み立て自体の難易度は高くはありませんが、かなりていねいに組み立てないと各部のフリクション(抵抗)が増すなどして動きが悪くなるので、その意味では組み立て難易度は低くないといえます。小学生の場合は大人の手助けや指導が必要でしょう。
ネジ類はなくなさいよう注意しましょう。シャフトにプラスチックパーツをはめる作業は、多少のコツが必要ですが、7回も同じ作業を繰り返すので、最初の1個目は慎重に組み立てるといいでしょう
スケルトンの機械式ムカデという感じ。手先が器用な人でも、初めての場合は2時間以上かかると思います。円滑な動きを楽しむために、なるべくていねいに組み立ててください
各ユニットや頭部のパーツはクリヤーブルーの成形色。モーターの動力がすべての胴体に伝わる巧みな構造に感心させられます。クルマのラジコンに通じる部分も
中央部のギヤボックスに搭載された電池とモーターにより発生した動力を各ユニット(胴節)に伝え、柔らかい素材でできた歩肢(脚)を回しながら前進します。胴節の連結と動力伝達には上下左右に自由に動くユニバーサルジョイントを使用しているので、前進時に何かに当たると、それを避けるように向きが変わるので、まるで知性があるようにも見えます。ホンモノのムカデも、コレに近い原理で土の上をクネクネ進んでいるのですね!
フル稼働の状態です。もし、どうしても動きが悪いときは、胴体をひとつ抜いて負担を減らしてみましょう
壁のように垂直に立つ障害物には、それに沿って進む傾向が強くなります
何かにぶつかると、まるで知能があるかのようにそれを避けて進みました
隣の関節と脚がぶつかると負荷が高くなり、うまく動かなくなるので、脚はぶつからないように角度を調整しましょう。通販サイトのレビューにも書かれているとおり、ギヤだけでなくシャフトやプラパーツ部分など、摩擦が発生する箇所すべてにグリスを塗るとよいようです。うまく動かないときは、各部のフリクションの低減を見直してください。筆者も結構苦労しました
製品の説明書によると、本製品により「体と環境の相互作用」が実感できるとのことで、知的に見える生き物の動きは、実はまわりの環境から生まれてくるという話です。土の上で落ち葉などにまみれた複雑な環境の中を苦もなく動き回るムカデの運動能力は、力学と制御の点から明らかにできるのですね。
この「環境を友としたロボット」は「 i-CentiPot (アイセンチポット)」と呼ばれる大阪大学・大須賀教授率いるチームが作ったムカデ型ロボットを参考にして作られました。開発チームの先生方によると「まるで路面の様子を見て判断して動いているように見える。それが知能の本質」という話であります。
こういった生き物の運動能力は、惑星探査や災害救助、また介護や家事などを行うロボットにも応用できるといいます。虫の動きが人類の役にも立つとは! 同じ虫好きでも、ワタシのようにただボケ〜っと虫を見ているだけでは満足しない賢い人が、こういうことに気が付いたのでしょうね。
冬は、虫たちのシーズンオフ。外に虫がいなくて寂しい思いをしている虫好きのお子さん向けの教材としていかがでしょうか。