最新技術を駆使して、アニメのような動きが再現できる人気のガンダムトイシリーズ「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.」。前回はこのシリーズを使って、TV版一年戦争の名シーンを振り返りました。今回はその外伝とも言うべき、ガンダム作品初のOVA「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」に登場したMSを通して、一年戦争の裏側を振り返っていきたいと思います。
今回も「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.」で名シーンを再現します
「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」とは
1989年に発売されたガンダムシリーズ初のOVA作品。「機動戦士ガンダム」の生みの親であり育ての親でもある、富野由悠季総監督以外の手で初めて製作された作品でもある本作は、一年戦争末期のスペースコロニー、サイド6を舞台に、ひとりの少年とジオン軍兵士を主人公に、新たなガンダムを倒すという、今までとはまったく違う視点で描かれた作品。全6話。
ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.の「ポケットの中の戦争」シリーズ
2019年7月時点で、「ポケットの中の戦争」に登場するモビルスーツは7体発売されています(うち1体はプレミアムバンダイ限定発売)。ニュータイプ専用に開発された新型ガンダム「NT-1 アレックス」をはじめ、一年戦争にも登場したジムやザクのバージョン違いといった機体が製品化されました。OVA作品ということもあり、TV版よりハイディテールな機体が多く、「ver. A.N.I.M.E.」では細かい部分まで再現されています。
では1話から振り返っていきましょう。
物語は後に一年戦争末期と言われる宇宙世紀0079年12月。宇宙で地球連邦軍とジオン公国軍の激しい戦闘が繰り広げられている中、地球連邦軍の北極基地は、ジオン公国軍特殊任務班のサイクロプス隊による攻撃を受けていた。
特殊環境下における特別仕様のジム
地球連邦軍北極基地を守る、寒冷地仕様のジムです。もうね、最初から格好いいんですよ、このジムが。あの宇宙で戦っている雑魚扱いのジムに比べて、なんというかスタイリッシュ。「OVAの作画ってすげー」って思うくらいです。キットは付属品が少なめですが、特徴的なフェイスやディテールを再現しており、またほかのガンダムやジムにはなかった手首の可動なども追加され、より細かいポージングがつけられるようになりました。
付属品は少なめですが、90mmマシンガン、ブルパップ・マシンガンなど、通常ジムにはない装備が付属
シールドは連邦軍おなじみの赤いシールドが付属。脚部分の可動も優秀でしっかり自立します
通常のジムと比べてフェイスはかなりディテールアップしています
ゴッグの後継機「ハイゴッグ」が「ver. A.N.I.M.E.」化されました
ジオン公国軍サイクロプス隊に配属された水陸両用のモビルスーツ、ハイゴッグ。あのジャブローで登場したゴッグとはまるで別物になったスタイリッシュな機体です。特徴的な長い手はもちろん、動きまで完全再現。付属品も盛りだくさんで、アニメで1シーンしか登場しないようなポージングも再現できます。
付属品も盛りだくさん! ジェットパックや大型のエフェクトパーツで楽しめます
なんでしょう、このカッコよさ! 長い手と生物っぽいデザインが魅力のハイゴッグです
ちなみにゴッグはこちら。腕の可動性はこちらもすぐれていました
長い手は自在に動きます。このずんぐりむっくり感で腰や胴体も可動するのはすごいですよ
北極基地への奇襲に成功したサイクロプス隊。ハイゴッグの圧倒的なパワーで寒冷地ジムへの攻撃を開始。頭部をがっちりとつかんで破壊する様を再現できます。
まずは寒冷地仕様のジムの頭部パーツを一部バラします。この顔の真ん中の穴にハイゴッグの奇襲用のパーツをはめ込むようにすると、
長い爪でジムの頭部をつかんで攻撃する劇中のシーンが再現可能
ハイゴッグの特徴は、パーツ差し替えで水中潜航形態への変形が可能なことです。「ver. A.N.I.M.E.」シリーズではちょっと珍しいのですが、手足をいったんばらして、別パーツにはめ変えての変形となります。
脚をバラして専用のももパーツと交換。腕も長い可動部分を外して爪部分にジェットパックを付けていきます
モノアイカバーを閉じれば、潜航形態にチェンジ
エフェクトパーツを付ければ、よりリアルな水中潜航シーンに
また、ジェットパックを開いてミサイルを発射するシーンでは、大型のエフェクトパーツを使って再現できます。ただパーツがちょっと重いので、そのままのポーズで飾るなら別売りのスタンドなどでしっかり固定したほうがいいですね。
地上に上がって、ジェットパックを外して……ミサイル発射!
エフェクトパーツを使ってミサイル発射を再現! このこだわりが「ver. A.N.I.M.E.」シリーズです
寒冷地仕様のジムと比べると大型のハイゴッグ。サイズ感の違いも楽しめますね
「ver. A.N.I.M.E.」シリーズで今後発売予定の「ポケ戦」モビルスーツ
「ポケットの中の戦争」に登場するモビルスーツは全12体。地球連邦軍全6体のうち、「ver. A.N.I.M.E.」で未発売なのは3体。「ジム・コマンド」、「ジム・コマンド宇宙戦仕様」、「量産型ガンキャノン」です。このうち「ジム・コマンド宇宙戦仕様」は2019年11月に魂ウェブ商店で発売が予定されています。またジオン公国軍側は「ゲルググJ」、「リック・ドムII」、「ズゴックE」の3体。こちらからも「ゲルググJ」が2019年10月一般発売予定です。シリーズをそろえるならゲットしておきたいですね。
舞台は宇宙、そしてスペースコロニー、サイド6へ。コロニー市街で戦闘を繰り広げる「ザクII改」と「ジム・コマンド」。被弾して森林公園に逃げ込んだザクII改を見つける少年アル。ザクII改のパイロット、バーナード・ワイズマンは、その後、北極基地での作戦失敗後ハイゴッグを失い宇宙に向かったサイクロプス隊と合流。新たな任務に就く。
ある意味本編の主役機とも言えるザクII改
本編の主人公のひとり、バーニィことバーナード・ワイズマンが操縦する「ザクII改」。一般的なザクIIよりも高機動にチューンされた改良機で、バーニアの数などが通常のザクIIよりも増えています。そして色合いも濃くなり、顔つきもなんとなく悪くなっている印象を受けます。キットは色合いまで忠実に再現しているほか、付属品も盛りだくさん。交換用の頭部は角のついた隊長機用と、Bタイプと呼ばれるヘルメット型の頭部も付属。新型のMMP-80マシンガンに、劇中のシーンを再現できるダメージパーツも付いています。
新規の頭部パーツが付いているのでお得感もあります
色合いが濃くなり、細くなったモノアイがなんとなく怖そうに見えます
一般的なザクII(右)と比べて。かなりディテールアップされ、よりマッシブになっていますよね
物語序盤では活躍はなし。後半に再び登場して物語を締めくくります
OVAだからこそ!? なかなか登場しないガンダム
「ポケットの中の戦争」は少年アルとジオン公国軍の兵士バーニィの交流を軸に物語が進んでいきます。時代は一年戦争末期、もうすぐア・バオア・クーでの最終決戦が迫るなか、地球連邦軍側ではなく、一般人とジオンの兵士から見た戦争が描かれます。これは当時とても新鮮でした。タイトルにあるガンダムはなかなか登場しません! そのガンダムが初めて映るのは第3話。それも一瞬ちらっとだけです。戦闘好きのガンダムファンだと一瞬退屈しそうな感じですが、戦争を絵空事として現実味を持たない少年と、戦場での本当の恐怖を知らない兵士の戦いと葛藤がていねいに描かれていて物語に引き込まれていきました。そして待望のガンダムは第4話でついに登場。そのパイロットはアムロ・レイよりも年上の21歳。そして女性でした。
バーニィと再会し、サイクロプス隊を見つけるアル。アルはサイクロプス隊に入り、自分も連邦軍の秘密兵器を探ると提案。いっぽうバーニィは、アルの隣人、クリスにひと目惚れ。戦争のさなか、一時の平穏が訪れる。アルによって新型ガンダムの所在を突き止めたサイクロプス隊は、着々と準備を進めていく。
本作戦の正体は、ジオン艦隊からコロニーへの核攻撃。その時間稼ぎと新型ガンダムの所在を確かめるだけの囮(おとり)であると知ったサイクロプス隊だが、それを知りながらもルビコン作戦を発動。強襲用モビルスーツ、ケンプファーを出撃させる。迎え撃つ地球連邦軍は、新型ガンダム、「NT-1アレックス」を起動させる。
このストーリーの中でも際立つモビルスーツの登場です
ケンプファーはこのOVAで登場する完全新型のモビルスーツ。ザクでもドムでもない、局地戦用の強襲用モビルスーツとして開発された設定となっています。登場時のてんこ盛りの武装で、今まで地味だなーと感じていたストーリーを一気に白熱させましたよね。キットもその豪華武装は完全再現。2本のジャイアント・バズーカに2本の大型シュツルム・ファウスト、手持ち武器のショットガン2種類、ワイヤーで自在に動くチェーンマインが付属しています。クリアイエローのビーム・サーベル2本にバズーカ発射エフェクト、バーニアエフェクト6本、さらには別売りのアレックスに付けられる爆発エフェクトパーツなど、これでもか!というくらいの豪華内容になっています。
とにかく武装やエフェクトパーツが盛りだくさん
青い機体に一角獣のような角。ジオン脅威のメカニズムが生んだモビルスーツ。背面には大型のバーニアがバックパックや脚にも付いています
初登場にはジャイアント・バズーカ2本を背負って、手にはショットガン、脚にはシュツルム・ファウストという重量武装のいでたちで登場
バズーカ発射エフェクト付き。ただし重いので支えるスタンドが必要になります
ショットガンも発射エフェクト付き
チェーンマインはワイヤーで自在に動かせます。あのシーンを後ほど再現しますよ
登場時にコロニーを疾走するシーンが印象的です
ここで人気の機体が登場!
ジムのさまざまなバリエーションの中でも人気の機体がここで登場。スナイパーライフルを装備した狙撃を得意とするジム。青い機体に狙撃用のバイザーを装備。ガンプラでも人気の機体です。キットには、狙撃用ライフル、ブルパップ・マシンガンに、寒冷地仕様のジムにはなかったバーニアエフェクトなども付属。劇中での活躍……と言えるほどの活躍はなかったのですが、というか一瞬でしたよね。そして狙撃もしてなかったような……なんてツッコミはさておき、キットはその狙撃ポーズをしっかりとれるようになっています。
バーニアエフェクトにライフル発射エフェクトも付いています。寒冷地ジムよりお得感あり
青い機体色がより存在感を増しています。頭部のバイザーは可動式。通常のジムの顔とはまただいぶ変わってきました
手首や肩関節、腕の可動によって、ガンダムにはなかった動きができます
そのため、このような射撃姿勢を完璧に再現することが可能になっています
ジム3機を並べて。通常ジム(中央)に比べるとほかの2機はワイルドになった感じがありますね
ついにガンダム登場。今回はプレミアムバンダイ限定発売のこちらをチョイス
最後にご紹介するのが今作のガンダム「NT-1」、通称アレックスです。一般発売品として「RX-78NT-1 ガンダムNT-1 ver. A.N.I.M.E.」が販売されていましたが、現在は入手困難。今回はプレミアムバンダイで限定発売された「チョバム・アーマー装備」の「NT-1FA」でご紹介します。こちらは通常版のアレックスに、複合装甲であるチョバム・アーマーが装備可能なキットで、新規造形のフェイスパーツや最終決戦用の折れたアンテナ、さらに大量のエフェクトパーツが付属しています。
本編でもこのチョバム・アーマーを装備した状態で登場しました。パイロットは女性のクリスチーナ・マッケンジー。主人公のアルとバーニィの知り合いでありながら、最後まで双方が敵味方に分かれて戦っていると知らぬまま物語が進むところがキーになっています。
通常版のアレックスにチョバム・アーマー装備のオプションが付いたバージョン
さらに爆発系のエフェクトが盛りだくさん
通常装備のアレックス。ファーストガンダムに似たスタイルですね
ビーム・ライフル、シールド、そしてバズーカもアレックス専用のものになっています
肩や腕の可動も優秀で、いろいろなポージングに対応できます
腕のガトリングユニットはパーツ装着で再現。発射エフェクト付き
ここにチョバム・アーマーを装備していきます。はめ込むだけなので簡単
チョバム・アーマー装備のアレックス完成。アーマー装備でも腕の可動は変わらずよく動きます
コロニーを疾走し、ついにアレックスを引きずり出したケンプファー。ガンダム起動前に攻撃をしかけるも、その重装備ゆえにダメージを与えられず。代わりに腕のガトリング砲を一斉に受けて、ケンプファーは撃沈。バーニィを除くサイクロプス隊は壊滅し、ルビコン作戦は失敗に終わるのだった。
起動前に攻撃を受けるも、脚のバーニアを可動させ、緊急発進するアレックス
爆風の中、起動するアレックス。爆風エフェクトは自在に可動します
チェーンマインで攻撃をしかけるケンプファー。アレックスの脚にダメージを与えます。しかし、脚アーマーから爆炎を上げながらも立ち上がるアレックス
そして近距離からガトリング砲を一斉射撃し、ケンプファーを撃沈させる
ルビコン作戦は失敗に終わるも、ジオン公国軍によりコロニーへの核攻撃を行うという情報をキャッチしていたバーニィ。アルやクリスを置いて逃げようとするも、2人のことを思い、アレックスを破壊し、核攻撃を辞めさせようと単身ザクII改に乗り込む。
アルの手を借りてザクII改を修理し、アレックスに挑むバーニィ。先の攻撃で損傷しながらも出撃するアレックス。作戦当日、ジオン艦隊が降伏し、コロニーへの核攻撃がなくなったことを知らせようとするアル。だが運命は非情な結末を迎える。
単身でアレックスに挑むザクII改。チョバム・アーマー装備もなく、アンテナも折れた状態のアレックスとの一騎打ちへ。ヒート・ホークでアレックスの頭部を粉砕するザク。だが、アレックスのビーム・サーベルがザクのコックピットを貫くのだった。
最終決戦用に折れたアンテナパーツが付属
ヒート・ホークでアレックスを攻撃するザクII改。だがアレックスもガトリングで反撃
さらに接近するザクII改
ザクII改がアレックスの頭部を破壊するも、アレックスのビーム・サーベルがザクII改のコックピットを貫く!
※通常版のアレックスにはこの戦い用のダメージパーツが付属しますが、チョバムアーマー仕様のアレックスにはダメージパーツが付属しません。今回は後者を使用した撮影なのでご了承ください。
こうして物語は終わりを迎えます。最後までクリスがアレックスを操縦していたことに気付かなかったバーニィ。クリスも同様。そして残されたアル……。全6話ながらも、しっかりとした物語進行とキャラの心情をていねいに描いた作品ですよね。そして一年戦争の外伝でありながらも、新型ガンダムをはじめとした、ケンプファー、ザクII改などの、本作のみに登場するモビルスーツのかっこよさは、その後のガンダムシリーズに影響を与えたのではないかと思います。「ver. A.N.I.M.E.」シリーズは、そんなアニメの名シーンを再現できるように考えられて作られているのがわかり、本当にすごいなと、ガンダム愛にあふれたトイだなと感じます。
この6体だけでも各話の名シーンを再現できる優秀なシリーズで、「ポケットの中の戦争」フィギュアとしても決定版だと思います
さらに2019年の夏はガンプラでもこの「ポケットの中の戦争」シリーズの作品が絶賛発売中です。マスターグレードで「ガンダムNT-1 Ver.2.0(アレックス)」の、RE1/100シリーズで「ザクII改」と、1/100シリーズで2機の勇姿を楽しむことができますよ。
「ver. A.N.I.M.E.」シリーズではフィギュア以外にも「ジオン軍武器セット」、「連邦軍武器セット」のようなキットも販売されています。各モビルスーツに対応したパーツが付いているので、たとえば、地味なジムでもこのキットの武器を装備すると、今風で言う、“映える”スタイルが表現できますよ。
連邦軍用の武器セットを購入してみました。アニメでは見たことのない派手な武器が満載
いつもは地味な寒冷地仕様のジムも
ほらこの通り、“映える”スタイルのジムになっているではありませんか!
2019年夏からは、ガンダムシリーズ2本目のOVA「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」シリーズがついに「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.」で発売開始となります。主役機「ガンダム試作1号機“ゼフィランサス”」、「ガンダム試作2号機“サイサリス”」が発売。また新たな「ver. A.N.I.M.E.」シリーズの傑作が誕生しそう。筆者はこれからも追い続けます!
趣味も仕事もゲーム漬けだった人生から脱却を図り模索中。ホビーや生活雑貨記事などを書かせていただきます。